獣を狩るもの    作:アルタイル白野威

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妖怪勲章おじさんさん、マジカル紙袋さん、ホワイニキさん、( ・_・)フさん、黒猫の桐さん、鴉神さん、骨蟲さん、藤堂伯約さん、黒鷹商業組合さん、評価ありがとうございます。


最後等へん無理矢理切ったので違和感あるかもしれません。


2話

ゴブリン共の居着いた所は森人(エルフ)と呼ばれる種族が遥かな昔に築いた砦だった。

砦は木製であり、築かれた当時は火除の結界とやらが張られていたらしいが、とうの昔に消え失せたとのこと。

故に火攻めする。火矢を放ち砦を燃やす。

遠くから狙う為、銃は届かない。こんな時こそシモンの武器が役に立つ。

シモンの弓剣、銃器を忌み嫌った彼の為に教会の工房が誂えた特注品。

これでゴブリンスレイヤーの援護をする。

遠距離用の武器を持ったゴブリンを狙い撃つ。

 

「三」

 

隣でゴブリンスレイヤーが討伐数を数える。

ゴブリンスレイヤー目掛け飛んできた石ころを撃ち落とす。

そのまま投石紐を持ったゴブリンを射ぬく。

 

火矢によって炎が砦全体に行き渡り、運良く炎から逃れたゴブリンが入口にたどり着く。

仲間を押し退け我先にと逃げようとする。

そして私達への怒りを滾らせ、入口に佇む女神官に飛びかかり..

「《いと慈悲深き地母神よ、か弱き我らを、どうか大地の御力お守りください》...!」

無情にも聖壁(プロテクション)に阻まれる。

閉じ込められた事に気付いたゴブリン共は恐慌状態に陥り、煙と炎の中へと消えていった。

 

...奇跡というものは、上位者に祈りを捧げる事で発動するらしい。

上位者共に祈りを捧げたところで、何も得られぬだろうが....この神官の信仰する上位者は秘技を授けるらしい。

そのような上位者がヤーナムにもあって欲しかったものだ。

 

「お前が新たな奇跡を授かったと聞いたのでな」

 

隙間から逃れようとするゴブリンの頭に矢を放つ。

 

「...聖壁(プロテクション)の奇跡を、こんな風に使うなんて...」

 

後ろで話している二人を尻目に、周囲を警戒する。

奇跡について話しているらしいが、道具などどう使おうが勝手だろう。

 

警戒を解きシモンの弓剣を剣に戻す、と同時にポツポツと雨が振りだす。

 

「貴公等、どうする。裏手、脱出口はないらしいが生き残りがいないとも限らん。探索するか?」

 

私の言葉にゴブリンスレイヤーはああと返事をし、空を見上げた。

女神官は両手を組み、跪いて祈った。

 

 

火が消えたところで焼け落ちた砦に入る。

結局、冒険者もゴブリンも生き残りは居なかった。

 

 

 

