Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』   作:七宮 梅雨

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久しぶりの本編更新です。




『人殺し』と??

 突如、目の前の景色が180度ぐにゃりと代わり次第に何も無い白い空間が作り出される。

 

 

 そして、その空間には俺と…………

 

 

 

 俺をここに呼んだであろう、黒いモヤが浮かんでいた。

 

 

??「久しぶりだなぁ………」

 

 

 黒いモヤから忘れたくても忘れられない声が発される。相変わらず何も感情が込められていないような冷たい声をしている。

 

 

 こいつは、あの日のライブで俺を狂わせた謎の存在だ。

 

 

??「珍しいじゃねぇか。『人殺し』であるお前から俺に声を掛けるなんて。」

 

 黒いモヤは挑発的な発言をする。だが、残念ながら今の俺にはそれは通じない。

 

 

 『今』の姿をしているこいつとは言葉のキャッチボールを交わす気は一切ない。

 

 

 黒いモヤの挑発的な言葉を無視して俺は言葉を奴に向かって発した。

 

 

明「俺はAqoursに受け入れて貰ったあの日から、ずっとお前の存在について考えていた。」

 

 

??「…………………」

 

 

 ーーーなぜ、こいつは俺の中にいるのか。

 

 

 ーーーなぜ、こいつは俺が『人殺し』であると知っているのか。

 

 

 ーーーなぜ、こいつは俺のトラウマを抉るかのように過去を話題に出すのか。

 

 

 

 脳をフル回転させながら考えて考えて考えて考えて考えて考えて……………

 

 

 

 その結果、1つの結論に結びついた。

 

 

 

 俺は黒いに向かって、人差し指を指しながら名探偵が犯人を言い当てるような感じで声を張って言葉を出した。

 

 

 もし、俺の考えが当たっていたら俺は大バカ野郎だ。

 

 

 なぜなら…………………

 

 

 

明「お前の正体は…………『人殺し』()だ。」

 

 

 

 ??は…………俺自身なのだから。

 

 

 

??「ハハ、ご名答。」

 

 

 黒いモヤはボソッと言葉を出すと同時にヤツは自分の身体である黒いモヤをキュルキュル、と音を立てながら渦巻きを作り始めた。

 

 

明「くっ!!」

 

 

 渦巻きによって生じた突風によって、俺は目をつぶって両腕を顔を守るかのように前に出す。

 

 そして、突風が止み、ゆっくりと目を開けると目の前には衝撃のものがあった。

 

 

 一瞬は見間違いだと思った。だけど、違う。見間違いなんかではない。

 

 

 

 

 

??「これが俺の本当の姿だ。懐かしいだろう??お前の言う通り、俺は…………『人殺し』(お前)だ。」

 

 

 

 10年前、姉ちゃん達を守るために銃を発砲し、人を殺めてしまった当時5歳だった幼き俺の姿をした…………………『人殺し』()が立っていた。

 

 

『人殺し』「んで、俺の正体を突き止めてお前は何をする気なんだ??今までの憎しみを俺にぶつけるのか??」

 

 

 『人殺し』はニタァと不気味に微笑みながら、またしても挑発的に発言する。

 

 

明「あぁ。そうしたいのは山々だよ。なんなら、今すぐにお前を殺してやりたい気分だ。」ゾワッ

 

 

『人殺し』(こいつ………………本気で言ってやがる。)ビクッ

 

 

 俺は今までに出したことがないぐらいの殺意を放ちながらも、平然とした笑顔で答える。その殺意を感じ取ったのか、『人殺し』の表情が一瞬だけしかめたのを俺は見逃さなかった。

 

 

 憎しみをぶつける??冗談はよせよ。

 

 

 たったそんだけで……………………俺が許すと思ってるのか??

 

 

 お前のせいで、本当に色々とあったんだぞ??

