Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』   作:七宮 梅雨

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更新遅れてすみませんでした。




こうして彼女は『人殺し』を引き取る。前編

 ラブライブ本戦の出場をかけた予選のライブが明日へと迫っている今日。

 

 奥山 明が住んでいる家から少しだけ離れた所にある小さなボロボロの道場の中で、1人の女性が正座をしていた。

 

 女性は正座をしたまま目を瞑った。いわゆる、瞑想というものである。

 

 彼女は瞑想をしている最中にふと、過去の事を思い出していた。

 

 

 ~20年前~

 

 

 『自分でやると言ったからには必ずやり遂げ。例え、それがどんなに高い壁だとしても。ゆっくりと時間をかけて乗り越えていきなさい。』

 

 

 この言葉は、彼女の父親がまだ幼かった頃の彼女に送った言葉である。

 

 20年前の彼女は身体が凄く弱かった。そのせいで周りから虐められていた。そんな自分が大嫌いだった。

 

 だから、彼女は空手の道場を開いて師範をしている父親に空手を教えて貰った。その際、彼女は父親に言った言葉が

 

 

 『弱い自分に勝ちたい。』

 

 

 だった。

 

 

 しかし、現実というものはそう上手くはいかない。当然、空手の稽古は辛いものだった。

 

 毎朝4時に起床して、2時間ランニング

 

 ランニング終わったあとは、学校に行く30分前までひたすら型の稽古。その後、30分間クールダウンさせ学校に向かわせる。

 

 もちろん、学校でも稽古は続いていた。彼女は父親に持たされた握力を鍛えるハンドグリッパーを持たせ、登校中や授業中、そして下校中にひたすら握らせるよう指示出していた。

 

 そして、学校から帰ってくるとまずは1時間から2時間ほど学校の宿題や予習、復習などの時間を与え、そこからは夜遅くまで型の稽古や組手をするという過酷な日々を彼女は送っていた。

 

 当時、まだ7歳だった彼女は稽古をして約2ヶ月ほどで稽古を辞めたいと父親に告げた。むしろ、この過酷な練習メニューを2ヶ月間続けたことに驚きである。

 

 しかし、父親はそれを許さなかった。むしろ稽古の量が更に増加した。

 

 それによって、彼女は泣いてしまった。

 

 

 その時に、父親は彼女にあの言葉を送った。優しい微笑みをしながら。そして、綺麗なタオルで彼女の涙を拭いながら。

 

 

 その言葉を聞いた彼女はどうして父親に稽古を頼んだのか、その理由を改めて思い出す。

 

 

 『弱い自分に勝ちたい』

 

 

 そうだ。自分は弱い自分に勝ちたくて父親に稽古を頼んだ。確かに稽古は辛い。けど、もし辞めてしまったら??

 

 

 

 弱い自分に負けてしまうことになる

 

 

 

 そんなの………………嫌だ!!

 

 

 

 そして、彼女は決心し真剣な表情をして父親に言葉を出した。

 

 

 『パパ…………、私を強くして』

 

 と。

 

 

 それから約10年間彼女は父親の稽古を文句一つやり遂げた。しかも、全国高等学校空手道選手権大会で見事優勝を成し遂げた。

 

 この時の決勝戦の相手は、彼女は何回か戦ったことがあったが、1回も勝つことが出来なかった。しかし、今大会は勝つことが出来た。

 

 大きなトロフィーを持って彼女は父親の所に行くと父親は彼女に一言だけ呟いた。

 

 

 『ようやく勝てたな。おめでとう』

 

 

 『勝てた』……………、この言葉の意味は当然、決勝戦の相手のことではない。

 

 弱い自分に勝てた……………。勝てたんだ!!

 

 

 改めてそう思った彼女は涙を流しながら、父親に抱き着いた。感謝を込めて。

 

 この瞬間はきっと彼女は一生忘れることの無い日となるだろう。

 

 

 …………………と、そう思っていた。

 

 

 しかし、その1週間後ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優勝祝いの家族旅行で交通事故に遭い、彼女以外の人物は他界してしまった。勿論、彼女を強くしてくれた父親までも……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 重症を負いながらも奇跡的に無事であった彼女は1人となってしまった。しかし、事故の影響で彼女は空手が出来なくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1ヶ月ほど、彼女は家族の死や、空手が出来なくなったことにより精神的に追い込まれ部屋に引きこもってしまった。だが、仲の良い親戚や学校の先生達の励ましによってなんとか2ヶ月後には高校に通えるまでは立ち上がることができた。

 

 

 彼女の親戚からは自分の家に来るよう何回も勧められたが、彼女はそれを断った。せめて場所だけでも残しておきたかったから。だから彼女は17歳にして1人暮ししていた。お金に関してはさほど問題は無かった。

 

 

 

 

 

 しかし、立ち直ったと言っても彼女はどこか上の空だった。

 

 

 

 

 

 

 高校を卒業してから数年後のこと、そんな彼女にある転機が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 それは、12月12日の寒い日のことだった。

 

 

 

 

 

 

 担任の勧めで彼女は児童施設のボランティアへとやって来ていた。内容としては、普通に児童と関わるだけというシンプルなものだった。

 

 この施設にいるほとんどの子供達は物心がつく前にこの施設に送られてしたらしい。この子たちは自分と一緒で一人ぼっちの子ばっかなんだと、彼女は同情していた。だからこそ、少しでも楽しい時間を送らせてあげようと思っていた。

 

 

 そして、2時間ほど彼女は子供達と遊んだあと御手洗に行くためにトイレへ向かおうとした瞬間………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1人ぼっちでいる赤紫色の髪型をした男の子が視界に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




近いうちに更新します

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