刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任- 作:細切りポテト
ある人を登場させることが決定しましたがあくまでゲストキャラ扱いで必要以上に出過ぎないように致しますのでご了承下さい。そんじゃ皆行くぜ。
余談:ps4版に初代のスーツがアプデで来ましたね、次はアメスパ版のが来るのでしょうか。
アメスパ1のはスタイリッシュ過ぎて別物感があると言われてましたが2のはコミックのデザインに近付けててスゲー良かったと思います。私は1のデザインも良いと思いますが(笑)
颯太は江麻に正体がバレた時と同じようにこれまでの経緯を全てを話した。
話を聞いている間舞衣の顔は真剣で、まっすぐに颯太の眼を見つめがら話を吟味していた。
「ごめん、ずっと黙ってて。確証もないのに力の話をして皆を混乱させたくなかったんだ。それに一歩間違えば皆を危険に巻き込み兼ねないと思って、それで…」
「ううん。私も同じ立場だったら誰にも言えなかったと思う」
颯太は皆を混乱させないため、そして刀使でも無いのにこんな超人的な力を持っている事を知ったら危険に巻き込むかもしれないと思いずっと秘密にしていた事を吐露し、徐々にしおらしくなっていく。
舞衣は責める訳でもなく自分も同じ立場なら誰にも言えなかったかもしれないと颯太の気持ちを汲んだ上で自分の考えを伝える。
「正直この力の正体は僕も分かってない。もしかしたら僕はもう既に人間じゃ無いのかも知れない。」
「それでも多分この力を得たのには何か理由がある。そして僕は選んだんだ。大いなる力には大いなる責任が伴う。力を持つなら覚悟がいるんだと思って、例え人間じゃ無くなって行ったとしても自分に何かが出来るかも知れないのに、何もしなくて、それで誰かが傷付いたら自分のせいだって思う」
力を手に入れて1年経つが未だに力の正体は分からない。10t以上を持ち上げる怪力、超人的な反射神経、そして高い耐久力。もはや自分は人間じゃないかも知れないと思ったこともあるが叔父の死を経験して、この力を私利私欲の為に使うのでなく自制して世の中の為に使い、自分のように大切な誰かが傷付いて泣く人が一人でも減るのならと今日まで戦ってきた。
「そうだったんだね…あなたはずっと一人で…」
「あーでも心配ないよ、学長が手を貸してくれてるから今は一人じゃないし」
自分の知れない所で友人が覚悟を決めて戦っていた事実をとても現実味な無い話であったが真剣なその様子からやはり現実なのだと再認識させられる複雑な感情が渦巻く舞衣。
しかし、凡ミスで正体がバレたものの今は江麻という味方がいる。今の自分は一人じゃないのだと舞衣を心配させないようにするがふと思い出したかのように話を切り出す。
「あのさ…その…正体が僕だと知ってガッカリしない?」
「え?」
颯太は舞衣から視線を外し、聞きにくそうに先程から疑問に思っていた素朴な疑問を舞衣に投げ掛ける。
その颯太の唐突な問いに対しどういう事なのか分からないかのようにキョトンとしてしまう。
「だって今は国家の敵だけど謎の覆面ヒーローの正体が冴えない陰キャだよ?ヒーローは大体ハリウッドスターみたいなイケメンとか軍需企業の社長みたいな人だからそんな感じのを想像してたのに実際はこんなんだったらガッカリしないかな…って」
颯太は舞衣には視線を合わさず俯きながら自信が無さそうにスパイダーマンの正体がイケメンでモテモテのかっこいい男でもなく、軍需企業の社長のように金持ちのセレブでもない冴えない陰キャの科学オタクで女子にもモテず金持ちでもないような自分がヒーローの正体だと知って仮に予想していたイメージと180°違くて落胆させたのではないだろうか。そうだったのなら申し訳ないなと思いそんな不安が渦巻いていた。
