LGBT(正式名称:Lucent Girls Basebell Tournament) 作:kwhr2069
野球モノ...。
人を選びそうな感じになってしまいましたが、ちゃんとHBPしてるとは思います。
ので、シリーズを読んでくださっている方々には出来れば読んでほしいと思っております(笑顔で威圧)
ではでは早速。
絵里ちゃん、Happy Birthday!!
明るい太陽が降り注ぐ。
球場の観客が、その瞬間を今か今かと待ちわびているのを感じる。
グラウンドの中で一部分だけ小高い部分――ピッチャーマウンドに、私は立っていた。
「絵里!最後はビシッと決めちゃいなさい!」
「絵里ちゃん、ラスト一球ファイト~!」
「絵里、最後こそ気を引き締めて!」
「エリー、ここで決めるわよ!」
「絵里先輩...頑張ってください!」
「絵里ちゃん!…ファイトだよっ!!」
皆の声を背中に受ける。
この声が、私を助けてくれる。私の背中を、押してくれる。
「あと一球!全力でいっくにゃ~!」
右後ろから、ひときわ大きな声。
もはや声援とも言えるそのセリフに、思わず笑みがこぼれる。
「(さあ絵里ち、三振で決めたろうやん!)」
目の前でミットを構える女房役からも、そう言われた気がした。
「(…皆、ありがとう)」
万感の思いを込め、振りかぶる。
全ての思いを乗せ、投じたその一球は――。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「それで?」
「どうしたにゃ?」
「『どうしたにゃ?』じゃないでしょ!?
なんで私たちが...急に野球なんてやらないといけないのよ!」
私の同級生でもある少女――矢澤にこが、何度目かも分からない疑問を投げる。
「にこちゃん、理事長さんが説明してたじゃない、聞いてなかったの?」
その問いに対し、まるで煽るように返すのは二つ下の1年生――西木野真姫。
「聞いてたわよ!でも、そんな簡単に受け入れられるワケないでしょ!?」
「んー私はそんなによく分かんなかったけど、野球やればいいんでしょ?楽しそうだしいいじゃん!」
そんな能天気な返答をするのは、2年生の少女――高坂穂乃果。
「…ワタシは、そんなアンタみたいに開き直れないわよ、全く...」
「ん?私褒められてる...?」
「褒められてません、馬鹿にされているのですよ...」
「あはは...」
穂乃果の問いに答えたのは彼女の同級生である二人の少女――園田海未と南ことり。
「それにしても、野球ですか...あまり経験はないのですが...」
「野球経験と言えば、やっぱり凛ちゃんだよね!」
「ちょっとかよちん...それ、別に今言わなくても」
”凛ちゃん”、”かよちん”とお互いに呼び合うのは、二人の1年生――星空凛と小泉花陽。
海未の呟きに花陽が反応し、凛がそれを止める様な構図に。
しかし、一度口から出た言葉はもう戻らない。
「なに、凛?アンタ、野球経験あるの?」
「えー...っとまあ、ちょっとだけ、ね?」
「………」
「あはは...やっぱり女の子が野球なんて、おかしい、よn...」
「良かったぁぁぁ!!!」
「へ!?」
突然手を掴まれそう叫ばれ、困惑する凛。
その場にいる私たちも、意味が分からず頭に?マークを浮かべる。
「いや~...経験者もロクにいないこのチームでやれ、なんて無茶だと思ってたのよ。
凛が経験者なら話は別ね、一緒に力を合わせて、他の7人の分まで働きましょう!」
「いやぁ...えぇ!?」
困惑が止まらない凛。一生分の困惑を今日で使い切ってしまいそうだ。
「ふ~ん...”経験者もロクにいない”ね...言うやん、にこっち。…なあ、絵里ち?」
そこで声を上げるのは、これまで沈黙を保ってきた私のもう一人の同級生――東條希。
「そうね...だいぶ失礼なこと言ってくれるじゃないの、にこ」
希の言ったことに乗っかる私――絢瀬絵里は、にこの方に歩み寄りながら続けて言う。
「…そう、アンタたちも経験者なのね。
まあ、理事長が話を持ってきた時点で経験者がいるんだと、考えておいても良かったみたいね」
余裕綽々といった感じで、髪を右手でかきあげる。
「全くにこは...騒いだ分は、しっかり働いてもらうわよ?」
「ふん...野球が出来るとなって、少し血が騒いでしまったの、ごめんなさいね絵里」
「ほらほら皆、もう間もなく球場に着くんやって。降りる準備せな」
希が、アツくなり始めた私とにこを止める。
「そんなこと言う希も、すっかり本気ね。
…まさか既に、グラブをはめてバットを担いでるなんて」
「そんなん言わんといてや、うち恥ずかしいやん」
少したしなめるようにそう言うと、希は感情の昂ぶりを抑えるように口角を上げてそう言った。
このやり取りをしている中で、会話に置いてけぼりな6人がいるとはつゆも思わずに。
* * *
私たち9人は、私立音ノ木坂学院高校に通っている。
学年も違う私たちが、どうして一緒にいるのか。
それはひとえに『私たちがスクールアイドルμ’sを結成しているから』だ。
スクールアイドルを結成したのは、今から約2か月前。
そのきっかけは、学校の廃校を阻止するため。
私たちはその目標を達成するため、日々部活動に励んできた。
そんなある日のこと。
私たちμ’sの面々は理事長に呼ばれ、とある話を聞かされた。