 

 

 こいつの巧妙な囁きによって、精神が参っていた俺はAqoursの大切なライブをめちゃくちゃに壊してしまった。さらには、またしても俺は人を殺してしまいそうだった。

 

 

 

 

 そして、なにより1番許せないのは………

 

 

 

 

 

 俺の想い人である花丸に大怪我を負わせてしまったことだ。

 

 

 

 

 

 今で鮮明に覚えている。花丸の肩をナイフで刺してしまったあの感触が…………。忘れたくても忘れられない。

 

 

 まるで、呪いにかかっているかのように………。

 

 

明「けど……、まずお前に再開したら絶対に伝えたい言葉があるんだ。」

 

 

 俺の言葉に『人殺し』は「ハッ」と鼻で笑う。

 

 

『人殺し』「何だよ。俺に愛の告白でもするのか??」ニヤニヤ

 

 

明「お前、マジで殺してやろうか??」

 

 

 残念ながら愛の告白をするのはお前なんかじゃねぇんだよ。俺が全て終わらせて帰るのを祈りながら待ってくれている健気で愛しいあいつだけだ。

 

 

『人殺し』「そんな怒るなって。冗談だよ。………んで、伝えたい言葉って何??まぁ、ある程度分かってるけどな。」

 

 

 どうやら、『人殺し』は俺が何を伝えたいのか察しているようだ。恐らく、俺から批判的な言葉を喰らうと思っているのだろう。

 

 

 

 

 

 だけどな『人殺し』。お前の予想は違うんだよ。

 

 

 

 

 

 お前に送りたい言葉は…………その『逆』だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明「ありがとな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『人殺し』「ーーーーーーーーーーは??」

 

 

 

 

 頭を下げて、感謝の言葉を送った俺の姿を見て『人殺し』は数秒ほど、何を言っているのか分からないようにポカンとなり、次第に信じられないような表情を浮かべる。きっと、俺からそんな言葉を俺にられるなんて思ってもいなかったのだろう。

 

 

 

『人殺し』「お前………自分が何を言ってるのか分かってその言葉を俺に言ったのか??」

 

 

 

明「あぁ。」

 

 

 

 

『人殺し』「俺の事……………殺したいぐらいに憎いんじゃねぇのかよ!!」

 

 

 『人殺し』は珍しく怒りを孕みながら声を上げる。

 

 

 あぁ、その通りだ。今まで言った言葉に嘘は1つもない。お前のこと、憎いよ。憎くて憎くて堪らない。本当に今すぐにでもお前のことを殴り殺してやりたいぐらいだ。

 

 

 だけど………………

 

 

 

明「お前がいたから………あの事件があったからこうして俺は姉ちゃん達と向き合おうという気持ちになった。」

 

 

 

『人殺し』「ーーーーーッッ!?」

 

 

 

 今まではネガティブな思考であの事件について述べていたが俺が今、こうして函館を目指して姉ちゃん達と向き合おうとしているきっかけはあの事件があったからだ。

 

 

 

 あの事件があったから、俺はAqoursのみんなに受け入れてもらったし、零さんが俺の事を家族として愛してくれているということも改めて知れた。

なんなら、俺はあいつに恋をしたのも事件があったからなのかもしれない。

 

 

 

明「だからよ……….、少なくとも俺はお前に感謝してるんだよ。」

 

 

 8割りぐらいはお前に対しての憎しみで埋まってるけどな、と俺は最後に付け加えた。

 

 

『人殺し』「…………………」

 

 

 俺の言葉を聞いて、『人殺し』は何も表情を変えなかった。だから、こいつが今、何を考えているのか分からない。

 

 

明「お、おい。何か言えよ」

 

 

 あまりにも無反応すぎたので、俺は少しだけ焦りながら『人殺し』に声を掛ける。

 

 

 

 すると………………

 

 

 

『人殺し』「ーーーーーぷっ」

 

 

明「ん??」

 

 

『人殺し』「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ

 

 

 唐突に『人殺し』はお腹に手を当てて大声で笑い始めた。え、こいつ急にどうしたの??リアルに怖いんですけど。

 

