Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』 作:七宮 梅雨
時系列としては高校を卒業して数年経ってます。
明「はっ………はっ………」タッタッタ
8月が後半へと差し掛かかり多少は涼しくなってきた、とあるの日の夜………俺は息を荒らげながら街中を全力で走っていた。
多分、今の俺の顔は凄いことになっているも思う。途中にすれ違った何人かの通行人が揃って俺の姿を見て驚いていたからな。
だけど、俺はそんなことを気にしてる場合では無かった。とにかく、足を動かさなければならない。
途中、運悪くも信号に捕まってしまったため、その場で足踏みをしながら腕時計に目を通す。
明「うげ!?やっべぇ!!約束の時間過ぎてるぅ!?」タッタッタ
早く!早く!と焦りながら俺は信号が変わるのを待ち、赤から青に変わった瞬間、誰よりも早く駆け出した。
止まることなく走り出して10分後ぐらい経っただろうか。
俺はとある高級なレストランの前で止まった。足を止めてからは、膝に手を付けて呼吸を整える。
呼吸が整ったあと、俺は走っている最中に落としてないか………と急に心配となってポケットの中に手を入れる。
すると、手からは小さな箱のような形をした何かの感触が伝わってきた。
明「良かった………。ちゃんとあるわ」
俺は安心しながらそう呟いたあと、そもそも今も時間が遅れてるため、こんなことしてる場合ではないと思い、すぐに店の中へと入る。
店員「いらっしゃいませ」ビシツ
店に入ると、ビシッとかっこよく制服を着こなした店員さんが俺の方に近づく。
明「あ、今日の8時に予約していた鹿角です。」
店員「鹿角様ですね。お待ちしておりました。」
明「多分、先に1人来てると思うんですけど………」
店員「そうですね。15分ほど前に1人の女性が来店されております。」
うわぁ……マジか。15分遅刻かよ。
店員「それでは、鹿角様。テーブルまでご案内させていただきます」
そう言って、店員さんは店の奥へと進むんでいく。店員さんの後を追っていくと、窓側にあるテーブルへと案内された。
そのテーブルには1人の女性が席に座っていた。
茶髪のふわっとしたロングヘアーにクリッとした茶色の瞳が特徴的で現在は丸型のメガネを装着して、服装は今日は記念日だからか、普段は見ることの無い綺麗な黄色のワンピースを着ていた。
そんな彼女は俺の姿を視界に捉えた瞬間、ニコッと微笑む。
その微笑みにときめき、そして同時に罪悪感を感じながら俺は席について彼女に一言呟いた。
明「ごめん………花丸。遅くなった。」
俺の言葉に、花丸は手をブンブンとさせながら慌てて言葉を出す。
花丸「しょうがないずらよ。今日……お仕事忙しかったんでしょ??」
花丸の言葉に俺は無言でコクリと頷く。職場が大手な所なので普段でも多忙なのだが、今日は特に仕事量がエグいほど多かった。
花丸「やっぱり………大変ずらよね。」
明「覚悟はしてたけど、こんなにもこの職業が大変だとは思ってなかったよ」
俺が昔から叶えたかった夢をどうにか叶えることに成功し、今の仕事に就いてからもう2年ほど経過している。それでも、まだ職員の中では下っ端中の下っ端だ。これからも勉強を励まなければならない。
花丸「でも、辞めるつもりはないんでしょ??」
明「もちろん。」
例え、予想以上に多忙だったとしても………俺が叶えたかった夢なのだ。辞めるつもりなど、サラサラない。
っと、こんな俺の職場の事なんて今はどうでもいいな。
明「花丸、遅れた俺が言うのもアレだけど……そろそろ注文するか」
俺はテーブルの上に置いてあったメニューを花丸の方へと渡す。
今日は俺たちにとって、大切な記念日なんだ。今は仕事なんて忘れて二人きりの時間を楽しむことにしよう。
うーむ……。それにしても、どれを頼もうか。メニュー表に載ってる料理の写真を見た感じ、どれも美味しそうだ。
