魔神柱だった 作:ONE DICE TWENTY
ילד של אלבינו חלם פעם.
בנו של יוג סוטוס, שהיה ברחם.
ללא שם: הו, כן.
על רגלי, אה.
※ヘブライ語故、読む場合は逆からお読みください。
*
「……まさか罠とはね。流石に、思いもしなかったかな」
「メディア どうした? 早く入ろう」
「気付かないのか?
――この家は、魔術師の工房だ」
初めから警戒を解いていなかった蛾っぽいメディアは、やはりここが工房であると見抜いた。まぁ、神代の魔術師を騙せるとは思っていない。無論、僕が魔神柱であると気付かれていない事を見越して、レベルは幾分か落としてあるのだけど。
仲間に神妙な口調でそう言われたからだろう、ようやく哪吒は、開いた扉の内から手招きをする僕を睨み付けた。
「アン 説明 不足ならば 敵と見做す!」
「そんなに怒らないでほしいな。確かに僕は魔術を知っているけれど、こんな立派な工房を築けはしないよ。勿論、両親が築いたわけでもない。
この家はね、なったんだ。
突然。魔術工房に。僕もびっくりしたものだよ」
「そんな説明を信じると思うか? この家の結界はメンテナンスされて新しい。突然なったというのなら、これがどういう結界かなぞわからないはずだ」
……流石。
神代の魔女の師事した魔女。
流石に慧眼だ。
「そこは僕を褒めてくれ。この家が魔術工房になったと同時に現れた地下室。そこに収められていた蔵書を読んで、僕は魔術を知った。結界の弄り方もあった。別に僕の物ではないからね、疑うと言うのなら見てくれていい。
あの一座の人達に隠しているのかは知らないけど、君も魔女だろう? 見た目が御伽噺の魔女そっくりだからね。興味はあるんじゃないかい?」
「……ふん。この時代の人間の所有する魔導書なんて、たかが知れている」
「メディア 侵入 決断 早急!」
「私達をどうこう出来るほどの技量ではなさそうだし、大丈夫よ」
「あぁ、安心してくれ。助けてくれたお礼に、少々良い物を夕食に出そう。緑衣と白黒の彼らにも振る舞いたかったが、今から探しに行くのは無理そうだからね」
「ロビン サンソン 気にしない」
ようやく、二人は僕の家に足を踏み入れる。
別に何も起こらない。
両親は眠っているはずだ。一応、眠りの香炉を焚いたからね。そうでなくとも母アンは眠いはずだし。
「――ようこそ、パットナムの屋敷へ。歓迎するよ、異邦の民」
*
「馳走 感謝。腸詰 美味 至極」
「この村でまさか朝からソーセージを食べられるとは思っていなかったよ。マス……座長たちには少し悪いけれど、良い朝になった」
「ボク達は 戻る。確認 七時の方向 直線?」
「あぁ、カーター家はそこにある。もしそこにいなかったら、流石にお手上げだ。そこにいるアビーに聞いてみるといいよ」
「……最後に一つ、聞きたいのだけど」
「なんだい、メディアさん」
「貴女の机の上にあった童話『オズの魔法使い』は……どこで手に入れたのかしら?」
「それも、工房と一緒に来たんだよ」
「……そう」
「? 確認 もういい?」
「ええ、十分よ。行きましょう、哪吒」
「了解 再来 約束 再会!」
「ああ、またね」
早朝、そんなやり取りをして、二人は出て行った。
まだ霧の立ち込める朝。二人の姿も見つからないだろう。
「……あぁ、そうだ。
この村に、ソーセージなんて高級品が――本当にあると、思ったのかな?」
霧へ投げかける。
なぁに、大丈夫。食べて毒になるものじゃあない。
ソーセージではない、と言うだけの話でね。
一種の意趣返しだと思って欲しいな――大魔女さん。
*
「あ、アン……ウィリアム先生のところ、行こう?」
「ベティ、だから大丈夫だって。火傷程度でウィリアム先生にかかっていたら、いつまでたっても僕は一人前になれないだろう?」
「……でも……!」
日が昇って、ベティが家に来た。例に漏れず怒られたようだが、いつもよりは消沈していない。そんなことよりも僕の手が心配だと、昨夜に続いてベティには珍しい抵抗を見せている。
火傷を隠す為に革手袋をしているから、余計にひどいものだと思わせているのだろう。
実際は、治っているのだけど。
