お前が強くなるのを待つばかり   作:赤黄青

1 / 1
第一話

 

この世界に生まれて何年経っただろうか。前世というのは覚えていないが自分が転生したということは覚えている、そんなことを感じながら生まれ落ちたのは覚えている。いや、実は全部覚えているのかもしれない。ただ思い出せないのか思い出したくないだけなのかもしれない。ただ今となってはどうでもいいことだ。

 

自分は赤子ながらしっかりとした知性を持っていた。今はもう顔も思い出せない父と母がいて幸せな家庭がありそんな家庭に生まれた自分は幸せだったのだろう、自分の個性がわかるまでは。自分の個性は災厄をもたらすだけのものだった、その身を凶悪な龍と化すだけの単純なものだったがそれだけで全てを失った。

それはただの好奇心故の行動だった、誰に言われるわけでもなく自分の個性をわかってしまった自分は親に披露しようと二人の前で個性を使ってしまったのだ。その結果気づいた頃には両親を失い駆けつけたヒーロー数名も傷つけてしまった。自分の家は無残にも倒壊し見る影もなく、自分を愛し育ててくれた両親はこの世にいない。自分の内が絶望感で黒く染まっていくのがわかった。その絶望感に駆り立てられるように自分は逃げたのだ、どこか遠くへ誰も傷つけることのないところへと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界に生まれて何年経っただろうか。あの災厄から既に十数年経っている。自分は山に隠れて過ごし空腹を覚えない腹に疑問は持ったもののこれ見よがしに自分を責め傷つける続けた。夜な夜な耳元で父と母が何故私たちを殺したのかと囁いている気がして自分を傷つけていないと気が狂ってしまいそうになる。

そんな日々を過ごしていた時に自分の周りの草木だけがやけに育っていることに気づいた。最初は偶然だと思ったがほかの草木に比べ圧倒的に成長しているのだ。何故自分の周りだけなのかと考えもしかしてと自分の血を成長していない所の木に与えてみた。次の日その変化は顕著に現れた。明らかに成長速度がおかしいのだ、他の木々より遥かに早く成長しその幹を太く長く伸ばした。自分はさらに血を与えてみた。3日4日と達この山一番の大きさまでに育った、だが問題は5日目だった。その木は5日目に入り成長を止めた。それどころか葉を全て落とし急速に朽ちていったのだ。

そこで私は仮説を立てた、自分の血液は強力な成長剤だと。しかしある一定の量を超えて摂取してしまうとそれは毒へと転じるということ。自分は様々な山の動物達で実験をしこの仮説が間違っていないことを確認した。赤子は急速に成長し、ある一定の年齢から年を取らなくなる。体格や力量も他の個体と比べ強くなる、そして何よりも興味深いのは僅かながら自分と同じ個性が使えるようになることだ。ほんの僅か一部分を龍の身体に出来るようになる、自分はこれを部分龍化と命名した。ただ自分のように完全龍化するものは無くやはり摂取しすぎると生き絶えてしまう。

自分は疑問に思った、これを人間に試したらどうなるのかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その少女を選んだのはただの気まぐれだった。夕暮れの中ただの1人で傷だらけの体を庇いながら道を行くその少女が気になったのだ。

「その傷はどうした」

「っ!…お兄さん誰?」

「我か、我は…何だろうな自分でもよくわからぬよ、ただ災厄を振りまく者としか言えぬ。まぁそんなことよりもう一度問うぞ、その傷はどうした」

「さいやくをふりまくもの?お兄さんは難しい言葉を使うね」

そう言った少女は少し間を置き自分の傷のことについて語った

 

「いじめられたの、皆んなは個性があるのに私だけ無個性だからだって。それにお父さんとお母さんはね、私が傷だらけで帰ってくると泣きながらごめんねって謝ってくるの。別にお父さん達のせいじゃないのに変だよね?」

