バカと明久と怪異鬼譚【凍結】   作:イビルジョーカー

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第五怪 ゆうきヤモリ【前】

 

 

 

~~明久サイド~~

 

 

 

 

人生一体何が起こるかなんて分からないよ。分からないからこそ意味があって、

分からないからこそ未来の楽しみがある。未だ決まっていない、空白に等しい感

じの未来予想図を、人は自分の中で描くと同時にそれを現実のものにしようと奮

闘する。

 

うん、そういった姿勢は本当に微笑ましい限りだ。

 

純粋に僕はそう思うよ。

 

でもやっぱり、何事も未来予想図通りになるとは限らないよね。

 

っていうか、この『人生一体何が起こるか分からない』ってフレーズ、

第一怪辺りで言わなかったかな?

 

まぁ。とりあえずその疑問は置いておくとして。

 

現在この今日という日に至るまで僕は非常に悩んでいた。

 

その原因を語る必要はたぶん、この小説を呼んでいる読者の方々なら分かってる

と思うので要らないと思うけど、一応説明しておくよ。

 

あの『のっぺら坊の一件』が無事収拾がついて一段落した直後、何と何と。

 

あの木下優子さんが僕に告白した。

 

そう100%恋愛的な意味で。

 

もちろん僕としては凄く嬉しい、けど、まだ自分の中では

優子さんの彼氏になる気は有るのか無いのか。

 

情けないことに迷っていた。現在進行形で迷い続けていた。

 

そういった感じで、僕の心は大部分的に且つ非常にセンチメンタルな

気分になってるんだ。

 

ちなみに今日の日付は4月29日で、時刻は10時15分。

 

俗に言うゴールデンウィーク最初の日ということなんだけど、やっぱり心が

どうしても晴れないし、たかが連休なんかでどうにかできるほどの安い悩み

でもないから困ったもんだよ……。

 

で、今僕はそんな個人的に大変な悩みを抱えながら子供の頃から遊んでいる

公園へとやって来ていた。

 

公園のベンチで憂鬱な暗い感じの気持ちを常に抱き続けながら、僕は何気なく

無意味に座っていた。

 

なんだろう。ここは裂男が住んでいる廃墟ビルや墓地と同じくらいの心地良さ

を感じるんだよね。

 

そういえば此処、桜の木があったんだっけ?

 

桜の木には戦争で死んだ人の遺骨が埋まってるって話を聞いたことがあるけど、

もしかしたらそれが原因かも。

 

まっ、普通に考えて高確率でありえないけど。

 

 

「はぁぁ~~やっぱりダメだな僕って」

 

「おやおや、随分と憂鬱そうですね昭久さん」

 

 

ふと、僕を呼ぶ声がしたから後ろを振り返って見ると、知り合いにして人外の友人

『山潟沙弥』がそこにいた。

 

人外。『怪異』。

 

そう……彼女は人間ではないし、特定の条件か、ある程度の霊感を持ってないと

彼女の姿を見ることはできない。

 

『霊媒種』、つまり幽霊の類なんだ。

 

沙弥さんは、ついこの間まで宿魂って言う同じ霊媒種の怪異に憑依されて『踏み切り

スプラッター』っていう人を襲う怪物として都市伝説化されてたんだけど、僕と裂男

の努力の末あって何とか解決して、この通り今は元に戻ってる。

 

ちなみに優子さんの幼馴染であり、親友でもある。

 

 

「ああ、沙弥さんか。っていうか僕の下の名前は『明久』だからね? 一文字間違えてるよ」

 

「おっと! これは失礼しました。では『変態明久』さんで」

 

「『変態』は余計だよ!」

 

「あっははは~~人の胸を愛撫するように触っておいて、よく言い切れますね?」

 

 

その件について分からない人は第一怪、第二怪、第三怪を見てもらうとして、

アレは裂男が悪いんだ!

 

裂男があんなことさえ言わなければ、僕だって胸を揉まずに済んだってのに!!?

 

 

「ふうん。そんなに私の胸は魅力的じゃないんですか?」

 

 

うぐゥゥッッ!? なんて、なんて卑怯な言い方を!

 

そんな……そんな言い方されちゃったら否定なんて、できないよ!

 

そりゃあ、君の胸は良かったよ。

 

できれば一生、君の胸専門の専属マッサージ師になってもいい位に!!

