刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任- 作:細切りポテト
ちとキャラがブレてるかもです、ヒスおばファンの皆様に怒られないか少し不安です。
余談:ファーフロムホームのポスター見てアベ4でトニーがどうなるのかめっちゃ不穏になって来ましたが、予告でミステリオと共闘してハイドロマンと戦うって書いてあってすげえ戸惑いました。どうなるんでしょうかね。
ノロの回収班が到着し、ノロの回収を始めた頃には糸が自然に溶け舞衣は拘束を解かれ颯太と共に報告を行うために捜索本部に帰還していた。
「逃走中の十条姫和、衛藤可奈美、スパイダーマンを追跡中、渋谷区代々木神園町にて荒魂を検知。これを3名の協力を得て鎮圧。しかし、鎮圧と同時にスパイダーマンに御刀を取り上げられ無力化、拘束され取り逃がしました。拘束されていたことは榛名君やノロの回収班の方にも聞いてもらえば分かると思います。申し訳ありません。」
「くっ…!スパイダーマン!なんて卑劣な真似を…っ!」
「………………………居場所を特定出来ただけでもお手柄よ、二人は下がりなさい」
「「はい」」
スパイダーマンに自分にやられたと説明するように言われていたため、申し訳無いと思いつつ約束を守ることにしそのように説明する。
その報告を舞衣の隣に立ち、一緒に報告を行いに来た颯太が勿論演技だが悔しそうに呟くその姿を見て正体を知っている江麻はその清々しいまでの白々しさに「あなたでしょうが」とツッコミたくなったが恐らくは舞衣が2人を簡単に逃がしたと思われないようにするためだと把握し、内心では自分の生徒である3人が無事であることを安堵している。
「時間の無駄でしたわね」
「まあ、そう言わずに。近辺の防犯映像などを入念に捜索すれば逃走経路が分かると思います」
二人を責めている訳ではないが溜め息混じりに手がかりは掴めたものの大した成果を得られなかった事に落胆し愚痴をこぼす寿々花にモニター席に着きながらPCを操作しつつ栄人が諌める。
すると本部の扉が勢いよく開かれる。
「何をやっている!親衛隊!」
赤いスーツに身を包んだ良く言えばキャリア・ウーマンにも見えなくはない性格がキツそうな三十半程の女性が怒鳴り声を上げながら扉の隣にいた颯太と舞衣には目もくれず強引に部屋に入室し、この場にいる親衛隊の真希と寿々花に詰め寄っている。
突然の乱暴な登場に驚き少しビクッとしてしまう颯太。
(うわこっわ…。この人何こんなに怒ってんの?カルシウム足りてないんじゃない?それとも更年期障害?なら牛乳毎日飲んだ方がいいよ!…って今はジョークなんて考えてる時じゃないか、確かに僕らは国に対してここまで怒らせるようなことしたしなぁ…)
あまりにも高圧的で不機嫌が擬人化したような目の前の女性の態度に対し一瞬ビビってしまいそれを誤魔化すためにいつもの癖で心の中でジョークを唱えているが今はそんな呑気なことを考えている時ではないと、目の前の怒りっぽい女性に視線を送る。
「反逆者の潜伏先が分かっているなら何故機動隊を派遣しない!?」
「お言葉ですが、鎌府学長。中等部の二人組とはいえ戦闘訓練を受けた刀使、しかも御刀を所持している上スパイダーマンという輩と共謀しています。機動隊では押し負ける可能」
「あの偽善者で自警団気取りのヘンテコな男等恐れるに足らず!なら、貴様らが出撃して討て!」
「私達もできればそうしたいですが、私達には紫様の警護命令が出ているため動くわけにはいきませんの」
「チッ…なら、周辺の監視カメラを解析させろ」
親衛隊の二人に詰め寄ったと思いきや強気に問い詰め真希が説明をしようとすると言葉を遮り偉そうに命令する女性。
