【ある女性の記憶】
満員電車を耐え抜き、何とかホームに降り立ったわたしを朝の日射しが出迎える。
すっかり疲れきってはいたけれど、内心はとてもワクワクしていた。
なぜかって?
とうとう「あの人」への取材をOKしてもらえたのに嬉しくないわけがないじゃない!
まあ、あんまり楽しみすぎて昨日から若干寝不足なのがつらいけど……
そういえば、「取材はいいけど条件付きで」って言ってたっけ。
まさか……いやいや。
そんなことを考えながら歩いていたら、道に迷った。
初めて来た場所だし、仕方ないといえば仕方ないけど、約束の時間に間に合うかな……
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心優しいリーゼントの男性が道を教えてくれなかったらどうなっていたことやら。
なんとか時間ギリギリに「あの人」のお宅に到着。
表札を確認してから、インターホンを押す。彼はすぐに出てきて、家の内へ案内してくれた。
その時ふと思い出して「条件」について聞いてみたら、なんでも昔話を聞いて欲しいんだとか。こういう場合の昔話って、体験談とかそういう意味なんだろうけど、そもそもそれっておじいちゃんとかがするものなんじゃ……
なんて考えていると、和室で話そう、と言われた。わたし自身、話す場所にこだわりはないから二つ返事をしたわけだけど。
そんなこんなで、和室で向かい合い、わたしは彼の昔話を聞くことになったのだった。
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【ある男性の記憶】
『ジャーニー氏は過去――大地震の――を予言してお――』
ついに壊れたか。
思えば、このラジオも買ってからもう八年になる。なるほど、壊れるのも別に不思議なことではないか。
しかし、今度の旅行に持って行きたかったんだがな。
それはそうと、予言、か。
人は皆「力」に憧れるものだ。ひとえに「力」といっても、予言の他にも透視だとか超能力だとか色々あるが、とにかく、人という生物はそれらを求めて科学を発展させてきたと言っても過言ではないだろう。偏見かもしれないがね。
だが、この「力」、持っているものからするとなかなかに煩いものなのだよ。
私は元来、争いというものが大嫌いな性分でね。口論なども滅多にしないし、それこそ喧嘩などもってのほかだ。
それなのに、あの石――そう。忘れもしない七年前のロンドン旅行で見つけた石だ。あの石に手を触れてからは、ろくなことがなかったな……
とにかく、これから話すのは「あんなこと」、つまり、その石をめぐる私と三人の男達の三ヶ月にわたる奇妙な冒険についてだ。過去のことについてはあまり話さない性質なんだが、こればかりは話さずにはいられなくてね。
それで今日、貴方に来てもらったってわけなんだ。
だから『八時にな――た。ニ――をお伝えし――』
おっと、ラジオをつけっぱなしだったな。
『小説――幸田星一さんの新作が――』
悪いが、消させてもらうよ。つけたままでは話しにくいからね。
さて、始めようか。
ちょうど五年前の今日のことだ……
初投稿です。
至らない点等、多々あると思いますが何卒宜しくお願い致します。
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