Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』   作:七宮 梅雨

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『人殺し』は2人に感謝する。

明「鞠莉先輩、ダイヤ先輩。お話があります。」

 

 俺の言葉に、2人は何となく察したのか他のメンバーを先に行かせたあと、外に出て近くにあったベンチに座った。

 

鞠莉「それで、話はなんなのかしら??」

 

明「もう分かってるでしょ??」

 

鞠莉「さぁ。マリー、頭悪いから分かんナーイ。」

 

明「惚けないでください」

 

ダイヤ「鞠莉さん。ここはふざけるところではありませんよ。」

 

 ダイヤ先輩の言う通りだ。彼女の言葉で鞠莉先輩も「sorrysorry」と言いながら俺の方に顔を向ける。

 

鞠莉「マネージャーの件についてネ??」

 

明「分かってるじゃないですか」

 

鞠莉「そろそろ来るかな〜って思ってたからね。まさか、合宿中に来るとは思ってなかったけど」

 

ダイヤ「それで、貴方はどうするのですの??」

 

 

明「…………辞めるつもりでいます」

 

 

鞠莉「数秒躊躇ったってことは、まだ心の中では迷ってるってことかしら??」

 

 俺は小さく舌打ちをする。少しばかり躊躇ってしまったことを見逃さなかったか。これは正直に言わなくちゃな。

 

明「俺がマネージャーになったのは姉ちゃん達に会うためです。それはもう東京のイベントで達成されました。だから、俺がここにいる理由はもうないんです」

 

 俺は「けど………」と付け加える。

 

 

明「ここにいる時間が長くなればなるほど、ずっとここにいたいという気持ちが湧き出るんです。けど、俺は所詮『人殺し』。このまま、俺がスクールアイドルに関わればいつかAqoursと姉ちゃ……………Saint Snowに危険な立場に見回ってくるかもしれない。俺はそれが怖い」

 

 俺は俯きながら本音を答えると、数分沈黙の時間が流れた。

 

 

 唐突に俺は温かい感触に包まれた。

 

 

 俺は驚きながら、顔を上げると鞠莉先輩が俺に抱きついていた。

 

 

鞠莉「ごめんなさい。」

 

 

明「え?」

 

 

 何で…………俺、謝られたんだ??

 

 

鞠莉「今まで、私は奥山くんのためだと思ってマネージャーをやらせてたわ。けど、さっきの言葉を聞いてそれは違ってたというのに気づいた。逆に君を苦しませてしまっていたのね。」

 

 鞠莉先輩は涙を流し、肩を震わせながら言葉を発した。それを見て、俺は返す言葉を見つけることができなかった。いつもふざけている彼女が、俺のために涙を流すなんて想像もしていなかった。

 

 

ダイヤ「奥山さん」

 

 鞠莉先輩程ではないが、うっすらと瞳に涙を溜めているダイヤ先輩が俺に話しかける。

 

ダイヤ「私は貴方に感謝していますわ。あの時、貴方が言ってくれたおかげで私は自分に素直になることが出来た。だから、もし貴方の出した答えがどんなものだとしても私達はサポートしますわ。ね、鞠莉さん」

 

鞠莉「もちろんよ。だから、また相談したいことがあったらマリー達の所に来てちょうだい。」

 

明「……………はい。ありがとうございます」

 

 

 この2人に相談して良かった………と、心の底からそう思った。

 

 

 ダダッ……………

 

 

 

明「ん??」

 

 後ろの方から、何か走るような音が聞こえたような………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜十千万〜(花丸視点)

 

 

 

 軽い気持ちで、3人のあとを追いかけたらとんでもないことを聞いてしまったずら。

 

 マルは顔を青くしながら部屋へと戻ると、ルビィちゃんが心配そうに近づく。

 

 

ルビィ「花丸ちゃん、大丈夫??随分、トイレの方が長かったけど」

 

花丸「心配かけちゃってごめんずら。少しだけお腹が痛くなっちゃって………えへへ。」

 

ルビィ「そりゃあ大変だよ!!今日は早く寝た方がいいよ!!」

 

花丸「うん。そうさせてもらうずら」

 

 そう言って、マルは布団を敷いて横になる。

 

 そして、周りがワイワイ騒いでいる中、先程聞いてしまった彼の言葉がリピートとなって耳の中で流れる。

 

 

 俺は所詮『人殺し』。

 

 

 『人殺し』…………、つまり、この言葉通りならば明くんは過去に人を殺めてしまった過去があるということになる。

 

 

 まさか、それが原因で明くんは元気をなくしてるずら??けど、それだとSaint Snowの2人との関係性が分からないままずら。

 

 

 

 

 

 

花丸「もっと…………もっと、情報を調べないと。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だって、マルは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜茶房菊泉〜(理亞視点)

 

 

聖良「理亞〜?」

 

理亞「!?」

 

 姉様の呼びかけで、私はビクッと肩を震わせてしまう。どうやら、ツイートを見てから少しばかりフリーズをしていたようだ。

 

聖良「理亞、大丈夫??気分が悪いように見えるけど」

 

理亞「なんともないわ。すぐに行くから」

 

聖良「そう。じゃあ、先に戻ってますよ」

 

 姉様は心配ながらも、そう言って私の部屋から出ようとする。

 

 

 すると、勝手に口が開いてしまった。

 

 

理亞「ねぇ、姉様!!」

 

聖良「ん?なんですか??」

 

理亞「あのね…………」

 

 

 

 もしかしたら、明がいるかもしれない…………。

 

 

 と、私は続けて言いたかった。けど、言おうとした瞬間に最近の姉様の様子を思い出す。

 

 今の姉様は過去のトラウマによるフラッシュバックはなく、活き活きとしている。むしろ、明のことを伝えたらまた元に戻るかもしれない。

 

 私は、続けて言葉を出すことが出来なかった。

 

聖良「何か言いたいことがあるんですか??」

 

理亞「いや、なんでも………ないわ。よくよく考えたら大したことじゃなかったし。」

 

聖良「そうですか。じゃあ、練習の方に戻りましょうか」

 

理亞「分かったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このやり取りで私は1つ分かったことがある。

 

 

 

 

 

 

 

 私は………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最低な姉であり妹だということに。


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