Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』   作:七宮 梅雨

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後編だぁ


『人殺し』は国木田 花丸と…………。後編

 夕飯である八宝菜を食い終え、お風呂を互いに済ました俺達。練習して、沢山汗をかいているであろう花丸さんに先に入ってもらったのだが、それは間違いだった。

 

 

 

 風呂から出てきた時の花丸さんの姿がなんだか……………その…………

 

 

 

 

 凄く魅力的だった。

 

 

 

 

 体の芯まで温まったと分かるぐらいの火照った顔に、しっとりとしている髪の毛、そして寝巻きがぴたっと湿った体に張り付きいつもよりボディラインがハッキリとしている。

 

 

 彼女の姿を見てドキドキと心臓が鳴っているのが分かる。

 

 

 俺は出来るだけ、目を逸らしながら彼女に俺が風呂に入っている間、適当に過ごしといてとだけ伝えてから、逃げるように風呂場へと向かった。

 

 

 そして、俺は風呂上がりの花丸さんの姿を見てしまったせいで色々と興奮してしまった気持ちが落ち着くまでお風呂に浸かっていた。そのせいで、のぼせてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そういえば、風呂に上がった時の花丸さんの表情が何だか優れてなかったけど何かあったのかな??

 

 

 

 

 

 

 

〜花丸視点〜

 

 

 

 落ち着いて考えてみたらマルはとんでもないことをしてしまったずら………。

 

 マルは今、明くんの家のお風呂の湯船に浸かりながら今日の自分の行いに反省しています。

 

 いくら明くんの為だと思って、思い切ってやった事だったけど少し強引にやり過ぎてしまった。彼には悪いことをしてしまった。

 

 よくよく考えてみれば、年頃の男女が1つの屋根の下で過ごすなんて普通に考えてみてありえないことだよ。

 

 こういうのは、お付き合いしているカップルがやることずら!!そもそも、どうしておばあちゃんもマルのことを止めてくれなかったの??はーれーだびっとそん??に乗って送る場合じゃなかったずらよ!!

 

 

 

 ゔぅぅ…………、もしかして明くんに嫌われちゃったかな…………。

 

 

 

 マルは不安になってしまい、顔が半分湯船に付くぐらいまで身体を沈める。

 

 

 

 

 あー、もう!!考えても考えても余計に不安になるだけずら!!

 

 

 

 だったら、マルがやることはただ1つ。

 

 

 

花丸「後でちゃんと謝ろう。」

 

 

 

 そう決意したマルは湯船から出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 でも………………いつか…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明くんと…………ちゃんとした関係を築いてから、またこういうことしたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜明視点〜

 

 

 お風呂から出たあとは特に何もすることが無かったので、適当に録画していた映画を見ていた。この時、録画を知った花丸さんは「未来ずらーー!!」と目をキラキラとさせながら大声で叫んでいた。近所迷惑だからやめようね。

 

花丸「それにしても、やっぱりクレヨ〇しんちゃんの映画は面白いずら」

 

明「あぁ。それには同感だ。」

 

 あの作品の映画ってどれも面白いよな。ロボとーちゃんの奴とか、感動しすぎて零さんと一緒に映画館で号泣したもん。

 

明「でも、個人的にはカスカベボーイズが1番かな」

 

花丸「マルはヤキニクロードとB級グルメがお気に入りかな♪」

 

 いや、2作品とも食べ物がテーマになってるやつじゃん!!ヨダレを流しながら映像を見ている花丸さんの姿が頭の中で思い浮かんじゃったよ。

 

花丸「今年やる新作も面白そうずら」

 

明「それな」

 

 既にテレビとか動画とかで予告が放送されてるけど、絶対に面白いでしょ。確か、上映は明日だっけな。あ、やば。楽しみすぎてテンション上がってきたわ。今のうちに上映時間でも調べとこ

 

花丸「ふぁ〜〜」

 

 俺がスマホで上映時間を調べていると、隣にいる花丸さんが大きな欠伸を出した。そのあと、コクリコクリとしながら目をゴシゴシとしている。

 

明「もうそろそろ…………寝るか。」

 

花丸「うん。」

 

 ピッと、テレビを消したあと俺達は立ち上がり寝室の方へと進む。もちろん、花丸さんは俺の部屋で寝かせる訳には行かないので零さんの部屋で寝てもらう。

 

 まぁ、花丸さんの唐突のお泊まり会も今夜限りのことだからそんなに気にすることもないだろう。後はお互いに寝て、明日を迎えるだけだからな。

 

花丸「明くん………」

 

明「ん?どうかした??」

 

 花丸さんがシュンとした表情で俺に話しかける。そして、彼女は俺の目の前で頭を下げ始めた。

 

明「花丸さん!?」

 

 

 

花丸「今日はごめんなさい。」

 

 

 

明「え…………??」

 

 なんで俺に謝ったんだ!?何かこの子、謝るような悪いことしたっけ??

