バカと明久と怪異鬼譚【凍結】   作:イビルジョーカー

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『バカテスを物語シリーズ風にしてみたら面白いんじゃないか?』


そんな突拍子な考えで思いついたこの小説です。正直いろいろとアレな部分も
あるかもしれんが、是非とも暖かい目で閲覧して頂ければ幸いです。ではどうぞ!





第一怪 よしいゾンビ【前】

 

 

~~明久サイド~~

 

 

 

 

人生。それは途方もなく長いものに感じれば数歩進んだだけで

終わってしまうような、人間と言う生き物の一生である。

 

僕、吉井明久の人生は3月27日の午後11時に呆気なく、

大した意味もなく、ただそれが当然のシステムのように

終わりを告げた。

 

そう、『普通の人間としての一生』を。

 

この意味を明確に説明するにはまず、僕がどういう経緯と死因で

普通の人間としての一生を終えたのか……うん。まずはそこだと思うな。

 

3月27日。あと少しで長くも短いような春休みを終え、高校生として

世界的にも有名な学校『文月学園』に入学することになった僕はその日、

無性にコーラが飲みたくて近くのコンビニへと訪れて目当ての物を購入し

そのまま帰宅しようとした時だった。

 

 

「??(なんだろ……アレ)」

 

 

コンビニと僕の住んでいるマンションを繋ぐ道には一つの踏み切りがあり、

そこは3ヶ月前ある一人の少女が心臓発作を起こしそのまま電車に轢かれて

死んでしまったという痛ましい事故があったんだ。

 

そしてその事故が起きてから2ヶ月後、奇妙な噂が街に流れ始めた。

 

『全身バラバラとなった少女の霊がグロテスクな姿の化け物となり、

深夜に踏み切りを渡ろうとする人間を容赦なく見境もなくズタズタに

引き裂いて惨殺する』って言う、いかにもよくありがちな噂が近所を

始めに街全体に立ち込めていた。

 

僕の住んでいる街『如月市』は文月学園があることもあってか、有名で

面積も東京の半分はある凄い街だ。そんな街のせいか、よくオカルト的

で怪奇染みた都市伝説や怪談といった部類の噂が数多く色濃くあった。

 

そんなもんだから『踏み切りスプラッター(上記の化け物の名前)』の

噂を半信半疑って感じで思っていた。半信半疑って言っても所詮そんな

都市伝説みたいなものなんか、一欠けらも信じてなんかいなかったんだ。

 

 

「…………」

 

 

踏み切りの向こうで僕をじっと見つめる、その少女を始めて目撃するまでは。

 

 

「女の子? ってあれ? あの子、学生服着てる? でもこんな時間に……」

 

 

その少女は何処か異様な空気を放っていた。どんな風にって説明しようと

しても具体的には無理だろう。とにかくその少女はセーラー服を身に纏い

目の辺りを少し長めの前髪で隠し、髪型は特にコレといって何もない長髪

のストレートヘアーだった。

 

丁度その時、一通の電車が何の異常もなく線路の上を安全に運行しながら

やって来こようとしていた。遮断機の音が鳴り響き閉鎖棒が警告とばかり

に降りて歩行者の道を妨げた。

 

やがて電車は事故を起こすこともなく通り過ぎて、カンカンと喧しく鳴る

音がふと止まり、遮断機がその黄と黒の閉鎖棒が自動的に上がったその時。

 

 

ズルっ

 

 

「え?」

 

 

ドサッ!

 

 

何かが落ちる音が聞こえたよ。周りを見渡そうとしても中々足が動かなかった。

 

でも違かったんだ。僕の足は、動けなかったなんじゃない。

 

僕の『上半身』と『下半身』はまるでソフビ人形の如く別れていた。

 

分離していた。別離していた。乖離していた。真っ二つに、分断されていた。

 

あまりに突然のことに気が狂いそうになった僕は、何とか原因を探ろうと努力

しよとしたが、そうする必要も意味もなかった。何故なら僕の身体を真っ二つに

切り裂いた人物が僕の顔を面白おかしそうに眺めていたからだ。

 

彼女だ。彼女だった。僕の上半身と下半身を切り裂いた犯人は彼女っ!!

 

そう。そう。そう。そう。そうだったんだ。本当だったんだ。

 

あの『踏み切りスプラッター』の噂は真実で事実だった!