「榛名君…………顔を上げて」
「えっ?」
「えい!」
舞衣のいつも通りのトーンで顔を上げろと告げる舞衣の言葉に反応し、顔を上げた途端両手で頬を軽く横に引っ張られた。
「や、やらひぇはん!?(や、柳瀬さん!?)」
「あのね、私は全然そんなの気にしないよ。自分だって危なかったのに妹たちを火災から助けてくれたのも、飛んできた車から可奈美ちゃんを助けてくれたのも、さっき燕さんから私を庇ってくれたのは他の誰でもない、あなただよ」
「だから私はスパイダーマンさんの正体がイケメンのスターだとか社長さんとかだなんて全然気にしたことないよ。だって私が信じているのはあなたの、目の前の困っている人を助けようとするその心だから」
真剣な眼差しで颯太の眼を見つめ、語りかけてくる。
舞衣にとってスパイダーマンは恩人だ。妹たちを火災から救い、飛んできた車から可奈美を救い、2度も大事な人を助けてくれた事を心から感謝している。
そして、大きな見返りなど求めず困っている隣人を助けるのは当たり前だ、君達が笑顔でいることが最大の報酬だと言って親愛なる隣人として誰かの味方をするその心を信じたのだから。
正体がハリウッドスターのようなイケメンだとか軍需企業の社長などそんな事は関係無い。
今目の前にいる素は自己評価が低くて冴えない、それでも力に伴う責任と向き合いながら困っている人を助けてきた友人がスパイダーマンであるということ、その事が大切なのだから。
「……………………」
「だから私はあなたが正体だとしてもガッカリなんてしない。むしろやっと面と向かって言える。ずっとあなたに言いたい事があったの、聞いてくれる?」
軽く引っ張っていた頬から手を離し、颯太の手を両手で包みながら頬笑む。
その言葉に無言で頷き舞衣の瞳を見つめる。
「妹たちを、可奈美ちゃんを私の大切な人たちを助けてくれて、本当にありがとう。あなたは私の恩人です。例え皆があなたを信じなかったとしても私はあなたを、私の親愛なる隣人を信じます。この感謝の気持ちをちゃんと伝えたかったの…」
「柳瀬さん…ありがとう。その言葉だけで充分だよ」
「君達が笑顔でいてくれる事が最大の報酬だっていうのはさ、僕が少しでも頑張る事で誰かが泣かずに笑顔が守れるならそれだけで僕が頑張った価値があるってそう思えるからなんだって改めて実感できた」
舞衣は決勝戦の前に軽く話していた、いつかまた会ったら礼を言いたいという言葉が今実現した。
そして、その言葉を聞いて颯太は信じてくれる人がいるのなら自分はまた親愛なる隣人として頑張れる。
そして自分が危険を犯してでも誰かの笑顔が守れるならと、今目の前の少女の笑顔を目前にして自分が戦ったことにも価値があったのだと実感し感謝の言葉を述べ、手を握る二人の姿を月明かりが照らしていた。
「あ、でも私の事お嬢さんだとか言って撫でて子供扱いしたのはちょっと頂けないかなぁ」
握っていた手を離し隣り合いながら座って話していたら舞衣が唐突に同い年でありながら少し子供扱いされたことを少し口を尖らせて掘り返す。
「ご、ごめん。正体が僕だと思われないようにって言うか、なりきってる時はあらゆる感覚が滅茶苦茶鋭くなっててつい気持ちがハイになっちゃうって言うか…」
「それで普段とは全然違う感じになってるの?」
「うん、常に軽口を叩いてるのも沸き上がってくる恐怖心を誤魔化す為と敵の注意を引くとかそんな感じ」
「ふふっ…そうなんだ」
「な、何で笑うのさ?」
スパイダーマンになりきっている間はまるで別人のように明るいキャラになり気持ちがハイになっている為かつい年上のお兄さんのように接して子供扱いしてしまったことを説明すると舞衣はクスリと笑う。
