Saint Snowの2人の弟である俺は『人殺し』 作:七宮 梅雨
『人殺し』の投稿を月1程度で復活しようと思ってるので、良かったらお付き合いください。
第1弾としてはコラボ作品でお相手はふらんどるさんとです!!どうぞ!!
この作品を読む前に「『人殺し』は独白する」を目にしといてください。あれの世界線で話が進むので。
【コラボ】「『人殺し』とシスコン」
キーンコーンカーンコーン
退屈で退屈で仕方が無かった午前授業がチャイムの音で終了を知らせ、数学を教えていた………平山だったっけな?まぁ、その人に挨拶をした後、クラスの奴らは嬉しそうに弁当箱を手にして各場所に散っていく。
当然、俺もその輪の中に入って…………とはいかず、誰にも気づかれないように鞄を持って教室から出ていく。
俺は今年から共学化した浦の星女学院に入学して半年が経とうとしているが、誰とも関わらなかった。いや、関わろうとしなかったと言った方が正しいかもしれない。
こんな、俺みたいな『人殺し』が輪の中に入れる訳ないだろ。こっちからお断りだ。
もうアレは10年近く前の出来事だし、場所が場所だから知らない人は多い。そのため、何も問題は無いと思うかもしれない。
だけど、必ずとも大丈夫だという訳では無い。
もし、どこかで俺のことを知ってしまったら…………、という恐怖がいつどこでも俺に襲いかかってくる。
あの日…………あの場所を離れる時に最後に目にし、頭の中に焼き付けてしまった姉のあの表情を他の人にされたら、と思うと恐怖で身体を震えてしまう。
だからこそ、俺は誰とも関わらない。
それが、俺にとっても周りにとっても1番の安全策なのだから。
別にそんな難しい話ではない。中学の時だって3年間、誰とも関わらずに過ごすことが出来たのだ。だからきっと、この高校生活も何気なく過ごせるはず。
ギィィ………と、俺はとある場所の扉を開けて前に進む。
俺がやって来たのは屋上だった。
本来なら、屋上は半年ほど前に設立したスクールアイドル部が練習場所として使われているらしいが、それは放課後の話であって、基本的に昼休みは誰もいない。
まさに俺にとって最適で素晴らしい場所だ。
屋上の隅に腰を下ろして、鞄から弁当箱の入っている仮面ライダーの包袋を取り出す。
そして、その包袋から弁当箱を取り出す。普段は一緒に暮らしている里親が夜遅くまで仕事があるため、朝は俺が早起きして弁当を里親の分まで作っているのだが
「今日は明ちゃんにとって、何かいい日になるも思うから私が作っちゃった!!」
と、珍しく里親が弁当を作ってくれていた。よく分からない理由とともに。
俺にとっていい日?何言ってんだ、貴女は。そんなの『人殺し』である俺なんかにある訳ないだろ。頭狂ってんのか?
『人殺し』になって約10年間。自分自身で心の底から良かったと思えたことなんて、たった1度しかない。
それは…………今の里親である奥山 零という女性に家族として受け入れてもらえたこと。
本来なら拒絶されて当然な『人殺し』を彼女は何も嫌な顔をせずに受け入れてくれた。
当時、周りの視線に怯えながら生きてきた俺は生きる希望を失っていた。
"死にたい"
この言葉ををどれほど心の中で呟いただろうか。この感情をどれくらい抱いただろうか。
……………今思い出してみても正気の沙汰じゃなかったということが改めて分かる。
だけど………、その負の感情を里親はぶち壊してくれた。だからそこ、こうして今も俺は生きている。
俺がこうして生きる理由は、いつか里親に恩を返すため。それだけだ。どんな形で恩を返すかはまだ決まってないけど、高校を卒業するまでには決めておきたいところではある。
おっと………いけないいけない。こんなことしているうちに昼休みが終わってしまう。早く食べてしまおう。
そう思い、弁当箱を開けようとした瞬間ーーー
「あれ?まだ来てないのか」ギィィ
屋上の扉がギィィ、と開き1人の人物が屋上へと足を踏み入れる。珍しいな。昼休みは基本、俺以外来ないというのに。
誰が来たのだろうか、とさり気なく顔を振り向いてみるとーーー
「おかしいなぁ。かな姉、屋上で待ってるって言ってたのに。」
青髪の短髪で細身白肌が特徴な男性が頭を掻きながら屋上の周りを見渡していた。
は?男?何で男がここにいる?いやいや、おかしいだろ。この学校の生徒で男は俺だけのはずなのに。まさか………不審者か?