 

 

 

花丸「急にお泊まりしたいって言っちゃって…………。明くんも迷惑だったよね………」

 

 

 

 

 

 花丸さんは今でも少し泣きそうな表情をしていた。確かに、迷惑では無かったと言えば嘘になる。嘘になってしまうが…………

 

 俺は微笑みながら花丸さんの頭を優しく撫でながら言葉を出した。

 

明「そんなに気にすんなよ。その…………なんだ。俺は花丸さんといてとても楽しかったから。」

 

 

 

 この言葉に嘘はない。紛れもない事実だ。

 

 

 

 本当だったら、俺は1人で過ごす予定だった。それなのに、彼女のめちゃくちゃな提案によって色々と問題は起きたものの楽しい時間を過ごすことができた。むしろ、俺の方が花丸さんに感謝してるぐらいだ。

 

 けど、未だに花丸さんは悲しそうな表情をしている。

 

 

 ならば………………

 

 

明「明日、良かったら2人で映画でも見に行くか??」

 

花丸「え?」

 

 俺の唐突の誘いに花丸さんは目を丸くする。俺は少しだけ頬をポリポリと掻き、照れながら言葉を続けた。

 

 

明「明日は練習も休みだしな。泊まるついでに明日は2人でパァーっと遊びに行こうぜ」

 

 

 軽い気持ちで言っているように見えるだろ??内心、めっちゃ緊張してるわ。だって、女の子に遊びの誘いするなんて初めてのことだからな!!

 

 

花丸「……………うん!!!」

 

 

 俺の言葉を聞いて、安心したのか花丸さんは嬉しそうな表情に変わっていた。うん。こいつはやっぱり悲しい顔してるよりも笑っている顔の方が素敵だ。

 

 

明「じゃあ、花丸さん。おやすみ。また明日な」

 

花丸「おやすみら明くん。また明日ずら。」

 

 そう言って、俺達は互いに寝室の方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜花丸視点〜

 

 

 良かったずらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

 マルは今、零さんのお布団に入りながらとても安心しています。

 

 本当に良かった………。もしかしたら、明くんに嫌われたかもしれないと内心思っていた。

 

 だから、明くんに謝る時も凄く緊張した。もし、あそこで明くんに拒絶されてたらと考えると………………やめよう。もう、終わったことずら。

 

 それにしても、明くんに頭を撫でられた時、とても気持ちよかったなぁ………。何回かして貰ったことがあるけど全然飽きないずら。

 

 そう考えると、マルはすっかり明くんの虜になってきてるなぁ………。

 

 

 でも、それも悪くないずら。( •̀ω•́ )✧

 

 

 それに、まさか明くんと明日、映画を観に行くことになるなんて………。これっていわゆるデートっていうやつずらよね??

 

 マルは幸せ者ずら。明日、不幸な事が起きてしまわないかと心配になってしまうずら。

 

 

 ふふふ…………。ニヤニヤが嬉しくて止まらないずら〜(◦ˉ ˘ ˉ◦)

 

 でも、これ以上起きてるとせっかくのデートが台無しになってしまうかもしれない。

 

 そうならないように、マルは瞼を………

 

 

 

 

 「ーーーーーーーーー!!!」

 

 

 

花丸「!?」

 

 瞼を閉じようとした瞬間に、隣の方から………明くんの部屋から苦しそうな声が聞こえてきた。

 

 

花丸「明くん………??」

 

 

 マルはすぐにガバッと身体を起き上がらせて零さんの部屋から出たあと、明くん部屋へと突入した。

 

花丸「明くん!?」

 

 

明「ーーーーーーー!!」

 

 

 やっぱり、声の正体は明くんだった。

 

 けど、明くんは寝ている状態で苦しそうな声を出していた。怖い夢でも見ているかのように…………。

 

 そういえば、以前にたまに『人殺し』に関する夢を見ることがあるって明くんが言っていたような気がする。

 

 その時の明くんはサラッと何事も無かったかのように言っていたけど、実際に見てみると深刻なものだった。

 

 

 どうすれば………良いの!?