「颯太君らしいなぁって思って親近感湧いちゃって、つい」
「えっ…?柳瀬さ」
「舞衣って呼んで。これまで針井君はハリーってあだ名で可奈美ちゃんは名前呼びで私は柳瀬さんって名字呼びでちょっと距離感じてたんだ…でも、もう私たち秘密を共有した、前よりもずっと仲好しな友達でしょ?だから…ね?」
これまでお互い名字呼びであったが唐突に名前呼びに変わったことを颯太は驚いているが舞衣は少し顔を颯太に近付けながら続けて友人達の中で針井はハリーというあだ名、昔から知っている可奈美は名前呼びであったが舞衣は今日まで柳瀬さんと名字呼びで他人行儀にも見えなくもない呼び方に少し距離を感じていたことを吐露する。
颯太の秘密を知り、スパイダーマンの人間味のある部分を知り親近感が湧いたことにより前よりもきっと強い絆で結ばれた友人になれると確信し名前で呼ぶことを提案してくる。
舞衣の真剣なその表情と向き合い、舞衣の翠色の瞳を見つめ一呼吸置いて口を開く。
「…………………分かったよ、舞衣」
「うん、颯太君!」
これまでの空いていた距離を埋めるかのように初めて名前を呼びあった二人はまた自然と笑顔になっていた。
この日、これまで柳瀬さんだった友人から舞衣という大事な親友の一人へと変わっていった。
すると舞衣は1つ思い出したかのように顔を赤らめて恥ずかしそうに聞いてくる。
「あのね颯太君、聞いていい?」
「どうしたの?」
「私の事鳥居に貼り付ける前に言ってたその…あの言葉…」
「あっ…」
『君はとても素敵だね、将来別嬪さんになるよ』
「あの言葉って本心?それとも隙を作るためのジョーク?…」
「あれは……その……」
可奈美と姫和を追跡していた際、自分に容疑がかかりにくくする為にスパイダーマンとして鳥居に貼り付ける前に隙を作るためとは言え真面目なトーンで舞衣に君は素敵だと容姿を褒めた事をあれは隙を作るためのジョークなのか、それとも本心なのかと年頃の女子中学生として気になるのか舞衣が問いかけてくる。
颯太は自分のあの時の口説くような言動を思い出し途端に恥ずかしくなって舞衣から視線を逸らすが覚悟を決めたかのように少し顔を赤く染めながら上目遣いで恥ずかしそうに舞衣を見つめる。
「僕は今日まで秘密を隠すために色んな人にたくさん嘘をついてきてどっちが本当の自分か分からなくなる事もあったけど、それでも僕は…」
「故意に人を傷付ける嘘は吐かないよう心掛けて来た。だからその……あの言葉は紛れもない、僕の本心…だよ」
「そう…なんだ…ちょっと恥ずかしいけど、うれしいかな」
今まで秘密を隠すためとはいえ常に色々な嘘を吐かなければならなかった。誰でも嘘は吐く。むしろ真実のみを口にして一生を終える人間もまたいないのであろうが颯太はあまりにも嘘が多すぎた。
だがそれでも故意に人を傷付ける嘘は吐かないように心掛けて来た為、舞衣を鳥居に貼り付ける前に放った言葉は隙を作るためのものであるが紛れもない本心で言ったのだと少しモジシモジしながら上目遣いで舞衣にその事を伝える。
スパイダーマンを年上のお兄さんだと思っていた時とは違い同い年の友人に面と向かって言われた時では恥ずかしさのベクトルは違うものの嬉しさもあってかまた赤くなってしまうが微笑む舞衣。
すると颯太の携帯にメッセージが届く。江麻からだ。
「こんばんは、今いいかしら?」
「学長からだ。ちょっとまってて、はい。大丈夫ですっと」
江麻に今何か用ができたのかメッセージを飛ばしてきた為いいですよと返信する。
「一先ず美濃関の皆の容疑は晴れたようよ。燕さんはあなたの事を誰にも言うつもりは無いみたいで本部ではあなたもシロだと思われてるわ。」