 

 

「まっ、とりあえずそれは置いておくとして、本当にどうしたんですか? まるで世界が

未知のウイルスのせいで終わってしまって、そして自分一人だけが取り残されたような顔して」

 

「やけに比喩が斬新で具体的だね……」

 

 

そんな会話をした後、僕は現在に至るまでの経緯を沙弥さんに説明したんだけど、

話を聞いていた彼女の顔はやっぱり何処か暗い影が差していた。

 

無理もないと思う。だって自分のせいで『優子さんが怪異と関わってしまった』のだから。

 

もし、優子さんがあの時、家出なんかしないで沙弥さんと真っ向から話し合っていれば、

悲劇は起きなかったのかもしれない。

 

でも。それでも。そうだとしても。

 

沙弥さんだって『事件を起こしてしまったの要因の一つ』なんだ。

 

どちらも悪いし、それをとやかく言う資格は……少なくとも僕には無いさ。

 

 

「そうですか。優ちゃん、明久さんのこと、好きになったんですね」

 

「そうらしいよ。で、僕は情けないことに優子さんの告白に応えられず、その結果

三日間の猶予をもらったわけなんだけど、全然自分の中で答えが決まらないんだ」

 

「うわ~~それってかなりのダメ男ですね」

 

「し、仕方ないだろ! その、何ていうか……初めてのことだったし」

 

「でも大抵はその場でイエスかノーかを出すものですよ? 本当にダメダメですね、明久さんは」

 

 

まぁ……確かに僕はダメでヘタレかもしれないね。

 

ああ~~そう思うとますます憂鬱な気分になる!

 

 

「明久さんは、優ちゃんのこと、好きって思うんですか?」

 

「正直に言って分からないよ。でも、もっと優子さんのこと知りたいって

思うところはあるけど、これが恋しているって言う意味で好きなのかどう

か……」

 

「そう難しく考える必要は無いと思いますよ? そもそも人が人を助けるのに

理由なんて要りませんし、逆に言えば意味も何もないんですよ、人を好きにな

るのって。ただ自分が『好きだ』と自覚してしまえばいいんです。そんな『ど

うして好きになったのか』、とか。『相手のどういうところが良いと思ったか

』なんて……所詮は後付け理論に過ぎないんですよ」

 

「そんなもの……なのかな?」

 

「はい。そんなものなんですよ」

 

 

沙弥さんは自信有り気にそう言い、にぱっと笑顔を僕に見せる。

 

もし沙弥さんの言い分が正しいのなら、やっぱり僕は優子さんのことが好きなのかな?

 

もっと、もっと沢山って言うほど。僕は優子さんのことを知りたいって思う。

 

この気持ちを、僕は、『好きだ』って思ってもいいのかな?

 

 

「とにかく。今日中には優ちゃんの告白の答えを出さないといけないんですよね? だったら

早めに答えた方がいいと思います。それじゃあ、私は用事があるのでこの辺で失礼しますけど、

明久さんにとって最良の答えが出せるよう祈ってますから」

 

 

そう言って、沙弥さんは普通に足で歩きながら公園を出て行った。

 

何だか取り残された気分だな~~。この場にいるのは僕一人だけで、他には誰もいないんだから。

 

………っていうか。ゴールデンウィークにも関わらず公園で遊ぶ子供が一人もいないって、

どういうことなんだ? やっぱ大抵は部屋でゲームでもしているのが普通に一般的なのかな?

 

そんなことを思ってると、ある一点一ヶ所に視線が止まった。

 

丁度僕の目の前に池があって、その池の中心部には休憩所があるんだけど、そこで

小学生くらいの女の子が困った様子でキョロキョロと周囲を見渡しながら、ソワソ

ワとした動作を繰り返していた。

 

もちろん僕は一人の年長者として女の子に声をかけたけど、決して変な意味じゃない

からね?何処かへ行こうとして迷っちゃった迷子かもしれないし、そうでなくたって

困ってるのは一目瞭然だ。

 

だったらここは一人の年上男子として、交番へ送り届けるのかが普通ではないか、と。

 

僕は思ったわけなんだ。それで、至って普通且つ気さくに話しかけたつもりなんだけど……。

 

 

「誰だよお前は。俺に近づくな、怪我するぞ?」

 

 

小学生とは思えないほど剣呑で、鋭利さを秘めた殺気と共に以上のセリフで断られた。

 

地味にショックだよ。

 

しかし、僕はこの程度で挫けたりなんかしないのさ!!

 

 

「こらこら、ダメだよ。女の子がそんな『俺』とか『お前』なんて言っちゃわー僕の関節が

とんでもない方向に曲がってるー!!」

 

 

いやいやいやいやいや、何で!? 

 

僕はただ少しだけ君の頭に手を置こうとしただけなのに、僕の右手を掴むな否や一回転させて、

腕一本と一緒にとんでもない方向に捻じ曲げるなんて!!

