Fate/GrandOrder_藤丸と立香   作:部屋ノ 隅

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クリスマスイブに俺は何を書いてるんだろうと思いはします。


第二の夢 相異 その四

 

―カルデア―Dr.ロマンの部屋―

 

「『国語(古文、漢文含む)』……93。『社会・歴史』……90」

 

 何度も。返却された答案用紙に印されている点数を何度も口に出して確認する。見間違う事が無いように、ではない。自分でも信じられないからだ。

 

「『英語』…91。『科学・化学』……83。『数学』……は、88……!? ねぇロマン、これ採点ミスしてない!? 大丈夫!? 特に理科と数学!!」

 

 自分で点数や内容を確認しただけではどうも実感が沸かなくて、立香は半ば震える声で自分の前に座るDr.ロマンに聞いた。彼は彼で満足そうな、それでいてちょっとだけ呆れた表情で、まずは「うん」と単純に頷く。

 

「間違ってないよ。採点後に毎回一回は必ず見直しするんだけど、○が書いてある箇所にミスは無かった。この点数であっている筈だ」

 

「高得点ですね。おめでとうございます、先輩!」

 

 ロマンに頷かれ、マシュからは祝福されて、立香は返却された答案用紙にもう一度目を通す。自分よりずっと頭が良い(筈)のロマンが確認してこの点数なのだから、今更採点ミスなどある訳が無いと理性では分かっているのだが……。

 

 なにせ、全教科80点以上。五教科中三教科が90点越えなどという(彼女にとっては)超好成績を、立香は一度も残した事が無いのだ。学校でテスト前週間が始まった日から家や図書館で必死になって勉強するものの、返ってくる答案用紙に書かれている数字はいつもクラスの平均点ちょうどド真ん中か少し上程度で、悪い時は赤点スレスレの教科(主に理科と数学)があるくらいだった。

 

 それがどうだ。あれだけ苦手だった理科と数学でさえ80点台という輝かしい数字。立香の人生史上間違いなく最高の結果。夢でも見てるんじゃないかと頬を軽く抓ってみるが、痛みを感じるだけで夢から覚めることは無い。

 

 ロマンは立香の奇行を見てため息を一つ吐くと、「何も不思議な事はないだろう」と言って話を切り出す。

 

「そんなに信じられないかい? まぁあれだけ教科書や参考書を見ながらうんうん唸ってたし、『勉強が苦手』だって公言するぐらいだから分からないでもないけどさ」

 

「でも……」

 

「大丈夫です、先輩。Dr.だけではなく、私も先輩の答案用紙を確認させて頂きましたから」

 

「あ、マシュも見たんだったら大丈夫そう」

 

「えちょ、酷い……酷くない? 僕だけじゃなにかウッカリをやらかして採点をミスってるかもって事でしょそれ。これでもカルデアの医療顧問で現司令官代理だよ僕? 自分で言うのもなんだけど、相当頭が良くないといけない役職に就いてるんだけどなぁ……」

 

「申し訳ありませんが、個人の頭の良さとヒューマンエラーの度合いは反比例しないと思いますよDr.」

 

 マシュの無慈悲な言葉にロマンは「えぇ……」と半ば落ち込み気味に呟き、立香は逆にコクコクと首を縦に振った。実際の頭の良さだとか実績だとかロマニ・アーキマン個人の信用だとかは別として、日常的な意味で彼の成すことを無条件で信頼できるかと言われると否だ。

 

 先輩(立香)と一緒に食べようとマシュが取っておいた高価なお菓子を間違えて食べてしまった事など数知れず、戦闘シミュレーションでは敵の強さを大幅に間違えてあわや全滅の危機に瀕し、特異点ではちょっと目を離して周囲の探査を怠った結果未知数の敵に囲まれ、挙げ句の果てにはカルデアのデータベースに登録されているマスターとサーヴァントとの絆を数値化したデータ……通称「絆レベル」を間違って削除してしまう始末。事情を知らなかったあの時はなにか自分が皆の信頼を0にするような失態を犯してしまったのではと本当に慌てたし、マシュとの絆レベルまで0になっているのを見た時は思わず泣きそうになってしまった。