…………いや、ちょっと待て。よく見たら首に特別来校者証みたいなのがぶら下がってる。てことは、ちゃんと許可を得てここに来たっていうことか?
「ん?あそこに誰がいる。少し聞いてみよう。おーい!!!」
男性は俺の姿を視界に捉えた瞬間、手を振りながら声をかけてくる。はぁ………、何か面倒臭いのに捕まったな。隠れておけば良かった。
「………………何?」
「あの、1つ聞きたいんだけど………。ここに青髪でポニーテールにしてる女の人来なかった?」
青髪のポニーテールの女性?少なくとも、俺が屋上に来てからはこの人が来るまでの間は誰も来てないはずだ。
「誰も来てねぇよ。」
「そっかぁ。てことは、僕が早く来すぎたのか、部室とかに寄ってるのかなん??」
「そもそも、アンタ誰?ここの生徒じゃないよな?」
「ん?………あぁ!そうだよね!急に男がここに来たら誰だって困惑しちゃうよね!?ごめん、ごめん!!僕の名前は松浦 玲士。高校2年生で、浦の星女学院スクールアイドルAqoursのマネージャーをやっています。あと、そのメンバーの1人、松浦 果南の実弟です。」
まさかの先輩かよ。見た目からして歳下だと思ってたわ。しかも、この学校のスクールアイドルのマネージャーでそのメンバーの弟ときた。クラスの…………黒澤と国木田、津島辺りがそんなことを言っていたような記憶がある。
でも………、なんでそんなスクールアイドルほマネージャーが ここに?今はまだ、昼休みだ。部活帯の時間じゃない。それに、この人、学校はどうした??今日、普通に平日だぞ??
「…………何しにここへ?今日、学校あるんじゃないですか?」
「今日は振替休日。そんで、かな姉が弁当を忘れちゃったから届けに来たんだよ。あと、ついでにお昼も一緒に過ごそうかなと。」
「あ、そうっすか。」
自分で聞いておいてアレだけど、俺は弁当のおかずを食いながら松浦先輩の話を適当に流した。結構、どうでも良かったからな。
「あ、かな姉からL〇NE来た。……ぷっ、かな姉らしいや。ねぇ、これ見て見てよ。」
弁当のおかずを食べてると、隣に座っていた松浦先輩が俺にスマホを差し伸べ画面を見せてくる。最初は無視していたが、あまりにも鬱陶しく見せてくるので、呆れた表情で画面を除くと
『ごめん、玲士。今日の小テストの点数が悪くてダイヤに捕まっちゃたから少し遅れる。終わり次第、すぐ向かうから屋上で待ってて!!』
「あはは、かな姉もダイヤさんも相変わらずだなぁ。」
松浦先輩はスマホの画面を見ながら楽しそうに言葉を出す。俺からしたら、誰?ってなるし、何も面白くなかったけどな。
それより、早くここから離れたい。じゃないと、あと少ししたらここに人が集まりそうな気がする。さっさと、食べ終えて図書室でも向かうか。
「なぁ、君はAqoursの中で誰推しとかいる?」
「はい?」
唐突に松浦先輩に話しかけられてしまった。
「ほら、やっぱりAqoursって今人気急上昇中のスクールアイドルじゃん?だからメンバーの中に推しとかいるのかな……って。」
推し…………ねぇ。そもそも、あくあ?とか知らんし興味もない。スクールアイドルなんて…………
『それでは、今、最も大注目を浴びている函館が生んだスクールアイドル、Saint Snowについてお話をーーーーーーーー!!!!』
スクールアイドルなんて以ての外だ。
「で、誰なの?」
グイッと松浦先輩は顔を近づけて俺に聞く。近い近い近い。つい、先輩の顔面に目掛けて手を出してしまいそうになったが、何とか片方の手で抑え、
「…………………国木田」
ボソッと俺は国木田の苗字を口にした。津島、黒澤もいる中でどうして国木田を選んだのかは分からない。だけど、別に国木田のことを推してる訳ではない。あいつと関わったことがあることなんて授業のグループワークで一緒になったことがあるぐらいだ。
『奥山くん、今日からよろしくずら♪』
『……………よろしくな。』
『ッッ…………ずら///』
「そっか〜、花丸ちゃんか。可愛いもんね。」
「………そうですね」
確かに国木田は容姿は可愛いの部類に入ると思う。しかも、何気に成長を素晴らしく、しっかりと出てるところは出てるしな。
「でも、やっぱりかな姉でしょ。」
「かな姉?」
「そうそう。僕のお姉ちゃん。本当に凄い人なんだよ。歌も上手いしダンスも凄いし体力あるし料理も一流シェフには負けないぐらいの腕なんだ。」