 

『人殺し』「なんだよ『ありがとな』って。普通、憎い相手にそんなこと言うか??頭おかしいんじゃねぇの??あー、腹痛てぇ。」クククッ

 

 

 『人殺し』は笑いで出た涙を指で拭き取りながら言葉を出す。まだ余韻が残っているのか、クククと歯を食いしばりながらも笑っていた。

 

 

 

 そして、ようやく落ち着いたのか笑うのを止めたこいつは少しだけ残念そうな表情を浮かべる。

 

 

 

 

『人殺し』「あーあ、これからも何度かお前のことを弄って楽しもうと思ってたのにもう何言っても無理そうだな。」

 

 

 

 うわぁ〜、こいつ。陰でそんな計画を立てていたのか。タチ悪いな。もう、あんなことは二度と御免だ。

 

 

 

『人殺し』「しゃーねー。これからは黙ってお前のこれからの人生を眺めることにするわ」

 

 

明「なんだよ、それ。消えるっていう選択肢は無いのかよ」

 

 

『人殺し』「いいか??これだけは忘れるな。俺はお前で、お前は俺だ。つまり、俺が消える=お前の死以外はありえない。まぁ、そんなにも俺を消したかったら自分の喉でも裂け斬るんだな」

 

 

明「ったく………嫌な言い方しやがって。」

 

 

 こいつの存在が消えないのは嫌だな。でも本人はこの先、俺の目の前には現れることはないって言ってたし…………ひとまずは安心かな。

 

 

『人殺し』「おっと、そろそろ時間のようだ。」

 

 

 『人殺し』は周りを見て呟く。俺も続いて周りを見回すと、何も無い空間からビキビキとヒビのようなものが生じ始めた。

 

 

 ヒビの進行は意外にも早く、あっという間に崩壊しそうなぐらいまでに至る。あと、1分もしないうちにこの空間は完璧に崩壊するだろう。

 

 

 俺と『人殺し』は分かっていたかのようにお互いの顔を見合わせる。

 

 

『人殺し』「お別れだな。」

 

明「そうみたいだな。」

 

『人殺し』「寂しいか??」

 

明「全く。」

 

『人殺し』「即答だな………」

 

 当たり前だろ。もう、お前の顔を見るのは今回で最後にしたいところだ。

 

 

 

『人殺し』「最後にこれだけは言っておく。お前のような『人殺し』は…………何があっても幸せにはなれない。最後はBADENDだ」

 

 

 

 

 

 

 『人殺し』は最後の最後で、胸糞が悪くなるような言葉を送る。

 

 

 

 

 

 

 

 それに対しては俺は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

明「上等だ!!『人殺し』らしく足掻いて足掻いて足掻きまくって幸せを掴み取ってやる!!BADENDをHappyENDに変えてやるよ!!だから、それまでてめぇはおっ〇っとーをつまみにしてコーラでも飲みながらその様子でも眺めてやがれ!!!」

 

 

 

 

 

 俺の言葉を聞いて、『人殺し』がニタァとまるで楽しみにしているかのような微笑みを最後に目にして………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 完全に俺達がいた空間が崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『まもなくー、函館空港に着陸致します。お客様はーーーーーーーー』

 

 

 飛行機のアナウンスで、俺はゆっくりと目を開ける。どうやら、無事に現実世界に戻ってきたようだ。

 

 

 窓に目を移すと、あいつと話している間に深夜の時間帯になっていたみたいで辺りは真っ暗になっていた。だけど、下の方はキラキラと輝いている。

 

 

明「もうすぐ…………か。」

 

 

 俺は胸に手を当てる。すると、思った通り心臓がバクバクと鳴っていた。やっぱり、緊張してるな。まぁ、当然か。

 

 

 そして、無事に飛行機は函館空港へと着陸し俺含めた客は飛行機から降りて、流れてくる自分のキャリーバッグを間違えずに手にしてから空港を出る。

 