よし。このオススメ!ってなってるローストビーフにしよう。
明「花丸は決まった??」
花丸「うん」
明「じゃあ、注文するぞ。すいませーん」
俺は近くにいた女性の店員さんに手を振りながら声を掛ける。すると、「はい。ただいま」と言ってすぐに俺達のテーブルの方へと来てくれた。
店員「ご注文の方お願い致します。」
明「俺はこの”帆立貝のポワレ フレッシュマッシュルームと共に”と”イベリコ豚のロースト ローズマリー風味”に赤ワインで。花丸は??」
花丸のことだ。目をキラキラとさせながら、ここが高級レストランということにも関わらず、多くの料理を頼むだろう。
だが、ご安心を。俺はこうなることを予め予測していたため、普段よりも多くお金を降ろしてきた。だから、いつも通り多く注文しても問題ナッシングだ。
あと、料理を食べる花丸の姿は高校生の時から相変わらず可愛いからな!!いっぱい食べる君が好き〜、みたいな感じだ。
だが、俺の予想を花丸はメニューのとある料理名に指をさしながらぶち壊した。
花丸「マルは”グリーンアスパラガスと甲殻類のリゾット”とオレンジジュースでお願いします。」
……………え??
店員「かしこまりました。少々お待ち下さい。」
手に持っていた紙に注文した料理をメモした店員さんは厨房の方へと向かって行った。
明「なぁ、花丸」
花丸「ん??」
明「料理………あれだけでいいのか??」
彼女が頼んだのは前菜のヘルシーな料理だけだった。Aqoursのメンバーの中で群を抜いて食いしん坊な花丸がこれしか頼まないというのはおかしい。
だってさ、1年前ぐらいに花丸と一緒に函館の実家に帰省した時に近くのハンバーガーショップで期間限定でやってた『10人前!?超ドデカビックハンバーガー』を15分足らずでペロリと完食しちゃったぐらいの食欲の持ち主だよ??
流石に俺や、一緒に来ていた聖良姉ちゃんと理亜姉ちゃんもドン引きしていたのを今でも覚えている。店長さんなんて、目玉飛び出てたもん。まぁ、出てもおかしくはないよね。
花丸「うん。」
花丸は普通に肯定した。特に注文を忘れたとかでもないらしい。
ということは…………
明「もしかして……料理の値段を気にしてるのか??それだったら……」
花丸「うぅん。そういう訳じゃないずら。最近………食欲が無いの。」
明「え!?」
あの花丸に食欲がない!?それって……緊急事態じゃないのか!?ある意味、大事件だよ??
明「体調がどこか悪いとか!?」
花丸「別に、そんなことはないずらよ??」
明「そ、そうか…………。」
花丸「本当に今日は食欲が無いだけずら。だから、気にしないで」
明「花丸がそう言うなら………分かったよ」
花丸があまり食べないということに対して、何か彼女自身に事情はあると思っていたが、特には無いらしい。俺の思い違いだったようだ。
店員「お待たせしました」
ここで、店員さんが俺達が頼んだ料理をテーブルの上へと運んでいく。
流石は高級レストランの出す料理だ。どれも、めちゃくちゃ美味そう。
店員「それでは、ごゆっくりとお楽しみ下さい。」
店員さんはペコッと頭を下げたあと、声を掛けられて他のお客さんの方へと向かった。
俺は赤ワインの入ったグラスを。花丸はオレンジジュースが入ったグラスをそれぞれ手に取る。
ここに辿り着くまでに色々と起こってしまったが………ようやく始めることが出来るな。
明「今日は俺達が付き合って8年目の記念日だ。花丸、俺と一緒にいてくれてありがとう」
そう。今日は俺が花丸に告白して付き合い始めてから8年目の記念すべき日なのだ。
付き合い始めてからは花丸とは一緒に笑い合ったり、泣き合ったり、意外にも喧嘩し合ったりなどした。たが、別れることなくこうして8年目を迎えることが出来た。
花丸「それはマルもずら♪明くん、これからもよろしくずら♪」ニコッ