「……………へぇ。」
ーーーズキ
松浦先輩の言葉を聞いて胸に痛みが生じる。
「しかも、よくかな姉とハグするんだけどそれがまた気持ち良いんだ。何だろう………とても、落ち着くって感じがしてさ。」
俺が胸に痛みを感じていることに当然ながら気付かない松浦先輩はさらにその"かな姉"と呼ぶ姉らしき人物の言葉を続ける。
ーーーズキズキ
それによって、さらに胸の痛みが増す。それと同時に次第にイラつきも募っているのも感じる。
「こんなスペックが高いのに、実は凄く怖がりなんだ。3日前、雷が酷かった日があったじゃん?もう……その日のかな姉、まるで子犬みたいに震えててさ。ずっと僕の傍から離れなかったんだよ。それがまた可愛くてさ。」
ーーーズキズキズキ
やめろ…………
「それで、かな姉がーーー」
黙れ……………
「その時にね、かな姉がーーー」
喋るな……………
「本当にかな姉はーーー」
これ以上は……………
「そんな、かな姉が僕は大好きなんだー。」
この瞬間、プツンと俺の中で必死に引き止めていた何かが切れた。そこからの俺の行動はとても早かった。
「ちょっと黙れよ」
ーーーガシッ
「ーーーーーーーーーーッッッ!!???」
俺は目の前にある松浦先輩の言葉を止めるように口元に手を差し伸ばして彼の両頬を強く掴み、強制的に黙らせた。
俺の唐突の行動に松浦先輩はかなり困惑した表情が浮かび上がっているのかが分かる。
それを知っていてなおかつ、俺は離すことはなかった。むしろ、さらに力を入れたあと今までに出したことがない低いトーンで彼に話しかける。
「先輩…………うぜぇよ。さっきから、かな姉かな姉って。シスコンか、何かか。気持ちわりぃな。」
「がっ………あっ………!?」
「先輩みたいなのを見ると心の底から腹が立つんだよな。大好きだった人から裏切られた経験を知らずにそうやって、のほほんと幸せそうな顔を浮かべることができるんだから。」
「うぅ…………、あぁ………。」
「いいか?これだけ覚えておけ。人をあまり信用するな。それが例え自分の家族の一員が相手だったとても。」
『人殺し』
『もう…………私達に関わらないで』
人間っていうものは、普通に裏切る生き物だ。自分の立場が危うくなった時、それを改善させる為ならば平然と何気ない顔で家族を生け贄に捧げる。
俺は『人殺し』になったことで、鹿角家に棄てられた。けど、俺は好きで人を殺めた訳ではない。家族を………、家族だった元・母親と元・姉2人を助けるために人を偶然的だったが、殺めたんだ。確かに他に方法は考えればあったかもしれない。けど、それしか方法はなかったと思う。
それなのに、今はどうだ。当時、俺の小さかった背中に『人殺し』というレッテルを貼ってでも守った家族に……………俺は棄てられた。あいつらは重荷を全部俺に背負わせるだけ背負わせて棄てたんだ。
きっと、今頃はあの甘味処で商売繁盛させて幸せに過ごしているんだろう。当たり前だ、そうなるように息子を生贄にしたんだから。
「先輩もいつか分かる時が絶対に来る。スクールアイドルのメンバーや家族………、アンタの大好きなかな姉という人物に裏切られた時とかにな。」
俺がこの言葉を松浦先輩に呟いた瞬間ーーー
「玲士ー。ごめんねー、遅くなっちゃって」ガチャ
ガチャ、と屋上の扉が開く音がして、すぐに女性の声が耳に入る。明らかに松浦先輩の姉だろう。しかも、足音からして1人じゃない。少なくとも3人はいる。
俺は彼女達にバレないように、すぐに松浦先輩の口元を掴んでいる手を離したあと、荷物を持って屋上の出口へと進める。
「あ、奥山くーーー」
スクールアイドルのメンバーらしき女性何人かは俺の姿を見て驚いているが、俺はそれを気にせず横を通り過ぎる。途中、俺の名を呼ばれた気がするがそれも無視した。
階段を降り、中庭へと出た俺は隅に設置されていたベンチに深く座り込んでため息を吐きながら顔に手を置く。
やってしまった…………。
今、この言葉しか出てこない。くそ…………、初対面の人の姉とのやり取りを聞いただけで頭に血を上らせるとかガキかよ。
別に松浦先輩は悪くない。悪いのは全部………
あの人の話を聞いて『羨望』と『嫉妬』を感じてしまった俺の不甲斐なさが原因だ。途中の胸の痛みもきっとこれが関わっているに違いない。