「大丈夫さ、ベティ。それより、君の両親は君を許してくれたのかい? まだ怒っているのなら、一緒に謝りに行くよ」
「……アンは? アンは、怒られていないの?」
「正直に話していないからね。
友達を守る為に怪我をした――ただ、そう言っただけさ。嘘じゃない」
「……それで、怒らないの? アンのパパとママは」
「ウチはそういう家族なのさ。決して放置されているわけじゃないよ。むしろ、その逆。最大限の愛をくれている」
娘アンの魂は、心から父トマスに愛されている。
それがあれば、後は僕がこの家を守るだけだ。
「……はぁ、しょうがない。
誰にも言わないでくれるのなら……ベティ、君だけに秘密を見せよう」
「? どういう事……?」
「僕がウィリアムの元に行かない理由さ」
革手袋を取る。
するり、するりと。
中にあるのは、もちろん。
「……えっ」
綺麗な、子供の手だ。
治してある――それは回帰レベルで、治癒されている。
「僕の創った特製軟膏は、多く製造できない代わりに特別性でね。即効性がウリなんだ。……二年かけて拳大の量しか取り出せないけど」
「……やっぱりアンは、すごいね」
「ははは、そこは素直に褒められようかな。これはウィリアムに誇れる物だからね」
この軟膏には本当にそういう効果がある。実際はもう少し治癒も遅いけど――即効性だ。まぁ、製造工程に魔術がある薬品だから、公には出来ないけれど。
「それじゃあベティ。君のパパとママに、謝りに行こうか。大丈夫、君は悪くないよ。むしろ勇敢だった――そう、伝えてあげるから」
「……うん」
すっかり霧も晴れた村。
天文台の彼女たちは行動を始めた頃かな?
一つ目の結び目は――一応、挨拶だけはしておこうかな?
*
村の外れ。
元ウィリアムズ邸――現・カーター家。
そこに、一人消沈した様子で水を汲む浅黒い肌の女性がいた。
「大丈夫かい、ティテュバ」
「おやおんやぁ……これは、これは、
「教えを請われたからと言って、ブードゥーを教えたのは早まったね。いや、そうなるようになっていた――役割だったかな?」
「……パットナム様?」
「史実において――ティテュバ、君はベティの奴隷だ。そして、僕達と同じ告発者でもある。故に――口を塞がせてもらうよ」
「――?」
「君の
「――何か仰いましたか、
「そう――僕は、ちょっと賢いだけの、アンだ。それではね、ティテュバ。今日くらいは、良い夢を」
魔神柱耐性を持つ彼女を欺く事は出来ないけど、認識を変える事なら、僕と言う存在のおかげで可能だ。
言わずに死んだ彼女だけど――万が一も、あるからね。
保険はかけておくにこしたことはない。
それでは、ティテュバ。
おやすみなさい。
*
「おや、君は」
村の外れへと訪れると、そこには二階建ての、僕の家よりは小さくとも、それなりに大きな家が建っていた。
ここはカーター家。昨晩、あの陳腐な儀式を主催したアビゲイルの住む家であり、星詠みの彼らが拠点としている場所でもある。
ウィリアムズ夫妻――あまり接点の無かった夫妻ではあるが、一応、面識のある男女の一人娘は、
「こんにちは、カーター氏。旅の一座が来ていると聞いたのだけど」
「あぁ、今は村を回ってみているようだよ。一人は家にいるが……会っていくかな?」
「一人では人形劇くらいしか出来ないだろう? 日を改める事にするよ。それではね、カーカー……おっと失礼、舌が回らなかった。失礼するよ、カーター氏」
「――待ちたまえ。アン。君、その革手袋はなにかな。
……そういえば昨晩、君も外に出かけていたようだが」
「あぁ、呼ばれたからね、向かってみたら、獣に囲まれている彼女たちが。応戦の為に焼石を使った結果――このザマさ」
革手袋を外す。
そこには幼い、つるっとした少女の手――、
「……酷い火傷だ。無茶な事をする」
「旅の一座に会いたいのも、それが理由でね。危ない所を助けてもらった。緑衣の男性と白黒の男性に、よろしく伝えておいてくれるとありがたいかな」
「……伝えておこう。早く、ウィリアム医師に診てもらうんだぞ」
「もう軟膏を塗ってあるから大丈夫さ」
外皮を溶かす事くらい、造作も無い。
再度革手袋をつけて、治癒をする。
「それじゃあね」
「あぁ。身体を大事にな」
……
知らないのかい?