 

何故ならその少女の腕はヘドロのような色のブヨブヨとした感じの異形と

化しており、その背には同様の形状をした無数の触手が蠢きその一つ一つ

の先端に鋭利で丈夫そうな鎌が付いているのだから。

 

 

「あ……ぁ……………」

 

 

僕の視界がどんどん闇で狭まって来る。ああ、僕は死ぬんだ。死んでしまうんだ。

 

抵抗も出来ず、指一本さえも動かせず、ただ無意味に、そう。意味もなく死ぬ。

 

こうして僕は踏み切りスプラッターと言う名の化け物に殺され、呆気なく死んだ。

 

そう、これが僕の『普通の人間としての生を終える死に様』だった。

 

 

「おやおや。こいつは随分だな人間。……………せっかくだ。どうせ消える

その命、せめてもの救いと受け取って自分自身の有意義の為に僕に使われろ」

 

 

その刹那で、こんな声を、聞いた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3月28日。僕は不意に目が覚めた。そして混乱したよ。

 

だって僕はあの夜。あの踏み切りスプラッターの手にかかって真っ二つに

なるっていう、B級映画も真っ青なグロテスク体験を僕自身の体がやって

見せたのだから。

 

当然。死んで当たり前だ。

 

なのに僕は生き残った。

 

だから僕は率直な考えとして『全部夢だった』と思いたかったんだけど、

現実はそう甘くはなかった。

 

今僕は謎の白い部屋にいて病院で見るような無機質なベッドの上に

寝かされていたようだ。

 

つまり察するに何者かが、死んだ僕にブラックジャックも尻尾巻いて

逃げるほどの天才的な手術で一命を取り留めさせた……ってのは無いよね。

 

となると、あの踏み切りスプラッターみたいな人外的存在が僕を

助けてくれた? いや……これもないよね、普通に考えてないよね。

 

だったら誰が………

 

 

「随分と早かったな~人間。いや、半分ゾンビになったから半死人ってところか?」

 

 

音もなく、ましてや気配も感じさせずに現われたのは医者は博士なんかが

着るような白衣を身に纏った小柄な少年。

 

その下は普通に何処にでも売ってそうな黒い半袖のTシャツを身に纏い、

ベージュ色の短パンを履いてる。

 

髪型は少し癖毛があるだけのショートヘアーで、童顔で女の子みたいな

可愛らしさがあるんだけど、精悍な感じがある顔つきだ。

 

そして、その目には完全に僕を下として見てるという事実が

ありありと映っていた。

 

 

「あ、あの、いきなりのアレでちょっと混乱気味なんだけど……君は誰?」

 

「うるさいぞ。ミジンコ以下の死人め。それが命の恩人に対する態度と言葉か?」

 

 

……なんかムカつくなこの子。命の恩人(?)らしいが、だからと言って何でも

言ってもいいってことにはならないと僕は思う。そんな僕の心情を知る由もなく

少年はそれまで其処に無かった筈の少し豪華な印象を受ける椅子に腰掛け足を組む。

 

それはもう王様のように、堂々と。

 

 

「さて。貴様も突然のことでアレだとは思うが、とりあえず今の現状を簡潔に言うと

人間の少年。貴様はもう普通の人間ではないと断言させてもらう……これに異論は?」

 

 

大有りだよっ! 何さ普通の人間じゃないって!! それだとまるで僕は……

 

 

「そう、貴様の考えている通り貴様と言う存在はさっきも言ったが、俗に言うところの

『ゾンビ』と言う怪異の存在になった。正確には半分だけで完全な『屍人種』になった

わけじゃないがな。まっ論より証拠と行こうじゃないか」

 

 

そう言って少年は椅子から立ち上がると真っ直ぐ僕の方へと歩いていく。

 

堪らなく嫌な予感がした僕はその場から逃げようとしたんだけど、

どうにも体が動かない。

 

そんなことをやってる内に少年が僕の目の前まで来る。

 

その目には僕を見下していると同時に途方も無い嗜虐心が見え隠れしていた。

 

 

「これが証拠だ。実感しろ屑め」

 

 

サディスティックな笑みを浮かべて謎の少年A(仮称)は、あろうことか

僕の胸に家庭なら何処にでもある普通の包丁を容赦なく突き刺した! 