花丸がそう言ったあと、俺たちは互いにグラスを優しく当て合う。すると、カツンと心地よい音が鳴り響いた。
明「それにしても、今日の服。凄く可愛いよな。どこで買ったんだ??」
俺は料理を食べながら花丸に話しかける。すると、花丸はドヤ顔になり、
花丸「ふふん。このワンピースに気付くとは明くんも隅に置けないずら。これはね、曜ちゃんとルビィちゃんが今日のために作ってくれたやつずら!!」
明「船長とルビィが??」
俺は驚きの声を上げる。ここで、2人の名前が出るなんて思ってもみなかった。
花丸「マルがね……、1ヶ月前ぐらいに今日着てく服装に悩んでたら2人がマルに似合う服を作って送ってくれたんだ!!」
明「へぇ………。良かったな。」
それにしても、凄いな。あの2人の裁縫技術は。流石、Aqoursの衣装担当をしてきただけはある。てか、どう見ても売り物にしか見えん。クオリティが高すぎる。
明「てか、ここ最近はAqoursの皆に会ってないな」
花丸「それは………仕方がないずらよ。皆、仕事してるし…………」
船長とルビィの名前を聞いて、ふとAqoursのメンバーに会ってないことに気付く。
最後に皆に会ったのは………2年前に俺が将来の夢を叶えたお祝いパーティーの以来だろうか。忙しいはずなのにわざわざ時間を作って来てくれてとても嬉しかった覚えがある。
それ以降は………今日に至るまでほとんど会ってないな。LINEや通話などはたまにしているが、暫く会ってないと寂しく感じてしまう。
でも、会いたくても花丸の言う通り、Aqoursの皆が現在、仕事に就いていて中々予定が合わないのだ。特に俺とか俺とか俺とか。
千歌は実家の旅館である『十千万』に就いて、お姉さんで若女将である美渡さんのサポートをしていてる。
曜船長は本当に船長になってしまった。船長だったお父さんの跡をついたらしい。彼女が船長になったからか、内浦の海からは「ヨーソロー」という声が常に聞こえるらしい。
梨子は世界でも注目を浴びているピアニストとなった。世界中を飛び回っており、たまに彼女のコンサートのチケットが送られてくるが、仕事で1度も行けたことがない。毎回行ってる花丸曰く、凄く良い演奏ということなので、次回は時間を作って行ってみたいものだ。偶にTwitterとかで百合イベントに梨子が出現したみたいなツイートを見るが気にしたら負けだ。
善子は愛知県にある一般企業でOLとして働いているが、副業(?)として堕天使You〇uber『ヨハネ』として動画配信をしている。意外にも登録者数が400万人以上おり、何気に大手企業であるuu〇mに所属。昨日は大物You〇uberであるHIK〇KINとコラボ動画上げていた。
ダイヤちゃんは実家である旧綱元の家系を継いで当主となり、業務に全うしている。それからは黒澤家が誕生してから1番に繁栄しているんだとか。彼女の妹であるルビィは当主になったダイヤちゃんの秘書をしながら、地元にある服屋さんで働いている。
マリーはイタリアで自身の会社を開いて、現在ではトップを争うほどの大手企業となっている。そんな彼女は最近、多くの男性(もちろん、金持ち)からアプローチを受けているらしく悩みの種になっているらしい。この前、LINEで『明〜、マリーとmarryしましょ〜。マリーだけにぃ〜♪』という頭のおかしな連絡が来たが普通に既読無視しておいた。
かなっちは、実家のダイビングショップを親父さんから継いで働いている。彼女が継いでからは『美人の店長が働くダイビングショップ』という噂が流れ、かなっち目的として来ているお客さんの後が絶たないという。それで、内浦の観光名所として名を響かせている。それに関して、通話で彼女から愚痴を聞かされたので流石の俺も苦笑いするしか無かった。
花丸「それに、マル達は東京にいるし……」
花丸の言う通り、俺達は現在、東京にある小さなアパートを借りて2人で同棲している。