「Lucent Girls Baseball Tournament!?!?」
「ルーセン...何?」
「ルーセント・ガールズ・ベースボール・トーナメントです。
直訳すると、”きらめく少女たちの野球大会”...といったところでしょうか」
「ええ、そうね。ちなみに略して、”LGBT”よ」
英語を聞き取れず置いてけぼりになる数人の為に説明したのは、海未。
続けて補足説明する南理事長。なんだかノリノリなのは気のせいだろうか。
「”LGBT”ってそれ、なんか聞いたことあるような...?」
「(…なんか、色々と物議をかもしそうな略称ね)」
この場にいるほとんどの人間はそう思ったに違いない。
「それで、どうして私たちがその大会に?」
「9人だから」
「はい?」
あまりにもテキトーに聞こえた返答に耳を疑う。
「…貴方達が9人のチームを組んで約2か月。
確かに依然と比べて距離は近くなっているわ。でもね、まだまだ足りないの」
「はあ、なるほど...」
「そこで重要なのが、スポーツよ!」
まるで決め台詞でも言っているかのような顔をする南理事長に困惑する、9人の女子高生。
「スポーツはいいものよ...ともに流す汗や涙は、人を成長させてくれる。
そして、周りの人達の大切さに気付いた時、貴方達は更に素晴らしい”チーム”になる筈よ」
アツく語る南理事長に困惑する、9人の女子高生。うち一人は、髪を弄り始めている。
「えと、理由は分かりました...でも野球なんて...」
「そんな甘っちょろい考えは捨てなさい!!」
突然語気を荒める南理事長。9人が全員ビクッとして肩を震わせる。
「いい?無理難題に挑戦してこそ、スポーツに取り組むということなの。
野球なんて?甘いわ!甘い!外国で私が食べたチーズケーキよりも圧倒的に、あ・ま・い・わ!」
「(何言っているんだろうこの人は...
あとその例えだと私たちには、どのくらいの甘さなのか分からないのだけど...)」
脳内でツッコミ、話は真面目に聴こうとした私であったが。
「…と、いうことで。じゃあ、いってらっしゃい」
「はひ?」「ふっ!?」「へ?」「ほひょ?」
まさかのハ行制覇。奇跡が起きた。
これはもはや、チームとして完全形体に近いのではないだろうかと、私はその時思った。
「黴菌マンじゃあるまいし、そんな変なこと言ってないで。ほら、早く」
平然と(?)受け流し、私たちを急かす南理事長。当たり前ながら脳内処理は追いつかない。
そのまま言われるがままに、南理事長が呼んだという小ぶりのバスに9人が乗せられる。
「あの、授業は...?」
「大丈夫よ。明日からは休校にして、全校生徒で応援に行くから」
全然大丈夫じゃないと思う。
「詳しい試合日程はその大会参加チーム名簿に載ってるから。
あと、私も少し遅れると思うけどそちらで合流するわ。それじゃあ、頑張って頂戴ね」
「いや、ちょ、あの」
何も言い返す隙を与えず。
南理事長は去り、バスも発車した。
「………」
先程まで騒がしかった私たちに沈黙が訪れる。
当たり前だ。
誰一人として、今のこの状況に理解、納得できている者はいないだろうと思う。
ただ、一つ気付いた。
南理事長が言っていた『周りの人達の大切さ』という言葉。
今ほど、胸に沁みることはないだろう。
「ちょっとぉ!?いったいどうなってるワケよ、これ!?」
「私は知らないわよ!」
「こらこら、喧嘩腰はアカンで」
「うん...おやすみ...」
「穂乃果!?この状況で寝るんですか...」
「あは...さすがにそれは、凄いというか...」
「…野球、か」
「凛ちゃん...?」
南理事長、なんだかありがとうございます。
周りに友達がいる、思いを共有できる仲間がいる。
それが、こんなに心強いとは。
今回の一件で、本当にチームワークは深まるかもしれません。
ですが...
「説明、もっとちゃんとしてぇぇぇ!!!」
「ああ、絵里ちが壊れた...」
「ちょっと~?さすがに騒がしいんですが...」
「すみませんでした!!!!!!!!!」
それから、現在。
勢いを取り戻した三年生3人と、未だ置いてけぼり気分の一、二年性6人。
試合は明日からで、今日はこれからグラウンドで練習という事なので、南理事長を待つことに。
すると見計らったかのように、駐車場に現れる車が一台。
少し豪快さを残しつつも丁寧な駐車に見惚れていると、運転席から降りてくるのは南理事長。
「よし、日程も確認しているみたいね。
それで、これから練習なわけだけど...
ここで、私が連れてきた助っ人3人組を紹介するわね」
その言葉に、9人は震えた。
3人組、と言えば。
考えを巡らせる私たちの前に、後部座席から降りてきたその3人の顔を見て、私たちは我が目を疑った。
そこには、なんと――。
なんと――。
…誰なんでしょうか、すっごく気になりますね!(無理やり)
さて。
今日から凛ちゃんの日までどう進んでいくか、ですが。
私の予定では、間に二、三話ほど挟むつもりでいます、が、本当にそうなるかどうかは保証しかねます。
とにかく今は、11/1にこの短編を完結するという心持ちです。
その辺りをご了承いただいて、これからも読んでいただければ大変嬉しいです。
では、長々と失礼しました。後書きもこのあたりで締めさせてもらいます。
ここまで目を通していただき、ありがとうございました!