 

そして当然ながら傷を負いそこから血が溢れる……でも変だった。

 

何が変なのかと言うと、まず、僕の血に暖かさは感じられなかった。

 

と言うよりも暖かさとは対極的な、まるで冷蔵庫にでもブチ込んだか

のような冷たさが存在していたんだ。

 

それともう一つ、僕は胸を刺されたと言うのに痛みがまったくなかった。

 

人間を含む大抵の生き物は確かに痛覚という痛みを感じる神経があって、

普通なら怪我をする時点で痛みは生じる筈なんだ。なのに……感じなかった。

 

痛みを、苦痛を、死を自覚することができなかった。

 

 

「な……なんだよコレ!? お前僕に何をっ!!」

 

「騒ぐな下虫。言っただろう? 貴様は昨日の夜、あの踏み切りをある種の

縄張りとして生息する『怪異』に襲われ死んだ。それを俺が助けてやった。

しかしあくまで……半分だけ屍人種な『ハーフ・ゾンビ』としてな」

 

 

僕は自分が半分だけ人外的存在になるという普通の人ならまず経験しないような

出来事を身をもって体感し、未だ混乱が収まらないものの謎の少年Aの話を一切

聞き漏らさないよう慎重に聞いた。

 

そして僕は大いに驚いたよ。

 

だって、彼はファンタジー系のサブカルチャーで言うところの『魔術師』で、

専門とする魔術は『死霊術』っていう奴らしい。そんなの信じられるか!って

言いたかったけどもはや信じるしかない状況だったから、敢えて言わなかった。

 

 

「一口に魔術って言っても色々なものがあってな。

 

と言っても基本的で大まかな部門的感じの物は以下の三つになる。

 

火や水、木土と言った自然に存在する物質を変異させ操る『錬金術』と

怪異を使役し己が手足とする『呪術』に時間操作や自分の周囲の重力を

無効化すると言った世界に干渉して発現させる『魔法』。

 

『錬金術』、『呪術』、『魔法』、この三種類を原典とし其処から

数々の魔術が派生していったんだ。俺様の使う『死霊術』は『呪術』

から派生したもんでな。

 

特にお前みたいな『屍人種』の怪異を生み出すのに長けたものだが

自我もあり、それでいて半分も人間の部分を明確に残している成功

もんはお前が世界初ってわけ」

 

 

面白おかしそうに謎の少年Aは笑う。正直なところ、ぶん殴ってやりたい

気分が僕の心の底からジワジワと沸いて来たけど、それをしても根本的解決

にはならないと思い、僕はこの湧き上がる気持ちを何とか静めることができた。

 

 

「あのさ……さっきから気になってたんだけど、『怪異』って?」

 

「怪異。貴様みたいな下郎でも分かり易く教えてやるとだ、人智を越えた

化け物って具合に考えろ。そいつ等は姿形も性質も千差万別。色々と専門

的な種類の名称があるんだが、さっき言った『屍人種』ってのもその一つだ。

 

ようは元々只の人間だった筈の死体が恐ろしい怪物となって擬似的

に蘇った存在。『リビング・デッド』っていう、そんな言い方もある。

 

お前が今なってるゾンビや吸血鬼。日本の妖怪で言うなら『がしゃどくろ』、

中国辺りなら『キョンシー』なんかがコレに当るな。

 

他にも『水妖種』、『海魔種』、『山地種』、『霊媒種』、『付喪種』

とか色々あるんだが……生憎のところ俺様は怪異についてはドが付く素人だ。

詳しい話なら是非とも怪異のスペシャリストな専門家に聞いてみるといいぞ?

丁度今この街にいるしな」

 

 

僕の思考回路は色々なことがあったせいでショートしそうになったけど、

何とか話の内容と今の状況の整理ができた。うん、僕って中々偉いと思う。

 

 

「さて。んじゃお前帰れ。俺様的に言わせればお前と言う存在を完成させた

時点で俺様は非常に満足だ。従ってこっちはお前に何の用もないし、まぁアレだ、

ぶっちゃけお前は半分とは言え怪異だ。怪異は怪異を呼び寄せる……類は友を呼ぶ

って具合にな。だから今後もし怪異が孕んだ事件に巻き込まれたら」

 

 

あれ? ひょっとしてコレって……。

 

 

~~明久脳内妄想~~

 

 

『俺様に相談しろよ。こうなったのも俺様の責任だしな。確かに俺は怪異に

対してはド素人、それは違いない。でもな、自分の責任を溝に棄てるような

糞っ垂れじゃねぇさ』

 

 

~~妄想終了~~

 

 

って感じで言って来るの!? あんな性格で!? ギャップが有り過ぎるよ!