どうして東京にいるのかというと、俺が今、働いている職場が東京にあるからである。
就職先が東京にあるというならば、当然ながら俺は内浦から離れる必要がある。そこで、俺は花丸に一緒に住まないか………と緊張しながら誘った所、快くOKしてくれたのだ。
花丸と一緒に住み始めて2年経つが、そろそろ今住んでいる所から引っ越したいと考えている。
ちなみに、花丸は今、作家さんとして働いている。本を読むのが好きだった彼女にはピッタリな仕事だ。彼女の出した本は今のところ、どれも大ヒットしており重版が常に掛かっている。今、執筆しているのは人を殺めてしまった男の子が9人の女の子によって救われる話を書いているらしい。もし、その本が出たら読書用、観賞用、保存用として3冊買っておこう。
明「忙しいっていのは承知だけど、それでも会いたいよな〜」
花丸「うん…………。」
ピロリン♪
明・花丸「ん?」
俺と花丸のスマホから着信音が鳴る。俺達のが同時に鳴ったということは、AqoursのグループLINEだろう。
俺が代表として自分のスマホからLINEを開き、内容を見てみると………
千歌『来月のどこかで皆で会おうよ!!』
千歌からだった。しかも、その内容がたった今、思っていた希望していたものだ。
明「あの人………、本当に期待を裏切らない人だよな」
花丸「そこが、千歌ちゃんの良い所ずら」
明「間違いない。」
花丸「どう??来月、予定……空けれそう??」
明「なんとか上司を説得して、休みを貰うよ。あの人なら、トマトあげればなんとかなると思うからさ。」
花丸「意味不明ずら…………。」
苦笑いする花丸を置いておいて、俺はポチポチと文字を打つ。この時点で、もう他のメンバーは『賛成!!』という返信を送っていた。なので俺も………
明『俺と花丸も大丈夫( '-' )b』
と送っておいた。
花丸「そういえば、零さんは元気ずら??」
明「零さん??」
花丸と雑談しながら食事をしていると、彼女から零さんについて話しかけられる。
明「零さんは今も元気そうだよ。毎日、凪の写真が送られてくるもん」
零さんは俺が大学に進学した時に、働いていた職場の後輩である菜乃という男性と結婚し、その次の年には零さんは妊娠して無事に男の子を出産した。その子の名前が凪である。
あと、零さんの苗字が奥山から菜乃に変わったのと同時に俺は零さんの養子から外れて、鹿角家に復縁した。だから、今では苗字を聞かれても鹿角と名乗るようにしている。
だが、それでも俺は零さんのことを母親のように思ってるし、零さんも俺のことを息子として思ってくれている。なので、例え歳が20歳以上離れてたり、血が繋がっていなくても凪は正真正銘、俺の弟だ。
ちなみに、聖良姉ちゃん達が凪を見て
聖良『明の弟ってことは、私達の弟でもあるってことですよね!?ね!?ね!?』ハァハァハァ
理亜『姉様の言う通りよ!!凪〜、お姉ちゃんの所においで~。』ハァハァハァ
と、興奮気味に言っていた。だが、2人の姿を見て凪は泣いてしまい、キャラ崩壊しつつある姉2人はショックを受けていたのが印象に残っている。
明「近々、空手をやらせる気らしい」
花丸「へぇ……。零さん、厳しそうずら」
明「多分、厳しいと思うよ。俺の時も厳しかったから」
今でも彼女の元で空手を習っている時を思い出すと、恐怖で思わず体を震わせてしまう。本当にあの頃は地獄といってもおかしくは無い日々だった。凪も近いうちにあの地獄を味わうと考えると心が痛む。もし、何かあったら兄弟子として助けてあげよう。
明「そうだ。おばさんは最近、調子はどうだ??」
ふと突然、花丸の祖母の顔が頭によぎってきてきたので花丸に話しかける。あの人も歳だからな。心配になる。
花丸「おばあちゃんは元気ずら。この前もはーれーだびっとそんで、内浦を走り回ってるって聞いたずら。」
何やってんの、あの人!?最近は高齢者の交通事後が多発してるから気をつけて欲しいだけど!?