「そこで明日以降なら安全にこの折神家から脱出できると思うわ。二人を匿ってくれている人の住所と連絡先を後で教えるからその人が仕事から帰ってくる頃に合流してね」
「でも皆帰るのに僕はどうすればいいんですか?」
「学校には私の知り合いに話を通してあなたは以前から申し込んでいたインターンの研修旅行でそっちに行ったという事にしておくわ。そして、明日の午後にそこに行って代表の方にご挨拶してきなさい」
「了解しました。それで何処に行くという事になってるんですか?」
美濃関の生徒は皆無関係と判断されたらしく局の関係者であるハリー以外は全員が解放されるとの事だった。
そのため明日以降は折神家から脱出できると判断した江麻は後で二人を匿ってくれている美濃関の卒業生恩田累と合流するように指示を出してきた。
しかし、皆が帰るというのに自分はどうやって合流すればいいのか疑問に思って質問をすると、江麻はインターンの研修旅行でしばらく学校には戻らないという事にすると伝えた。
そして、明日の午後にその場所に向かい代表者に挨拶に向かうように指示されるが何処に行けばいいのか質問をすると。
「東京のスタークインダストリーズ日本支部、代表はあのトニー・スタークCEOよ」
「ええっ!?トニー・スターク!?」
「スタークインダストリーズって……あのっ!?」
そのインターンの研修先の会社の名前を聞いてこれ以上にない程の驚きを隠せない颯太と携帯の画面を覗いていた舞衣。
スタークインダストリーズ代表トニー・スターク。
軍事企業であるスターク・インダストリーズの社長であり、天才的な発明家でもある世界的にも有名な人物だ。
勿論科学オタクで機械オタクの颯太と亡き叔父拓哉も尊敬してる人物の為、驚きの反面嬉しさもあった。
舞衣は自分の父が仕事の関係で何度か会ったことがあると聞いていたが流石に学校の学長が知り合いだというのは驚いている。
この人物は10年前アフガニスタンで新兵器のテストの際にゲリラに拉致され、天才的物理学者のインセン教授と共に兵器開発のふりをしながら、自身の心臓のペースメーカーとなるパワードスーツを作り上げ、インセン教授を失うもののパワードスーツでゲリラたちを一蹴、母国へ帰還。
その後、自身のこれまでの過去を振り返ってからは、軍需産業からの撤退を決定し、パワードスーツを身に纏ったヒーロー「アイアンマン」としての活動を始めたという経歴を持ち、影では日本を支援する為にS装備の開発にも1枚噛んでいるという噂もあった。
何故そのような人物が自分達の学校の学長と知り合いなのか、そもそも何故自分をインターンの研修生として採用したのか疑問が尽きない颯太だが、続けて来たメッセージに目を通す。
「驚いているかも知れないけど向こうはもうあなたの事を知っているわ、渡したい物もあるみたい。向こうは多忙で夜には日本を発つそうよ。あまり長居したり話で盛り上がったりして先方に迷惑をかけないようにね。詳しい事は明日話すから。それではおやすみなさい」
「学長ってほんと何者なんだ……」
「さ、さぁ…」
困惑する二人、しかし携帯の時間を見るとそろそろ寝た方がいい時間だと気付く。
「そろそろ戻ろうか。遅いし」
「そうだね、ちょっと色々と整理したいから」
颯太が宿舎に戻ることを提案すると舞衣も戻ることを賛成する。
すると、しばらく歩くと1つ聞き忘れていた事を思い出す。
「そういや、舞衣はどうするの?これから」
「えっ?できれば私も可奈美ちゃんが心配だから着いていきたいけど…でも呼ばれてるのは颯太君だけだし…」
「美濃関に戻ってもいいよ。これ以上ここに縛られる理由なんか無いんだし。僕が可奈美達と合流すれば心配ないさ」