魔女のけしかけたカラスは、カカシに首を折られて、死んでしまうのさ。
*
「やぁ、ジョージ。何かあったのかい?」
「む? あぁ、アンか……。まぁ、アンであれば話してもよいだろう。
旅の一座の者達が来ているのは知っているな? その者達からの伝言で、自身らの芝居を見て、自身らを信用するか否か決めて欲しいと、私に言って来た。よって、子供達に芝居を見せる前に……大人達で判断をする事になった」
「へぇ。それはまた……『ずるい』って言い出す子が多そうだね」
「アンならば、言いふらさんと思っての事だ」
「はは、それは光栄な事で。ちなみに聞くけれど、僕はその”お芝居”を見に行ってもいいのかな?」
「……まぁ、口止め料とでも言っておけば、皆も納得するか」
昼間、そんな経緯があった。
ジョージ――ジョージ・バロウズ牧師。
以前は僕の家に対して債務関係での
「日が落ちたら公会堂に来るといい。私の名を出せば、アンだけは入れるように皆に言っておく。いいか、くれぐれも他の子らに言いふらすなよ?」
「わかっているさ。余計な混乱は僕だってごめんだからね」
それじゃ、と後ろ手を振って踵を返す。
港の方へ向かおう――として、ふと足を止めた。
「あぁ、そうだ。ジョージ。
聞き忘れていた――演目は、なんだったか
「あぁ、それは――」
*
「……お芝居なんて本当に久々ねえ」
「まったくの時間の無駄だ! こんな夜に、ランプの油すら勿体無い。我々の立てた公会堂をふざけた芝居なんぞに使うとは……だいたい、肝心の牧師がおらんじゃないか。牧師はどうしたんだ!」
「ジョージは急病人の家に向かったよ。吐き気、熱、目眩のコンボでせがまれていたから、今夜は来られないだろうね」
「……アン。まぁ、アンほどの見識があれば、十分か……。いや、しかし……」
「落ち着きなよ、サミュエル。The proof of the pudding is in the eating.っていうだろ? 何事も、無駄かどうか、ふざけているかどうかは、終ってから判断する事さ。内容を見ない内に評価を下すなんてことは、少なくとも人間には出来やしない」
「……ふん」
全く、村を、質素な生活を守りたいのはわかるけど……融通が無ければ質素も傲慢になるのにね。その点、ジョージやパリス牧師はよくわかっている。ウィリアムも……うーん、まぁ、半々くらいかな?