きっと、松浦先輩は彼女達にさっきの出来事を話すだろう。それによって、メンバーは俺に問い詰めてくるはずだ。特に松浦先輩の姉とかな。あーあ、こうなるから人と関わるのが嫌なんだよ。マジでクソだわ。
まぁ………、そうなったらそうなったらで、ちゃんと受け入れよう。大丈夫、批判的な言葉を言われるのは慣れてる事だ。しっかりと謝って許しを貰えればそれで良い。
ブー……ブー……
「ん?」
ポケットに入っているスマホが震える。零さんかな?思い、取り出して画面を見ると知らない人からだった。嫌な気がしたのでキャンセルを押す。
ブー………ブー………
すぐにまた鳴り出した。きっと、拒否しても出るまでずっとかかってきそうな気がしたので仕方なく通話に出ることにした。
「はい」
『あ、もしもし。奥山くん?僕、松浦だけど』
「ーーーッッ!?」
どうして松浦先輩が??どうやって俺の電話番号を…………。それに名前も。あまりにも驚いてその場から立ち上がってしまった。
「ごめん。鞠莉姉に奥山くんの電話番号を調べてもらって聞いたんだ。」
鞠莉姉?…………あ、小原鞠莉のことか。なるほど、それなら納得がいく。小原先輩はここの生徒でありながら浦の星女学院の理事長もやっている。確かに、全校生徒の個人情報を手にしている彼女ならば俺の電話番号ぐらい調べるのは容易い事だろう。
「なんですかね?」
要件を聞くが、内容はさっきの事だろうな。
「あのね、放課後にAqoursの部室に来て欲しいんだ。」
「部室に?」
『うん。少し君と話がしたくて。』
やっぱり………さっきの事についてか。きっと、部室で俺はメンバーに怒られるんだろう。その未来しか見えない。
「わかりました。放課後に……ですね」
『うん。じゃあ、またね。』プツン
松浦先輩と話が終えたあと、スマホをポケットにしまったあと、再びベンチへと座る。
「はぁ………めんどくさ」
あと数分で昼休みが終わるが、俺はその場から動く気は無かった。
キーンコーンカーンコーン
そして、あれから午後の授業を終えた俺はスクールアイドル部の部室に向かうために教材を鞄の中に入れて席から立ち上がると
「奥山くん」
「ん?」
聞き覚えのある声で名前を呼ばれる。振り向くと、そこには不安そうな表情を、浮かべている国木田が立っていた。
「国木田………」
「部室に……玲士さんに会いに行くんだよね?」
「………あぁ。」
国木田の言葉を正直に肯定する。こいつも事の顛末を松浦先輩から聞いてるから知ってると思うのだが。
「場所分かるずら?」
「……………」
そう言えば、俺………部室の場所分からねぇな。
「マルが連れてってあげるずら」
部室がどこにあるのか知らないのを察したのか、国木田が言葉を出す。ここは断りたいところだが、虱潰しに探しても時間を無駄にしてしまうだけ。ならば、ここは素直に連れてって貰った方がいい。
大丈夫。こいつのとやり取りもこれだけ。今日が終わればまたいつものように誰とも関わらない日常が戻ってくるはずだ。
「………お願いしてもいいか?」
「ッッ///…………ずら♪」
なんで、そんなに嬉しそうな表情すんだよ。そんなに俺がメンバーに陥れられるところが見たいのか?こいつ、可愛い顔してとんでもない性格してんな。
俺は教室から出て廊下を歩く。いつもと違うのは隣に国木田がいることだろうか。
国木田の言葉通りに廊下を歩いていると
『スクールアイドル部』と書かれた表札らしきものがついた部室へとたどり着く。ここに恐らく国木田以外のメンバーとマネージャーである松浦 怜士がいる。
俺は1回、ゆっくりと深呼吸を行い扉に数回ノックする。すると「どうぞ」と可愛らしい女性の声が聞こえたので中に入る。
中に入ると、案の定、部屋には松浦先輩と国木田以外のメンバーが揃っていた。
「ごめんね、急に呼んだりして」
松浦先輩は俺にあんなことされたのにも関わらず笑顔で俺に近寄り話しかける。よく見ると、彼の両頬は少し赤くなり腫れていた。申し訳ない気持ちとなる。
「いえ………。俺も先輩に用があったんで」
「そっか。じゃあお互い丁度良かったね」
「…………そうですね。」
「じゃあ、僕から先にいい?」
松浦先輩は手を挙げて先行を要求してくる。まぁ、先にバッシングを喰らった方がいいか。
「どうぞ」
「ありがとう」
そして、彼は真剣な表情を浮かべてさらに俺に近づき、言葉を出した。
「僕は…………君がどんな過去を過ごしたのかは分からない。奥山くんがあんな行動をしたってことは、きっと僕らの想像以上に辛い過去があったんだと思う」
