みなさんは幽霊の存在を信じているだろうか。
俺は信じている、というより信じざるをえない状況に陥ったと言った方がいいかもしれない。
小学五年生の時のことだった。寝ている俺の枕元に突然逞しい体つきをした男が立っていたのだ。
俺は最初、強盗が俺の部屋に入り込んだのだと思い悲鳴を上げ、家族に助けを求めた。両親はすぐに俺の部屋に駆けつけてくれた。
しかしそこで不可解な出来事が俺を襲った。俺の両親たちにその男は見えていなかったのだ。まるで幽霊のように。
誰にも見えていないものを見ている、俺は自分の頭がおかしくなったのかと怖くなった。そしてこの幽霊のようなものに祟り殺されてしまうのではないかと恐怖した。
しかし、予想に反してその男は俺に何も危害を加えなかった。こいつはなんのために俺の前に現れたのだろうか。それを問うても一言も言葉を発さず俺の隣に佇んでいるだけだった。
そんな奇妙な男との共同生活に慣れた、いや慣れてしまっていたある日、事件は起きた。
授業が終わり学校に別れを告げ俺は帰路に付いた。
しかし、新しく買ったゲームを進めるぞ、などと考えながら家に着いた俺を待っていたのは、銃を持った男だった。二度目の正直、本物の強盗と対面してしまった。
今考えてみてもあの強盗がなぜ特別金持ちというわけでもない俺の家を選んだのかはわからない。只のきまぐれだったのかもしれない。しかし不幸にも強盗などというものに遭遇してしまった俺は何もすることができずそこに立ちすくむしかなかった。
そしてその日最大の不幸と最大の幸運が彼を襲う。
強盗の男はドアを開け入って来た俺を一瞥したかと思うと、持っていた銃のセーフティーをゆっくりとはずした。そしてまるでトリガーハッピーの如くいきなり俺に向かって発砲してきた。
その行動はまるで朝、コーヒーを入れるかのようになめらかで、そうすることが自然なことであるかのように思える。数瞬も経たぬうちに俺の身体をその弾丸は突き抜けていくだろう。
いつまでも続くのではないか、そう思っていた人生があまりにも早く幕を閉じてしまう。ところが、ああ、死ぬのか、とどこか他人事のように考えていた俺にその瞬間が訪れることはなかった。
何も音がしない。なぜ?
弾丸は発射された。にも関わらず、いつまでたっても衝撃がやってこない。なぜ?
俺の身体を赤く染め上げるはずだった鉄の弾が空中で静止している。なぜ?
なにもわからない。周りの景色が一変している。パラパラ漫画を途中で止めたような急停止。そこであの男が動き出す。今まで何の反応も示さなかった男が。
彼は急に拳を振り上げ、止まってしまっている弾丸を殴りつける。強盗に打ち返す形で。
その瞬間、まるで世界に色が戻ったかのごとく時が動き出す。俺を殺すはずだった弾丸はまるで巻き戻しのごとくはね返り強盗の肩に命中した。
そしてそこからの記憶はほとんどない。理由はわからないが頭が割れるように痛い。強盗のうめき声を子守唄にまぶたが落ちる。ドアの音、母の悲鳴。薄れゆく意識の中思いつく、この男は俺の守護霊なのだと。俺を守るために出てきてくれたのだ。ありがとう。暗転。
意識を取り戻した後もこの男はそばいる。危機が去ったら消えてしまうのではと思っていたがその考えは杞憂だったようだ。
相変わらず沈黙を貫いていて何を考えているかわからないが、危険があったら助けてくれるのだろう。黄色い鎧みたいなものを着ているしどこか名のある兵士だったのかもしれない。そしてまるで生まれた時から一緒だったかのような親しみを感じた。
このような経験を経た結果、俺は霊の存在を肯定するようになった。
でも、魔法使いなんてものが存在するなんて思わなかったなあ。
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