そして、収録当日。
結局来てくれたお便りは、その一通だけだった。
むしろ、その方が良かったのかもしれない。
そのお便りと、ちゃんと向き合う機会が、出来たのだから。
収録スタジオに入り、ふう、と息を吸って、吐いてを繰り返す。
眼の前にはマイク、そして進行用の原稿、そして今回読むお便り。
スタジオの周りでは構成作家さん、そしてプロデューサーが見守っている。
「藤居朋さん、スタンバイオーケーです!」
緊張が走る中、そのラジオは始まった。
「こんばんは、藤居朋のフォーチュン・ラジオ。始まりました、パーソナリティは私藤居朋です」
原稿をただただ読んでいるだけの棒読みに近い。
「えっと…初放送ってことで自己紹介をします。名前は藤居朋、身長は…」
言わなくていい体重、スリーサイズまで言ってしまった。
「え、えーっと、あたし、占いが好きなんです。皆も知ってますよね?占い!占いには、人を幸せにする力があるって信じてて」
「その良さを伝える番組ができれば良いなって思って、この番組をはじめました…」
緊張で自分でも何を言っているのか良く分かっていない。
「出身は滋賀、滋賀にはですね…」
これはマズいと思ったのか、スタジオの周りから指示が入る。コーナーを進めろ、と。
「えあ、すみません、コーナーに入りますね。…今回、突然の告知にも関わらず、メールが来てくれたんです。ありがとうございます」
「ラジオネーム、アカマルさんからのお便りです」
以前読んだ内容を再度読み始める。
取り敢えず、散々読み返した内容だったので内容自体は落ち着いて読めた。
問題は、それにどう応えるか、だ。
あたしは深呼吸して、そのお便りをまじまじと見つめてから、もう一度収録スタジオをゆっくりと見回す。
そして意を決して、答え始めるのだった。
「アカマルさん、お便り、ありがとうございます」
「アカマルさんの苦しみ、あたしには分からない程、苦しんでいるんだと思います」
「何を信じて良いのか分からなくて、何もかもが信じられなくなって…助けを求めてきたんだと思います」
「……アカマルさんのことは、あたしは分かりません、だから…あたしに置き換えて、考えてみたんです」
「…そうしたら、やっぱりあたしは、自分のやりたいことを、やるべきだと、思ったんです」
「占いを否定しているじゃないかって、思われるかもしれません。でも、占いは、自分の人生を幸せにする為の物なんです」
「貴方の人生を否定するものじゃないんです」
「あたしも前だったら、占いの通りにしていたかもしれません」
「でも、あたしは変わったんです。運命は、自分で切り開くものだって、教わったんです」
「もし、貴方が自分を信じられないなら。貴方を信じる、あたしを信じて欲しいの」
「貴方は、自分の意志で道を選んで良い。自分の思いに素直に、それが一番、自分が幸せになれる方法だと、信じて欲しいの」
「貴方は、幸せになれるんです、自分の運命を、切り開こうと戦う限り、貴方はその権利があるんです」
「幸運は、キラキラ輝いている人に寄ってくる物なんです。だから、自分を信じて、輝いてください」
ゆっくりと頷いて、言葉を終えた。
回答を終えると、スタジオの外から拍手が聞こえた。
それが少し、照れくさかった。
数日後、再びメールが届いた。
それは、先日回答したアカマルさんからの物だった。
『朋ちゃん、こんばんは。ラジオ、聞きました』
『占いは自分の人生を幸せにするもの、そして自分の意志で道を選んで良い、色々な言葉が胸に響きました』
『頑張って、今の夢を追いかけたいと思います、後悔はしたくないから』
『ありがとう、これからもラジオ、聞いていきたいです』
少しだけ、眼に涙が浮かんだ。
それをプロデューサーに誂われて、ムキになって追いかけた。