「さぁ、フジマル座長。村の者は揃った。いつでも芝居を始めてくれ」
「わかった」
昨晩、暗闇の森の中で出会った、星詠みの
あぁ、うん。
忘れていたけど、記憶にある通りだ。忌々しい――と、思っていた過去も確かにあるけれど……今は別に、何とも思わないかな。
「何か用かな?」
「あぁ、気にしないでおくれ。東洋人が珍しいだけさ。気にせず、芝居を始めて欲しい。演目は非常に心揺さぶられるものだ。はは、
「ありがとう」
当たり障りのない答え。
当然、それがカルデアのマスターらしさであり、それこそが非凡たる理由。
さて……少しだけ、遊ばせてもらおうかな。
*
“今宵、わたしたち一座が演じますのは、聖書からの一節になります――『ソロモンとシバの女王』です”
*
演目の内容は、まぁ、割愛して追って行こう。
有名な物語だからね。聖書の一節であることもそうだけど、
南方の国の、シバの女王。
彼女は、砂漠の向こうで国を治める、比類なき知恵者・ソロモン王に心惹かれ、砂漠越えを決意する。恐ろしい距離を、徒歩で、多大なる荷を持って。
美しき女王は、従者を連れ、駱駝を連れて、砂塵を越える――。
だが――それに気付く者はいない。舞台上の演者を除いて。
「!?」
「これは、幻術……!?」
「害は無いようですが……」
「続けよう」
“ン゛ッ、女王一行は、頼もしい用心棒の助太刀もあって、砂漠にいた強盗などの襲撃者を撃退いたします。幾度か繰り返された襲撃を乗り越え、無事エルサレムへの旅を再開した一行は、じきに紅海の港へと辿り着きます。波止場でごった返す駱駝の群れ。船と積み荷を待つ商人たちの、活気ある喧噪”
“……女王たちは何百隻もの船を借り上げると、大船団を組んで、紅海を北上いたします。
――やがて船団はアカバ湾の北端、ソロモン王の築いた港町、エジオン・ゲベルへと到着”
効果音は、見ている数人の村人を劇中の世界へと引きずり込む。
これはあまりの芝居に、自分が思い浮かべてしまっているものだと錯覚する。
女王たちは積み荷を降ろし、再び陸路を行く。異国の牧草地。街並みの無いなだらかな丘。
ついに、エルサレムの白い城壁の輝きが、遠くに見えた。
谷間の村で足止めを食らう女王一行。
エルサレムは決して一枚岩ではない。むしろ、群がってきた俗物どもの愚かな目論見が飛び交う、まさに「世界の縮図」のような場所だ。あぁ、そうだった。
だが、その現状を前にして、女王は諦めなかった。
女王がふらり、ふらりと商隊を離れて歩いていると、沢山の羊の群れが向かって来た。
侍女は追い返そうと提案するが、女王は自身らが避けるように命ずる。
そこへ、一人の男が現れる。
「やぁ、これはこれは高貴なお方。ご機嫌麗しゅう」
「え――ダ、ダビデさん!?」
「ん? あれ? 今舞台上にいるのが
「じゃあ、あれは誰?」
「いやいや、そんな」
「……」
「退がれ――貴様、何者だ!」
「見ての通り、しがない羊飼いさ。いつだってアビシャグと共にある、妻とお金が大好きなお兄さんだよ」
「本物より本物に辛辣です! いえ、辛辣な言葉は吐いていないのにそこはかとなく馬鹿にしているのが伝わってきます!」
「……失礼をいたしました」
羊飼いは気さくに、女王へと尋ねる。
何か困った事があるのかい? と。
女王は言う。門番の事。自身がエルサレムへと入らなければいけない事。
それを聞いた羊飼いは、門番の事を恥じ、彼の王と神殿を讃えた。
さらには、女王が足を悪くした羊を買い取る旨を話すと、羊飼いは少し笑って。
「ははは、それはいいね。あぁ、そういえば――エルサレムには、隠された門があってね。門は”内と外”に通じている。プネウマも……あぁ、君達にはルーアハの方が通じるかな。彼らの為の門も、存在する。当然だよね。門が無ければ、彼らは何処へも行けない。何処へも行けないのであれば――内に溜まるしかない。
それすらも考えてあったから、彼は知恵のある王だったんだ」
そこにはもう、羊飼いの姿は無かった。だが、聴衆はどよめくことがない。
自らが熱に浮かされ、見逃したのだと勘違いする。
シバの女王は夜にその門からエルサレムへ忍び込む事を決意する。
幽玄の門。
彷徨える者が行く手を塞ぐ。地を離れ得ぬ者が行く手を阻む。
「――私達の行いが神に反すと言うのなら、ここを通る事も出来ないでしょう」
だが、決して怯まない。
女王は進む。護衛の強者たちもまた、女王の声に自らを取り戻す。
