Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』 作:七宮 梅雨
周りが真っ暗闇に包まれている空間の中で中心に置かれている1本のロウソクが微かな光を灯していた。
そして、ロウソクの前に1人の女性が立っていた。彼女はまるで悪魔のような服装を見に纏い、クックックッと不気味そうに口を緩ませる。
「さぁ、我がリトルデーモン達よ。今宵も堕天な時間を過ごしましょう。」
彼女は両手を大きく広げ、大声を上げる。一体、誰に向かって言っているのか。よくよく見てみると、彼女の前には1台のビデオカメラと1台のパソコンが置いてある。
そのパソコンを覗いてみると、彼女が映し出されていて画面には多くのコメントが寄せられていた。
どうやら、彼女はインターネットを通じて生放送をしているらしい。実際にコメントの数からして相当人気な配信者だと伺える。
「今宵、私が行う儀式は数多の商品を扱う秘密な場所から調達した堕天使ルシファーが精製し漆黒刺激液体と堕天使ベルゼブブが精製し甘糖丸菓子を使った儀式よ。」
女性はそう言って、黒い袋から彼女の言う漆黒刺激液体と甘糖丸菓子を取り出す。
「クックックッ………。この2つを出して何を行うのか想像もつかないでしょう。でも、安心しなさい。この甘糖丸菓子を、この漆黒刺激液体に投入するだけだから。一体、どうなるのか想像もつかないでしょう??」
彼女はまるで毒薬を作る魔女のように不気味そうに笑いながら、甘糖丸菓子の封を開け、いくつか本体を取り出してそれを漆黒刺激液体の中へとぶち込もうとする。
「さぁ、見てなさい。今宵のこの瞬間、新たな堕天使歴史が誕生すr」
「誕生させてたまるかぁぁぁぁぁ!!!」バタン
甘糖丸菓子が漆黒刺激液体に触れようとした瞬間に部屋から1人の男性が乱入し、彼女から儀式で使おうとした2つを強引に取り上げる。
その後、ビデオカメラの電源を消して強制的に放送は終了となった。
「ちょっと何するのよ!!明!!」
女性は怒りの感情を孕ませた声で、男性の名を呼ぶ。すると、明と呼ばれた男性は彼女の頭をガシッと掴んだあと、ニッコリィ〜と顔は笑っているが明らかにブチ切れのオーラを漂わせて一言呟いた。
明「善子。………お前、今すぐ正座な。」
善子「…………うす。」
〜明視点〜
明「おい、馬鹿善子。どうして自分が正座させられてるのか分かるよな??」
俺は善子の部屋に置いてあった椅子を足を組みながら座り、目の前でビクビクと震えている善子を睨みつけていた。
善子「目の前で誰もが見出すことの無かった驚愕の儀式を「真面目に答えないと、そのシニオンを引きちぎるぞ。」………はい、分かってます」
ったく………、こいつはどうしてすぐに厨二病発言と行動をするのだろうか。何かあった時のために密かにまとめている有名な精神科病院のリストを渡してやろうか。
明「あのな。確かに、今日はお前からの使命で出たくもない動画の手伝いを引き受けてるけどな。俺が来る前から撮影始めてんじゃねぇよ。」
善子「うぐぅ…」
そもそも、どうして善子の生放送中に俺が彼女の部屋に飛び込んできたのか。
それは数週間ほどの前か続いているAqoursのメンバーからの使命を引き受けるという罰がある。過去に2年生組と3年生組と来て遂に1年生組の3人のみとなり、その1人目が善子。
使命内容は彼女が定期的に放送している動画内容を手伝うというものだった。
せっかくの花丸との大切な時間をこんなことで潰されることになるとは………。津島 善子許すまじ。
俺は嫌々という気持ちでありながらも、使命なので善子の住むマンションへと赴いて、善子の母親によって中に入れさせて貰った。
善子の母親に挨拶した時、彼女は頬に手を当ててこう言ったのだ。
善子ママ「おかしいわねぇ………。善子、もう撮影始めてるけど…………」
明「ーーーーーーーはい!?」
善子母の言葉を聞いて、すぐに彼女の部屋に入ったら本当に撮影してて、しかもその放送内容が明らかにおかしかったので全力で止めたのである。
明「てか、なんだよ。漆黒刺激液体と甘糖丸菓子って。ただのコーラとメントスじゃねぇか。」
俺は片手にコーラ。そしてもう片方の手にメントスを持ってツッコミを入れる。この2つの組み合わせと言ったらアレしかないだろう
明「お前さ、なにあんなシリアスな雰囲気を漂わせながらごく自然とメントスコーラをしようとしてんだよ。善子よ…………お前はいつから底辺You〇uberになった??」
善子「ゆ、You〇uberじゃないわい!!ニ〇生配信者よ!!あと、ヨハネ!!」
そんな大差ないわ!!You〇ubeもニ〇生も!! 会社が違うだけだろ!!
