Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』 作:七宮 梅雨
0から1にするという目的を決めた俺達Aqoursは、ラブライブ決勝進出するために日々練習に明け暮れていた。
歌詞も作曲もダンスの振り付けもだいたいは形となっており、今のところは問題なく順調に進んでいる。
明「この歌詞のタイミングで、照明を白から赤に切り替えてっと……………あ、ここで千歌先輩にスポットライト当てるのもいいかもな。あとで先輩に相談してこよう。それで…………」
俺も、Aqoursのマネージャーとしての仕事を全うしていた。今は、屋上の片隅でライブの照明を考えている。今回のライブで良い演出を出すには照明が重要となっている。なので、今まで以上に照明案は丁寧に考えなければならない。
明「そろそろ、先輩達も休憩かな。」
照明案が一段落ついた俺は立ち上がって、近くに置いておいたクーラーボックスに手をかける。パカッとクーラーボックスを開けて中からスポーツドリンクを9本取り出して、カゴのなかに入れる。くぅ〜、キンキンに冷えてやがるぜ。あと、毎度お馴染み俺特製のレモンの蜂蜜漬けに、塩飴も。
Aqoursの元に行くと、やはり休憩していた。みんなの表情を見た感じ、辛そう。まぁ、こんなクソ暑い中、屋上でひたすら練習してたら疲れるわな。
俺はすぐにメンバーのところに駆け寄り、スポーツドリンクを渡しに行こうとした。まずは1番近くにいたダイヤ先輩からだ。
明「ダイヤ先輩、お疲れ様です。これ、どうぞ」
ダイヤ「これはどうもご親切に。ありがとうございます。」
ダイヤ先輩はそう言って、スポーツドリンクを受け取りゴクゴクと飲んでいく。飲む姿はおしとやかで美しいんだけど、減っていく勢いが凄い…………。めっちゃ喉渇いてるじゃん。
ダイヤ「ぷはっ………。やっぱり、明さんが作ったドリンクは美味しいですわ。」
明「ありがとうございます。」
美味しいって言われると、嬉しいし作った甲斐が有るよね。また明日作ってこよ。
明「はい、ルビィさん」
ルビィ「わーい。ありがとう」
ルビィさんは嬉しそうにスポーツドリンクを受け取り、ゴキュゴキュと可愛らしく飲んでいく。中身が減る勢いは、姉と同じく凄かった。
ルビィ「ぷはっ………、はぁー、とても美味しい!」
うむ。何度もこの光景を見てるけどやっぱり癒しだな。あ、ダイヤ先輩に頼んで1週間ほど貸してもらおうかな…………。やめておこう。色んな意味で命が足りないや。
っと、もうそろそろかな。
千歌・善子・花丸「隙あり!!」
残念ながら、隙はない。俺は持っていたカゴを上にあげる。すると、横から問題児3人がザザーツと滑りコケた。
3人は頬を膨らませて涙目になりながら俺に睨みつける。
千歌「明くん、ひどいよー!!鬼ー!!」
花丸「千歌ちゃんの言う通りずら!!バカー!!」
善子「リトルデーモン『アカリリー』の癖にぃ!!アホー!!」
なんで俺、そんなにボロクソに言われなきゃいけないの??アンタら3人加害者で、俺被害者だよね??ていうか、善子さんよ。アカリリーってなんだよ。リリーこと梨子先輩に怒られるぞ。
明「わざわざ奪おうとしなくても普通にあげますって。」
俺は「はい」と言いながら千歌先輩達にレモンの蜂蜜漬けが入ってるタッパーを差し出す。すると、千歌先輩達は、ぱぁぁと表情を輝かせてそれを受け取る。単純すぎだろ………。
千歌・花丸・善子「すっぱーい♪」
相変わらず、3人は口を*の形にして嬉しそうにワイワイしていた。楽しそうでなによりです。
その後、他のメンバーにもドリンクとレモンの蜂蜜漬け、塩飴などを配ってから照明案の方に取り掛かった。
果南「今日の練習はここまでにしようか」
果南以外Aqours「は〜い。」
休憩が、終わり千歌先輩達が再びライブ練習に取り掛かって数時間後、腕時計を見た果南先輩の言葉で本日の練習が終了した。現在、みんなはクールダウンをし終わったあと更衣室で着替えている。
善子「明、今日もお願いしていいかしら??」
早く着替え終えたので、部室でスマホをいじっていると善子さんに話しかけられる。彼女の背後には、ルビィさんと花丸さんがいた。
今日もか………。今日から少しアレだから早めに帰ろうと思ったけどまぁ、いいか。
明「分かった。またいつもの場所か??」
善子「えぇ。」
明「了解。それじゃあ早く行こうぜ」
ここ最近、俺は善子さん達に練習後、個人練習を見てくれないかとお願いされている。普段の練習だけでは、彼女達にとっては足りないらしい。本当はとても疲れているはずなのに。
それでも彼女達は本気だ。だったら、俺が出来ることは彼女達を見届け、支えることだ。
明「あ、個人練習する前にコンビニ寄ろう。何か奢ってやるよ」
花丸「本当ずらか!?」
花丸さんが嬉しそうに食いつく。どうせ、お前はのっぽパンだろ。知ってるぞ。
明「あぁ。」
ルビィ「明くん、ありがとう!!」
善子「流石は私のリトルデーモンね。堕天使ヨハネとして鼻が高いわ。」
明「はいはい。全ては善子様の為に」
善子「だからヨハネ!!」
そんな感じで俺達は善子さんを弄りながらコンビニへと向かった。
ルビィ「明くん、花丸ちゃんバイバイ!!」
花丸「バイバイずら!!」
明「また明日な。」
