Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』 作:七宮 梅雨
2019/11/30に修正しました。
俺を除いた9人が周りの観客席によってきらきら輝いているステージに上がり横に1列へと並ぶと同時に、俺は調光室へと入ってインカムを付けて席に座る。そして、真ん中にいる千歌に照明を当てた。
それを合図に、彼女は1歩前に出て語り始める。
千歌「今日は皆さんに伝えたいことがあります!!それは………私たちの学校のこと!!街のことです!!」
地区予選に出場するスクールアイドルは約10分間ほど、ライブを行う前に自己アピール的なスピーチをするという決まりがあるらしい。
なので、俺達は数日前に話し合いをして、このスピーチでAqoursが結成された経緯、自分たちが住んでいる内浦の魅力、そして………自分たちが通っている浦の星女学院についてを演劇風に語ろうという形で決まった。
千歌「Aqoursが生まれたのは、海が広がり、太陽が輝く内浦という街です。」
千歌はステージを走りながら、内浦について語り始める。
千歌「小さくて、人も居ないけど、海にはたくさんの魚がいて、いっぱいみかんが取れて………暖かな人で溢れる街。」
それが………俺達が思う内浦の魅力。
千歌が言っている通り、内浦でとれる魚はどれも新鮮で美味しいし、みかんも太陽のめぐみをたっぷりと浴びているからか、とても甘い。千歌がくれるみかんとか特に甘いから俺は大好きだ。
内浦に住んでいる人も皆……すごく暖かい。
街の人が暖かかったからこそ、俺達は1000個のスカイランタンを使って『夢の夜空を照らしたい』のPVを完成することが出来た。あのPVがきっかけで、Aqoursの知名度は莫大に上がった。
つまり、今こうしてAqoursがラブライブのステージに立てているのは俺たち10人の力だけではなく、内浦に住んでいる人達の協力もあったからということ。むしろ、逆に考えてみれば、あの時に街の住民の協力が無かったら、今のAqoursは無かったに等しい。
千歌「その街にある小さな学校。今、ここにいるのが、全校生徒!!」
千歌は手を伸ばして、青く光らせているブレードを持った浦の星女学院の生徒全員が固まって座っている場所を伝える。
千歌「そこで私達は、スクールアイドルを始めました。」
ここで、千歌から船長に照明を当て直す。
曜「アキバで見たμ'sのようになりたい!!同じように輝きたい!でも…………」
千歌・曜「作曲!?」
はい、ここでドヤ顔でスタンバイしているダイヤちゃんにも照明を当てる。
ダイヤ「そう。作曲が出来なければ、ラブライブには出られませんわ!!」
千歌・曜「ハードル高っ!!」
いや、マジでドヤ顔してんな、あの人。当時、絶対にそんな表情で言ってなかっただろ。
曜「そんな時、作曲のできる少女、梨子ちゃんが転校してきたのです!」
千歌「奇跡だよ!!」
今度は、梨子に照明を当てる。てか、よくよく考えたら本当に奇跡だよな。偶然にも程がある。
梨子「ごめんなさい!!」
千歌・曜「ガーン」
観客「あははは!!!」
梨子が頭を下げ、千歌と船長が古くさいリアクションを取ると観客席から笑い声が聞こてえくる。あれ………ウケたんだ。
千歌「東京から来た梨子ちゃんは、最初はスクールアイドルに興味無かった。東京で辛いことがあったから…………」
まだ梨子が東京で、音ノ木坂学院にいた時
、梨子はピアノでスランプに陥り、コンクールでは弾けなかった過去がある。それ以降、彼女はピアノを楽しむことは出来なくなっていた。本当は大好きなはずなのに。
それでも彼女は変わった。
1人のオレンジ頭の女性がしつこいほど梨子にスクールアイドルに勧誘してきたおかげで彼女は再びピアノと向き合うことができるようになった。
その女子の言葉に続けて、梨子は飛びっきりの笑顔とともに大声で声を出した。
梨子「輝きたい!!」
曜「その想いは梨子ちゃんの中にもあった。……………そして」
次に、1年生3人組にそれぞれの色に合わせて照明を当てる。3人共、頑張れよ。
花丸「お、おら。私……運動苦手ずら……だし。」
黄色の光を当てられた花丸はオドオドとした表情で方言を出しつつ、なんとか言葉出していた。
ルビィ「ルビィ、スクールアイドル好きだけど人見知りだから………。」
赤い光を当てられたルビィも悲しそうな表情を浮かべて自分の心境を語る。
善子「堕天使ヨハネ、ここに降臨!!私の羽を広げられる場所はどこ??」
うわぁ………、あのバカ堕天使やりやがった。いつの間に観客席の後ろに移動したんだよ。本当に空間移動でもしたん!?観客の皆さんも苦笑いしながら拍手してるし………。とりま、はよ帰ってこい!!
