その刀剣は誰が為   作:白亜霧雨

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 私が書いている他シリーズの『無表情のこころさんがつきまとってくるんだが!?』もよければ読んでみて下さい!


第三刀「人里」

【6】

「おぉ……」

 目の前には古風な感じの家が立ち並び、道行く人も洋服を着ている者はおらず着物を着ている。

 現在俺は人里に来ているのだ。

「おっといけない。買い物を頼まれていたんだったな……」

 俺は着物ではないので、ズボンのポケットの中からメモ用紙を取り出した。

 もちろん、妖花が書いたものだ。

「ん〜と、醤油と味噌と塩と自分用の服と、魚か………あれ? 幻想郷には海がないって言ってなかったっけ?」

 まあいいか。

 ここにメモしてるってことはあるんだろ。

「しっかし……どこにあるんだぁ〜?」

 霊山妖花の所に居候してからはや翌日。

 俺は妖花の代わりのおつかいを頼まれていた。

 

【7】

「ヘクチッ」

 可愛らしいくしゃみが聞こえてきたのは昨日の夜のことだった。

「おい。寒いのか?」

「うるさいわね。大丈夫よ。私は平気」

「平気って……」

 逃げるのに必死で考えられなかったが、妖花は風呂上がりに冷え込む夜の山をタオル一枚巻いた身で走っていたのだ。

 湯冷めしてしまうのは当然か、と英斗は思った。

 よく見てみると、顔は毅然と振舞っているが、身体は少し震えていた。

「………。」

「ッ! なによ。恩でも着せるつもり? 私はなにも頼んでいないんだけど?」

「うるせぇな。俺が着せたのは上着だよ。無理すんな、寒いんだろ? 風邪引くぞ」

 妖花の身体より一回り以上は大きい上着なので合ってはいないが、多少はマシになるのではないだろうか。

「なんなのよ……あんた」

「あんたじゃなくて英斗だ」

「………。」

 しばらくして家に着いた英斗と妖花は、疲れからか、布団もしかずに眠りに着いてしまった。

 妖花はちゃんと寝巻きに着替えて暖かい毛布をかけて寝たが、それも後の祭りで、結局熱を出してしまったのだ。

 

【8】

「おいお前」

「ん? 俺……?」

 昨日の出来事を思い返していると、後ろから声がした。

 その声は、英斗に敵意を持っているようだ。

 まるで、縄張りに入ってきた獣のような。

 後ろを振り向くと、赤いモンペを着た髪の長い白髪の女性がいた。

「……人里に住んでいる人間は少ないんだ。その分、里内での問題は直ぐに広まる。お前のような奴の話を俺が耳にするくらいにはな」

「ちょっと待て! 誤解だ! 俺は断じて怪しい者じゃない!」

「ほう……。人里では見ない身なりをしていて、昨日まではいなかった人間が、一人でブツブツ独り言。……これのどこが怪しくないってんだ? あ?」

 この人本当に女性だよな!? めっちゃガン飛ばしてくんだけど!?

「こーらっ、新人いびりはその辺にしなさい。妹紅?」

「慧音じゃん。なんだよ、お前はこいつの味方するのか? いくら慧音でも容赦しねーぞ?」

 いつのまにいたのだろうか?

 そこには青のメッシュがかかった銀髪の女性がいた。

 そこの赤モンペとは違い穏やかな人らしい。

「なんでそんなに敵対心を抱く……。って、ああそうか、妹紅は外来人に会うのはこれが初めてだからか」

「あ? 外来人? …………こいつ外来人なのか!?」

「……あの、すみません。外来人って何ですか?」

「ちげーじゃねえーか慧音!!」

「いや待て妹紅。君は外から来たのだろう?」

「あっそういうことか。はいそうです。外の世界から来ました。えーっと……」

 俺がなんて呼べばいいのか悩んでいると。

「私は上白沢慧音だ。みんなからは慧音先生と呼ばれている」

「よろしく、慧音さん」

「君は先生と呼んでくれないんだな」

「あはは……」

「まあいい。そしてこっちの女……男性は藤原妹紅。好きに呼んでもらって構わないよ」

 ………。

 慧音さんみたいにさん付けでもいいんだけどな。

 俺の予想が正しければ。

 こいつは。

「よろしく赤モンペ!」

 俺は満面の笑みでそう言った。

 慧音さんの時よりも声を張り上げたので、近くを歩いていた通行人にも聞こえてしまったようだ。

「はあぁっ!? なんで慧音は慧音さんで俺は赤モンペなんだよ! おい慧音! お前からもなんか言ってやれ!」

「赤モンペ………フフッ」

「テメェ慧音! 笑ってんじゃねぇ!」

 こいつやっぱり。

「お前はいじられキャラだったんだな。妹紅」

 俺は妹紅の肩に手を置き囁いた。

 こいつは呼び捨てで充分だ。




〜紹介〜
 幻想入り・・・忘れられた者が集まる幻想郷に行くには、主に三つの手段がある。
 一つ、現実に生きる人たち全てに忘れられること。しかし、この方法では家族からは忘れられることはほとんどないため難しい。
 二つ、幻想郷の管理人、八雲紫に気に入られること。これはほとんど不可能と言ってもいい。例えば、同じ種類で大きさもあまり変わらないカブト虫がいるとしよう。その中で他と区別がつけられるのは、足が一本ないとか、白い目をしている、といった、特徴のある者だろう。そして、八雲紫が人を選ぶにあたっての条件は能力を持っているか否か、だ。少なくとも、ただの一般人には気に入られることはまずないだろう。
 三つ、結界が緩くなったところに偶然入り込む。幻想郷を取り巻く博麗大結界も老化する。結界の力が弱まる場所もできてしまうということだ。しかし、これは運の要素が高い。そもそも結界なんて目視できるような代物ではない物の老化をどうやって判断するのか。答えはできない。
 結局のところ、不平不満を持ちながら現実に堅実に生きるしかないのだろう。
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