 

~~~

 

 

ここ最近はゴブリンスレイヤーと女神官と組んでいる。

ゴブリンスレイヤーと、私の目的が一致しているからだ。

私はゴブリンという獣を狩る。ゴブリンスレイヤーはゴブリンを殺す。ちょうど良いのだ。

アルフレートと協力していた頃を思い出す。

 

ゴブリン退治を終え、ギルドに戻る。

ギルドに入れば視線が集まるが、それもすぐ霧散する。

しかし今回は三つほど、視線が消えなかった。

受付をみれば三人、ギルドでは見なかった冒険者がいる。

耳の長い女、背の低い髭の男、リザードマン。

耳長は森人(エルフ)だろう。

あの木製の砦を築いた種族だ。

背の低い髭は知らん。リザードマン、居るとは聞いていたが。姿形は獣に近いが...二人と一緒なのを見れば危険性は無いことがわかった。

 

だが爬虫類、とりわけ蛇は嫌いだ。禁域の森は何度迷い蛇の餌になったことか。三人といえばヤーナムの影だ。

トニトルスを持ったヤーナムの影の火炎弾を何度背中に食らった事か。

 

気が付けばゴブリンスレイヤーはずかずかと受付に進んでおり。

女神官がこちらをチラチラみていた。

小走りで合流し、ゴブリンスレイヤーの後ろに付く。

 

「無事に終わった」

 

「...はい、何とか、無事に」

 

受付嬢と二人が話をしている。

受付嬢が私をあまり好いていないことはゴブリンスレイヤーと組んで数日で分かった。

受付嬢と二人の話を聞きつつ、暇潰しに何かないかと探っていると、オルゴールが見つかった。

ガスコインの娘が持っていた物だ。しかし此処で鳴らすのは迷惑だろう。

そう思い仕舞おうとすれば。

 

「何ですか?それ」

 

受付の近くにいた全員が此方を見ており、女神官が尋ねてきた。

 

「..オルゴールだ」

 

「...オルゴールって?」

 

横の森人が興味深そうにオルゴールを眺めながら言った。

この悪夢にはオルゴールが無いのか。

 

「...音楽が込められた小さな箱だ。聞いてみるか?」

 

そう言ってみればゴブリンスレイヤー以外が目を輝かせた。

オルゴールを鳴らすとヤーナムの子守唄が流れる。

音楽が鳴っている事に気付いたのか、ギルドにいた全員が此方を見ている。

子守唄が一周したためオルゴールをしまう。

 

「何て言えばいいんでしょうか...」

 

「それより聞きたい事がある。この三人はなんだ?」

 

女神官の言葉を遮り受付嬢に尋ねる。

チラリと女神官を見れば頬を膨らませ此方を睨んでいた。

言葉を遮られた事がそんなにも不満なのだろうか。

 

「あっその方達はですね。ゴブリンスレイヤーさんのお客さんです」

 

ゴブリンスレイヤーの客か。十中八九ゴブリン関係だろう。

 

 

「...ゴブリンか?」

 

「違うわよ」

 

違うのか。予想が外れたな。

 

森人は疑わしそうゴブリンスレイヤーを見ている。

 

「あなたが、オルクボルグ?そうは見えないけれど...」

 

「当然だ。俺はそう呼ばれた事は無い」

 

その言葉に森人はムッとし、背低髭は笑いを噛み殺し、リザードマンは慣れているのか奇妙な手つきで合掌すると、緩やかな動作でゴブリンスレイヤーへ頭を垂れた。

「拙僧らは小鬼殺し殿に用事があるのだ。時間をもらえるかな」

 

「構わん」

 

「でしたら二階に応接室があるので、よろしければ..」

 

ゴブリンスレイヤーが即答し、受付嬢が声をかけると、リザードマンはありがたいと合掌して応じた。

 

「貴公、貴公。私達はどうする?共に行くか?それとも貴公だけか?」

 

「そ、そうです。同行した方が..良いですよね?」

 

私達の言葉を聞いて、ゴブリンスレイヤーは私達を上から下まで眺めると。

 

「休んでいろ」

 

ぶっきらぼうに言い残すと、ずかずかと無造作に階段を登っていった。

三人がその後を追って行く。

さて。

 

「言いつけの通り、休んで居ようじゃないか」

 