 

 カルデアに来てまだ一年足らずの立香でさえ、これだけの失態を知っているのだ。ロマンとの付き合いが立香よりずっと長いであろうマシュからしてみれば、至極当然の反応である。

 

「『えぇ……』ではありません。この前だって先輩に――」

 

「ご、ごほんごほん! ……兎に角だ。これは君にとってとても良い傾向だと僕は思う」

 

 マシュのお小言が始まる前に露骨な咳払いで話を戻したロマンは、クリップボードに留めておいたカルテを何枚か見比べながら、どこか懐かしそうな表情をして立香の方を見た。

 

「最初の頃は『そ、そんな事よりまずはみんなを強くする為の種火や素材の回収でしょ? 特異点を攻略するにはみんなの力が絶対必要なんだし!!』とかなんとか理由を付けてなるべく避けようとしてたのにね……一応、僕とレオナルドが出した課題は全部期限までに提出してたけど……」

 

「あ、あはは……」

 

「き、気にする事ありませんよ先輩! 色々と慣れない事ばかりで大変だった頃ですし、仰る通りそんな事をしている暇なんて無かったと思います!! それにその分サーヴァントとの皆さんとの交流や、マスターとしての気構えや勉強を必死に頑張ってたじゃないですか!!」

 

 ストレートに自らの醜態を指摘され、気まずくなった立香は冷や汗を掻きながら横に目を逸らした。マシュの必死のフォローが嬉しくも胸に痛い。

 

 特異点攻略を盾にした子供染みた言い訳は勿論だが、「課題は全部やっている」という事実。一見聞こえが良いそれは逆に言えば「課題以外の事はやってないでしょ」という言及に他ならない。

 

 勉強というのは学校などから出された課題だけをこなしていても事足らず、だからこそ学校以外でも塾などで講義を受け、家では予習復習をこなさなければならないのだが……。タダでさえ勉強が苦手な彼女が、人理焼却なんて大事件に巻き込まれてまで積極的に勉強をこなしている訳が無かった。一応、出された課題以外にも自分から学習はしていたものの、それは一日につき三十分から一時間という、来年受験生になる学生とは思えない些細な時間だ。(言っておくが、これはカルデアに来てからの彼女の話である)

 

「でも、いつからだったかな……勉強も結構頑張るようになっただろう? パラケルススやエレナ……頭脳派のサーヴァントにお願いして勉強を見て貰うようになったし、テストもなんて言うか、貪欲に「点を取りに行くぞ!」って気概が感じられるようになったよ。テスト中の姿勢とかだけじゃなくて、答案用紙に書かれた答えからもね。まぁ元々真面目で頑張り屋な君なら、ちょっとやる気を出せばこんなもんだろうと前から思ってたけどさ」

 

 先ほどとは打って変わってストレートに自らの行いを褒められ、立香は顔を若干赤くしながら横に目を逸らした。これで気合が入りすぎた根幹的な動機が学生として当然の事だとか、私の為に課題やテストを作ってくれているロマンやダヴィンチちゃんの気遣いに応えたいだとか、そういう誇れる系統の物ならばもっと堂々と胸を張れただろうが、自分をここまで奮い立たせたのは彼からの『お願い』――もろに即物的な物なのだから、あまり持ち上げられるとやはり気まずくなってしまう。

 

「えへへ……ちょっと気合が入り過ぎちゃってたかなぁ?」

 

 しかして、この前マタ・ハリが夜中にお茶を淹れて来てくれた時もそうだが、やはり誰かに褒められる、認められるというのは、想像以上に嬉しい。それが自分にとって大切な人達だったりすれば尚更だ。自然と口の端が上へと曲がり、目元がニンマリと緩んでゆく。(そんな姿を見て、眼前に居る二人が「可愛いなぁ」と思っていることなど、立香は知るよしも無かった)

 