明「はぁ………、とりあえずお前にもう1度聞くぞ??俺は今日、お前の動画配信の手伝いをする。これでいいんだよな??」
善子「………ふん、そうよ。」プイッ
なんで、ちょっと怒ってんだよ。怒りたいのは俺の方だわ。プイッってしてないで、俺の顔を見ろ。
明「じゃあ、何で俺が来る前にやったんだよ。」
善子「アンタが来るのが遅いから我慢できなかったのよ!!何で10時に来るの!!」
何で10時に来たかって??それはね………
明「お前が10時に来いって言ってたからだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」グリグリィ
善子「にゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
ブチッと俺の何かがキレると俺は叫びながら善子の頭に目掛けて全力グリグリの刑を処す。善子は当然ながら、涙目となって痛がっていた。
善子「し、死ぬかと思った………」
明「ったく……。こうなるなら、今日、花丸と出掛ければ良かったわ」
善子「リア充爆発しろ」ボソッ
明「なんか言ったか??」ガシッ
善子「い、いえ。何も言っておりません。」
こいつは目を離したら直ぐに何かやらかすな。本当にそのシニオンを引きちぎってやろうか。
明「んで、なに??俺って結局帰っていいの??」
善子は何も言わず、首を左右に振る。どうやら、ダメらしい。なんなんだ、こいつは。
善子「今日、放送するネタが1人だけじゃ不可能だから明に協力して欲しいの。」
明「協力??」
てか、この子普通にネタって言っちゃったよ。
善子「えぇ。内容は撮影中に説明するわ」
明「打ち合わせはしない流れなのか??」
善子「ここで説明しちゃったら、動画内で説明するとき二度手間でしょ。それにリアクションとかもその場のやつが欲しいしね。打ち合わせなしでも、明のトーク力だったらいけるわよ。」
そういうものなのだろうか。まぁ、動画撮影とか経験豊富な彼女がそう言うのならばそうに違いないか。ここは、善子に従っておこう。
善子「明。はい、これ」
善子は棚からゴソゴソと漁り、ある物を俺に差し出す。それを受け取ると仮面ライダーの敵としてよく出てくるショ〇カー隊員のマスクだった。よくこんなの持ってんな
明「何これ??」
善子「一応、身バレ防止用のマスクよ。特定されたら困るでしょ」
ほぉ〜、なるほど。そこら辺のプライバシーとかはちゃんと考えてくれてるのね。
善子「あと、ズラ丸からもこれしない限り、明を動画に出すなって言われてるから」
明「花丸??」
花丸?るどうしてあいつが善子の使命内容を知ってるんだ??