疑いは晴れた以上ここに拘束される理由も無い上に家柄の事もある。正体を明かしてしまったがこれ以上は危険かも知れないと思い美濃関に戻ってもいいと言うと舞衣は
「ごめんね、それはイヤなの。正直自分に今何が出来るかなんて分からない。でも皆が色々と動いてるのに何もしないなんて……」
「でも君を巻き込みたくない」
皆が自分の知らない所で色々と動いているというのに自分は何もしないという事を悩んでいるようだった。
颯太は巻き込みたく無いという意思を伝えると舞衣は少し怒った顔で颯太に詰め寄り反論してくる。
「去年のあのときもあなたは一人でそうやって一人で解決した。そして今までもあなたはずっと一人で戦ってきた。本当は去年のあのときも私は友達として力になってあげたかった、でもあなたは一人でずっと先へと進んでいた。そして、今は可奈美ちゃんも前に進んで行ってる」
去年の事、力を手にする前の颯太は今は打ち解けて友人のガチムチ3人組にいじめられていて力になると約束したが力を手にして一人で解決してしまった。そして、スパイダーマンになって以降は誰にも言えずに一人で戦っていた事実を知り、可奈美もまた自分の意思で前に進んでいるという事を神社の時に実感した。
「私、友達なのに…っ!何も出来てない。でも、どうすればいいのか分からないから苦しいの…」
「舞衣…………」
自分は今何が出来るのかが分からず、友人達に何ができるのかが分からず悩み、悔しさで涙を流し肩が震える舞衣。
舞衣の涙を見てどうすればいいのか困ってしまったが泣いている女の子が目の前にいるのに何もしないなんて男じゃない。こういう時どうすればいいのか…これでいいのか分からないが今自分が思い付く精一杯の誠意を持ってぶつかるだけだ。なら…
「颯太君?」
「約束する。絶対に二人に辿り着いて、何もかも終わらせて必ず生きて君の所に帰る。だから信じてくれ、僕を…スパイダーマンを、そして可奈美を…っ!」
「…あーでも…リスクも少なくて、もしやってくれたらすげー助かることが一個あるんだけど…聞く?」
「えっ…うん。勿論!」
颯太は舞衣を落ち着かせる為、そして泣き顔が見られないように自分の胸に顔を埋めさせ軽く抱き締めつつ頭を撫で耳元で囁いていた。
そして、誓う。必ず可奈美と姫和に辿り着き折神紫の野望を阻止して生きて舞衣の元に帰って来ていつもの日常を取り戻すと。
だから親愛なる隣人スパイダーマンを、そして親友の可奈美を信じていて欲しいと告げるとその言葉を聞いて舞衣の方も少し落ち着き颯太の体へと手を回し抱き合う形へとなる。
しかし、舞衣の自分達の力になりたいという想いを尊重したかった為、1つだけリスクが小さく思い付いた事があるため提案すると乗ってきた。
「オッケ、でも会話を聞かれるとマズいからこの体勢のまま君に耳打ちする形で話しかけるよ、いい?」
「うん。大丈夫」
会話を他の誰かに聞かれ無いように抱き合った状態のまま耳打ちする形で小声で会話する両者。
「多分学長も基本的にモニター室にいるからかなり長時間監視されてる事になるから多分僕に敵の情報や捜査の進行状況を伝えるのは難しいタイミングがあると思うんだ」
「だから舞衣には出来る限りで良いから安全な所からそれをこっそり僕に教えてくれるとマジで助かる。むしろこっちの方が助かる」
「分かった、こっそり向こうの状況を教えればいいんだね」
「うん。でも安全だと判断できるタイミングでいいから」
「分かった、これで可奈美ちゃんとあなたの力になれるんだね」
恐らく美濃関の学長として捜査に協力するためにモニター室に長時間拘束されなければならないため安全に颯太に情報を送るという事はかなり難しい。