「…お前は両親に愛されているのだな」

既に無いと思われていた私の僅かな人間性がこの少女を哀れんだ。なにかこの少女にしてやれることは無いかと、助けてあげれないかと。

…ひとつだけあるではないか。長年実験を繰り返したおかげで自分の血液を摂取していい量はわかっている。これがあれば少女の傷は直ぐに治り、両親は負い目を感じることは無くなる。そして人間を使った実験ができる。そんな2つの思惑が私の中で渦巻いた。

「少女よ名前は何という?」

「私は龍子、竜間龍子」

「そうか、龍子よ今からお前に我の力の一端を与える。方法は簡単この我の血を飲めばいいだけだ。これを飲めばお前の傷は直ぐに治り両親が泣いて謝ってくることはないだろう」

「ほんと!わかっ「ただ!我の力は呪いのようなもの、簡単に言えばお前の体に悪いものだ。我の力を手に入れる、それはお前も龍になるという事だ。それでもいいのならこれを飲むといい」

何故躊躇わせるような事を言ったのだろうかと私は考えた。これで飲まなければ人間を用いた実験は出来なくなるというのに。そんな事を考えつつ自分の血が入った小瓶を取り出した

「飲むか飲まないかゆっくりと考えて答えを出すといい、答えが出るまで我はここにいよう」

まただ、今度は少女によく考えるようにと促してしまった。私はこの少女を助けたいだけではないだろうかと考えたがそんな考えを振り払い今はこの少女がどのような答えを出すのか待つことにした

 

「…私は飲む、たとえそれがの私の体に悪くてもこれ以上お父さんとお母さんに泣いて欲しくないから。それに私が龍になるならその力でヒーローになってみせる!」

そう力強く自分に説いてみせた少女に小瓶を渡す

「最後の確認だ、本当にいいのだな。飲んでしまったら後戻りはできないぞ」

「うん、私は後悔しない。たとえどんなに辛くても後悔しないよ」

 

その少女は一息に小瓶の中の血を飲み干した、するとたちまち彼女の体の傷は治った。しかし一向に体が龍になる変化は起きない

「龍子よ、今お前は半分龍になったようなものだ。だからその…なんだ一部分だけでもいい、龍になる事はできるか?」

「龍になる?私は個性がないからその龍になるっていうのが分からないんだけどどうすればいいの?」

「どうすればいいの、と言われてもこう頭の中で龍になれと考えればなるとしか言えぬ」

 

私はそう言って腕を部分龍化させて見せた。私の龍化は黒い体表に青の模様がある見た目でこの力の凶悪さを様々と表している

「どうだこんな感じだ。今は難しいかもしれぬがそのうち出来るようになるだろう」

「うん!わかった!私もお兄さんみたいになれるよう頑張る!」

 

最初の落ち込み様とは打って変わって満面の笑みを浮かべながら私の様になると言った。

 

だから私は

 

「我の様になるのはやめておけ。我の様になろうとすれば悲劇しか起こらぬ。だから龍子、お前は自分がなりたい様になれ」

「そうなの?うーんでも私がなりたい様にかー。まだよく分かんないや!」

「であろうな、だからゆっくりと時間をかけて考えるがいい。それがお前のためだ。くれぐれも我の様にならないことだな」

 

そう言って少女、龍子に背を向けどこへ行くでもなく歩いた。彼女がこの先どうなるのか、できるなら自分とは違い周りに幸福をもたらしてくれる事を期待しながら既に日が落ち暗くなった道を行く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父さん!お母さん!私個性が使える様になったよ!」

「うんとね銀色の髪のお兄さんが私にくれたの!ほんとだよ!前みたいな傷もあっという間に治っちゃうんだから!」

「どうしてまた泣いてるの?嬉しいから泣くんだよ?嬉しくても泣くんだね!」

「あとねあとね!頑張ったら龍にもなれるんだって!私龍になってヒーローになってたくさんの人を助けるんだ!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。