「あっ、はい!」

 

 

女神官に言葉をかけ、ロビーの壁際の椅子に座る。

獣狩りの短銃を取り出し、手入れする。

布で拭き、照明の光に翳すと嵌め込まれた血晶石がキラリと光った。

 

「...その光った石は、何ですか?」

 

「ふむ、まぁ、これの威力を上げる為のものだ。一つやろう」

 

使者に売るつもりだったそこそこの血晶石を渡す。

勿論呪われてはいない。そんなものを聖職者に渡せるものか。

 

「売るなり削るなり好きにするといい。錫杖に付けるのもいいかもな」

 

そう言い手入れを再開する。獣狩りの短銃を仕舞い、エヴェリンを取り出す。

思えばこの銃にも苦労させられた物だ。カインの装束を着た奴らが多く使っていた。

ああ、貴族のドレスを着た男もいたな。

時折侵入してくる変態共は何なのだろうか。

そういった類いに限って強者なのだから尚更困る。

 

 

粗方手入れし終わってしまった。

ゴブリンスレイヤーはまだ降りてこない。

何もやることがない。ああ、暇だ。ヤーナムでは暇なぞなかったというのに。

女神官を見れば眠いのか、舟を漕いでいる。

そして女神官を見ている二人組。首元の札を見れば白磁。

私達と同じだ。声をかけるか迷っているのだろうか。

だが私のこともチラチラ見ている。まるで怯える様に。

ふむ。私の事が怖いのだろうか。

....そんなに怖いか?血に濡れている訳でもなし。

ヤーナムでは怯えられた事はほぼ無かったがなぁ。

私が見ている事に気付いたのか、その場を立ち去った。

 

....たまには装備を変えてみるか。

 

 

 

 

腕部と脚部をカインに替えた。カインの血族に連なっていた時にしか着ていなかったが、たまには良いものだ。

手甲を外して磨いていると、ゴブリンスレイヤーが二階から降りてきた。

受付にそのまま向かうと報酬を受け取っていた。

依頼を請けたのだろう。

ゴブリンスレイヤーに近づき尋ねる。

 

「ゴブリンか?」

 

「ああ」

 

「そうか。場所は?規模は?」

 

「森人の土地だ。ゴブリンロードかチャンピオンがいるだろう」

 

かなり大規模のようだ。女神官を起こしゴブリンと伝える。

それだけで察した女神官はゴブリンスレイヤーに駆け寄っていく。

獣狩りの始まりだ。

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

あの後三人がパーティーに加わり、計六人パーティーと成った。髭は鉱人(ドワーフ)だそうだ。森人は妖精弓手と呼べと言われた。リザードマンも蜥蜴僧侶と呼ぶことになった。

森人の土地は遠く、三日が過ぎた。

今も夜であり、円陣を組み中央に篝火を焚いた。

 

「そう言えば、みんな、どうして冒険者になったの?」

 

妖精弓手が尋ねる。

 

「そりゃあ、旨いもん喰う為に決まっておろうが。耳長はどうだ」

 

「だと思った。...私は外の世界に憧れて、ってとこね」

 

「拙僧は、異端を殺して位階を高め、竜となるためだ」

 

「えっ」

 

様々な理由が在るものだ。

ゴブリンスレイヤーが答えようとするが妖精弓手に遮られる。

視線が私に集まる。答えねばなるまい。

 

「獣を狩り、上位者を狩り、悪夢を終わらせる為だ」

 

私がそう言えば、妖精弓手と女神官が首を傾げ、鉱人が片眉を下げ、

蜥蜴僧侶が奇妙な手つきで合掌する。

 

「獣は獣だ、人を殺し喰らい辱しめ、貶める。それら全てを狩り尽くすのだ」

 

「上位者共は人を操り壊し、嗤う連中だ。神と崇められていもしたな」

 

女神官が顔をひきつらせる。

 

「か、神殺しをしようとしているんですか...!?」

 

「神と崇められるだけの別物だ。神ではない」

 

女神官の言葉を否定する。

 

「.....夕食にしよう」

 

空気を変えるため、夕食の準備に取りかかる。

豚の肉を串に荒々しく突き刺し、火で焼く。

 

「では拙僧も」

 