「……………」
「君は言ったよね?大好きだった人から裏切られた経験を知らずにって。確かにそうだ。僕はまだそんな経験は1度もしたことがない。多分、経験したら…………悲しくなると思う。」
悲しいっていうレベルではない。それ以上の辛さだ。
「だけど…………そうだとしても、そうなったとしても僕は…………
人を信用するよ。Aqoursのみんなも当然…………家族も。」
「……………」
それは無理だ。絶対に無理だ。そんなの、妄言に過ぎない。それは裏切られた経験がないからこそ、言えることだ。しかし、現実というものは残酷だ。そうにはいかない。
俺だって、最初は信じてたさ。『人殺し』とはいえ、やっぱり可愛い可愛いわが子だ。後から考え直して迎えに来てくれるかもしれない、って微かな希望を持って信じてた!!
だけど………それでも結局、あいつらは迎えに来なかった。
「はは………。そんなの無理だって顔してるね。」
「ーーーッッ」
くっ……….、表情に出てしまっていたか。この人、意外と見る目があるな。
「確かに今の奥山くんなら仕方が無い事なのかもしれない。けど…………」
そう言って、松浦先輩は俺の肩に手を置いて言葉を出した。
「少しの間だけ、後ろを振り返るのをやめて…………前だけを見てみない?」
「え?」
この人、何を言って…………
「少なくとも、ここにいるみんなは人を………仲間を決して裏切らない。これだけはマネージャーとして命を懸けてでも言える。」
言ってる意味が全く分からない。そもそも、俺のことを貶めるためにここに呼んだんじゃないのか?
そして、松浦先輩は俺の目の前に手をさし伸ばしてニコッと微笑みながら衝撃の言葉を発した。
「だからさ、奥山 明くん。君が良かったらなんだけど……………
Aqoursのマネージャーに入ってくれないかな?」
「…………は?」
最初、先輩が口にした言葉を理解することが出来なかった。俺が想像していたものとかけ離れていた言葉だったからだ。
なんとか理解したあと、俺は顔に手を付けて松浦先輩を睨みつけながら一言。
「…………正気ですか?」
「うん。全く持って正気だよ。」
「でも、なんで………」
「なんでかな。僕が信用しているAqoursのみんなと一緒にいれば…………君は変われるかなって。」
そんな根拠が皆無なのに、俺を誘ったのか、この男は。それに先輩は良くても他のメンバーは………
「大丈夫。みんなも奥山くんがマネージャーに入ることは賛成だよ。」
は?なんでだよ………。俺はこの人に手を出した男なんだぞ??そんな奴をどうして………
「これからラブライブに向けてもっと忙しくなるだろうし………、その分怜士くんも大変になると思う。だから、奥山くんがマネージャーに入ってくれば怜士くんの負担も減ると思うんだ。」
オレンジ頭の…………高海 千歌だっけな?この部活のリーダーが俺に向かって言葉を出す。
「それに……….怜士くんが連れてきた人だもん。だから、私は……私たちAqoursは信用する!!」
「ーーーッッ!?」
この人………、本気で言ってる。嘘ひとつ言ってない。そんな瞳をしている。初めてだ、こんな心の底から信じてる目をしているのは。
どうして、そんなに人を信用できるんだよ。信用しすぎるから裏切られた時に辛くなるんだろ。
それに、俺は『人殺し』だ。俺が『人殺し』って知ったらどうせ、みんなは俺を見捨てる。
それは当たり前の話でーーー
「ーーーーーーーーーーッッ」
途中で、俺の思考は止まってしまった。なぜなら、リーダーだけじゃない。他のメンバーもリーダーと同じ信じると本気で篭っている瞳をして俺のことを見ている。
普段は厨二病発言をして周りを困らせている津島や人見知りで常に怯えている印象がある黒澤、それに国木田すらも同じような瞳をしていた。お前ら、そんな顔できるのかよ。
「ま、とりあえず1ヶ月だけ。試しに入ってみてよ。それでも、考えが変わらなければ普通にやめていいからさ。ね?」
くそ………、なんだよこの気持ちは。本当ならすぐに断りたいのに!!人と関わりたくないのに!!それなのに、どうして…………
この人達なら………と思ってしまう自分がいる。
こんな気持ち、とうに『人殺し』になって捨てたはずなのに………どうして今頃になって感じてしまうんだよ!! クソ!
