お待たせしてしまっていたら申し訳ありません。
設定変更してから修正後初の更新になります。
火神大我という後輩は粗雑で強引、力押しの目立つプレイヤー。それを補助し強みを十全に引き出すのが黒子とのチームプレイであることはよくわかった。そしてそのチームワークは俺の意図しないところでも、存分に発揮された。具体的な実害を言うならば、俺はこの1週間毎日バスケ部の練習に来ていた。
八幡「…おかしい。これはおかしいぞ」
リコ「どうかしたの?比企谷くん」
八幡「…なんで俺ここにいんの…?しかも毎日」
リコ「…何言ってんの?入部するんでしょ?」
入部…?入部と言ったのか。なんということだ。俺は既にそんなところまで追い詰められていたというのか。
ーーーー以下回想ーーーー
教師「以上でHRを終了する。比企谷、少し来てくれ」
チャイムと同時にHRが終わり、担任になった女性教師に呼ばれる。どこか平塚先生を思わせる少し気の強そうな先生で、事前にクラスの説明もしてくれるようないい教師だ。
八幡「なんかありましたっけ…?」
教師「あぁ、どうだ初日終わってみて。何とかやれそうかね」
八幡「普通じゃないっすか。クラスの雰囲気も悪くはなさそうですし。どっちみち俺は空気みたいなもんなんで」
教師「ふふっ、平塚先生から聞いたとおりだな。君は面白いよ」
八幡「平塚先生と知り合いなんですか?」
教師「大学が同じだったんだ。あまり関わりはなかったが、君のことで総武校に連絡したら彼女に繋がったのさ」
八幡「はぁ、まぁ別にいいんですけど…。用はそれだけですか?なら、帰ります」
教師「まぁ待て比企谷。ほら、お客さんだぞ」
そう言って先生の指さす先には黒子と火神が立っていて、先生は一言「頼まれてな、すまない」と言って教室を去っていった。
ーーーー回想終了ーーーー
その後火神に捕まえられ体育館へ強制連行された後、バスケ部一同にやや過剰な歓迎を受けた。それ以降毎日欠かすことなく火神と黒子は俺を強制連行しつづけている。
リコ「比企谷くん、見てるだけで退屈しないの?」
八幡「退屈云々はどうでもいいが、早く帰りたい」
リコ「あんたのそういうとこ、この1週間で慣れてきたわ…」
八幡「そりゃよかった。慣れついでに帰らせてくんない?」
リコ「今日はダメね」
八幡「それ毎日言ってるぞ…」
こんな感じで結局放課後をしっかりバスケ部で過ごしている。黒子や火神、誠凛メンバーの練習は質も量もかなりのレベルで、見ていて退屈はしないのだがどうにも物足らない。チームとしての完成度はそこそこ。黒子が上手く機能すれば、かなりのチームに対して優位を取れるだろう。しかし…黒子に頼りすぎなきらいがある。
八幡「なぁ」
リコ「なに?気になることあった?」
八幡「黒子がいなくなったらどうする」
リコ「え?」
なにその意外な顔。まさか考えてなかったわけじゃないだろ。今までだって黒子を1試合フルで出せてたわけじゃないんだし、これからは連戦もある。怪我やらを考えると黒子なしの試合だって増えるかもしれないぞ。
リコ「…わかってるつもりよ。黒子くんに頼りすぎてること。私もみんなも」
八幡「…対策考えてねぇのか」
リコ「考えてはいるのよ。でも彼なしの誠凛じゃキセキの世代と渡り合えない。黒子くんを交えた状態が今のうちの最大戦力だもの」
八幡「わかってねぇな…」
リコ「え…?」
わかってねぇ。大事なことを忘れてる。このチームは黒子テツヤを利用できてはいるが、運用できていない。
黒子「どういうことですか、比企谷先輩」
話を聞いていたらしい黒子が問いかける。急に目の前に出るのやめてね、心臓に悪いから。こいつお化けの才能あるわ。
八幡「…黒子、お前のプレイヤーとしての技能は良くても下の上だ。そんなお前を赤司がチームに加えたのは何故かわかってるか?」
黒子「ミスディレクションとハイディングによる徹底したパス回し…ですか?」