善子「いくら使命とはいえ、彼氏が違う女と一緒に過ごすとなったら、彼女のズラ丸からしたら嫌な気持ちになっちゃうでしょ??例え、それがグループの大切なメンバーだとしても。だから、私とルビィは事前にズラ丸に使命内容を伝えてあるのよ。」
明「……………ッッ」
善子の言葉を聞いて、俺は自分の頬を全力で殴りたい気持ちとなる。
もし、これが逆の立場になった場合………、つまり花丸が俺とは違う男と2人で過ごすと考えると
口から心臓が出るほど不愉快で心配になる。その男を殴ってやりたいほどに。
彼女の気持ちを配慮することが出来なかったこんな自分が恥ずかしい。
俺って奴は花丸の彼氏……失格だな。
善子「………あと、ズラ丸はこう言ってたわよ」
明「??」
善子「『もし、マスク付けずにそのまま素顔で動画に出ちゃったら……放送を見た女の子がカッコイイ明くんのことを好きになっちゃうかもしれないずら。それだけは……嫌かな。明くんはマルの彼氏さんだもん』だって。良かったじゃない。ズラ丸から愛されて」
なんだよ………それ。やべぇ、俺、今めちゃくちゃ泣きそう。俺の彼女が優し過ぎてかなり辛い。けど、凄く嬉しい。
善子「嬉しすぎて泣きたい気持ちは分かるけど、そろそろ撮影始めるわよ」
明「分かった。」
今度、花丸を高級な店に連れてってやろうと心の中で決意する。ルビィにはSaint Snow のグッズでいいか。どうでもいいけど、確か今、黒澤家って旅行行ってるんだっけな。本当にどうでもいいな。
俺はショッカー隊員のマスクを被る。よし、これを被ったらやると言ったらアレしかない。
明「(・罒・)/イー!!!」
善子「プッ………ククッ、絶対にやると思った」
善子は手を口に当て笑うのを我慢しながら黒いローブを再び身に纏い、部屋を消してから目の前にある蝋燭に火をつける。
善子「あぁ………、やっぱりこうすると雰囲気が出てかっこいいわぁ」クックック
まぁ………、否定はしないな。俺も男の子だからこういう雰囲気は嫌いではない。
そして、善子はカメラの位置を確認したあと撮影ボタンをポチッと押した。
善子「我がリトルデーモン達よ。御機嫌よう。貴方達の支配人である堕天使ヨハネよ。今宵も堕天の時間を楽しみましょう。」
善子はいつもの堕天使ポーズを決めながらカメラの前で語る。こいつ、相変わらず見た目だけは一丁前に様になってるんだよな。
カメラの画面外で、パソコンに目を移すと案の定数多くのコメントが送られていた。
善子「今宵の今日は、特別なゲストを呼んでるの。紹介するわ。リトルデーモン0号『アカリリー』よ!!」
お、堕天使ヨハネ(爆笑)に呼ばれたので行かなくては。てか、アカリリーって呼んじゃったら知ってる奴は俺って分かるじゃねぇか!!マスク被ってる意味ねぇよ!?
少しだけ緊張しながらも俺は善子の隣に立ってまたしてもショッカー隊員のポーズを取って高い声を出す。
明「( ˙罒˙)/イー!!!」
善子「ッッ!?(ちょ、それでやってくの!?www待ってwww無理www絶対に笑っちゃうwww)ケホケホ………よwよろしくね、アカリリー。」
明「( ˙罒˙)/イー!!!」
善子「ッッ(待ってwww本当に無理なんだけどwww)……い、今から行うぎしぃきは……こ、これよ。」
俺のショッカー隊員のモノマネがツボってるのか、善子は笑うのを我慢しながら真顔を装って言葉を述べていく。次第に彼女から青筋が見事に浮かび上がっていることを確認したところで、ふざけるのを辞める。
コホンと咳き込んだ善子は懐から1つあるものを取り出してテーブルの上に置く。
善子「これは数多の堕天使が己の魔術力を競い合うために作られしマジックアイテム。その名も『テレパシー』よ。」
明「『テレパシー』??」
善子がテーブルの上に『テレパシー』というマジックアイテム(?)の箱から中身を取り出し、準備を始めていく。
善子「これ、あんたのね」
明「??」
善子から1枚のボートを渡される。そのボードには色んなマークが書かれていた。
善子「『テレパシー』が分からないリトルデーモン、そしてこの作品を呼んでくれてる読者のために説明するわね」
読者とか言うな、読者とか。メタ発言やめい。
善子「ルールは至ってシンプル。このボードにはA~Rの横列。1〜18の縦列に9色、9つのマークがそれぞれ書かれているわ。それぞれ違う組み合わせで計320種以上のマークがあるのよ。」
あ、本当だ。善子の言う通り、横列には英語。縦列は数字。そして ●・★・♦・♣︎・☀︎・☪︎・▪️・⚡︎・♥の9つのマークが書かれていた。
善子「そして、挑戦者はそのマークを1つ選択してボードに印をつけるの。それを互いに問い掛けあってこの320種類以上ある中から選び抜かれたマークを当てるっていう儀式よ。解答権は1回だから慎重に言葉を選ばなければならない、この儀式。クックック……、どう??楽しそうでしょ??」
なるほどねぇ……。頭脳戦ってわけか。確かに、ルールを聞いた感じ楽しそうではあるが…………
それ………儀式じゃなくて…………ボードゲームじゃね??