真希の言葉から鎌府学長という言葉が出た為、鎌府女学院の高津雪那学長であると判断できる。
真希と寿々花が今は命令が下されているため動くわけには行かないと知るや否や舌打ちしつつモニターを操作する者達に向けて周辺の監視カメラの解析の指示を出す。
すると踵を返すと視線の先にいた舞衣と颯太を見つけると威圧感を出しながら近付いてくる。
「貴様が報告にあった刀使と男子学生だな?何故すぐに応援を要請しなかった?」
「拘束されていましたし、ノロの回収が先だと判断しました…」
「ノロなど放置しろ!」
見下ろしながら威圧的な態度で舞衣に詰め寄り至近距離で怒鳴り付ける雪那。
完全に雪那の高慢で威圧的な態度により萎縮してしまっている舞衣の様子も気にせず追撃をかけてくる。
「あろうことか鎮圧など、貴様まさか逃亡を幇助したのではあるまいな?」
「い、いえ!」
「お、落ち着いてください!報告にもあった通り彼女はスパイダーマンに動きを封じられた被害者なんです、彼女だけを責めるのは御門違いです!」
「それに、仮にノロを散らして被害が拡大化して局に責任が押し付けられたら恐らく現場指揮を執られるおつもりの貴女にも不利益が生じた筈です!」
このままでは舞衣が二人を見逃したと思われてしまう。
ここは用意していた筋書き通り、スパイダーマンに動きを封じられた被害者であると説明をしなければいけないと思い、真剣な様子で雪那に声をかける。
「何だ貴様、ただの子供が私に刃向かうのか小僧?」
「い…いえ、そのようなつもりはありません。ですが、
報告をお聞きになられたのなら分かる筈です。
スパイダーマンと逃亡者二人を相手にしたのなら一人では勝ち目は薄く、先程も申しましたが彼女は要請する隙もなく拘束されたんです。」
「貴女は現場指揮を執られるおつもりなのでしょう?なら人に当たり散らす前に1度冷静に状況を整理されるべきではないでしょうか?貴女1人が喚き散らした所で事態は一向に良くはなりません、敵の思う壺です。」
「貴っ様ぁ…!」
恐怖心を押し殺して必死に言い訳しているせいもあるが最大限丁寧に言っているが所々失礼な表現が混じっているためか雪那に更に強く睨まれ、更に恐怖心が沸いてきて生きた心地がしなくなって来たがそれでも続ける
「指揮官が焦ると現場の士気に関わります。それでは本末転倒、貴女も望まない筈です。なので1度精神統一などされてはいかがでしょうか?少しは気分が落ち着くと思いますよ?」
「…まあいい…後は我々鎌府が処理する。宿舎で休んでいろ。それと紫様に御刀を向けるような逆賊を育てた罪は重いぞ、両学長」
物凄く怒っているのがダイレクトに伝わって来るが焦って喚き散らしても仕方ないのは確かだと判断する理性は残っていたのか思ったよりは冷静な雪那は退室し紫のいる局長室へと向かう。
「「失礼しました」」
二人で声を合わせてお辞儀をして退室しようと全員の方を見ると江麻は完全に頭を抱えており、いろはも若干苦笑い。
しかし、親衛隊の面々真希は真顔を崩していないものの寿々花は恐らく前から雪那にイヤミを言われていたのか少し顔が笑っており、栄人に至っては颯太と舞衣以外には見えないように笑いを堪えながら親指をグッと立てていた。
「あー超怖ぇー。あんなに怒んなくてもいいのにねー」
「うん…。でも私を庇う為でも五箇伝の学長に噛みつくなんて危ないよ」
「わ、分かってるよ。でも本当の事を言っただけだし…」
扉を出て少し廊下を歩き誰もいないと知るや先程までの緊張感から解き放たれ押し殺していた恐怖心を吐露し、軽いノリで流す颯太に対し仮にも五箇伝の学長である雪那に嫌み混じりに反論するというのは勇気のある行動と言うよりは無謀に近い。それが如何に危険かという事をこの男は分かってないのかと思うレベルだ。
