「あいつら俺を置いて逃げやがったな!」
海鳴市海上 雷が鳴り止んでそこまでしないうちに少年の叫び声が響く
その判断はあの場所では正しいものだっただろう
悠の腕の中にはジュエルシードの暴走から出現した謎の少女が抱えられていたのだから
「どうすんだよこの状況…」
悠ならば逃げるのは簡単だ
しかしそれをしない、できない理由がある
人を抱えているので海に落とすわけにも行かないし抱えたまま逃げるわけにも行かない
この少女が不安要素になっているため動けなかったのだ
「悠、一応聞いておくが投降するつもりはあるか?」
「おいおいお前、この状況でそれを言うかクロノ?」
「逃げるならさっさとすればいいがそれが出来ないからここに留まっているんだろう」
「仰る通りで」
クロノは悠と言うより抱えられている少女に目線を向けていた
「その子はどうするつもりなんだ」
「知るかよそっちで保護してよ逃げたいんだから」
早口で捲し立ててはいるが抱えている少女が心配なのか落とさないように抱え直したりしている
「あのー状況についていけないんだけど…」
ただただついていけてないなのはが一言発した
────────────────────
「なんで悠を回収しなかったんだ?」
「あの状況では仕方の無いことよ」
「そりゃああんなことがあればなぁ…」
先程のジュエルシード7つの封印から回収までの様子を見ていた2人組
プレシア・テスタロッサとルーク・テスタロッサの2人だ
先程の雷撃はプレシアが放ったもので回収をしたのもプレシアだ
「で、あいつどうするの?」
さすがにフェイト、アルフ、ルークの3人でアースラに突撃して回収するわけには行かない
「放っておけばいいわ。既に捕まっているでしょうし」
「それもそうだが、まぁなんとかなるだろ。悠だし」
正直悠なら脱走もできなくは無い程度に強い
ましてやあの天才少女 なのはだったか
彼女と戦闘になっても問題なく勝てるはずだ
「随分と信用しているのね」
「まぁな。血の繋がりはなくても俺の息子だからね」
「そう」
「あんたの孫だぜおばあちゃん」
「黙りなさい」
「おお、こわいこわい」
────────────────────
ここは…どこだろう…
たしか私はジュエルシードを発動して…
どうなったんだっけ…
「ん…」
「目は覚めた?」
え…誰…
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「うっさ」
目が覚めたときに目の前に見知らぬ人がいたらそりゃあ叫びますよ
そして外から叫び声を聞いたのかどうかは知らないけど走ってくる音が聞こえた
「どうしたの!?何かあったの!?」
────────────────────
あーもうなんでこうなってんの
現在医務室には
目を覚ました少女になのはが抱きつきその目の前で何故か正座させられている俺
「で、何かいいわけはある?」
「何もしてないのに正座させられていることに文句を言いたい」
「何だこの状況は?」
「それはこっちが聞きたいんだけど。」
────────────────────
正座をやめて改めて事情聴取をするため部屋を移動した俺たちなのだが
あの少女はともかく何故か俺は拘束されていないのが不思議だが
「じゃあ、改めて事情聴取と称して色々聞かせてもらおうか。まず名前は?」
「……」
少女は答えない、顔を下に向けて俯いて何も言わない
「あんた術式はベルカか?」
「! なんでわかったの」
ビンゴだ
「ベルカは魔力の扱い方がミッドとは異なる部分がある。あんた変換資質持ちだろ?」
「確かに炎の変換資質があるよ」
炎か 相性最悪だな
「で、改めて名前聞くけど覚えてないのか答えられないのかどっち?」
「……」
答えない と思ったのだが少女は語った
名前はわかる、でも分からない。と
どういうことか聞くと こうだ
自分は元々記憶喪失で魔法に目覚めたのも偶然
ジュエルシードの事件に巻き込まれてアースラでの捜索に参加
自分の力を押さえつけている原因と自らを分離するためにジュエルシードを暴走させ気がついたら何も無い空間に
歩いていたら記憶が蘇り気を失いこの状況だったそうだ
「………」
誰も、何も言わない
当然だ
この少女の様子から嘘ではないだろう
しかしそんな事実
「いや…まさかそんな…」
1人だけなにかに気付いた人物が居る 悠だ
「どうしたんだ悠さっきから何か言ってるが」
「とんでもないことになっちまったかもしれないぞクロノ」
悠は自分が立てた仮説を説明した
ジュエルシードの爆発は少女がジュエルシードを暴走させこちらに転移してきた時の爆発
そしてお互いに知っていることと知らないことがある
なのはやクロノ、アースラの人物など悠と少女で共通している部分がある
「つまりどういうことなの悠君?」
「つまりだ、この少女はこことは別の次元、いや平行世界から来た。という可能性があるんだ」
なのはは理解しきれないところがあるのか唖然としていたがクロノは深刻そうな顔をしていた
「恐らく名前がわかるが分からないというのは記憶喪失前後に名前があるからだろう?」
「そうだよ」
かなり面倒くさいことになった
もしかするとこの先とんでもないことが起きる可能性だってある
「じゃあまず記憶を取り戻して思い出した名前を教えてくれるか?」
「クレアだよ。クレア・ガーネット」
「クレアね。次に記憶喪失の時の教えて貰える?」
「美雨だよ。美しい雨って書いて美雨って読むの」
海鳴市で拾われでもしたのか?やけに日本人じみた名前だが
「苗字は?」
「月村だよ。フルネームは月村美雨」
────────────────────
「まさか平行世界とかスケールが違いすぎて驚いたよ」
「あのさぁ」
「なに?」
今、ここにいるのは悠とクレアの2人だけ
ベルカの騎士同士ってことで2人にされたのだろう
そこは関係ない
「一応管理局に捕まってる身なんだけど、俺」
「いーじゃん同じベルカ使いとして仲良くしよーよ」
ほんとになのはの周りにいるやつはお人好ししかいないのかね
「私さ、自分が分からないんだ」
「私は月村家の美雨として生きた記憶がある。記憶だけじゃない、あそこで過ごしてた時間は確かに本物だった」
「でも記憶を取り戻してからクレアとして少しだけだけど記憶もあるしなんなら少しそっちに引っ張られてるような気もする」
「どっちが本当の自分なのかわからなくなっちゃったんだ…」
記憶喪失の知り合いは1人もいないので分からないが記憶喪失なりの悩みなのだろう
「だったらここから出ていけばいい」
「どういうこと?」
「一回でいいから難しいこと考えずに一から自分を見つめ直してみればいい」
「自分か少しだけわかってくると思うよ」
「そっか…あ、そうだ!」
「?」
────────────────────
「で、なんでこんなことに…」
「ごめんね~周りはミッド使いしかいなかったからさ」
あの話で何故かこんな状況に置かれるのはなぜなんだろうか
「じゃあこれより悠君対クレアちゃんの模擬戦を始めるよー!」
クレア曰く一回何も考えずに全力で戦ったら何かわかるかもとか言ってたんだが戦闘狂じゃないんだからさあんた…
エイミィが開始前のルールを説明していく
どちらかがダウンするか魔力切れで決着のシンプルなルールだ
条件としては氷華の書使用禁止のみなのでそこまでハンデのような感じはしない
「それじゃあ、試合開始ー!」
「いくよ!悠!」
「おーけやってやるよ」
「イグニス!」
「セリオン」
「「セットアップ!」」
ベルカの騎士同士の開戦の火蓋が今切って落とされた