花丸「あ、でも。最近は足腰が弱ってきたからはーれーだびっとそんを明くんに譲るって言ってたよ」
えぇ………。花丸のおばさんには申し訳ないけど要らないです。二輪車の免許も持ってないしな………。
花丸「マル……、明くんと一緒に乗りたいな」
よし。今度、車校に行って二輪車免許取りに行こう。ハーレーダビッドソンを譲ってくれる花丸のおばさんには今度、お礼としてディズニーランドへと連れてってあげるか。
それから、俺と花丸は食事をしながら2人で色んな事を会話して素敵な時間を過ごした。
明「そろそろ行くか………」
花丸「うん。」
腕時計を見て、いい時間になったのを確認した俺は席を立つ。花丸も頷いて、彼女も席を立とうとするが
ーーーガタッ
明「花丸!?」
突然、花丸は膝を床に付けてしまう。驚いた俺はすぐに彼女に駆け寄り声を掛ける。
花丸「ごめん。少しだけ立ちくらみしちゃって………」
明「大丈夫かよ!?なんなら、今から病院に………」
花丸「大丈夫ずら。多分………仕事の疲れが出ちゃったんだと思う」
花丸は「ずらぁ〜!!」と言いながら立ち上がる。念の為、手を彼女のおでこに当てるが異常はない。もちろん、脈も測るが正常だった。
明「心配させんなよ。めっちゃ焦ったじゃんか。」
花丸「ごめんずら」
明「仕事も程々にな。」
花丸「それ、明くんが言う??」
明「ん??何が??」
花丸「だって……、今年になってから明くん。ずっと働いてるから………」
明「ーーーーーッッ…………。」
花丸の言葉に俺は何も言うことが出来なかった。確かに、俺は今年に入ってからは今まで以上に出勤するようになった。
赤髪の上司も最近は「休みなさいよ」とキツく言ってくるようになったが、休むわけにはいかなった。
今日の俺達の記念日までに『ある物』を購入するために、俺は死にものぐるいで働く必要があったのだ。
そして、先週にようやくお金が溜まり、目的である『ある物』を購入することが出来た。
それは、今、俺のポケットの中にある小さな箱に入っている。
明「…………なぁ、花丸。」
花丸「ん??」
明「お前に………渡したい物がある。」
会計を終えたあと、俺は花丸と手を繋いで街中を歩いていた。夜はもう遅いというのにも関わらず、色んな店に電気が点いていて騒ぎ声が聞こえてくる。
そして、俺はとある場所へと足を運んだ。
そこは、俺達にとってもAqoursにとってもかけがえの無い場所であった。
花丸「ふふ。やっぱり、マルはここが好きずら」
明「俺もだよ」
俺達が赴いたのは、秋葉原にある長い階段を登ることによって辿り着く大きな神社だ。
そう………神田明神である。
俺と花丸は何か記念日で出掛けたあとは必ず最後にここに足を運ぶようにしている。ここに来るきっかけとなった理由は忘れてしまったが、俺としては花丸と2人で過ごした日の締めとしてここが適していると思っている。
それは花丸も同じ気持ちだろう。
確か………この場所で『人殺し』である俺はSaint Snowの2人と10年振りに再開したんだよな。
ここに来ると、色んな事を思い出す。
花丸「それで、渡したい物って何ずら??」
お賽銭にお金を入れて2人でお願い事をした後、花丸はその場で俺に話しかける。
雰囲気的に少しは察しても良いのだが………どうやら彼女は気付いていないらしい。
俺は花丸の方に顔を向けて言葉を出した。
明「俺たちってさ………。もう付き合ってからもう………8年経つんだよな」
花丸「そ、そうずらね。」
俺の突然の語りに花丸は動揺しながらも俺の言葉に頷く。
明「俺はさ。花丸と付き合い始めてからは、いつだって幸せだった。」
花丸「それは、マルもずら。」
どうやら、花丸も俺と同じように幸せな気持ちだったらしい。彼氏として嬉しい。