「はい。特にここ最近の先輩は凄かったと思います。業務の暇を見つけては参考書を読んでいましたし、Dr.から出された課題を見直してテストに備え、夜遅くまで資料室で机に向かっていたじゃないですか。『テスト勉強』『受験勉強』という学生として避けては通れない物がある事は知っていましたが……なるほど、聞いていた以上に厳かで切迫するんだなと感心しました」

 

 マシュがなにか偉大な人物を見るような尊敬の眼差しで見つめてくるが、そんな大した事などでは無い。マシュも言っていた通り学生なら誰しも必ず通る道だし、切迫するのは文字通り今後の自分の人生を左右しかねないからだ。人生で二度は無い青春時代。出来る事なら勉強なんてせずに部活動に集中したり、友達と遊び惚けたり、自由気ままに過ごせたら良いのにと、かつての立香は思っていた。

 

「それが原因で他の事が疎かになったりしてたら僕も少し咎めるかもしれないけど……疎かになるどころか、別の事にまでより一層気合が入っているように見えるしね。満ち足りてる? 充実してる? 君は元から色んな事を笑顔で一生懸命頑張るような子だったけど、最近は特に……マリー王妃風に言うなら「キラキラしてる」かな? そんな顔を見せる事が多くなったってレオナルドも言ってたよ」

 

(そ、そんなに表情に出るタイプだったかなぁ……?)

 

 表情の事はともかく、他人からそういう風に見える原因の方は心当たりがありまくりの立香である。今更ではあるが、現金且つ単純な自分が情けなくなってきた。目的が有るのは良い事だが、もう少しなんとかならなかったのか私。

 

「バイタルもメンタルも好調だし……なにか嬉しいことでもあったりしたのかい? 例えばほら、レイシフト先で美味しいご当地スイーツを見つけたとか!」なんて少しズレた事を聞いてくるロマンに対し、曖昧な返事でお茶を濁そうとした立香だったが、

 

「……Dr.もそう思いますか」

 

「……マシュ?」

 

「……やっぱり、あの噂は本当なんでしょうか」

 

 その前にマシュからロマンの意見に対する賛同の声が上がった。ボソリと呟くように言った彼女は、次いで横目に立香の事をチラチラ見ては視線を外し、チラチラ見ては視線を外しを何度か繰り返す。言い辛い事を言おうとする。もしくは聞き辛い事を聞こうとしているのは傍目に見えて明らかだった。

 

「え? もしかしてマシュも立香ちゃんがみんなに内緒でなにか美味しい物を食べてると思って――」

 

「Dr.。割と真剣な事なので物理的に黙りたくなければ自主的に黙っていてください。そっちではなくて……その、えっとですね先輩」

 

 ……一体何だというのか。少しだけ顔を赤くしながらやはり言い辛そうに身体をモジモジ、口元をモゴモゴと暫くの間動かしていたマシュだったが、やがて意を決したかのように立香の顔を見ると、口を大きく開きちょっとだけ声を張り上げて、

 

「せ、先輩に男……彼氏が出来たというお噂は本当のことなんですか!?」

 

「う゛ぇっ!!?」

 

 思わず変な声が出てしまった。珈琲か何かを飲んでいるタイミングなら、間違いなくそのまま吹き出してしまっていただろう。

 

「え、ちょっと待ってなにそれ、僕聞いて無いんだけど。……どういう事なんだいマシュ?」

 

「最近、一部の女性サーヴァントの皆さんの間でもっぱらの噂になってるんですよ。『マスターが妙に活き活きしている』『自分を……『女』を磨くようになった』『きっと男が出来たに違いない』と、大体こんな具合に。……マタ・ハリさんやマリーさん。それからメイヴさんといった、恋愛に関してはかなり真面目かつ敏感な方達が、割と確信めいた風にお話ししていますし、私個人もその……思い当たる節がいくつかあるので……」

 

「ちょ、ちょっと! なに人が居ないところで勝手にそんな……!! いや噂や恋バナをするのは良いけどね!?」

 

