Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』   作:七宮 梅雨

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普段より、少し短めです。



『人殺し』よ。おかえりなさい

 

 〜電車〜

 

千歌『見つけたいんだ。μ'sと私達のどこが違うのか。μ'sがどうして音ノ木坂を救えたのか。それをこの目で見て、皆で考えたいの。』

 

 

 この言葉は、数日前に千歌先輩がAqoursのLINEグループで通話した時に発言したもの。この時の俺は、零さんの社員旅行の行き先場所の驚きはあったものの、この言葉だけは印象が強く頭の中に残り続けていた。

 

 

 現在、俺達Aqoursは電車に乗って東京駅へと向かっている。

 

 

 他のメンバーは楽しく会話したり、ゲームしたりなどして時間を潰しているが俺は1人で窓をポケーっと眺めていた。

 

 

 そして、気づかれない程度で俺は千歌先輩の方に視線を移す。今は曜先輩と果南先輩の3人でトランプを楽しんでやっている。だが、何かを悩んで焦っているようにも見える。

 

 その原因の種は千歌先輩の言葉からある程度察している。

 

 

明「察しているからこそ………これだけは放っておけないな。」

 

花丸「ん?明くん、何か言ったずら??」

 

明「別に何もだよ。あ、じゃがりこあるけど食べる??」

 

花丸「食べるずら〜♡」

 

 例え、相手が女性で1つ上の先輩でAqoursのリーダーだとしても関係ない。俺は俺のやるべきことを全うする。

 

 

 なぜなら、俺はAqoursのマネージャーだから。

 

 

 

 

 ~東京駅〜

 

 

 

 こうして数時間電車に揺られていた俺たちAqoursは再び東京へとやって来ていた。

 

千歌「賑やかだねぇ………」

 

 まぁ………東京ですからね。俺は2回目だからまだ少しだけ緊張してるけど………

 

ダイヤ「負けてはなりませんわ!!東京に飲まれないよう!」

 

 なんか、ダイヤ先輩が東京に着いてからギャーギャー言ってる。周りの人に迷惑なんでやめていただきたいんだけど

 

千歌「なんであんなに敵対視してるの??」

 

ルビィ「お姉ちゃん、小さい頃東京で迷子になったことがあるらしくて」

 

 なるほど………。確かにそれは敵対視しちゃうわ。一瞬で、幼い頃のダイヤ先輩が線路図見て『ぴぎゃー』って叫んでいるのを頭の中で思い浮かんでしまった。いや、本当に言ったのかは分からないけどね。

 

千歌「トラウシだね」

 

明・善子「トラウマです(ね)」

 

 お、珍しく善子さんと言葉がシンクロした。ハイタッチしておこう。イエーイ。

 

 

 そんなわちゃわちゃしながら、歩いているとロッカーで何か必死そうに荷物を詰めている見慣れた人物を発見した。

 

千歌「あ、梨子ちゃん!!」

 

梨子「み、みんな!?」

 

 久しぶりに見た梨子先輩は俺達の姿を見て、嬉しそうな表情を………………せずに逆に少しだけ気まづそうな表情をした。いや、まさかな………

 

千歌「何入れてるの〜??」

 

梨子「えぇと………お土産とか〜」

 

 あ、察し。よく見たら、詰めている袋の中のほとんどが薄い本じゃないか。つまり……あれは………

 

 

 ドサッ

 

 

梨子「あ」

 

明「あ」

 

 必死に詰めていた袋が落ち、中からは『カベドン』と書かれている薄い本が出てきた。やっぱりか…………。しかも、どんだけ買ってるん??夏コミでも行った??

 

 そして、千歌先輩がそれを拾おうとした瞬間、梨子先輩が千歌先輩を目隠して見せないようにしていた。しかし、梨子先輩よ。この行為のせいで確かに千歌先輩にはバレなかったけど、他のメンバーには普通にバレましたよ。

 

 

梨子「さぁ!!じゃあ行きましょうか!!」

 

 

 こと無くして、無事に薄い本をロッカーにぶち込んだ梨子先輩は笑顔で言葉を出した。そして、俺の姿を見た瞬間に彼女は微笑みながら俺の近くまで寄ってきた。

 

梨子「久しぶりだね、明くん。」

 

明「…………そうですね。」

 

 実の話、Aqoursに再び戻ってきてからは梨子先輩に何度かは連絡していた。だが、こうしてお互いに顔を合わせたのは俺がやらかしてしまったあのライブ以来だ。なので、少しだけ緊張してしまう。

 

 

 

梨子「おかえりなさい。」

 

 

 

明「え?」

 

 彼女に何を言おうか考えていると、梨子先輩が言す。唐突の言葉に俺は驚いてしまった。

 

曜「梨子ちゃんね………。東京にいる間、ずっと明くんのこと心配してたんだよ??」

 

 いつの間にか俺の傍まで来ていた曜先輩が俺の耳に顔を近づけてコソッと小声で呟いた。本音を言うと、驚きだ。

 

 

曜「それにね………。私達が付けてたあのシュシュも実は梨子ちゃんから貰ったやつなんだよ。勿論、明くんが付けていたやつも。」

 

 

明「え!?」

 

 それも知らなかった。てっきり………あれは曜先輩かルビィさん辺りが衣装関係で作ったものだと思っていた。

 

 

 俺は再び、梨子先輩の方に顔を向ける。すると、彼女は優しく微笑んでいた。

 

 

明「はは…………」

 

 

 そして、俺はその姿を見て全てが納得したかのようについ笑ってしまった。思わず顔に手をつけてしまった。

 

 

 あぁ、そうだ。そうだった。彼女………桜内梨子先輩はこの『人殺し』を受け入れてくれたスクールアイドルAqoursの内の1人だ。

 

 

 例え、俺を受け入れてくれたあの日にいなかったとしても。

 

 

 ならば、俺も彼女に返す言葉はタダ1つ。余計な言葉なんていらない。

 

 

 緊張しながらも、俺はビシッと気をつけをしてから梨子先輩の目を見て、はっきりと口を動かした。

 

 

明「ただいま………です!!」

 

 

梨子「うん!!」

 

 

 こうして、俺達Aqoursは約1ヶ月ぶりにメンバーが揃った。

 

 

 

 

 

 




次回、明、Aqoursのリーダーに物申す!?

ぜってぇ、見てくれよな。

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