明「だけどな。途中に不安になることもあるんだ。『人殺し』である俺が……こんな幸せな日々を送っても良いんだろうかって」
花丸「そんなことは………」
無いって言ってくれようとしてるんだよな。ありがとう。
でもな、花丸。無くはないんだよ。俺はどんな状況になったって、俺が『人殺し』であることには決して変わりはない。例え、今、○○として人を助ける仕事場で働いていたとしても。
俺の言いたいことが分かったのか、花丸はシュンと悲しそうに俯く。
そんな彼女の姿を見て、俺は花丸の手を触れながら言葉を呟く。
明「けどな、花丸。それでも俺は…………やっぱりお前といたい。」
花丸「え??」
俺の言葉を聞いて、花丸は顔を上げる。彼女の瞳には真剣な表情をしている俺の顔が映っていた。
明「これから先、ずっとずっとお前と一緒にいたい。それが、例え俺達がおじいちゃんおばあちゃんになったとしても。」
花丸「ーーーッッ!?それって……」
ここで、花丸もようやく自分が今、どんな立場に立っているのか、理解したようだ。
俺はドクンドクンと心臓が爆音で鳴り響いているのを感じながらポケットに手を入れ、小箱を取り出す。
その小箱を目にした瞬間、花丸は目を丸くして口元に両手を当てていた。
そして………手に持っている小箱をゆっくりと開けながら俺は…………
明「花丸、俺は君のことを絶対に幸せにします。なので、これから先は………『鹿角 花丸』として生涯、俺と隣にずっといてくれませんか??」
キラキラと月の光で反射して輝いている黄色の宝石がついた指輪を花丸に見せながら俺は彼女に一世一代のプロポーズをした。
身体全身が熱い。きっと、体温計で測ったら40度はあるだろう。
彼女になって欲しい、と告白したあの時と比べても非にもならないほど緊張している。
ずっと長い間、お付き合いしてもプロポーズしたら別れてしまったという話を仕事場で働いていたら偶然にも耳にしたことがあるため、とても不安だった。
だから、俺は彼女の声が耳に入るまでギュッと目を瞑った。
花丸「………ねぇ、明くんは覚えてる??」
明「え??」
プロポーズの言葉を聞いて、YESかNOのどちらかの返事を待っていたが、花丸は俺にある事を問い始める。
花丸「マル達が高校1年生の時……Aqoursのメンバーが1人ずつ明くんに使命出して、それを叶えるっていうことをしていたよね。」
明「あ、あぁ。覚えてるよ」
俺がAqoursに正式に加入した後に、迷惑をかけたから♪という理由で始まった謎の使命シリーズだ。
確か、千歌は実家の旅館の手伝いで船長は着せ替え。梨子は百合イベ同伴にマリーは使用人。ダイヤちゃんは生徒会の手伝いにかなっちはダイビングショップの手伝い。善子のは動画の出演にルビィはスクールアイドルのショップの付き添いだったか。
どれも中々濃い日だったので忘れることは無い。
花丸「まだ………マルから使命は言ってなかったよね??」
明「そういえば………」
ルビィのが終わって、次の練習の時に花丸に使命があるか聞いたらその頃は「ない」と言っていた。なので、何かあったら言ってくれよ、と伝えていたが結局は俺達が卒業するまで花丸は何も言わなかったな。
花丸「だから……今、ここでマルは明くんに使命を与えるずら!!!」タッタッタ
花丸は俺の方に向かって走り出す。
そして、そこから大きくジャンプして俺の胸に飛び込んできたあと花丸はボソッと呟いた。
花丸「絶対に………マル達を幸せにしてね」
明「ーーーーーーーーーーッッ」
花丸の言葉を聞いて、俺は衝撃を受け動揺したが………
明「ありがとう………」
そう言って、彼女のことを抱き締めた。さっき走ってジャンプしたからか……それとも俺のプロポーズを聞いて嬉しかったのか、彼女の心音が強く伝わってくる