千歌「こうして6人になった私達は、歌を歌いました。街のみんなと一緒に」
あれは本当にいい思い出だ。この先、忘れることは一生ないだろう。
梨子「そんな時、私達は東京のイベントに出ることになった。」
花丸「未来ずらー!!」
ルビィ「人がいっぱい!!」
善子「ここが魔都、東京!!」
『夢の夜空を照らしたい』のPVが好評で、東京のイベントに呼ばれたんだよな。そして、このイベントによって俺は姉ちゃん達…………Saint Snowの存在を知って10年ぶりに再会した。
曜「ここで歌うんだね。頑張ろう!!」
千歌「でも、結果は……………最下位。」
千歌は悲しい表情を浮かべて言葉を出す。そして、セリフに合わせてそれぞれ1人ずつに照明を当てる。
千歌「私達を応援してくれた人は……0」
曜「0」
梨子「0」
ルビィ「0」
花丸「0」
善子「0」
ミス1つなく、やり遂げたあのライブでも0という結果にどれだけ絶望したのだろうか。マネージャーである俺ですら、相当ショックを受けたのだから実際に踊った彼女達はその何倍もショックを受けただろう。
ルビィ「スクールアイドルは厳しい世界」
花丸「そんな、簡単では無かったのです。」
あの時、帰りは別々だったから花丸から聞いた話になるが、他のメンバーは沼津に着いた時にダイヤちゃんによってスクールアイドルの世界は厳しいということを教わったという。
船長は座り込んでいる千歌のそばまで駆け寄り、コソッと呟く。
千歌ちゃん、やめる??…………と。
千歌はスクールアイドルを始めようとする前は、特にやりたいものが無くすぐに諦めるような性格だったらしい。今の彼女の姿を見ると全く考えられないことだが。
しかし、そんな彼女は大声を出して当時、彼女が心の中に閉まっていた気持ちを吐き出す。
悔しい………と。
何度も何度も悔しいと口にする。
なぜ、悔しいのか。理由は1つしかない。
千歌「0だったんだよ!?悔しいじゃん!!」
負けて悔しいという感情を抱くのは当たり前だ。俺だって、空手の試合とかで負けると悔しい。本気で挑んでいるというなら尚更な。
梨子「その時、私たちの目標が出来ました。」
曜「0から1へ。」
花丸「0のままで、終わりなくない」
善子「とにかく前に進もう」
ルビィ「目の前の0を1にしよう!!」
千歌「そう、心に決めて。」
その目標が出来たことによって、意気消沈だったAqoursは活気を取り戻した。まぁ、その時俺はいなかったけれども。
梨子「そんな時、新たな仲間が現れたの!」
このタイミングで、セリフに合わせて3年生組1人ずつに照明を当てる。
ダイヤ「生徒会長の黒澤ダイヤですわ」
明「ぶふっ………w」
赤色の光に照らされた彼女の姿を見て思わず俺は吹き出してしまった。少し前に彼女からどういうポーズで登場したら良いのかと相談されたので、軽い冗談でセクシーポーズと言ったら本当にしちゃったんですよ。まさか、本当にするとは思わんやん。やっぱり、あの人ポンコツだわ。
果南「スクールアイドルやるんだって??」
緑色の光に照らされたかなっちは腕を組んで、少し上から目線で言葉を出す。まぁ、実際に学年でもスクールアイドルでも先輩だしな。
鞠莉「Hello、everybody♪」
紫色の光に照らされたマリーは両手を広げ、ウィンクをしながら相変わらず発音が良い英語で観客の人達に挨拶する。
曜「以前、スクールアイドルをやっていた3人はもう一度手を繋いで私たちは9人になりました。」
明「よし。」
マリーの挨拶が終わったところで、俺はインカムを外し一旦スタッフさんにこの場を任せる。
そして、調光室を出て俺は彼女達が立っているステージへと向かう。
向かっている途中、ステージからは彼女たちの声が聞こえてくる。
花丸「そして!!私達Aqoursにはもう1人のかけがえのない仲間がいます!!」
花丸の言葉で、観客からはザワザワとし始める。そりゃあ、そうだ。スクールアイドルのサイト内だと、Aqoursのプロフィールには9人しか載っていないのだから。
ルビィ「その人は、男の子にも関わらずAqoursが結成されて間もない頃からずっと陰で私達のことを支えてくれていました。」
善子「その人がいてくれたおかげで、今の私達がいると言っても過言ではありません!!」
ルビィに続けて、善子も言葉を出す。このセリフ少しは言い過ぎだから変えて欲しいと何度も言ったんだけどな。彼女達はそれを許してくれなかった。
照れさで、頬が熱くなっているのを感じながら俺はステージのすぐそばまでやってきた。
あとは、千歌の言葉に合わせて行動すれば良い。
タイミングを見計らいながら、しゃがむと同時に俺は数日前の千歌とのやり取りを思い出した。
〜数日前〜
千歌『明くん………それ本気で言ってる??』
明『……………あぁ。』
千歌『でも、そんなことしたら………』
明『分かってる。それがどれだけ危険な賭けかということは………』
千歌『じゃあ!?』
明『でも、俺決めたんだ。Aqoursに受け入れてもらったあの日からずっと。』
千歌『ーーーーーーーッッ』
明『だから、お願いします。ーーーーーーする時は俺がさっき言った通りにやって欲しい。』
千歌『もう〜、しょうがない後輩くんだなぁ。分かったよ。』
明『ッッ!?』
千歌『その代わり、ちゃんとやり切るんだよ??千歌との約束だからね。』
明『あぁ!!ありがとう!!!』
リーダーと約束したんだ。絶対にやり切るって。
そろそろか………と、いつでも出れるように準備しているとステージに立っている千歌と目が合った。
そして、彼女は何も言わないが目線で俺にこうメッセージを送る。
『本当に……………いいんだね??』
俺はそれを肯定の意味を込めてはっきりと頷く。それを見た千歌も覚悟を決めたのか彼女も頷くと前を向いて言葉を出した。
千歌「それでは、登場してもらいます。Aqoursのマネージャーをしてくれている…………………」
さぁ、始めようか。
この憎くて醜い哀しき『人殺し』の最後の足掻きを。
俺は千歌が発する言葉と同時にステージに足を踏み入れた。
千歌「1年生の鹿角 明くんです!!!」
ようやくここまで来れたよぉ(歓喜)
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