八幡「もちろんそれは大前提だ。はっきり言ってそれがなかったら必要ない。…いいか、プレースタイルのせいで起こりにくいだけで、対戦相手との1on1になったらお前の勝率はほぼゼロ。そんな黒子でも採用できるだけのゆとりがあったんだよ」
黒子「…キセキの世代の個人技能の高さ、ですね」
八幡「そういうことだ。お前の技能不足を補って余りある戦力。黒子無しでも負けることがないチーム。それが帝光中バスケ部だった。だからこそ、幻の6人目としてお前が加えられたんだ。だが、誠凛はそうじゃない」
リコ「…今の私たちじゃ力不足ってことね」
八幡「そういうこと」
相田リコ…雪ノ下ほどじゃないができる女の子だ。少なくともバスケにおいてその観察眼は桃井に匹敵するだろう。残念ながらこれから戦うのはその桃井がいる世代だけどな。
いそいそと帰り支度を進める俺。ちょっとキツめの忠告もしちゃったし居づらいことこの上ない。こういう時はさっさと撤退するに限るのだ。八幡兵法その1『戦術的撤退』ということだ。
日向「どこ行くんだダァホ」
八幡「…何故バレた。気配は消していたはず…」
日向「うちにはその道のプロがいるからな…黒子に比べりゃ比企谷なんか目立って仕方ねぇよ」
おのれ黒子…俺のステルスを完全に無効化してしまうとは。
日向「あんだけ言っといて帰るとかなしだろ、せめて少しくらい遊んで帰れや」
八幡「…怒ってる」
日向「怒ってねぇよ」
リコ「怒ってるわね」
日向「怒ってねぇって」
黒子「怒ってます」
日向「だァかァらァ…怒ってねぇっての!まともに俺達とやってもみねぇで戦力不足だのなんだの気に食わねって言ってんだ」
一同「「怒ってんじゃん」」
日向「なんっで息ピッタリなんだよ!比企谷まで!」
八幡「…はぁ…1回だけな」
リコ「ほんと!?やってくれるのね?」ニヤリ
日向「言ったな!?」ニヤリ
黒子「じゃあ何か賭けないとデスネ」(棒)
八幡「は?」
リコ「そうねー…じゃあ比企谷くん負けたらバスケ部入ってもらうことにしましょう」ニヤニヤ
八幡「…おい」
日向「いい考えじゃないかーリコー」
ーーーー
ーーーー
黒子「と、いうことで比企谷先輩、バスケ部入部おめでとうございます」
八幡「ぜェ…ぜェ…。3on1は聞いてねぇ…ぞ」
黒子「言ってませんでしたし」
スタート時は1on1の体裁を保っていた…。ものの数秒で水戸部と小金井が入ってきたが、それでもなんとか食らいついた俺を誰か労ってくれ。理不尽とはこれこのことなり…。
日向「……にしても比企谷、ほんとにバスケやめてたのかよ…全然動けるじゃねえか」
八幡「やめてたよ。ほんの少し自主トレしてただけだ」
事実バスケからは距離を置いていた。情報もシャットアウトしていたし、虹村にも連絡をしていなかった。桃井からは定期的にメールが来ていたがそれも彼女が卒業してからは途絶えた。
自主トレも朝晩の走り込みや、筋トレ程度の話。コートでボールに触れるのはこの前の黒子&火神の時が正真正銘、引退以来初だ。
木吉「で、どうだ比企谷。誠凛は」
八幡「なんだよその質問、漠然としすぎだろ」
木吉「そうか…?」
日向「木吉はこういうやつだよ…」
八幡「…まぁ次の試合勝つのは、難しいだろうな」
リコ「……理由、聞かせてもらえるかしら」
八幡「…選手が薄すぎる。スタメン5人と控えの戦力差が開きすぎてるんだよ。次の対戦校…霧崎第一だろ」
日向「…ンなもん!俺ら5人でなんとでも…!」
八幡「ならねぇよ。花宮いるんだぞ、どう考えても削りにくんだろ。選手のメンタルもフィジカルも」
言われて、日向を含め誰もが押し黙る。思い当たるところがあるのか。どちらにしても花宮相手にまともな戦力が5人というのは問題外だ。水戸部、小金井はそれなりに機能する。昨年の経験もあってのことだろう。しかしあくまでそれなりだ。おそらく怪我をしている木吉や、どうにも落ち着きのない日向のサポートにはなれないだろう。
黒子「ですが、その問題なら解決しました」
一同「「え?」」
黒子「比企谷先輩が入るじゃないですか」
八幡「…あー」
リコ「そうだったわね、なんか盛り上がっちゃって忘れてたわ…」