なら、あくまで一人の生徒でしかない舞衣ならばマークされる可能性は無くはないが低いと考え、確実に安全だと判断できた時に捜査の進行状況や敵の情報を送るという事を提案した。
むしろ、逃亡生活で敵から逃げるのであれば一緒に行動するよりも情報を送ってくれる方がありがたい。
舞衣は話の内容をすぐさま理解し、承諾すると友人達の力になれる。自分にも出来るかもしれない事を見つけ嬉しいようだ。
いまだ両者とも抱き合ったままだがこれ以上は聞かれてマズい内容は無いため耳打ちする程近付いていた距離から離れて見つめ合う。
少し前まで泣いていた為か少し眼が赤いが既に泣き止み涙の後が渇いている。そして互いに笑顔を向ける。
「うん、充分過ぎる位」
「そっか」
二人にそういった感情は無く泣いてしまった友達を慰めて抱き締めた友情のハグでしか無いのだが深夜で星と月も出ている綺麗な夜空であるため変にロマンチックに見え、そして少し顔が近く端から見れば誤解されかね無い光景だ。
そして見事にその瞬間が訪れる。
「あー!どんくさいおにーさんと美濃関のおねーさんチューしようとしてるー!」
「コラ結芽ちゃん!遅いんだから大声はマズいって…お、お前らいつの間にそんな関係に…?」
かなり離れている所から子供の大きな声が聞こえて来た。慌てて体を離して振り替えると結芽がイタズラ染みた顔で茶化すようにニヤニヤと笑いながら颯太と舞衣を指を指していた。嫌がらせというよりは偶然通りかかったら姿が見えてわざとらしく茶化しに来たに近いようだ。
すると結芽の後ろから竹刀を担いだハリーが走って来て深夜にも関わらず大声で騒ぐ結芽を叱咤する。恐らく道場で一緒に剣術での立ち会いに付き合っていたのだろうか、そしてついでに遊び相手にでもなってあげていたと考えられる。
しかし、二人が抱き合っている姿を目撃して二人がいつの間にそんな関係に発展していたのかと誤解している。
「「いやいやしてないし、なってないから!誤解の無いように!」」
「ハハハ息ピッタリー!」
慌てて二人でそんな関係では無いことを説明するが一言一句同じように否定した為、更に結芽の笑いを誘ってしまう。
「そ、そうか颯太。俺はてっきりお前は衛藤が好きだと思ってたんだがな…まあ心配すんな!俺はお前らの事応援すっから!」
「だ、だからそんな間柄じゃ……!」
「…………………………………」
完全に誤解しているハリーは二人のことを応援するからと言ってウィンクしながら親指を立てているが恥ずかしさが増していく二人。
颯太は諦めずに否定しているが完全に恥ずかしくなってしまった舞衣は赤面したまま俯いている。
「うるさいぞ君達!今何時だと思ってるんだ!早く寝ろ!!」
「うわー!真希おねーさんが怒ったーwww」
大声で騒いでいる様子を聞き付けたのか真希が乱入して来て4人を叱咤して諫める。
確かにこのような時間に外で騒ぐのは他の者の迷惑になるため真希の行動の方が明らかに正しい。
しかし、結芽はあまり反省した様子は見せずにすぐさまどこかへ去っていった。
帰る最中、舞衣と颯太はハリーに可奈美の事が心配で不安そうだった舞衣を落ち着かせる為にやった事で別にそういった関係では無いことをしっかりと説明すると理解したようで誤解を解くことに成功しそれぞれの宿舎に戻って行った。
寝室に着いて夢の中
「お前は………阿呆なのか?隣人よ」
「うっさいなぁもう!分かってるよ軽率だった事くらい」
夢の中でいつも現れる赤と青の巨大な蜘蛛が現れ、現世での颯太の行動を見ていてあまりにも不注意な点が多く正体がバレてしまう行動や先程までの流れを見て呆れていた。