 

なんて馬鹿力だ! とても小学生とは思えない……が、しかし!!

 

 

「ふふっ、残念だったね。僕は少し……って言うか半分くらい普通じゃないんでね。つまりさ、

君の関節捻じ曲げ攻撃は、まったくと言っていいほど通用しないのさ!!!!」

 

「なっ!? 嘘だろ!?」

 

 

そんな声を聞いたけど、もう遅いよ。何せ君は僕に拘束されているからさ!! 

 

そして君は僕を怒らせてしまった。

 

高校生のお兄さんを怒らすと如何なる罰が下るのか、とくと味わうがいい!

 

 

「そ~~らっ!」

 

「にゃ、にゃはははははははははははは!! やめろ! 擽るな! はははははははははは!!」

 

「はっはっはっはっは! 見たか! 僕の『擽りテクニック』を! そら、こちょこちょこちょ!」

 

 

こんなことを続けること30分。いろいろあって気絶してしまったその子をよく見てみると、この子

の服装が男物に気付いた。

 

ああ~~なるほど。つまり秀吉みたいな『男の娘』と言うわけか。もしくは『中性的』かな?

 

とにかく格好から見ると、上半身は赤い長袖の上に薄紫の半袖Tシャツを着て、下半身は

ベージュ色の短パン。髪の色は黒で長髪。その長髪をポニーテールみたいに後ろで縛って

るのがグッと来るな~って、これじゃあ僕が子供相手に欲情する変態みたいじゃないか!!

 

まぁ、とにかくこのままにしておくにも忍びないし、とりあえず目の前に休憩所があるから

其処のベンチで寝かせてあげよう。

 

でも寝かせたはいいけど、この様子だと当分起きそうにないな。

 

我ながら。やり過ぎた感がすっげー残るなぁ。

 

 

「こんなところで何をしているのかしら? 吉井君」

 

 

聞き慣れた声。それもごく最近。案の定後ろを振り返ってみれば、優子さんが腕を組んで

仁王立ちしていた。うわ~~これ、もしかしてさっきの見られてた?

 

 

「呆れたわよ。何小学生くらいの子供相手にむきになってるの!」

 

 

どうやら、完璧に見られていたようだ。

 

 

「うぐゥゥッ!! いや~~なんて言うか…………あ、あのさ、言い訳してもいいかな?」

 

「できるのなら、どうぞ」

 

「…………」

 

 

できなかった。出合って間もない子供相手に気絶する位の擽りテクニックを披露した時点で

僕ごときに言い訳なんてできる余地があるわけないじゃないか。

 

 

「はぁ~。今日は貴方が提示した三日間の猶予の最終日だけど、答えは大丈夫?」

 

「一応は。っていうか、もしかして僕のこと捜してたの?」

 

「別に、ただ明久君がどんな返答をするかを想像しながら私用で歩いてたら、明久君が

小学生位の男の子を大人気なく苛めてるシーンを偶然見てね。本当に『大人気なかった』

わよ?」

 

「……さいですか」

 

 

なんか、自分が惨めに思えてきちゃうよ。

 

 

「それでその子、貴方の弟さん?」

 

「え? ああ、違う違う。たまたま困ってたから声をかけたんだけど、

『俺に近づくな』って言われちゃってさ。それでさっきのアレになった

ってわけなんだ」

 

「ふ~~ん。そうなんだ」

 

 

なんかあんまり信じて貰ってないような感じもするけど、僕は嘘偽りなく答えただけだからね?

 

 

「ん……うぅぅん……」

 

「あっ、目が覚めた?」

 

「うにゅっ……なんか変な野郎に何かされたような……」

 

 

数分前の記憶が無くなってる!? たかが擽り程度で? 恐るべし、僕の擽りテクニック!!

 

 

「まぁいいや。とにかくお前等、俺に近づくんじゃねぇよ」

 

 

う~ん、やっぱり相変わらず他人を寄せ付けさせない殺気を出すんだよな、この子。

 

幼い小学生位の子供の対応に立往生な僕とは違い、それでも優子さんは、まるで怖気づく

様子もなく男の子に近づくと、両足を屈み込んで優しく微笑みかけた。

 

 

「ねぇ貴方、もしかして迷子かな? だったらお巡りさんの所に行こうか?」

 

「別に迷子じゃねぇし。ただ探し物があって、この公園に来ただけだよ……」

 

「そっか。じゃあ、その探し物をお姉ちゃんとそこにいるお兄ちゃんが一緒に

探してあげようか?」

 

「!! うるせぇよっ! 余計なお世話なんだよ! いいからあっちに行けっつーの!!」

 

 

剣呑な雰囲気を消すことなく、男の子は優子さんに噛み付いて来る。

 

なんだろ……まるで探し物を見られたくないかのような…………も、もしや! 