「ほんと、貴方は私をヒヤヒヤさせるのが趣味なのかしら?」
「すみません…」
振り替えると呆れ顔の江麻が二人の後ろに立っていた。
この言葉の意味は舞衣には姫和と可奈美を逃がしたことか、颯太が高津学長に噛み付いたことを言っているのだと思い半分位しか伝わっていないが、正体を知られている颯太には二重の意味でヒヤヒヤさせたのだと伝わり、肩を落とし飼い主に怒られた犬のように項垂れる。
「あの…事の重大さは理解しています!でも私は可奈美ちゃんとスパイダーマンさんを信じていて…っ!」
江麻に向かって自分が3人を見逃したことを弁明するが、その行動は彼等を信じているからこその行動なのだと真剣に訴えかける舞衣に対し、江麻は笑いかけながら近付き小声で話かける。
「彼等なら大丈夫よ」
その後はすかさず舞衣の横を通り過ぎるとスタスタと歩いていく。
その様子を見て何かがあると感づいてか少し後ろに着いていく舞衣、それに対し颯太は二人が無事に匿ってくれる人の所に辿り着いたのだと察し安心していた。
しかし安心も束の間
「ねえーねえー!」
陽気な挨拶を壁に寄り掛かりながら声をかけてくる颯太や舞衣よりは年下に見える子供、親衛隊第4席燕結芽だ。
「せっかく見つけたのに逃げられちゃったってホントー?」
「親衛隊の…っ!」
(げっ…!1番ヤベーのが来た…)
嘲笑うという訳ではないが陽気に、かつフレンドリーにニコニコと接して来る様子に一種の不気味さのようなものを感じ取るが親衛隊の一人が急に話しかけて来た事を舞衣が驚いている反面、スパイダーマンとして結芽と交戦し、その強さを直で感じ取った颯太は親衛隊の中で1番相手にしたくない相手が目の前に現れて恐怖心のあまり動揺したが相手に悟られないように冷静に振る舞うことにした。
「まぁでも仕方ないかー、クモのおにーさんも一緒だったなら一筋縄じゃ行かないよねー」
奇襲が成功し、万全では無く外部から手助けがあったとはいえ親衛隊から逃げおおせたスパイダーマンも一緒にいたのなら一人で相手取るのは無理な話だと理解はしているのか舞衣が彼等を逃がしたことは全く気にしていないようだ。
寄り掛かっていた壁から離れこちらに向き直り舞衣の方を見ると一瞬にして口が三日月のようにつり上がる。
その際に颯太はまた全身の毛が逆立つような感覚、スパイダーセンスが発動しこれから結芽が何をするのか想像が出来た。
次の瞬間結芽は迅移で加速し、帯刀していた御刀「ニッカリ青江」を抜刀しながら舞衣の首めがけて突っ込んでくる。
結芽が放った抜刀術の剣先が舞衣を捉えようとしたその刹那、
一連の動作を見ていた颯太は恐らく舞衣に斬りかかるつもりなのだと察知し明らかに正体がバレかねない愚かな行動ではあるが、つい体が無意識のうちに反応し力強く右足で踏み込みながら体を捻り、開脚しながら左足でニッカリ青江の鎬地の部分に向かって蹴りを入れる。(蛇翼崩天刃をイメージしていただければ)
すると蹴られた衝撃で軌道が明後日の方向に逸れる。
(あっ…やっちった…)
「「「!?」」」」
「うわぁ!何をするんだ!」
蹴り上げる瞬間までは目付きを鋭くし、真剣な顔だったが今自分が取った行動を把握した瞬間焦りを隠せない間抜けな表情へと一変する。
その後にわざとらしく尻もちをつき、ビックリした反動でたまたま蹴ったかのように振る舞っているが結芽は蹴りで軌道を逸らされたことに放心し、江麻は開いた口が塞がらないと言った状態だ。
斬りかかられるとは思っていなかった舞衣は結芽からの攻撃にも驚いたが颯太が目の前で蹴りで結芽の攻撃から自分を庇った動き、その反射神経を目の当たりにし、ここ数日で感じていたことが確信へと変わる。