“かくして女王一行はエルサレムへの入場が適いました。ほどなくして女王は宮殿へと招かれ、念願のソロモン王ご自身とまみえるのです――”
……流石に、僕には――僕だからこそ、彼の王の姿は真似できない。
それを行うのは、アイツの後を追うのと同じだから。
ソロモン王とシバの女王は邂逅し、歓談を交わしながらエルサレムの宮内をめぐる。
羊飼いの口にしていた神殿。竪琴の音色。
燔祭の供儀。供物たち。くべられた生贄。
その最中、女王は王へと問いをかける。
二つとも、十九とも取れる問い。区分で言えば二つであるのは、確かに、間違いではない。
そして、最後に。
女王は三つの問いを、彼の王に投げかける。
一つの扉、十の扉。
十戒を収めた聖櫃。契約の証。
“――その海は凪いでいます、風に逆らいながら船は進みます。水先案内人の示す先には暗雲が見えます。船の備えは、決して、万全ではありません。”
その問いに、答えに詰まるソロモン王――。
いや、悪いけど。そこは答えさせてもらうよ。
姿は無理だけど、声くらいなら。
「――それは国である。向かう風は、操舵と帆を以て、船を速く進ませるだろう。数多の雫が、待ちて、向かいて、砕けて行く。予想もつかぬ荒波が、大嵐が、
答えに言いよどむソロモン王なんて、見たくない。
人間であった彼ならともかく、王は、今でも王なんだ。
「では……王よ。船はいずこへ参りましょうや?」
「船は止まらぬ。嵐を逃れ、波に漂うは船でない。いつぞ沈むやもしれぬ、流木にすぎん。避けられるばかりが嵐ではない。故に水先案内人は警告をする。
嵐に耐え、暗雲を越えた船だけが、新たなる天地で――新しい世界で、栄光の夜明けを見る事だろう。朝の光は、彼らを祝福することだろう」
こうして、三つの問いかけは終わる。
ソロモン王とシバの女王は互いを盟友とし、いっそうの畏敬を抱いたシバの女王は、故郷への帰路についた。
ソロモン王はシバの女王が望んだとおりの贈り物を惜しみなく与えた――。
ここから先は、僕らでも知らない話だ。
シバの女王がどうなったのか、彼女と彼の王がどうなったのか。
知るはずもない。そして、騙っていいはずもない。
ここに一つの役目を終える。
魔神柱としてでなく、彼に仕えた一匹のヒョウとして――。
*
「カーターさん。村の者がアンタに用があると。判事さん、あんたもだ」
「……わかった。応じよう」
……さて。
家に帰って、結界を敷こうかな。
そろそろ頃合いだし――なにより。
こちらを睨みつけてくる、怖い怖い大魔女さんから逃げなければいけないからね。
*
「アン! お前、これに見覚えがあるか!?」
「騒々しいな、ジャイルズ。子供は寝る時間だぞ」
「子供はお前だろう! いや、そんな話に付き合っている暇は無いんだ。これ――この木彫り人形は、誰がこしらえたものだ。正直に言えよ――?」
「ティテュバだよ。そんなに睨まなくてもいい。ブードゥーのまじない道具さ。動物の贄を用いて、自らに神を降ろす――ま、異教徒の儀式の道具だね」
「……お前、それを知っていて、黙っていたのか……?」
「ははは、これはおかしなことを言う。普段から僕の事を子供だと、僕の医学を子供のまま事だ、などと馬鹿にしている君に、僕が相談を持ちかけると思っているのかい? おいおい、そんな怖い目で睨まないでくれよ――僕は明日にでも、ウィリアムに相談しにいこうとしていたんだからさ」
「……信じられないな」
「これを見ても、かい?」
手袋を外す――そこには、酷く爛れた皮膚があった。
「
「……!」
「ティテュバは魔女だよ……アビゲイルが何と言おうと、カーター氏が何と言おうと、旅の一座が何と言おうと、ね。だって僕は、彼女の話を聞かされただけで、こんなことになってしまったのだから」
「……」
「ジャイルズ。いいね?
僕は――被害者だ」
「……ああ」
僕は、アン・パットナムは――告発者の一人だ。
その事実は、僕の魔神柱としての力を最大限に強化する。
机の上にあった、「オズの魔法使い」が、風も無いのにパラパラとめくれた。
*
הו, הו!
המפתח של שלמה, ספר נהדר!
תן חוכמה כך שהרוח לא תגיע אלי!
הבה מקדישים, מקדישים את לבנו, מקדישים את נשמתנו.
המפתח של שלמה, חוכמה גדולה!