 半ば興奮しているようにも感じるマシュを一端手で制し、立香はスーハースーハーと呼吸を整えた。ドキドキと心臓が高鳴り顔が赤くなるのに、言いようのない不安で頭がグチャリと混ざる。

 

「……で、どうなのかな立香ちゃん。噂通り気になる人が居たりするのかい?」

 

 ……下手なことは言えない。彼と行っている秘密の逢瀬を、カルデア唯一のマスターではなくただの一般人に戻れる、どこにでもいる女の子として過ごす事が出来るあの不思議な時間と空間の事を、感づかれる訳にはいかないのだ。例えそれが、マシュやロマンであったとしても。

 

 どういう返答を二人にすべきか悩んだ立香は、マシュに問われた事に対しての真偽だけを、そのまま素直に言う事にした。

 

「違うから! 私に……かかか、彼氏が出来たとかそういうのじゃないから!」

 

……半ば口籠もったが、気にせず続ける。

 

「ですが……」

 

「最近気合が入ってたのはその……勉強を教えてくれたみんなの期待に応えたかったと言うか、頑張ったご褒美を自分にあげる為と言うか……」

 

 嘘は言っていない。実際、彼を含め自分に根気よく勉強を教えてくれたみんなの期待に応えたかったし、あの約束がモチベーションの上昇に繋がっていたのは事実なのだから。

 

「頑張ったご褒美……? ああ、日本のサラリーマンやOLが月末に奮発して食べる、ちょっと豪華な食事やデザートみたいな物かい?」

 

「!? そうそう、そんな感じ! 即物的だけど、やっぱりそういうのがあるとやる気って出てくるでしょ!?」

 

「……ええっと」

 

 同意するようにうんうんとロマンが何度か頷く。一方、例えがあまり上手く伝わらなかったのか、マシュは困惑したような表情で可愛らしく小首を傾げていた。そしてそんなマシュを把握してはいるものの、彼女に甘い立香にしては珍しく気に留めず、フォローもしない。『彼女が困惑している間にロマンの少しばかりズレた発言に乗っかって、さっさと話題を逸らしてしまおう』という魂胆である。

 

「分かるな~。僕も書類仕事や機材の調整が連日続いてスッゴくキツい時に、『これが終ったらおやつとジュースを食べながら『マギ・マリ』自主制作のアニメ映画をガッツリ見るんだ!!』って決めてモチベーションあげるもん。うん、そういう自分で自分を褒めてあげるのって実は結構大事だよ。……いやまぁその後もトラブルが相次いで起き続けたから、結局まだ映画見れてないんだけどさ……」

 

「ご愁傷様……あ、つまりこういう事なんだけど、マシュは何かあったりしない?」

 

「私ですか? 特にこれという物はありませんね。そもそもそういうタイプの息抜き……休息は、疲労や苦痛を伴う作業の後に行う物ですから……その……」

 

「ん? どうかしたの? 遠慮しないで話してみてほらほら!」

 

 再び言いづらそうに口をモゴモゴと動かし始めたマシュの顔を見て、立香はここぞとばかりに続きを促す。半ば強要しているみたいで些か心苦しいが、自分への質問と返答を曖昧にする為にも手段は選んでいられないのだ。

 

 マシュは少しだけ間を置いて、あまり立香の方を見ず、独り言ちるように喋り出す。

 

「……つまりですね、特異点を探索するようなフィールドワークにしろ、書類仕事のようなデスクワークにしろ、困った事があると先輩が必ず私について指示を出したり、激励の言葉を掛けてくださったりしていましたので、疲労や苦痛を感じる様なこと自体があまり無かったと言いますか……」

 

「……」

 

「それに休日になると私を気遣って「一緒に過ごそう」と言ってくださるじゃないですか。図書室で本を読んだり、厨房でお料理を作ったり……ひ、膝枕までして頂いた事もありますし……色々とその、甘えさせてくださいますから」

 

「…………」

 

「先輩と一緒の時間を過ごせるなら、私にはそれで十分な休息で……先輩?」

 

「…………あー、もうマシュは本当に可愛いなぁ!!」

 