 

でもそうだとしたら案外良い子なんじゃ……

 

 

「この街の何処かいる怪異の専門家を探し出してソイツに何とかさせるか、

もしくは相談してみろよ。ぶっちゃけ俺様は損得で動くような人外でな。

半分だけ人間一人の生き死に動いてやるほど俺様はお人好しじゃないんでな」

 

 

………………現実は甘くなかった。

 

その後僕はどういうわけか意識が遠退き始め、やがて気絶。

 

気付けば自宅の玄関の中で倒れていた。

 

正直全ては一切合財が夢だったんだと思いたかったけど、すぐ側に

落ちていた手紙から全てが紛れ様も無ければ否定しようもない現実

であるということを心底自覚させられた。

 

 

【俺様の手にかかって半分ゾンビと化した下郎で糞な蛆虫様へ

 

この手紙を読んでいるということは、俺様は既にこの街から姿を消している

と思うが安心しろ。俺様はちょっとした用件で出払ってるだけだから、多分

3ヵ月後には戻って来るだろう。

 

この手紙を書いたのはソレを伝えたかったのともう一つ、お前が怪異絡みの

事件に巻き込まれた時に心強い助っ人になってくれるだろう怪異の専門家に

ついてだ。

 

正直なところ俺様自身、アイツが何処で何をしているのかなど把握してないが、

奴がこの街にまだ居ることだけは確かだ。

 

で、その怪異の専門家の名前は『鉈崎裂男(なたざき・れつお)』。

 

とある理由で怪異に関わる噺を収集すると同時に危険性の高い怪異の対処を

生業にしてる奴でな。まぁそいつなら怪異な事件に巻き込まれても助言とか

手助けとかしてくれると思うから頼ってみろ。…っつっても探し出すことが

できなきゃ無理だけどな(笑)

 

んじゃ、色々とあるとは思うが頑張れ。

 

お前をゾンビにした通りすがりの魔術師『アレイストル・ダーク』より】

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

ふっっざけんなあああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!

 

人を化け物にしといて責任全部丸投げで他人任せかよ!!

 

僕の人権はどうなるんだ! 既にゾンビと化してしまった僕に人権は

まだあるのか!! 死んだ僕を助けてくれたのには感謝してるけど、

だからって半分ゾンビにする必要あるか!?

 

つーか本当に3ヶ月内に帰ってくるんだろうなあのクソガキはっ!!

 

もしも帰って来たら喉笛を八つ裂きにするだけじゃ済まさないぞ

チクショウがーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!

 

 

なんて心の中で叫んでみたけど、現実はうんともすんとも変わってはくれない。

 

こうして僕は、仕方なく人生初の『ゾンビ・ライフ』を謳歌する以外になかった。

 

半分ゾンビになって色々と混乱気味だった僕だけど、このままずっと玄関の中で

蹲ってるわけにもいかない。なら、とりあえず自分の部屋に戻って眠ることにした。

 

時刻は4時53分だったから大体で4時間ぐらいは寝てよう、と思い、僕は

二階への階段を上がり自分の部屋へと向かった。

 

そして僕は吸い込まれるようにベッドにダイブしてそのまま深い眠りの

世界へと入ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい。さっさと起きやがれコンチクショーが」

 

「!!」

 

 

どれくらい眠っただろうか? きっかり4時間なら嬉しいが下手して

それ以上経ってたらマジでヤバい。僕、吉井明久には3人の妹と1人

の姉がいるというまさしくギャルゲー的な家族構成と言えてるんだけど、

1人を除いて他の3人が色々ヤバい。

 

何せ長女の姉さん……吉井玲は、極度のブラコンで朝のチューを

しようとしたり、夜中こっそりと僕の部屋に侵入しては寝ている

隙を突いて女装に着替えさせたりとか、色々と行動が危ないんだ。

 

そんでもって3人の妹達。

 

次女の『吉井春香(はるか)』、

 

三女の『吉井秋琥(あきこ)』、

 

末っ子の『吉井燐(りん)』。

 

この3人の場合だけど、燐は大丈夫なんだ。

 

普通に僕を起こしてくれるし、それでいて頭も心もすっごく良い小学三年生だ。

 

でも春香と秋琥に至っては全然違う、むしろ恐ろしいまでに逆なんだ!

 

まず春香の起こし方だけどバールや包丁で僕を突き刺そうとして来る。

 

うん、マジで怖いよ。

 

それでその事に対して反論を述べると曰く『これぐらいしなきゃ

お兄ちゃん起きないでしょ?』とか言う始末!!

 

そして秋琥! こいつは本当に中学1年かと思うほどの怪力とも

言える筋力で僕の腹部にボディーブローを打ち込んで来るんだ!! 

 

そしてそして曰く『兄貴はこれぐらいやんないと起きないだろ?

まっ可愛い妹からの献身的なアプローチってことにしとけよな』って

感じで春香と同じことを言うし!! って言うか全然可愛くないよ!