自主練習を見届けた俺は、善子さんから順に家まで送り、たった今ルビィさんを家まで送った。ルビィさんを送る時に毎回、ダイヤ先輩が玄関で待ってるんだけど、その姿がマジでオカンにしか見えない。
そして、現在、俺は花丸さんと2人で歩いている。
明「…………」
花丸「…………」
善子さんや、ルビィさんがいる時はお互い話す俺達であるが、2人きりになると無言になってしまい、花丸さんの家に着くまで一言も話さない。
理由はまぁ、だいたい分かっている。
以前、俺はここで花丸さんに酷い仕打ちをしてしまった。多分、それがあるからこの瞬間だけはお互いに気まずくて話しかけられないのだろう。
…………それはなんか嫌だ。
ふいにそう思ってしまった。彼女の祖母に謝罪しに行った以来、花丸さんに対して俺は他人とは違う何かを想うようになってしまった。それが何かはまだ知らないが、それでも俺は何故か花丸さんと関わるようになりたいという気持ちが存在していた。まるで、彼女のことを拒絶しようと決意したあの日が嘘みたいだ。
花丸さんに話しかけたい………、けど何を話したら良いか分からない。
明「はぁ〜、今日から家俺1人なのにコレとかマジで災難かよ…………」
俺はまるで愚痴を吐くかのようにボソッと呟いた。
花丸「1人??」
あ、もしかして聞こえてしまったのだろうか。花丸さんが首を傾げて反応してしまった。
明「あ、あぁ。今日から零さんが社員旅行でいなくてな。1週間ぐらい俺1人なんだよ。」
そう。今日から零さんが社員旅行で北海道に旅立ってしまったのであの人が帰ってくるまで俺は1人なのだ。と、言ってもこれは毎年恒例なことなのでそんなに気にすることではないが。
花丸「そうなんずらか!?」
明「お、おう。」
花丸「1人って………寂しくないずらか??」
花丸さんは少し悲しそうに俺に言葉を投げかける。寂しくないのか…………か。
明「んー、社員旅行は毎年恒例のことだから慣れてるけど、やっぱり少しは寂しいかな。」
1人でいることには昔から慣れてるけど、やはり誰しもは『孤独の寂しさ』というものには勝てない。寂しいものは寂しい。例え、それが『人殺し』でも。
すると、花丸さんは顎に手を当てて何かを悩むような仕草をとる。そして、何かを決意したのか「よし!!」と言いながら1回だけコクリと頷いたあとに俺の方に向いて言葉を出した。
花丸「今日、明くんの家に泊まるずら!!」
…………………はい??
〜花丸視点〜
うぅ…………。気まずいずら。
今、マルはルビィちゃんを家まで送ったあと明くんと2人で歩いています。
さっきまでは今まで通りに話せていたのに、この瞬間だけはどうしても話しかけれないずら。
この瞬間になると、マルはどうしても明くんがマルのことを拒絶したあの日を思い出してしまう。
もう、その事はマル自身も気にしていないはずなのに…………。
でも、好きな男の子に拒絶されたあの日を忘れようと思っても忘れられない。
多分………、そうなってしまうほど、マルは明くんのことが好きになってるんだなぁ。。そして、そうなってしまうほどに悲しかったんだと思うずら。
けど、なんか嫌だな。
きっと、これから先も何回かこの時間が訪れる。すなわち、その度にきっと明くんと2人で歩く機会もあるということ。
せっかくの、2人きりの時間を過ごせるのにお互い何も話せれないというのは勿体ないずらよ………。
チラッと明くんの方に視線を移すと、彼もマルに話しかけたいような表情をしている。
そして、彼はまるで愚痴を零すかなように一言だけボソッと呟いた。
明「はぁ〜、今日から家俺1人なのにコレとかマジで災難かよ。」
小さな声だったが、近くにいたせいか彼の言葉が聞こえてしまった。それにしても、1人??それはどういうことずら??
花丸「1人??」
マルが反応してしまったせいか、明くんは驚いたような表情をする。
明「あ、あぁ。今日から零さんが社員旅行でいなくてな。1週間ぐらい俺1人なんだよ」
花丸「そうなんずらか!?」
明「お、おう。」
『1人』。マルはこの単語を聞くとつい反応してしまう。マルはルビィちゃんに出会うまではずっと1人だった。1人でもマルには本があったから気にすることもなかったけど心のどこかには寂しいという思う気持ちがあった。多分、今のマルが1人になってしまったら寂しさのあまり泣いちゃうんだろうなぁ。
明くんは零さんと離れて………寂しくないのかな??
花丸「1人って寂しくないずらか??」
マルの言葉で明くんは少しだけ考えたあと言葉を出した。
明「んー、社員旅行は毎年恒例のことだから慣れてるけど、やっぱり少しは寂しいかな。」
この時の明くんは笑っていたけどなんだか残念そうな表情をしていた。
どうにか、明くんの力になりたいなぁ。何か方法がないかなぁ…………。
あっ。いい方法を思いついたずら!!もしかしたら、マルは天才なのかもしれない。
花丸「よし!!」
マルはコクリと頷いたあと、明くんの方に顔を向いて言葉を投げかけた。
花丸「今日、明くんの家に泊まるずら!!」
この時の明くんのポカンとした表情をマルはこの先、忘れることは無かった。
後編へと続く。
あと、Twitterというものを始めてみました。
こういうのは初めてやりますが、良かったらフォローよろしくです。
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