「まぁお前は俺の言った通りスパイダーマンとして重要な決断をし、選んだようだがこれからどうする?」
「どうするって、可奈美と十条さんに合流して折神紫を止める。それだけじゃん」
確かに御前試合の前日、鎌倉でスパイダーマンとして重要な決断を迫られると言われ実際その通りになり、今は国家の敵スパイダーマンだ。
行動を否定するというよりかはこれからどうするのか知りたいようだ。
勿論スパイダーマンとして紫を止めるというのは舞衣や可奈美、そして姫和にも言っている事で当たり前のように返すが
「そうではない。お前は親愛なる隣人から国家の敵へと成り下がった。奴等はお前を捕まえるために最悪お前を殺す気で来るぞ。お前はそんな奴等と戦えるのか?」
「勿論だよ。国を敵に回してでも僕は折神紫をどうにかしなきゃならない。その道中に僕を潰すために出てくる敵だって現れるさ。でも僕は戦うって決めたんだ」
「お前は………もし、相手を救うことなど不可能で相手を殺さなければ誰かが死ぬかも知れない状況でお前は敵を切り捨ててでも人を救う覚悟はあるのかと聞いているんだ」
「えっ………?」
「早い話折神紫がそうだ。荒魂が取り付いているとはいえ体は人だ。奴を止めるという事は奴と対峙した時に荒魂とは言え紫を殺すことになる。人がいつでも選んできた道だ。千を救うために一を切り捨てる覚悟はお前にあるのか?」
「それは………」
これまで分かってはいたがその時になるまで考え無いようにしていたデリケートな部分について触れられた。
確かに紫を止めなければ大変な事態になることは確実だ。
だが、荒魂に取りつかれているとは言え体は人だ。
もし、紫を止めるためにその荒魂ごと紫を倒さなければならないという事は紫の命を奪わなければならない可能性もあるという事だ。人々の平和を守るため、一人を犠牲にしなければならないのかとこれまでに無い選択を迫られている。犯罪者のようにただ捕まえればいいという訳ではない、その事実を突き付けられ言葉が出なくなってしまう。
「その事を考えておけ、お前はこれまで力を人を救う為に使ってきた。だが、折神紫…人に取り付いた荒魂を討つという事は人を救う為に相手を殺すという事だ。その事を忘れるな」
「………………」
「まあ少し意地悪をしたな。ゆっくり考えるといい」
そう言うと目が覚めて朝の光が部屋を照らしている。
これまで人を救う為に力を使ってきた、その為この力で相手を殺した事は未だに一度もない。
だが、これからの戦いは人々を救う為に一人を殺さなければならない可能性もある。
この力は強大だ、だからこそ一歩間違えば人殺しの道具にだってなる。覚悟は既に決まっていたと思ったがその事実を突き付けられ一瞬迷ったが拳を握って呟く。
「分かってるさそれくらい……でも、僕はスパイダーマンだ。僕のやることは変わらない。人を守るために人に化けた荒魂を倒すのが許されないのなら許されないまま前に進むさ」
「もう後戻りは出来ない。約束したんだ、必ず帰るって……戦って人に化けた荒魂を倒す事が罪だっていうなら僕が背負ってやる!そして、それ以外は討たない、それが僕の覚悟だ……でももし仮にそれ以外の選択肢があって誰も死なないならそっちを取りたいなんて思う僕は甘ちゃんなのかな…」
そう呟くと充電が完了したウェブシューターをリュックに積め、寝る前に済ませておいた出発の準備で忘れ物が無いかを確認し、美濃関に帰る皆を見送る為に部屋を出る。
距離が縮まったように見えるだろう?確かにそうですがこれは友達グループで若干距離があった奴と二人きりで話したり遊んだりしたらめっちゃ仲良くなるアレです(雑)だから現時点での二人の感情は友情です。友情ったら友情です!
とりま夜見ちゃん誕おめ