明「うお………、寒っ。」

 

 

 空港から出た瞬間、冷たい風が当たり思わず身を固める。流石は北海道。季節は夏だというのにも関わらず少しだけ寒い。北海道の夏ってこんな感じだったっけ??ずっと、内浦にいたから忘れてしまった。

 

 

 

明「それにしても………10年ぶりか。」

 

 

 

 俺は周りを見てボソッと呟く。ここで、俺は…………理亜姉ちゃんと一緒に生まれてきたんだ。10年ぶりに故郷に戻ってきたことに感動する。

 

 

 

 確か…………、ここの近くによく3人で遊びに行った公園があったはずだ。まだあるよな??

 

 

 

 あ、そうだそうだ。そこからあの道を辿ればピエロのハンバーガーショップがあった気がする。よく姉ちゃん達やたまに遊びに来てくれていた従兄弟と一緒に食べに行ったっけ。

 

 

 冬とかだと天文台とかに行ってたっけ………。ロープウェイ……………だっけ??それに乗って高いところまで登っていたのも覚えてる。

 

 

 そして、ここからあの道を行って行って行ってそこから右に曲がって直進すれば………………

 

 

 

 

 俺の本当の家族が住んでいる『茶房 菊泉』がある。

 

 

 

 

 なんだよ………。ここに戻ってきたのは10年ぶりのはずなのに意外にも覚えてるじゃねぇか。

 

 

 当時は5歳だったし、両親に捨てられて施設で4年間過ごして、6年間内浦で零さんと一緒に生活しているうちにとっくに忘れてたと思ってたんだけどな。

 

 

 

 

 あー、ちくしょう。思い出に浸っているだけで涙が出てしまいそうだ。

 

 

 

 だけど、泣くのはまだ早い。

 

 

 

 俺にはまだやらなくちゃいけないことがある。それをやってから…………思い切って泣くことにしよう。

 

 

 

 

 俺はキャリーバッグから、上着を取り出してそれを上着の上から重ねて着る。そして、気合いを入れるために両頬をペシン!!と叩く。

 

 

 そして、最後にあいつらから貰った御守りをポケットから取り出してギュッと握りしめる。

 

 

 

 俺は…………1人じゃない。ここには居ないけど………頼もしい仲間9人がいる。

 

 

 

 

明「よし!!行きますか!!」

 

 

 

 気合いを十分に入れた俺は、キャリーバッグを引きずりながらあの場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『人殺し』の弟と姉であるSaint Snowが出会うまであと僅かへと迫ってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ーーー最終章ーー

『人殺し』とSaint Snow。 全3話(予定)


お楽しみに。

お気に入り・感想・高評価お待ちしております。

〜質問コーナー〜

Q、Saint Snowの小説をいつも楽しく読ませてもらっています。番外編の果南ちゃんの救命のシーンですが、ショックを行ったあとも心電図の解析を行っているので救急隊に渡すまでに身体に付けたまんまが一般的です。細かいツッコミ申し訳ありません。それにしても、明くんの判断は素晴らしいですね。頼れる男です。

A、初めて知りました。将来、看護師目指す者として改めて、勉強してきます。ご指摘、ありがとうございます!!

Q、運命なんてものはない!……………よね??

A、そのはず!!…………………………だよな??

Q、尊敬できる人の条件は??

A、この作品を面白いと思ってくれている人。いつもありがとうございますm(_ _)m

Q、(゚ー゚)(。_。)ウンウンそれで??←顔文字が見つかりませんでした。すみません。

A、(((( ˙-˙ ))))プルプルプルプルプルプルプル

Q、なるべく人前で愚痴を言わないような人間になりたいですよね。

A、そうですね。基本、私も愚痴はあまり言わない人間ですよ。そういう人は多分、乳酸菌不足だと思うのでカルピスでも渡しておけば大丈夫だと思います。体にピース✌️

質問箱にどんどん送ってくださいませ〜。

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