(やっぱり貴方がスパイダーマンさんなんだね…)
元々攻撃を当てるつもりなど無かったが目の前のこんな一見冴えなくてどんくさそうな、クラスでも絶対に影の薄い陰キャのグループに属してそうな奴が自分の剣撃を察知し、御刀すら使えないただの人間が防ぐなど到底信じられなかったがこの反射神経、見覚えがある。
この時結芽の中にはある1つの結論へと辿り着いていた。
ーー楽しみが1つ増えた、今この場で誰かに言えば他の誰かがスパイダーマンを捕まえようとこの男を狙うだろう。だがそれでは自分がスパイダーマンを倒す時に邪魔が入る。簡単に終わらせてたまるものかと。
そしてスパイダーマンは自分が倒し、強さを証明する器に相応しいのか見極めるために結芽は大人しく御刀を納めると3人に背を向け反対側に歩いていく。
「ねえ、どんくさいおにーさん」
「へ?どんくさい!?」
後ろを向いたまま尻もちをついたままの颯太に声をかけ、どんくさいと言われたことが軽く心外だったのもあるが何もしてこない事に驚いている。
「私ってさーご飯食べるときって1番楽しみなのは最後に食べる派なんだよねー」
「え…?うん」
「そんでおにーさん美濃関だからクモのおにーさんとお友達だったりするのかなぁ?」
完全に正体が分かりきっているが敢えてわざとらしく颯太に向かって一見なんの変鉄もない話を振ってくる。
「ああ…何度か会ったよ、彼は親愛なる隣人だからね。今はそう簡単に会えるかわかんないけど」
こちらに背中を向けている結芽だがその背中越しから並々ならぬ闘争心が沸き上がって来ているのが分かる。
すると振り替えると年相応の満面の笑みで颯太に笑いかけてくる。
「もし、運良くクモのおにーさんに会ったら言っといてね!面白い人だね、気に入ったよ。倒すのは最後にしてあげるって!」
「…………………それまで他の子に負けちゃ嫌だよ」
無邪気な、まるで新しい楽しみを見つけた子供のように笑いかけたと思いきや突然冷えたように自分が倒しに行くまで倒されるなよ。と冷やかな笑みと声で語りかけてくる結芽にゾッとする。
正体に勘づきながらも敢えて放置されることに内心恐怖しているが後々強大な壁として立ちはだかるであろう少女が歩いていく姿をただ見送ることしかできなかった。
辺りはすっかり暗くなり夜になる。皆が寝たと思われる時間になり江麻と別れ、後で大事な連絡をすると言葉を交わして各々の宿舎へ向かおうとした矢先
「待って」
真面目な声色をした舞衣に制服の裾を掴まれ、引き止められる。
「な、何?柳瀬さん」
「大事な話があるの、ちょっと来て」
大事な話がある。おおよそ何を聞かれるか想像は着いていたため諦め半分で着いていくことにした。
しばらく歩き人気の無い建物の所につき、颯太が壁がある方に立つ。
「明眼、透覚」
視覚を変質させ肉眼で望遠、暗視、熱探知が行える明眼。聴覚を変質させ集音、ノイズカットを行える透覚という機械のレーダーよりも正確と評させる舞衣の技を発動させる。
「今、この数十メートル先に人はいない。そして、誰も聞いていない」
「で、こんな所で話ってどうしたのさ?」
今この近辺に自分達の会話を聞かれる可能性は無いことを判断した舞衣は明眼と透覚を解除する。
すると一瞬のうちに颯太に近付き両手を前に突き出し壁際まで追い込み逃げ場をなくし壁を両手で対象越しに触れ舞衣の顔と体が密着寸前な程近くなり、女子特有のいい香りが鼻をくすぐる。
一瞬何が起きたのか理解できずに頭が真っ白になるが颯太は今の自分の状況を整理する。
(えーと…僕は今柳瀬さんに話があるって連れて来られて、人がいないことを確認したと思ったら柳瀬さんが近付いて来たと思ったら………………僕壁ドンされとるやんけ!)