探し物って18禁のエロ本もしくはアダルトDVD!? なるほど、確かに見

られたくないよね、ソレは。

 

僕だってエロ本は常に試行錯誤を駆使して姉さんや妹達にバレないよう隠蔽してる

から、その気持ちは痛いほど…

 

 

「えいっ」

 

「へ?≪グサッ≫ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!! 

ぼっ僕の目が煮え滾るように痛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!????」

 

 

いや、本当は痛くないんだけどね。

 

昼間は半分くらい感覚機能が死んでるような状態だから、痛覚なんて殆ど無いに

等しいんだけど、目をグサッとやられて痛みをまったく感じない人なんていたら

、相当に不審がるでしょ? だからこうしてワザとらしいかもしれないけど、一

応は演技してるんだ。

 

優子さんはともかく男の子は僕のこと知らないわけだし……安易に話していいものでもないしね。

 

 

「(ボソッ…)本当は痛くない癖に、随分とワザとらしいことで」

 

「いきなり目潰しをするなんて、どういう了見なんだ君は! まさか僕に恨みでもあるの!?」

 

「別に。ただ何となく淫猥で最低なこと考えてたように思えたから、つい、ね」

 

 

お、女の子の勘って何故こうも鋭いんだ?

 

 

「と、ともかくさ、意地なんか張ってないで此処は誰かに頼んだ方が得策だと思うよ?」

 

「だ・か・ら! それが大きなお世話だっつってんだろうが!!」

 

「いやいや、ここは一つ冷静に考えてみようよ。少年A君。手分けして探せば効率は

良いし、見つけ出せる確率も断然上がる。普通に考えれば君だって分かる簡単な答え

だろ?」

 

「お前みたいな馬鹿に言われる筋合いはねぇよ」

 

「確かに。貴方みたいな馬鹿に言われたら、誰であれ、色んな意味でお終いよね」

 

「君達はそんなにも僕を穢したいの!? 名誉毀損だ!」

 

 

はぁ~何か話が脱線しちゃったけど、とりあえず軌道に戻そう。

 

 

「ねぇ、君の名前を教えてもらえないかな?」

 

「………神宮寺勇輝」

 

 

僕が名前を尋ねると、少年A君はやや不機嫌そうだけど素直に答えてくれた。

 

神宮寺。なんかご利益がありそうな名前だな。あれ? そう言えば僕の

近所に神宮時って名字の家があったような……そこの息子さんかな?

 

とにかく神宮寺君を説得すること約5分。ようやく探し物を一緒に

探すことを許可してくれた。とうの本人は未だに納得がいかず渋々

って感じだけど。

 

そんなに広くない公園だし、探そうと思えば早く見つかるかな?

 

ってな感じでそう思ってたんだけど……何かが変だった。

 

一緒に協力して探し物を探し出す為に効率よく分かれて探し始めてから1時間。

 

神宮寺君が探してるのは、三つ年上の双子の姉に貰った赤い三日月の形をした

ペンダントらしいんだけど、それは3分も経たない内に見つかった。

 

ほんの2m先の公衆トイレの入り口付近で見つけて、すぐ取ろうとしたんだけど

………消えたんだ。

 

まるで煙のように。陽炎のように。まるで始めから其処に無かったかのように。

 

最初は気のせいかなって思ってたんだけど、今度は自動販売機のすぐ傍にあった。

 

距離的には2m以下だったし、僕の目から見てもアクセサリーの存在は十分に確認できたんだ。

 

でも……また消えた。

 

それから何十回も同じようなことが立て続けに起きて、気が付けば1時間は経過しちゃったんだ。

 

それで丁度良く集合の時間だったから、指定の場所になってるさっきの休憩所に戻ってみると

結局のところ、優子さんも勇輝君も目的の物を探せなかったらしい。

 

しかも、二人とも僕と同じように『あの奇妙な現象』に出くわしていたんだ。

 

遠くで見るとあるのに、いざ近くに来て取ろうとすると無くなる怪奇現象。

 

僕と優子さんは、こういった類のものを知っている。

 

これは……十中八九『怪異の仕業』だ。

 

 

 





今回は多分、いつもよりかは早く投稿できたと思います。

それにしても物語シリーズセカンドシーズン23話のあのOP……正直何回か
思いっ切り吹いちゃいましたwww
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