 

 

 

 どう動けば良いのか分からないマルは涙を浮かべながら焦っていた。

 

 

 こうしている間にも、明くんは苦しそうな表情をしながら良くないであろう汗もかき続けている。

 

 

花丸「ーーーーーーーあ。」

 

 

 そうだ。昔、おばあちゃんに教えて貰ったアレをやってみよう。それが、明くんにとって効果があるのか分からないけど、やってみる価値はあるずら!!

 

 

 

花丸「明くん、大丈夫だよ。マルがついてるからね」

 

 

 マルは明くんにそう呟くと、早速行動に移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は闇の終わり無き道をひたすら走っていた。

 

 

 まるで、何かから逃げるように。

 

 

 そして、背後からは憎しみや怒り、嫉妬などが孕んでいる恐怖の声が耳の中に嫌でも入ってくる。

 

 

 この『人殺し』と。

 

 

 俺は足を止めることは無かった。

 

 

 例え、息が切れようとも…………

 

 

 例え、次第に足から痛みが生じてきていても…………

 

 

 例え、意識が何回か飛びそうになっても…………

 

 

 

 俺はただひたすら走り続けた。

 

 

 『人殺し』

 

 

 やめろ…………

 

 

 『人殺し』

 

 

 来るな…………

 

 

 『人殺し』

 

 

 やめてくれ…………

 

 

 『人殺し』

 

 

 もう……放っておいてくれ………

 

 

 『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』『人殺し』………………

 

 

 

 

 

 

  この『人殺し』が!!!

 

 

 

 

明「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 このままじゃ、狂ってしまいそうだ。

 

 

 

 

 誰か…………助けてくれ

 

 

 

 

 

 『明くん、大丈夫だよ。マルがついてるからね』

 

 

 

 ーーーーーーーッッ!?

 

 

 

 周りが闇しかないこの世界で、ふと俺の耳の中にこんな言葉が聞こえてきた。

 

 

 

 

 しかも、今の声って…………………。

 

 

 

 そして次の瞬間、驚きの光景を目にした。闇しかなかった世界に大きな光が生じ、闇を払っていったのだ。数分も経たないうちに闇の世界から、光の世界へと変わっていった。

 

 

 

 

 最後に、その光は俺の方に向かっていき、俺の身体ごと包み込んだ。

 

 

 

 

 なんだこれ………凄く温かい……………。

 

 

 

 

 そう感じながら俺は意識が失っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくりと目を開ける。

 

 朝日の光が視界に入り込んできたので、少なくとも朝を迎えられたということだけは理解できた。

 

 裸眼のため、視界はボヤけて全く見えてないがグイッと身体をゆっくりと起き上がらせる。

 

 身体がとてもベタベタしているのを感じる………。きっと、昨日見た悪夢のせいだな。

 

 よりによって、彼女が泊まりに来てる時に見るとか………本当に災難だな。

 

 

 ここで、俺は右手辺りから違和感があるのに気づく。そちらの方に視界を移すとそこには…………

 

 

 スースーと寝息を立てながら寝ている花丸さんの姿があった。

 

 

 両手で俺の右手を優しく握りながら。

 

 

 

 彼女の手は夢の中で見たあの光と同じく………とても温かいものだった。

 

 

 

 やっぱり、あの声と光は……………

 

 

 

明「お前だったんだな。」

 

 

 

 この瞬間、俺は彼女に抱いていた謎の気持ちが分かった。

 

 

 いや………元々は理解していたのかもしれない。だが、俺みたいな『人殺し』がそんな感情を抱いてはいけないと自らその事実に避けていた。

 

 

 

 

 けど、もうそんな自分に嘘をつくのは辞めようと彼女の姿を見て決意する。

 

 

 

 どうやら俺、奥山 明は………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この少女、国木田 花丸のことを好きになってしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は左手で、花丸さんの髪を優しく撫でる。すると、彼女はムフフーと嬉しそうな表情に変わる。本当に笑顔が素敵な女性だな。

 

 

 

 

 

 

 

明「ありがとうな、()()。大好きだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は照れながらそう言ったあと、彼女を起こさないようにベッドから降り、朝ごはんを作るために台所へと向かった。

 




ようやく、明くんが花丸さんに好意を抱くようになりましたね。ここまで来るのに長かった……………。




次回はSaintSnow視点で行きます。

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