東方紅魔走~The Black Death Butterfly~ 作:Umaibo
幻想郷、博麗神社――
ジリリリリリリリリリリリリリ…
タイヤ型目覚まし時計が鳴り響き、霊夢は目を覚ました。
虚ろな目をこすりながら、霊夢はいつもの巫女服に着替える。
「ふわぁぁぁぁぁぁぁ…今日もいい天気ね」
残念ながら、曇天である。
そんなことを考えつつ、いつもの巫女の仕事をこなす。
なんだかんだいって、巫女の仕事は大変だ。祈祷や祝詞、神棚のお供え物など、やらなきゃいけない儀式がたくさんある。それだけでなく、境内の掃除や参拝客の接待(人はほぼ来ないが)もあるのだ。なので――。
「…よしっ。これですべて終わりね」
と言ったころには、もう夕方だ。カラスが鳴いている。
夕食を食べてから、ガレージへ移動する。
シャッターのスイッチを押すと、全自動の扉が開いて中から一台の車が姿を現す。
トヨタ 80スープラ。霊夢の愛車だ。
真っ赤な車体に黒クロームのTE37のホイール、そしてTRIAL製エアロにカーボンスポイラーなど、うまくまとまっている。
霊夢はいつものようにエンジンルームを開け、状態を確認する。
3.0L直列6気筒2JZエンジンのカバーは赤に塗られ、黄色の強化ロールバーがよく映える。
周りにはTRD製エアフィルター、HKS製前置きインタークーラーなど、社外品であふれていた。
ボンネットを閉めると、コクピットへ乗り込む。
霊夢はキーを回し、エンジンをかけた。
ツゥゥカカカカカカ・・・・・・・・・ヴォオオオオオオオンンン!!!!
今日も霊夢スープラは絶好調のようだ。
アクセルを軽く踏み込むと、2JZ特有の野太いサウンドがマフラーから飛び出す。
「それじゃ、今日もよろしくね、スープラ」
クラッチを入れ、一気にアクセルを踏む。
ヴォオオオオオァァァァァァァァ!!!!
瞬く間に神社の境内からスープラは消え去った。
―博麗神社がある峠、博麗峠を下ってしばらくして、大きな町が見えてくる。
それが、幻想町。この物語の舞台となる場所である―
同時刻、チューニングショップ、KIRISAME―
「ありがとうございました!」
一台のチューニングカーが店から去っていく。
車が完全に見えなくなってからこの少女、霧雨魔理沙は店の中に戻った。
彼女の店はまだ新しい。この町、幻想町で店を構えてからまだ2年しかたっていない。
彼女のチューナーとしての技術力は高く、そして何よりアフターフォローが手厚いので常連さんも随分と増えた。そのためなのか経営自体も軌道に乗り始めている。
でも魔理沙はどうも憂鬱だった。
「修理とか整備ばっかりで物足りないんだよな…」
この町には数々のチューニングショップが存在し、各自しのぎを削りあっている。
しかし走り屋の人々はよく大手チューニングショップのカスタムカーに乗ることが多く、一から車を作り上げる人はほとんどいない。
そのため小さなチューニングショップは大手ショップのカスタムカーの修理をすることが多いのだ。
両親がチューニングショップをやっていた魔理沙からしては、この現状に満足できないでいた。
「そろそろ閉めるか…アイツも来るだろうしな」
看板を「CLOSE」にして一息つく。
すると前方から凄まじい爆音を出す車がやってきた。
霊夢スープラである。
「さあ…私の仕事はここからだ!!!」
さて、この二人の少女は、この後とある「少女」に出会うことによって人生が大きく変わることになるのだが、それはまだ先のお話――。
第1話へ続く。