蜥蜴僧侶が干し肉に香辛料をまぶし焼き上げる。

女神官も乾燥豆を使いスープを作り始めた。

 

「おお!いい匂いだの」

 

鉱人が豚の肉と干し肉の匂いを嗅ぎながら言う。

 

「好きに持っていけ」

 

革袋から新たな肉と匂い立つ血の酒を取り出し言う。

 

「そうか!では遠慮なく」

 

「これだから鉱人はやなのよね。お肉ばっかりで、意地汚いったら」

 

「野菜しか喰えん兎もどきにゃ、肉の美味さはわからんよ!」

 

右手に豚、左手に干し肉を持った鉱人と、頬杖をついた妖精弓手の喧嘩を見ながら匂い立つ血の酒を呷る。

不味い、ヤーナム人は血を嗜むと言うが良く飲めたものだ。

やはり獣を引き付ける道具として使うのがいいな。

 

ちびちび飲んでいると何時の間にやら酒を取り出した鉱人に目をつけられた。

 

「おい狩人の、その手に持っとるもんは何じゃ?酒か?ならばわしにも寄越せぃ!」

 

「...止めておけ、これは只の酒ではない。酒とすら呼べない物だ」

 

「ほほう?」

 

「....便宜上酒と呼ばれているが、アルコールは入っていないからな」

 

「何じゃつまらんの。ほれ!かみきり丸。お前さんも飲めや!」

 

鉱人が差し出した酒をがぶりとゴブリンスレイヤーは呷った。

黙々と食事を進め、作業に没頭するゴブリンスレイヤーを妖精弓手は面白く無さそうに眺め、不満気に息を漏らす。

 

「...なんだ?」

 

「......なんで、たべてるときも、兜、脱がないわけ?」

 

「不意討ちで頭を殴られれば、意識が飛ぶからな」

 

「たべてばっかりないで、あなたも何か出しなさいよ」

 

完全に酔っている。いつの間に飲んだ。

酔っぱらいは面倒だ。ゴブリンスレイヤーに任せるとしよう。

無くなった匂い立つ血の酒の瓶を仕舞い、持ち物を確認する。

輸血液、水銀弾、白い丸薬、火炎瓶、油壺、スローイングナイフ、毒メス、石ころ、骨髄の灰、発火ヤスリ、雷光ヤスリ、エーブリエタースの先触れ、聖歌の鐘、夜空の瞳、小さなトニトルス、古い狩人の遺骨、処刑人の手袋、他に強化素材。

 

獣狩りに必要な物は粗方持っている。

獣血の丸薬は無いが、あれを使って防御力が下がり、死んでしまえばこの関係も終わってしまう為、持ってこなくても良かっただろう。

まぁ死んだら関係が終わりなのはいつものことだ。

 

協力者に間接的に殺されることもあるが。

 

「あなたも、そのマスク外しなさいよ」

 

酔っぱらいが此方に絡んできた。

ゴブリンスレイヤーは何をしているのかと見れば、雑嚢からチーズを取り出していた。

そのチーズを興味深そうに眺める蜥蜴僧侶。

 

「..ゴブリンスレイヤーが食料を出したぞ。見に行ってはどうだ」

 

そう提案し意識を反らす。チーズに気付いた妖精弓手は黒曜石のナイフを取り出し、切り分けた。

鉱人が炙った方が旨いと言い、女神官が細い鉄串を差し出しくるくると炙っていく。

 

「ほれ、できたぞ。上等なチーズだわい」

 

全員にチーズが行き渡り、各々口に運ぶ。

 

「甘露!」

 

蜥蜴僧侶が快哉をあげ、長い尻尾が地面を叩いた。

ふむ。私もチーズは初めて食べるが、良いものだな。

今度買ってみるか。

 

「甘露!甘露!」

 

「生まれて初めて食うチーズが旨いとは、何よりじゃ」

 

鉱人が愉快そうに酒を呷りながら笑った。

各々チーズの感想を述べ、話題がゴブリンスレイヤーの呼び名に変わった。

 

「オルクボルグは、森人の伝説に出てくる刀のこと。オルク...ゴブリンが近づくと青白く輝く、小鬼殺しの名刀よ」

 

「鍛えたのはわしら鉱人じゃがの。わしらの呼び方がかみきり丸じゃ」

 

妖精弓手の自慢に鉱人が茶々を入れる。

そして始まるいつもの喧嘩。ここ最近の定番だ。

 

「さて、私は見張りをするとしよう。貴公等は安心して夢に赴くがいい」

 

言い残し、遠眼鏡で辺りの草原を見渡す。