え、何??こいつは『テレパシー』の商品紹介するつもりなの??企業さんから案件でも貰ってる??
そう思うと、ますますYou〇uberっぽい。
善子「ちなみに質問の問は必ず本当のことを言うことよ。」
ふむ。了解だ。
善子「それじゃあ、アカリリーよ。マークを1つ選びなさい」
どうなら、ゲームは開始されるようだ。んー、そうだな。適当に青色の☪︎マークにしておこう。
善子「決まったかしら??」
明「( ˙罒˙)/ィー!!!」
善子「そう。じゃあ始めるわよ。あ、負けたら罰ゲームありで。『テレパシー』開始!!」
ちっ………、もう慣れやがったか。
まぁ、それは置いておいて。ゲームは始まった訳だが俺は善子が選んだマークを当てなければならない。てか、何ちゃっかり罰ゲームも入れてんだよ。
さて………どんな質問にしようか。
善子「私から質問いいかしら??」
明「どうぞ。」
善子「あなたが選んだマークは暖色系かしら??それとも冷色系??」
こいつ、最初の質問から飛ばしてくるな。これだけでもかなり絞られてしまう。
赤、青、黄、緑、桃、橙、茶、灰、紫の9色あるうち、4色は潰される。
まぁ、まだ1回目の質問だ。正直に答えておこう。
「冷色系だ。」
「…………なるほどね。」
カキカキと善子はメモをする
「次は俺の番だ」
「どうぞ。」
「お前が選んだマークは現実で今までに俺はお前の目の前で目撃、もしくは手にしたことはあるか??」
「…………………フゥム」
俺も最初の質問は結構攻めてみた。善子は顎に手を当てて何を答えようか悩んでいるように見える。
この質問の意外のポイント。それは『善子の目の前で』というワードを入れたことだ。
もし、普通の質問ならばどれも目にしてるし手にしてるから簡単に「Yes‼︎」と答えられる。だが、善子の前ということになると話は別になる。
例えば、⚡︎とかそうだ。⚡︎だったら、過去に何度も目にしたことがある。だが、善子の目の前ではまだ1度も見たことは無い。
つまり、色同様、この質問の回答だけで善子が選んだマークを絞ることができるのだ。
「……質問の答えはYesね。」
「Yes………か。」
ふむ。もし、彼女が言ってることが正しければ残ったマークは5つに絞られたって訳か。メモしておこう。
善子「貴方が選んだマークは………今この場から見えるかしら??」
んー、どうだろう。昼間でも は見ることができるとは思うけど……ここは窓やカーテンで閉めきってるから見えねぇ。
明「見えない」
俺は正直に答えると、善子はクックックと笑い出す。え……なんなん??
善子「貴方が選んだマークは☀︎か☪︎、もしくは★の3つのどれかね」
明「ーーーーーッッ!?」
なっ!?どうして、そこまで絞ることが出来た!?