もう、俺は信じたくないんだよ!!あの人以外、信用したくないんだ!!よく考えてみろよ、こんな出会って間もない奴らなんかに何が出来るっていうんだ!?この『人殺し』相手に!!
「奥山くん………君、泣いてるの気づいてる?」
「え?」
松浦先輩の言葉で俺は涙を流しているのに気付いた。全く気付いていなかった。いつの間に泣いてたんだ?
あぁ、くそ。腕で拭っても止まる気配はなく、滝のように流れやがる。なんだよ一体!!
もう色々なことが一度に起きすぎて頭がごちゃごちゃして何がなんなのか分からなくなってしまった。俺はどうしたらいいんだよ!!
なぁ、教えてくれ!!どうしたら…………
ーーーーガバッ
俯かせながら頭を悩ませていると、誰かに包み込まれるような感触に襲われる。恐る恐る前を見てみるとそこには国木田の顔がすぐ目の前にあった。
「大丈夫、大丈夫ずらよ。」
国木田はまるで泣いている赤子をあやす様に俺の頭を撫で優しい言葉をかけた。その一つ一つの動作や言葉に温かさを感じ思わず全身の力がスっと抜けてしまった。それによって、彼女の豊満な胸に顔が突っ込む形となってしまったが、国木田は気にすることなく受け止めてくれた。
そうか…………。俺は、もしかしたら心のどこかでは変わりたいと思っていたのかもしれない。誰かに助けを求めていたのかもしれない。
もし、これがきっかけで自分を変えれるとしたら…………
なら、俺はーーーー
「………すか??」
「ん?」
俺は国木田の胸に顔を押し付けながらも伝わるように言葉を松浦先輩に向かって出した。
「俺はまず…………何からすればいいです………かね?」
「ッッ!?それってつまり?」
これ以上は恥ずかしいのと、自分のプライドの関係で何も言わなかった。それでも真意は伝わったのか松浦先輩含め、他のメンバーの表情を良かったと言わんばかりに緩み始める。
「そうだね。まずはメンバーのことを知るところから始めようか。…………ようこそ、奥山くん。浦の星スクールアイドルAqoursのマネージャーへ。」
松浦先輩は微笑みながら、再び俺に腕を差し伸ばす。
『今日は明ちゃんにとって、何かいい日になるも思うから私が作っちゃった!!』
ここで、俺は朝、零さんの言葉を思い出した。それと同時につい、苦笑いする。
何がいい日だよ、零さん。普通に厄日じゃねぇか。
そう思いながら、俺は松浦先輩の手を握手する形で掴んだ。これで、俺はAqoursの2人目のマネージャーってわけだ。まさか、あんだけ人を嫌っていた『人殺し』の俺がマネージャーをやるなんてな。
まぁ、今日から1ヶ月だけ頑張ってみることにしよう。自分が変わることができるも祈りながら。
こうして、俺はシスコンであり松浦果南の弟である松浦 玲士の勧めでAqoursのマネージャーになった。
しかし、これがきっかけで『人殺し』である俺は本当の姉であるSaint Snowの鹿角 聖良と鹿角 理亞の2人と色々あったり、とある人物に恋をしたり、最終的に松浦 玲士の影響でシスコン気味になったりとするのだが、またそれは別の機会に話すとしよう。
色々と『人殺し』を投稿していくので良かったらどうぞ。