 いじらしくも可愛らしく、嬉しい事を言うマシュを前に、立香の母性本能が我慢出来なかった。バッ! と衝動に任せて椅子から立ち上がり、そのままの勢いでマシュへ抱きつくとギューッ! と抱きしめる。

 

「なっ!?」

 

「何? 天使? 女神?? 『あなたと一緒に居られるならそれだけで十分』とかそれもう半分告白じゃない???」

 

「先輩!? あの――!」

 

「あ、そうそう! 確か前にも言った気がするけど、無事に人理を修復出来たら報酬としてマシュを貰っちゃって良い? 良いよね! 私の家で一緒に暮らそうよ!!」

 

「ちょ、ちょっと……もう……」

 

 右手で頭をなでなで、左手で背中をスリスリ。可愛い後輩を文字通り猫可愛がりする立香と、なんだかんだ言って嬉しそうにそれを受け入れるマシュ。食堂に図書室、シミュレーションルームに管制室、そしてレイシフト先の特異点。割と色々な所で日常的に繰り広げられ、目撃されているカルデアの名物的なやり取りである。

 

「……立香ちゃん、君はなにを言ってるんだい?」

 

 と、そんな二人の抱擁を間近で見ていたロマンが二人に待ったを掛けた。椅子に腰掛けたまま腕を組み、立香を睨み付けるように見据えているその目はいつになく真剣である。

 

(ちょっと調子に乗りすぎたかな……?)

 

『マシュを抱きしめる立香』という光景自体はロマンも見慣れている筈だから、もし彼の琴線に引っかかった所があるとすれば『マシュを貰う』という言葉だろう。当の昔に凍結されたとはいえ、マシュは魔術世界初の試みとなる「デミ・サーヴァント計画」の被験体であり、唯一の生き残りだ。加えて魔術王ソロモンにより人理が焼却されてからは、なんの因果か本当にサーヴァントの力をその身に宿す事に成功してしまったので、やはり彼女の主治医であり長年の付き合いがあるロマンとしては立香の勝手な言いぐさを看過出来な――

 

「マシュを貰うっていうなら、まず僕に許可を取るべきだろう!!」

 

「……Dr.?」

 

 ロマンは駄々をこねる子供の様に机を両手でバンバンと叩き、その勢いのままズイッと、向かい側に座っている立香の方へ上半身を乗り出してきた。

 

「ズルいじゃないか、二人だけで盛り上がらないでくれよ! マシュの保護者は僕なんだぞぉ!?」

 

 クワッ! っと口と目を大きく見開いて、自分で考え得る限りの迫力ある表情をしようとするロマン。……これでもう少し顔が強面だったり、彫りが深かったりすればまともに恐怖と威圧感を与えたかもしれないが、悲しいかな。彼は性格のみならず顔まで優男なのだった。

 

「……そうだったっけマシュ?」

 

「ちょっと立香ちゃん!?」

 

「うーん、そうですねぇ……。そうだったような、そうでも無かったような……」

 

「え……あの、冗談だよねマシュ。というか冗談でも凄く心に刺さるし、仮に冗談じゃなかったとしたら今ここでマジ泣きしちゃうんだけど!?」

 

「……」

 

「……」

 

「……何か言ってくれよぉおおおおおお!!?」

 

 半泣きになってこちらに訴えてくるロマンを見てクスクスと笑いながら、「ええ。冗談ですよ」と返したマシュを見て立香は思う。恋の噂に興味を示した事といい、今の茶番に乗ってきた事といい、最初に出会った頃と比べてマシュも随分と人間らしくなってきたなぁ、と。

 

 

 

 ちなみにこの後。三人の茶番は更に酷くなり、最終的に『お義父さん(ロマン)! 娘さん(マシュ)を私にください!!』『やらん(いやだ)!!』という大昔のドラマでもやらないような『結婚相手のご両親への挨拶』をやっていた所で、うるさい! と部屋に怒鳴り込んできたダヴィンチちゃんから全員纏めてお説教をされる事になったのだった。

 

 

 

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