ようやく自分の状況を理解する颯太。そう、誤用であるが少女マンガやドラマで見られるシチュエーションのひとつ壁ドンをされて逃げ場を塞がれているのであった。
(あれ、でも壁ドンって普通男が女にやる奴じゃ……いやいや!柳瀬さんどうしちゃったんだ!?)
よくよく思い出して見ると壁ドンは男が女にやる物であるという認識を持っていた颯太はまたしても姫和に女子みたいな声と言われた時と同じくらい男としてのプライドにダメージを受けたが今は何故舞衣が自分に壁ドンを決行したのか、その方が気になってしまっている。
「や、柳瀬さん…どうしたの?」
「ごめんね榛名君。多分携帯のメッセージや電話だとはぐらかされると思って、こうでもしないと話してくれないと思って…本当に真剣な話なの。お願い、私の眼を見てしっかり話して」
友人ではあるが年頃の男子の理想の女子という風味な美少女である舞衣に壁ドンされるのは一種のご褒美と言えるが、もしかすると正体がバレるかも知れない状況だ。
素直に喜べるとは言えなかった。
お互いに顔と体が近くなり、中学生とは思えないとある部分が一瞬当たってしまい柔らかい感触が伝わった事に颯太は困惑しているが舞衣は気付いていないのか俯きながら謝罪した後に顔を上げて自分よりは背が高い颯太の眼を真剣に見つめる。
「………………あなたが、スパイダーマンさんなんでしょ?」
「……………………っ!?」(やっぱりか~)
舞衣はここ数日の颯太の様子を見て推測し、先程結芽から自分を庇った身体能力を目の当たりにして確信した。今目の前にいるこの少年は、妹たちを救い、友人を救い、先程は自分を助けた恩人スパイダーマンなのだと。
その事実を颯太に向けて突き付けていた。
「な、何を根拠に?どんくさい僕がスパイダーマンなんて無理があるよ!」
「確かに普段の榛名君はとてもスパイダーマンさんなんて思えない。でもね、ここ数日でだけど私、確信したんだ。あなたがスパイダーマンさんじゃないと説明がつかないことがあるの」
舞衣は両手を壁につけたまま話を続ける。
「御前試合の決勝の時あなたは休憩を終えた後に御当主様が出てきてから急に様子がおかしくなった、その後急にお腹が痛いってトイレに走り出した」
「ただ食べ過ぎただけだよ」
「でもお腹が痛いって言う割にはものすごいダッシュだった、中学生なら全国位は余裕で狙えそうな位の。
でもこの時点では特段気にならなかったけど入れかわったようにスパイダーマンさんが現れた、貴方がいなくなったタイミングで」
「そして、あなたは少し離れた所から見てたって言うけどスパイダーマンさんがいなくなった途端に現れて、いつもつけてる腕時計を着けてなかった。亡くなった叔父さんが買ってくれた物でいつもつけていたのにトイレから戻って来た時と私が取り調べから戻って来た時には外されてて、その腕時計はスパイダーマンさんの腕時計にすごく似てるの」
舞衣は颯太が腹が痛いと言ってトイレに猛ダッシュし、まるで入れ替わったかのようにタイミング良く現れた時点では疑う余地は無かったが、会場から出て各校で整列した時と舞衣が取り調べから戻って来た時にはいつも身に付けている腕時計をしていなかった事に違和感を覚えていた。
「多分荷物を調べられる前に何処かに隠したんだよね?そして、荷物検査が終わりあなたが無関係だと判断されてから回収して今は腕につけている。そして、こうも言ってたよねあんな凄い技って」
「前にも言ったけどあれは他の人に聞いたんだよ」
「じゃあ誰から聞いたか具体的に教えて」
「それは…ハリーだよ」
「じゃあ針井君に話したかどうか聞いてもいいかな?」
「それは………」
舞衣は自分の推理を説明しながら颯太の腕の腕時計に視線を送りながら荷物検査が終わり無関係だと判断された後に回収したのだと推理した。そして、なぜ会場にいなかったのに姫和が見せた一つの太刀を知っているのかを問いただす。