今、この瞬間は過去最大に幸せな気持ちだ。
ーーーん??ちょっと待て。そう言えば………
明「なぁ、花丸」
花丸「何ずら??」
花丸はずっと自分の頬を俺の胸に埋めていて、とても幸せそうな表情を浮かべていた。
いや、俺も今、めちゃくちゃ幸せなんだけどね…………。
明「あのさ。マル『達』ってどういうこと??」
花丸「……ふふ」
俺の問いかけに花丸は微笑んだあと、俺から少し距離を開けて離れる。
そして、彼女は満面な笑みを浮かべながら自分のお腹を優しく撫でていた。
明「…………え??」
彼女の行動に、俺はある1つの仮定が頭の中に思い浮かぶ。
そして、それと同時に今日の彼女の言動も思い出した。
あの食いしん坊な花丸が食欲が無かったのも、最近、疲れているように見えたのも、立ちくらみがするようにもなったのも………
まさか…………嘘だろ??いや、そんなはずは…………。
わなわな、と動揺して震えている俺の姿を見て花丸はトドメの一言をぶちかました。
花丸「どうやら………出来ちゃったみたいずら♪」
明「ーーーッッ………」ダッ
彼女のそんな言葉を聞いて、俺はすぐに花丸の元へ駆け寄り、またしても抱き締める。今度はさっきよりも力を込めて。
花丸「明くん??」
明「ーーーーーー!!!」
多分………俺は泣いていると思う。頬に熱い何かが流れているのかが分かるから。
何だよ………。そのサプライズは。
せっかく……カッコつけて泣かないように耐えてたのに………。そんなこと知ってしまったら、泣くに決まってるだろ。
花丸は細かく震えて、泣いている俺の頭の上に手を置いて優しく撫でてくれていた。
花丸からの使命…………絶対に成し遂げよう。
俺は愛する花丸と………近い未来に誕生するであろう新たな命を必ず幸せにする。
俺は泣きながら、そう心の中で強く誓った。
今日は『人殺し』である俺が、目の前にいる国木田 花丸に告白をして付き合うようになってから8年という月日が経過した記念すべき日。
それに加えて新たに『人殺し』である俺が彼女にプロポーズして成功した日。
そして…………花丸のお腹の中に新たな生命が宿っていることを知った俺たちにとってかけがえの無い記念日となった。
遂に………あとは、もう最終話のみとなってしまいました!!
12日(土)に投稿する予定ですので、楽しみにして欲しいです!
お気に入り・感想・高評価お待ちしております。
質問箱に来た質問を答えていきまーす。
Q、このフォロワーでお姉ちゃんだったら良いなって人いる??
A、いるっちゃいる。名前は伏せておきますが……。
Q、きゅうりの漬物とたくあんあったらどちらに先に食べる
A、きゅうりの漬物です。
Q、最近、テンション上がることあります??
A、自分の作品がもうすぐ終わるので、それに関してはテンションが上がっております。
Q、電子レンジでサンマ焼いたことある??
A、ありません。サンマは余り食べません
Q、好きなミステリー作家は??
A、東野圭吾
Q、牛乳かゆって聞いたことある??
A、ない。何それ??美味しいの??
Q、バンド組むなら何担当??
A、ドラム
Q、これは無いわーっていう感じの質問
A、無いけど、どういう意図をもってこの質問を送ったのかが知りたい。
Q、好きな芸能人とその理由を教えてください
A、田村亮。理由、ラブライバーに目覚めたため。
Q、宇宙旅行に持って行きたいもの。
A、かぼちゃ
Q、アイスコーヒーに牛乳入れる??
A、高確率で入れる。美味しいよね〜
Q食事の時、パンでおかずのタレを吸い取って食べますか??
A、つけパンはあんまり食べないです。基本、バターやジャム、小豆とかつけて食べてます
残りは最終話に回しますね。