何も無い。岩すら無い。ヤーナムにこのような草原はなかったな。狩人の夢の花畑が一番近いか?

あるいは星輪草、星輪樹辺りか。

そのどちらも嫌な場所に有ったものだ。

 

ヤーナムの(嫌な)思い出に浸りつつ警戒を続けていれば、いつの間にか朝を迎えていた。

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

朝を迎え、準備を整え進み。ゴブリン共の巣穴を見つけた。

大地に半ば埋もれた白石造りの四角い入口。遺跡だろう。

入口にはゴブリンが二匹、灰色の狼が一匹傍らで座っている。

 

「ゴブリンのくせに番犬まで連れちゃって。生意気よね」

 

「余裕がある群れの証拠だ」

 

妖精弓手が鼻を鳴らしゴブリンスレイヤーが応じる。

 

「そう、それじゃ仕掛けるから」

 

妖精弓手が矢筒から矢を引き抜く。

私達とは違う、金属を用いない矢。

鏃は芽、矢羽は葉だ。彼女がヤーナムに行けば嗤われるに違いない。

シモンがそうだったのだから。

 

妖精弓手が矢を放つ、が。ゴブリン共よりも幾分か右に逸れている。

ダメか、と私がシモンの弓剣に矢を番えた瞬間。

矢が大きく弧を描き、片方のゴブリンの頚椎を吹き飛ばし、もう片方のゴブリンの眼窩に飛び込み貫いた。

目を見開いた狼が飛び起き咆哮をあげようとすれば、間髪いれずに放たれた二射目が狼の喉奥に突き刺さった。

 

私がどう足掻こうと真似できない、驚くしかない軌道であった。

 

「すごいです!」

 

「見事だが...なんですかな、今のは?魔法の類かね?」

 

女神官が目を輝かせ、蜥蜴僧侶が目を大きく開いて問う。

その言葉に妖精弓手はふふんと自慢気に鼻を鳴らし、ゆるく首を横に降った。

 

「充分に熟達した技術は、魔法と見分けが付かないものよ」

 

寿命の長い森人達だからこそ出来る芸当だろう。

少なくとも私には寿命がいくら有ろうが修得はできないだろう。

弓剣を剣に変形させ、回転ノコギリに持ち替える。

腰に下げていたルドウイークの長銃を引き抜く。

 

ゴブリンスレイヤーがゴブリンの死体にナイフを突き立てかき回している。

例のアレだろう。モツ抜きを嬉々として行う狩人から見れば普通だが、そうでない者には見慣れない光景だろう。

事実、妖精弓手が顔を強張らせている。

 

そうして肝を引きずり出したゴブリンスレイヤーは、手拭いで包み、引き絞る。

顔面蒼白になり、逃げ出そうとする妖精弓手を拘束する。

 

「ね、ねぇ、ちょっと、嘘でしょう?か、狩人も手を離して、ね?」

 

助けを求める目を憐れみの目で返し、ゴブリンスレイヤーを促す。

赤黒い布を持ち薄汚れた鎧兜を身に付けた男が顔を隠した男に拘束された涙目の少女に近づく。

端から見れば事案だろう。

だがこれは必要な事なのだ。嗅ぎ付けられては困る。

 

 

 

 

 

 

遺跡の入口に入ると、狭い通路が下に続いていた。

壁面には絵が掘られている。

 

「...ふむ。拙僧が思うに、これは神殿だろうか」

 

「この辺りの平野は、神代の頃に戦争があったそうですから。その時の砦かなにか...。造りとしては人の手による物...のようですが」

 

「兵士は去り、代わりに小鬼が棲まう、か。残酷なものだ」

 

蜥蜴僧侶は重々しく頷き、合掌する。

 

「残酷と言えば...耳長の、大丈夫かの?」

 

森人の伝統的な装束を汚され、妖精弓手は啜り泣いていた。

罪悪感を感じない訳では無いが、見つかる可能性を減らす為だ。恨め。

 

「慣れろ」

 

松明を左手に握り、右手に剣を抜いたゴブリンスレイヤーが淡々と言った。

 

「戻ったら、覚えていなさい。あなた達」

 

「覚えておこう」

 

「ああ」

 

一応返事をしておく。

ランタンと獣狩りの松明の光がいつもより小さい。

古い森人達の結界が張られているようだ。

 

遺跡の道は今まで一本道だった。もっとも、螺旋状に成っているようだが。

