Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』 作:七宮 梅雨
Saint Snow。
函館聖泉女子高等学院に通う2人の姉妹がユニットで組むスクールアイドル。
メンバーは3年生である鹿角聖良と彼女の妹である1年生の鹿角理亞。
結成してあまり月日は経っていないが、彼女達の綺麗な容姿や力強い歌声、ダイナミックなパフォーマンスが魅力的で全国のスクールアイドルの中でも注目を浴びている。
俺は意外な気持ちだった。聖良姉ちゃんも理亞姉ちゃんも確かに幼い頃から容姿は凄く良かったが、別にアイドルとかは興味無かったはずだ。俺がいなくなった間に何かあったのだろうか??
しばらく、Saint Snowについて調べていると、無料で見れる彼女達のPVを発見した。
明「姉ちゃん達の動画…………」
俺は恐る恐るその動画を開いた。
すると、映像の中から可愛らしい2人の姉妹が映し出されると……………
聖良『人殺し…………』
聖良『もう……………私達に関わらないで』
明「うっ!!」
フラッシュバックで過去に聖良姉ちゃんに言われたことを思い出し、その影響で体の中から何かが込み上げてくるのが分かった。なので、俺は口に手を当て男子トイレの方へと直行し、個室に入って便器に向かって込み上げてくる何かを吐き出すために口を開いた。
明「おえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
姉2人のことはもう受け入れたつもりだったのだが、どうやら俺はまだ弱かったようだ。
そして、吐き終えた俺はあの動画を見たことによって、出来ては行けないとある欲が出来てしまった。
姉ちゃん達に……………一目会いたいと。
〜数日後〜
ついに東京に行く日がやって来た。
俺は集合場所である千歌先輩の家である旅館の前に行くと既に私服姿である梨子先輩が待っていた。早いなと思ったが、千歌先輩の家の隣だし当たり前か。
梨子「奥山くん!!おはよう」
奥山「おはようございます。」
梨子「あれ?奥山くんってメガネかけてたの??」
奥山「いつもはコンタクトですけど、たまたま昨日できれちゃって………。」
俺は、あはは作り笑いしながら答えるが、もちろん嘘である。コンタクトはまだ家に沢山あるが、もし東京で偶然と彼女達に会ってしまった場合の対策として出来るだけ別人を装った。
MARVELと刺繍してある帽子に、メガネ。そして、服装も黒いTシャツの上に灰色のパーカーというちょっと暗めの感じの服装にチョイスしてみた。これだったら、もし遭遇したとしても一瞬でバレることは無いだろう。
そもそもあの二人が俺の事を覚えているのかどうかも疑問に思うところではあるが…………。
千歌「おっはよー。」
旅館から千歌先輩がニコニコとしながらやって来た。めちゃくちゃダサい格好で。
明・梨子「………………」
俺と梨子先輩は驚きすぎて、言葉が出なかった。本当にダサすぎる!!あまりファッションに詳しくない俺でもそれだけは分かる。
梨子「東京だからってそんなに構えなくても………」
うん。梨子先輩の言う通りだ。
ルビィ・花丸「おはようございまーす」
お、この声はルビィさんに花丸さんだな。
明「おはよう…………っておい。」
やって来たルビィさんと花丸さんの2人は千歌先輩と劣らずのすごい格好でやって来た。
ルビィ「どうでしょう?ちゃんとしてますか??」
してませんね。めちゃくちゃ小物つけとるやん。
花丸「こ、これで渋谷の険しい谷も超えられるずら??」
俺達は東京に行くんですよ??なんで、登山の格好なんだよ。ヘルメット、点滅すな!!眩しいから!!
このあと、3人は梨子先輩に怒られ、ようやくまともな格好に着替えた。もしかして、曜先輩や善子さんも服装ヤバいんじゃないだろうか??
俺は不安な気持ちになりながらも、千歌先輩のお姉さんの車に乗り、駅に向かった。
〜駅前〜
俺の予測は半分当たってて半分外れてた。
駅前で待っていた曜先輩はまともな格好だったが………
善子「冥府より、数多のリトルデーモンを召喚しましょう」
善子さんの格好が、3人よりも酷かったです。はい。
周りに一般人が不思議がってスマホでパシャパシャと写真を撮っていた。これ、ネットの晒し者にならないだろうか??
千歌「クックックッ、善子ちゃんもやってしまいましたね」
おい、そこのアホ3人。真面目ぶってるけどお前らも数分前まではアレと同類だったんだからな!!
千歌「そもそも奥山くんだって、格好変じゃん!!メガネだし!!帽子被ってるし!!」
千歌先輩の言葉に、1年生3人も「そーだ、そーだ」と連呼する。やれやれ………
明「……だそうですが、どう思いますか??梨子先輩。曜先輩。」
梨子「少なくとも、貴方たちよりは何百倍もマシよ。」
曜「私も帽子被ってるしね…………」
明「だそうです。」
ニッコリとして、そう言うと千歌先輩と1年生3人は「くそー!!」と叫びながらorzのポーズをとる。おいおい、ここ駅前だぞ!?やめれ!!
この後、千歌先輩のクラスメイトの子が現れ、差し入れでのっぽパンをくれたあと、俺達は電車に乗って東京へ向かった。
千歌「ねぇねぇ、東京に着いたら絶対にμ'sが練習場所として使ってた階段登って、神田明神に行こうね!!」
〜国官理空港〜(??視点)
私達は東京でライブする為、空港へと来ていた。もうすぐ、私達が乗る便がくる。
??「姉様??」
姉様「…………どうかした??」
??「………いえ、なんでもないわ。」
お姉様は微笑みながら答える。けど、ずっと姉様と一緒にいた私は分かる。
姉様は嘘をついている………と。
原因も知っている。
恐らく、あの時あの瞬間にあいつに言ってしまったことだろう。
姉様は、自分のやってしまった過ちを自覚してからはずっと心の中で自分を責めている…………。
私は姉様を助けたい。けど、どうしたらいいか、分からない。
あいつを、姉様に会わせるのも考えたがそれは難しいし、効果としては諸刃の剣だ。確かにあいつに会えれば姉様は良くなるかもしれない。けど、きっと過去にやってしまった過ちを思い出し、自分をさらに傷つけてしまうかもしれない。あいつも、あいつで私達を恨んでいるかもしれない。
だからこそ、私は姉様と一緒にいる。だって、私は姉様のことが好きだから…………。いつか、姉様を助けてあげたいから……………。
??「ねぇ。姉様。」
姉様「どうしたの??」
私は姉様に向かって微笑みながら言葉を出した。
??「もし、東京に着いたらライブの成功を祝って神田明神へ行きましょ。」
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そして、次回、遂に……………,!?