可愛い妹からの健全で普通なアプローチがボクシング技で成立すると

本気で思ってんの!?

 

とまぁこんな感じなんけど、上記の『おい。さっさと起きやがれ

コンチクショー』って言うのは十中八九あの春香に違いない。

 

そしてその声で目を開けた僕の視界に映り込んで来たのは……鉈だった。

 

 

「ちぇりおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

間一髪で僕は避けた! うん、どこも怪我を負っていない。

 

もしもここで僕が少し程度の切り傷を負ったとして、そこで瞬時に

傷が修復されたら未曾有の混乱を齎しかねなかっただろうな。

 

うん、やっぱり僕は自分を『偉い!』『よくやった!!』と褒め讃えたいよ。

 

でも僕はそれ以上にやるべきことがある。それは………

 

 

「春香! 君は一体全体毎回毎回どういうつもりなんだ! もう既にこれが

朝のお決まりになっちゃってるっぽいけどさ!! それでもいい加減自分が

常軌を逸した行動をしていることに気が付け!!! と言うよりなんだよ、

『ちぇりお』って! 君は何処ぞの刀集めの旅をする奇策師か!」

 

「ええ~~何その反応? せっかく私みたいな献身的で何とも心清らかな

妹が起こしに来てあげたのにそれは無いんじゃないのかな? お兄ちゃん」

 

「献身的で心清らかな妹が実の兄を鉈で突き刺してまで起こそうとは絶対に

思わないし実行もしないよっ!? てゆーかソレ完全にまた眠っちゃうから

!! 永眠という二度寝に入っちゃうから!!」 

 

 

と、こんな会話をしばらく繰り広げた後、僕は軽めの朝食を摂って謎の少年A

(アレイストル・ダークらしい)の手紙に書いてあった『鉈崎裂男』なる男性

と思わしき人物の捜索に全力を尽くそうとしたんけど家を出てから僅か2分と

いう最短時間で見つけられた。

 

『怪異は怪異を呼び寄せる……類は友を呼ぶって具合にな』

 

とかあの謎の少年Aは言ってたけど、ようは僕が怪異になったからこそ

怪異の専門家を見つけられたってことかな? 何はともあれ早々に見つ

かったのは良かったけど場所がアレ……廃墟ビルだったのが嫌だな。 

 

別に不気味なところが嫌って言うんじゃなくて、ゾンビになったせいか

何て言うんだろ……こういう『いかにも出そうな場所』に対して家に

帰って来た以上の安らぎを覚えてしまうんだ。

 

どうやら僕と言う半分だけ人智を越えた化け物になってしまった存在は

その感性さえも化け物同然になってしまったらしい……あれ? 変だな

……目から水が零れて来るよ。

 

 

「これはこれは……ようこそ、吉井明久君。 君のことはダークさんから

色々と聞いているよ。『踏み切りスプラッター』に襲われて殺され、その身を

世にも奇妙な半分だけゾンビとして復活させられた不幸少年。まっ君が小生の

ところを尋ねて来たってことはだ、つまるところ『ゾンビ』について、色々と

聞きたいんだろ?」

 

 

そう言った男の人は、廃墟ビルの無機質でボロボロな一室でボロボロの

回転イスに腰掛けていた。その格好は春とは言え、気温的に少し暑いにも

関わらず赤いマフラーを何重にも巻き同色のフード付きパーカーを上半身

に着て、下半身は至って普通なジーンズだった。

 

ここまでは問題ないんだ。ただ唯一変だったのは風邪予防のマスクまで

赤いことだった。いや、それ以前に無駄に派手な赤さを帯びた風邪予防

のマスクなんて一体何処で売っているのかと言う疑問が泡のように浮上

して来る。

 

それが何故か、僕の目の前の男に対する警戒心を余計に煽った。

 

 

「ううん? 君は何故そんなに警戒してるのかな? ああ、これか。

この赤いマスクがそんなに気になるのかい? まぁ普通こんな無駄に

派手な色のマスクなんて無いしね。作る意味も価値も無い。

 

じゃあ、何で僕はそんな意味も価値も無いマスクをしているのかって?

ははっ、そいつは愚問って奴だよ。答えは至って単純明快……僕がそう

言う『怪異』だからだよ」

 

 

そう言って眼前の男の人『鉈崎 裂男』は、赤いマスクを乱暴に取り外した。

 

すごく驚いたよ。何せ……『口が耳まで裂けていたんだから。』

 

 

 

 

 

 





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