善子「どうしてって顔ね。理由は至って簡単よ。私の問いかけに貴方は一瞬だけど窓の方に視線を移した。つまり、選んだマークは外………いや、空にあるものだと推測される。」
くっ………、やってしまった。どうやら俺は善子の策にまんまとハマってしまったようだな。
これで、圧倒的に不利な状況へとなってしまった。
善子「次はアカリリーの質問よ。なんなら、2回連続で質問しても構わないわ。有難いと思いなさい。」
うわぁ………、俺とは逆に余裕があるからか、舐めプしてきやがった。まぁ、でも状況が不利だということは事実。悔しいところではあるが、有難くその権利は頂戴しておこう。
明「じゃあ、まず1つ目。お前が選んだマークは今日中に必ず俺は目にすることは可能か??」
俺の問いに善子は真顔ですぐに答える。
善子「…………ないわ。」
明「…………は??」
ちょっと待て。ない………だと。
それはおかしいな。残っている候補5つの内、必ずしも今日中には目にするはずだ。
つまり、こいつはどこかで嘘を言っている??いや、そんなはずは無い。質問の問いはルール上本当のことを言わなければならない。
善子の顔を伺うと、ムカつくほどとドヤ顔をしてギランとしていた。これは………なにかを企んでいる顔だな。
………ん??てか、ちょっと待て。
俺は1つ、ある仮定が頭の中で思い浮かぶ。しかし、これはとても邪道なものだ。
本当ならば、ありえないことだがこれじゃないと辻褄が合わないし、どうせ善子のことだ。めちゃくちゃやりそう…………。
よし、この仮定が本当ならばマークは特定できた。あとは色だけだな。
それにまだ質問権は1個残っている。
明「ヨハネよ…………。お前が選んだマークの色はお前が好きな色か??」
善子「…………」
今まではマークだったのに、突然と色に関しての質問にチェンジしたので一瞬だが、表情を、しかめたのを俺は見逃さない。
それに……………
善子「えぇ。……好きね。」
明「分かった」ニヤ
よし、これで2つまで絞れた。最後の質問で決まるな。
善子の質問は適当に答えることにしよう
善子「マークは明るい時に見えるもの??それとも暗い時に見えるものかしら??」
明「基本的には暗い時に見えるな」
善子「…………ん」
これで、善子の中で俺が選んだマークは☪︎か★のどちらに絞られたはず。だが、まだ特定は出来ないはずだ。
次の俺の質問で決めてやる
明「お前が選んだマークの色は暖色系か??それとも冷色系か??」
善子が最初にしたやつと同じ質問を行う。この質問の答えによって勝負は決まる。
善子「……冷色系よ。」
冷色系…………ね。つまり、善子が選んだ色はあれに違いない……。
善子「次は私の質問ね」
悪いな、善子。お前に次の質問はないぜ。
明「紫色の♦」
善子「ーーーーーーーッッ!?」
明「それが、お前が選んだマークだ。」
俺の唐突の解答に善子は目を丸くする。
俺は善子の傍にある伏せてあるボードを手にしてひっくり返す。
すると、善子のボードに印が付いてあったマークは…………
紫色の♦だった。
明「ビンゴ」
この勝負………俺の勝ちだ。
善子「どうして………分かったのよ。色はともかくマークは……」
勝負に負けた善子はありえないといった表情を浮かべ、声を震わせる。
明「確かに俺はお前の目の前で を目にしたことは1度も無い。だから、最初の質問以降は候補から外していた。」
善子「うん。そうよね」
明「だけど、2回目の質問の答えを聞いておかしいと思った。今日中には目にすることは無いとお前は否定した。」
元々あった5つの候補は絶対に目に通すと思うし、元々外してあった4つの候補だとしても「ないと思う」みたいな感じで答えるのが基本だ。でも、善子は「ない」と完全否定した。
つまり…….善子は選んだダイヤのマークは絶対に今日は見ることは無いというもの。だが、ダイヤは本物じゃなくともテレビやSNSなどで目にする可能性は十分にある。
今日中に絶対に見ることは出来ないダイヤ。
それは………
明「お前、♦をダイヤちゃんとして捉えて答えてたろ」
善子「なっ!?どうしてそれを!?」
どうやら、この過程は当たっていたらしい。確かに、 をダイヤちゃんとして捉えていれば全てがまとまる。まとまらなきゃおかしいんだ。
1つ目の質問。確かに は見たことは無いものの、ダイヤちゃんならば当然ながらメンバーなので、善子の目の前で目にしたことがある。