物凄く痛いところを突かれた。他の人に聞いたと言ったが具体的に誰かとは言ってなかったが他の学校の生徒が話している時に聞いたと言えば良かったが思わず友人であるハリーに聞いたと答えてしまい。完全に墓穴を掘った。
「それにまだあるよ。可奈美ちゃんと十条さんとスパイダーマンさんを追ってて私がスパイダーマンさんに拘束された時、あなたはまた入れ替わったように現れた。そして私に貼り付いた糸を剥がそうとしたとき一時間は溶けないって言った、こういう時ってどうやれば剥がせるか切断できるかって考えるのにどうして糸が溶ける方へと考えたの?」
「だってあれだけの吸着力と引っ張り強度だよ?僕じゃ切断は難しいと思ったし、あれだけの引っ張り強度の糸を生成するなら大体効果時間がそう長くはならない。大体一時間位だと思ったんだよ科学オタクだからね」
「そうなんだ…でもスパイダーマンさんは今の榛名君と同じ事言ってたよ。糸は一時間で溶けるって」
「あっ………」
「それはあなたが作ったから一時間で溶けるって知ってるんでしょ?………それに」
神社でスパイダーマンと颯太が言っている事が同じで糸が一時間で溶けるということをすぐに推測できたのは糸を作った本人だからということを突き付けると段々勢いが無くなって来ている。
「さっき燕さんの剣を防いだあの動き、眼にも止まらない早さだったし、一見驚いたら偶然蹴りが当たったかのように見えるけどやっぱり迅移している刀使の持っている御刀に蹴りを当てるなんてできないと思う。これでどう…かな?」
「はぁ………やっぱスゴいな柳瀬さんは…っていうより僕がマヌケ過ぎるのかな」
舞衣が更に追求しようと無意識のうちにさらに接近し顔は既に眼と鼻の先にあり、当たっていた胸は形を変えるほど密着していた。
ついに観念したかのように溜め息を付く颯太。すると真剣な顔つきになる。雲によって隠れていた月が徐々に二人の姿を照らし始め、春の終わり頃の優しい風が吹き二人の髪を揺らしている最中重たい口を開く。
「そうだよ、僕が……スパイダーマンだよ」
「やっぱり……そうだったんだね」
普段は冴えない少年であるが月明かりに照らされ、普段とは打って変わって多くの修羅場を経験した大人のようにも見える今の颯太の瞳を見つめながら真実を素直に聞き入れる舞衣。
これで正体がバレるのは3人目になってしまったが、ここまで決定的な証拠を突き付けられて、いやそれ以前に結芽の御刀を蹴った動きを見られた時点で隠し切れる訳ではないのだが。
自分がスパイダーマンだと明かした颯太の真剣な顔を見て嘘では無い事を認識した舞衣。しかし、落胆しているようにも驚いているようにも見えない。
颯太は自分のような冴えない陰キャだと評される男がスパイダーマンの正体だと知ってイメージと違くてがっかりされるのかと思っていたがそんな事は気にしていないように見える舞衣の心理を理解できなかったが先程まで真剣に話をするのに夢中になっていた為か1つ重要な事に気付く。颯太も年頃の男子だ、意識した途端に恥ずかしくなり頬を赤く染めながら舞衣から眼を反らしながら言葉を発する。
「あのさ、柳瀬さん。座って話そうか…その…近いし…当たってるから………」
「あっ…ごめんねっ!」
勢いで壁ドンし、問い詰める際に勢いで近付き過ぎて顔がかなり近く、そして体が密着してしまっていたことを認識した舞衣は恥ずかしさのあまり急いで体を離して俯いてしまう。
二人は少し気まずい空気の中誰もいないことを再度確認し互いに隣り合うように座り込み再び話を始めるのであった。
めっちゃ長くなりそうだと思い、二人がしっかりと問答するのは次に回しますぜ。
ヒスおばちょっとクール過ぎたかなぁという反省。