Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』 作:七宮 梅雨
あと、いつもより大分短めです。
~千歌視点~
あの事件から数日が経過した。
肩にナイフが刺さった花丸ちゃんは救急車に運ばれて、ライブ後に乱入した男の人と気絶した奥山くんは警察の人達に連行された。
事件の発端である男の人は、数日前に警察署から逃亡したこともあり有罪判決、奥山くんは2日ほど警察署にいたけど鞠莉ちゃんが手配したエリート弁護士の弁護によって無罪判決となり、昨日釈放されたらしい。
その報せを聞いた私達は、すぐに奥山くんの住んでいる家へとやって来た。釈放されてからは、奥山くんに連絡を送っても一切返事は来ず、しかも気づいたらLINEのAqoursのグループから抜けていた。
曜「奥山くん………大丈夫かな??」
ダイヤ「少なくとも大丈夫ではないと思いますわ。じゃなきゃ、彼がAqoursのグループから抜けるはずないですもの。」
ルビィ「うゆ…………」
きっと、奥山くんは責任を感じて私達から距離を取っているに違いない。それは違うんだって言うことを彼に伝えなきゃ。
千歌「よし、行こう!!」
私達は玄関前まで行き、恐る恐るインターホンを押す。すると、
零『はーい。どちら様ですか??』
押してから直ぐに女性らしい声が聞こえてきた。奥山くんのお母さんかな??
千歌「私達、奥山くんと一緒に活動してる浦の星女学院スクールアイドル『Aqours』です。…………今日は奥山くんのお見舞いに来たんですけど………」
零『……………ちょっと待っててね』
少し待つと、ガチャと扉が開き中から1人の女性が現れた。
零「いらっしゃい。私の名前は奥山 零。まずは上がってちょうだい」
零さんと名乗る女性は「どーぞどーぞ」と言いながら私達に家から上がるよう促す。私達は互いに顔を見つめあったあとに、「お邪魔します」と言って家に上がって行った。
千歌「あの………奥山くんの様子はどうですか??」
零「……………見てもらえれば分かるわ」
そして、私達は零さんと共に、『明』という木製のネームプレートがぶら下がっている扉の前へとやって来ていた。この扉の向こうに奥山くんがいるんだ。
零「明ちゃん。お客さんが来たわよ。………入れるわね」
コンコンと零さんがノックし、小声でそう呟いたあと扉を開ける。
私達は奥山くんの部屋の中へと足を踏み入れる。するとそこには
生気を全く感じられない奥山くんがベットの上で横たわっていた
千歌「奥山くん…………」
彼の今の姿は、最後に見た時と大いに変わっていた。髪の毛は更にボサボサとなっており、目の下には大きな隈、そして目のハイライトが無くなっていた。数日間、何も食べ物を口にしていないのか少しだけ頬が痩せこけていた。たった数日でこんなにも変わるものなの??
彼の姿を見た他のみんなは私と同じく顔を青くしていた。ルビィちゃんや、善子ちゃんの2人に関してはく涙を流すほどだった。
千歌「み、みんなでお見舞いに来たよ。」
明「………………」
問いかけても、奥山くんは何も反応しなかった。私達を無視しているだけなのか、それとも反応したくても反応することが出来ないのかどっちなのか分からなかった。
それでも、私は諦めなかった。
千歌「まだ、花丸ちゃんのこと気にしてる??」
梨子「千歌ちゃん!?」
明「………………」
彼にとって禁句といえる言葉を出しても、彼は無反応。ただ、ボーッとして天井を眺めるだけだった。
千歌「このあと、私達花丸ちゃんのお見舞いに行くんだけどさ、奥山くんも一緒にどう??」
明「………………」
未だに、彼は反応してくれない。
千歌「お母さんに聞いた話によると、花丸ちゃん明日か明後日には退院できるんだって。でも、明後日だと梨子ちゃんが東京に行っちゃうから明日に退院して欲しいよね。」
明「………………」
ねぇ………何か言ってよ。
千歌「だから……………もし明日花丸ちゃんが退院するなら…………一緒に………行かない??」
明「………………」
どうして…………何も言ってくれないの??少しだけでも反応してよ。
ダイヤ「千歌さん…………」
ダイヤさんが気まずそうに私の肩に手を置く。彼女の方に振り向くと、ダイヤさんは顔を左右に揺らす。
まるで……………
ーーーー彼にこれ以上、何を言っても無駄だと言っているかのように……………
奥山くんの部屋から出ると、零さんが私達に近づいてきた。
零「その様子を見ると、ダメだったみたいだね」
果南「まるで、こうなることを分かっていたかのような言い方ですね。」
少しだけ苛立った表情をしながら答える果南ちゃんに対して、零さんは「まぁね」と素っ気なく答える。
善子「貴女………自分の息子があんな風になってるのよ!?どうしてそんな態度がとれるのよ!!」
零さんの態度に今度は善子ちゃんが顔を赤くして零さんに向かって怒りの言葉をぶつける。
それでも、零さんは何一つ表情を変えずに私達に言葉を投げかけた。
零「貴女たちに話があるわ」
曜「話ですか??」
零「えぇ。明ちゃんの過去について………ね。」
零さんのこの言葉によって、私は偶然なのか鞠莉ちゃんとダイヤさんが少しだけバツの悪そうな表情をしていたのを見逃さなかった。
今年中に終わらすって言ったけど無理だ。
だって、急に忙しくなるなんて誰も思わんやん。
今年中にあと2、3話ほど更新できたら満足。