放送局のHPの1ページに、あたしの番組の内容が付け加えられた。
内容はふつおた、そしてあたしの巡ったパワースポットや風水効果の紹介、そしてあたしがリスナーの運勢を占うミニ占いコーナー。
募集は早速開始され、……た物の、新人アイドルの新番組。
お便り…メールは中々来なかった。
「まあ、まだ時間はありますから」
そう構成作家さんは励ましてくれるものの、やっぱり焦りがあった。
元々自信が無い方だからか、やっぱり自分がラジオを持つなんて早いんじゃないか、とすら思ってしまった。
そんな不安が拭えないまま、数日が過ぎた時。
番組宛てに、メールが届いたと言う知らせがあった。
あたしは嬉しくて、早速そのメールの内容を確認しに行った。
ただ、そこには少し困った顔をした構成作家さんが居た。
「どうしたんですか?」
「いや、メール、きたはきたんですけど…ちょっと、朋ちゃんに見せるのはどうなんだろう、と思っちゃいまして」
「勿論、中傷の類等ではないんですが」
「けれど…いや、見てもらったほうが、早いですね」
そう言われて、メールを見せてもらった。
メールは、受験生の女の子からの物だった。
そこには、自分にはずっと夢に見ている高校がある。だけど、今の学力で行けるのか、少し不安な所がある。
お守りを買ったり、色々験担ぎもしていたらしい。
しかし不安は拭えず、良く当たると言う占い師に自分の将来を占ってもらった所、その高校は諦めた方が良い、と言われてしまったらしい。
私はどっちを信じれば良いのか、もう分からなくなってしまった。
夢か、その占いか、どっちを信じれば良いのか。
そんな内容…そして、最後にはくしゃくしゃの、涙で濡れた文字で、たすけて…と書かれていた。
「……」
「朋ちゃんには、少し辛いかもしれないですね」
「その子の夢を肯定することは、占いを否定してしまうことですから」
「だけど、占いを肯定してしまったら、その子の夢を否定してしまう」
「占いには、人を幸せにする力がある、そう、朋ちゃんは言ってましたね」
「…はい」
「……これに、答えられますか?」
「…今すぐじゃなくて良い。これを取り上げて良いか取り上げてはいけないか、…期日までに決まったら言ってくれませんか」
「……期日は、明日の夕方、なんですが…。もし取り上げられないのだったら、こっちで内容は何とかします」
そう言って、構成作家さんはメールを私にくれて、一人で考える時間が必要だろう、と私を事務所に返してくれた。
私は事務所のソファに寝転んで、メールのことを考えていた。
夢を信じさせても、その夢が叶うかどうか分からない。
それどころか、叶わずに傷ついてしまうかもしれない。
占いを信じさせたら、その夢を叶うチャンスすら得られない。
…占いには、人を幸せにする力がある。
頭の中で、考えがぐるぐるしていた。
物心ついた頃から、占いは好きだった。
そもそも、何で占いを好きになったのか。
切欠は、些細なことだったと思う。
テレビで見た、星占いのコーナー。
そこであたしは、自分の分の運勢だけじゃなくて、家族の運勢も調べていた。
……家族に、褒められるのが嬉しくて。
朋のお蔭で、良いことがあったよって言われると、嬉しかったのを覚えている。
いつしか、色々な占いがあるのを知って、占い方も覚える様になって。
家族だけじゃなくて、友達の運勢なんかも調べる様になって。
家族だけじゃない、友達にも喜んでもらえて。
それが嬉しかった。
……いつからだろう、占いが、そうじゃなくなってしまったのは。
あたしの幸せを作ってくれる物じゃなくなって、絶対の物になってしまったのは。
色々なことを頭の中で考えながら過ごしていると、プロデューサーがよう、と声をかけてきた。
プロデューサーは別件で、あたしと別れていたのだ。
「何だ、いつもの元気はどうした」
「いつでも元気な訳ないでしょ…」
ゆっくり起き上がって、プロデューサーの方に向き直る。
「……何か、あったのか」
タバコを吹かして、そう聞いてくる。
「…だから嫌いなんだってば、タバコ」
あたしは構成作家さんと、メールの件を話した。
「へえ。メール来たのかよ、良かったじゃねえか」
「良かったは良かったけど…どう答えてあげれば良いのよ」
「あの子、凄く苦しんでるみたいだし…」
「あの子のこと、と分からないことを考えるからこんがらがるんだろ」
「お前はどうしたいんだよ」
「え?」
「お前ならどうすんだよ、そんな時」
「あたし?あたしだったら…」
「多分、占い通りにしちゃう、かな」
いつからだろう、あたしが占いの結果を盲信してしまうようになったのは。
切欠は、良く覚えていない。
昔から運が悪い子だと自覚していたし、周りからも言われていた。
でも、占いを好きになったのは、それを信じ込んで、塞ぎ込んでしまう為じゃない。
占いは、自分を信じる為の大切な物。皆と幸せになる為の物。
それを教えてくれた、気付かせてくれた、仲間達と、…眼の前の人。
「……今迄の、あたしだったら」
「お前はあの子にはなれない。だったら、自分だったらどうするかって、言う他無いんじゃねえのか」
「どうあがいても、あの子は傷つく。でも、あの子はお前に助けを求めてきてんだ。お前の言葉が、必要なんだ」
「逃げるなんて、出来ねえだろ」
「……うん」
「やっぱりあたしには、占いには人を幸せに出来る力、あるって、信じてる。そして、あの子の未来も信じてる」
「そう、伝えるよ。矛盾してるかもしれないけど、それが、あたしの答え」
「うまく言えないかもしれないけど、自分の言葉で伝えてきてくれたあの子に、自分の言葉で向き合うわ」
プロデューサーは、おう、とだけ言ってくれた。