2つ目の質問。今日中に見ることは可能かどうかのやつ。善子の言う通り不可能だ。なぜなら、今、黒澤家は旅行満喫中だ。それはグループみんな知ってること。今日中に彼女に会うことは不可能だ。
めちゃくちゃ汚いやり方ではあるが、ここでマークは特定できた。
続いて色に関して。これはすぐに分かった。
善子の好きな色………、本来ならば黒とかが好きなイメージがあるが、今回はない。
ここだけの話、善子は梨子のことが大好きだ。これは、別に同性として好きとかではなく、後輩が先輩に懐いているみたいな感じだが、最近は常に一緒にいる覚えがある。リトルデーモン『リリー』と名付けられるぐらいだしな。
さらに、1年生組で出かける時とかだと、「リリーの色だ。買お」と梨子の髪色である赤紫色系のアイテムをたまに購入する場面も目にする。
だからこそ、善子の好きな色は赤紫色となる。
だが、今回は赤紫色はないので紫色としたいが赤色という可能性もあるので、暖色系である赤、冷色系である紫のどっちかを最後に聞いたわけである。
まぁ、冷色系って答えたから紫色って分かったんだけどな。
善子「くっ………、私のしたことがまんまと敗北してしまうなんて………」
善子はガクッと手と肘を地に付ける。表情を見た感じ、とても悔しそうだ。
善子「………これにて、今日の配信は終わるわ。また明日の夜に会いましょう。」
立ち上がった善子は締めの言葉を言ったあと、ビデオカメラの撮影を止めた。ついでに俺はショッカーのマスクを外す。あ、涼しい…………。
善子「お疲れ様、明。」
明「お、おう。お疲れ」
俺と善子はボードゲームを片付ける。善子の顔を伺っても少し暗いままだ。
明「楽しかったな」
善子「えぇ。」
明「今度は花丸やルビィ達とやろうぜ」
善子「えぇ。」
明「…………まだ根に持ってんのか??」
善子「別に………ただ、 ほぼイカサマっぽいことしておきながら負けたことについて根に持ってるわけじゃないし」
明「バリバリ根に持ってんじゃねぇか…………」
相変わらずプライド高くて面倒くさい女の子だな。そうなるなら、しないほうがよかったのに…………。しょうがねぇな〜………
明「また、今度……動画に出てやるよ」
善子「ーーーーーーーッッ」
明「リベンジ戦っていうネタでまた今度出てやる。その代わり、イカサマは無しな。あと、もっと面白いボードゲーム見つけてこいよ」
初めてボードゲームやってみたけど、楽しかったしな。
善子「…………そこまで明がやりたいっていうなら仕方ないわねー。堕天使ヨハネがその願い、叶えてあげましょう!!」
えぇ………(困惑)。ヨハネ様………チョロすぎませんか??まぁ、この時の善子の方が俺は好きだけどな。
善子「ありがとう……明」ボソッ
明「ん??何か言ったか??」
善子「いいえ、何も言ってないわ」
なんだよ、それ。気になるじゃんか。別に言及しないけど……。
………あ、そういえば。
明「お前、言ったよな??負けた人は罰ゲームだって。」
善子「何それ??」
明「言ったよな??」ガシッ
ムカついたので、善子の頭を掴む。
善子「………言いました」
明「よろしい」
俺は思いっきり掴んでいた手を離す。すると、善子は涙目で俺を睨みつける
明「なんだよ」
善子「将来、〇〇になる奴がこんなことして良いと思ってるの??」
明「これも荒治療の1つだからいいんだよ。」
善子「良くないからね!?」
善子はそう言ってため息を吐く。冗談だよ、冗談。
明「それじゃあ、罰ゲームの内容いいか??」
善子「えぇ。なんでも来なさい。その代わり、処女はあげないわよ」
なんでそうなるん!?要らなくはないけど、要らんわ!!って、そんな事言うなよ。
善子「さっきのお返しよ」
善子はニヤッと可愛らしく微笑む。それを見てドキッとしてしまったが、それを含めてムカついたので罰ゲーム内容を口にした。
明「罰ゲーム内容は………………」
それを聞いて、善子は……………
善子「は??」
案の定、めちゃくちゃ嫌な顔をしていた。
そして、次の日の夜。いつもの時間に堕天使ヨハネは動画を配信したのだが、その時の彼女は厨二病発言の語尾に「にゃ」がついていたらしい。
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