下り坂が終わると通路が左右に分かれていた。

 

「待って」

 

分かれ道に入った途端、妖精弓手が鋭く言った。

 

「どうした」

 

「動かないで」

 

短く命じ、腹這いになり床に這いつくばった。

石畳の隙間を指先でなぞり、探っていく。

 

「鳴子か」

 

「多分。真新しいから気付けたけど、うっかりしてると踏んでしまうわね。気をつけて」

 

見れば僅かに浮き上がっている。

聖杯ダンジョンにも似たような物はあった。

鳴子ではなく火矢で殺しに来ていたが。

 

ゴブリンスレイヤーが辺りを見渡し、女神官が何か、と尋ねれば。

 

「トーテムが見当たらん」

 

ゴブリンシャーマンが作るものだ。それがないとは、ゴブリンシャーマンがいないことを意味する。

となればあの真新しい鳴子を只のゴブリンだけで作った事になる。

奇妙だ。

 

「只のゴブリンだけでは仕掛けられん。ここに呼び寄せる手もあるが、やめた方が良さそうだ」

 

「小鬼殺し殿は以前にも大規模な巣を潰したと伺った。その時はどのように?」

 

「燻りだし、個別に潰す。火をかける。河の水を流し込む。手は色々ある。ここでは使えんが」

 

「足跡はわかるか?」

 

「そういうのはわしの出番じゃ」

 

鉱人が前に出て身を屈め、通路をくるくる歩いて回る。

石畳を蹴りつけ、じっと見つめる。

 

「わかったぞい、奴らのねぐらは左側じゃ」

 

自信たっぷりにそう告げた。

 

「そうか、ならばこちらからいくぞ」

 

ゴブリンスレイヤーは右の道に剣を突き出し示す。

右の道の奥からは臭いが漂ってくる。

匂い立つ、ヤーナムの如き臭いだ。

進めば進む程臭気は強くなる。

ゴブリンスレイヤー以外の皆が顔を歪める。

女神官の歯がトラウマなのかかたかたと鳴っている。

 

やがて見えてきた腐りかけの木の扉を蹴り破る。

扉の先はゴブリン共の糞溜めであった。

骨、糞、死骸。がらくたの山。壁は赤黒く染まっている。

その中に薄汚れ、無残な傷痕のある森人が捕らえられいていた。

右半身が葡萄の房を埋め込まれたかのように傷ついている。

生きてはいる。だが憔悴しきっている。

 

「水薬を...!」

 

「いや、これほど弱っていると喉に詰まるやもしれぬ」

 

「傷そのものは命に関わらん。が、危うい。憔悴しきっている。奇跡を」

 

「はい....!」

 

女神官が奇跡を使い森人を治している間、沸々と沸く獣への殺意を修めクズ山を漁る。

まだ形を残した背嚢を堀当てる。中を探れば遺跡の地図だろう葉が見つかった。

それを広げようとし、クズ山から飛び出してきたゴブリンの短剣に腕を刺される。

咄嗟に振り払い、短剣を引き抜きバックステップで距離を取る。

長銃を撃とうとし、指に力が入らない事に気づく。

刺された短剣を見ればベットリと付着する黒い粘液。毒だ。

急いで白い丸薬を取り出すが、落としてしまう。

 

「狩人さん!」

 

女神官の焦った声が聞こえる。

何とも初歩的なミスを犯した物だ。

狩人の命である血が消えていく感覚がする。

ゴブリンスレイヤーが剣をゴブリンに突き立てる姿が見えた。

 

「狩人さん!大丈夫ですか!?今水薬を...!」

 

「...そこに落ちた丸薬をひろえ」

 

「え?はい!わかりました!」

 

女神官に白い丸薬を拾わせ、服用する。

毒は治っただろうが体力は回復しない。

輸血液を取り出し、輸血する。

二本使い、失った血を補充する。

 

「...良かった」

 

女神官がほっと息をつく。妖精弓手や鉱人、蜥蜴僧侶もこちらを心配そうに見ている。

ああ...悪いが...

 

「少し...休ませてもらうぞ...」

 

眠い、狩人だと言うのに、ねむい。

このまま眠れば、狩人の夢に戻るのだろうか...。

 

 

 

 




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