刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任- 作:細切りポテト
新年で新しくスタートするに相応しい回に出来るように頑張ります。
誤字、修正致しました。
報告:2月11日、13~15話に多少変更を入れました。
鎌倉から電車に揺られ東京に着き、高層ビルが立ち並ぶ街中を練り歩き、一応夜道を歩く際制服姿でうろつくのはマズいため服屋で赤い背景色のロゴに白い文字でMARVELと書いてある黒いパーカー(実際に売ってる奴)とジーンズと野球帽を買い。ようやく一軒の他のビルとは見た目が大きく異なる独特の形状、そしてAのマークを模したビルの前に到着する。
正面から入り受付けに話を通すと電話で呼び出しを始め、IDカードを渡されエレベーターで社長室に行くように指示される。
社長室の前に着き、軽くノックをする。
「あぁ、入ってくれ」
恐らく中年程の、若干野原ひろしに似ている声で返される。
「失礼します」
緊張しながらドアノブに手をかけて回し、扉を開けて入室する。
室内を見渡すと辺り1面がガラス張りで覆われた作業場という印象を受ける部屋だ。
その中では台に固定されている体が棒状の機械が懸命に作業をしていたり、ガラスケースの中には成人男性程の全長の赤と白をベースにしたカラーリングのパワードスーツアイアンマンマーク47が飾られている。
思わず興奮して叫びそうになるが衝動を抑え、眼前にいる40代後半に見えるダンディーに髭の形を整えた常に自信に溢れた雰囲気を醸し出しているスーツを来た男性、颯太の形式上のインターン研修旅行での指導者の代表、世界的ヒーローアイアンマンの正体トニー・スタークに向き直る。
「我が社へようこそ榛名颯太君、またの名をスパイダーマン」
足を組んで座っていた姿勢から椅子から立ち上り両手を広げながら近付いて挨拶をしてくる。正体がスパイダーマンだと知っている事に疑問を持ちながらも挨拶をする。
「よ、よろしくお願いします。トニー・スタークさん…。あの、どうして僕のこと知ってるんですか?」
「あぁその事か、話せば長くなるんだが実は父の古くからの知り合いがスパイダーマンとコンタクトを取りたいと言っててね、我が社の技術を使って君を探して欲しいと頼まれたんだ。そして僕の技術を使い、90%特定が進んでいた所、君の学長から君をインターンの研修生として匿って欲しいと頼まれ、その時に確認を取って君がスパイダーマンだと割り出した」
スタークの父、ハワード・スタークの知人がスパイダーマンと接触したいとスタークにスパイダーマンの特定を依頼したのだと説明され、確かにスターク社の技術の、恐らく音声から相手を特定する技術でもあるのだろうと納得はできた。
「そうなんですね。そしてうちの学長とはどのような間柄なんですか?そこが気掛かりで」
「君の学校の学長さんとは直接会った事はあまり無いんだが、先程話した父の古くからの知り合いのツテで知り会ったという感じだ、そして君もその父の知り合いについて知りたいだろうから話そう。フライデー、ディスプレイを起動しろ」
『了解、ディスプレイを起動』
世界的に有名な人物であるスタークと伍箇伝の、自分の学校の学長である江麻と知り合いなのが気掛かりであったが先程から話題に出てくる父の知り合いという人物が鍵を握っていると思っている事をスタークは見抜き、説明するためにフライデーと呼ばれたAIに指示を出すとAIがディスプレイを起動し眼前のPCの画面にメッセージアプリが現れる。
「君が折神家で戦闘に介入した際に君をアシストした者達がいただろう?その時に思わなかったか?何故自分の手助けをする者がいるのか、もしかすると彼女と同じで折神紫に対抗する者がいるんじゃないかってな」
「はい、どうしてあんなタイミングよく手助けが入ったのかどうしても疑問でした。十条さんは単独だったので仲間がいるとは思えなくて、もしかして他に…対抗しようとしている勢力がいるんじゃないかと薄々感づいていました、もしかしてスタークさんが?」
スタークは両腕を組みながら折神家での戦闘の際に颯太が撤退しようとした際にスモークを投げ込んで手助けをした者達がいた際に他に折神紫に対抗しようとしている勢力がいるのではないかという可能性を考慮したかを聞いてくる。
実際にタイミングよく手助けが入った事は疑問に思っていた上に、御前試合での姫和の状況を見るに単独犯である事と可奈美はグルではなく咄嗟に助太刀したという事を把握していたため、彼女の協力者はいないにせよ同じく対抗しようとする勢力がいる可能性を心のどこかで考えていた事をスタークに伝える。
「いいや、僕はあくまで影から手を貸しているに過ぎない状況だから正式に加入している訳じゃぁない。知っての通り多忙なんでね」
「そうなんですね、ということはお父上のお知り合いという方が」
「ようやく、反応したか。PCの画面を見てみろ、その男が君と話したがっている」
スタークはあくまで影から手を貸しているに過ぎない立場である事を説明すると、父の知り合いという相手がメッセージアプリに背中に刀を差した猫と顔がだんご大家族に似ているゆるキャラのようなアイコンをしたFineManという名前の相手からメッセージが届いている。
「やぁ、Iron Manの友人。親愛なる隣人、スパイダーマン。我々は君を歓迎する」
「この人は?」
「例の父の知り合いだ、話してみろ。言っとくが僕らはまだそんな仲じゃ無いぞ勘違いするなよ坊主」
「は、はい。了解です。あなたは?っと」
相手の方は今スタークがスパイダーマンである自分と一緒にいる事を察してか名指しで呼んでくる。
スタークは淡々と父の知り合いだという事を説明するが、FineManという相手がメッセージで書いた友人という言葉に眉を潜め自分と颯太はまだ友人等と言う関係ではなくあくまで指導者と研修生でありそこを履き違えて自分に馴れ馴れしく接して来たら大人として示しが着かない為その事を認識させる為に冷たく言い放つ。
勿論分かってはいたがそんな堂々と言われ少し萎縮したがキーボードを操作し、あなたは?と打ち込むとIron
Manというデフォルメされたアイアンマンのアイコンのアカウントのメッセージが表示される。
「Ally(味方)、親愛なる隣人スパイダーマン。立ち向かう覚悟はいいね?yes/no」
自分は味方だと言い張る相手だが妙な胡散臭さはない、アメリカでヒーローをしていて尊敬する人物であるスタークを使ってまで自分を探させ、尚且つスタークが陰ながら助力している事を鑑みるに恐らく敵では無いのは確かだ。
それに、答えは最初から決まっている。答えは勿論。
「yes」
と打ち込む。
すると向こうからは
「今日という日は完璧になった!そして、君に新しい力を託そう。詳しい話はIron Manに聞いてくれ、そして以下の場所へ」
「僕は正式なメンバーじゃないから彼等について話す権限は持たない。彼等についての詳細はFineManに聞け」
FineManという人物は、自分と仲間たちとの合流地点と思われる場所、「石廊崎」を指定してきた。
恐らく後々には姫和や可奈美を匿ってくれている累の家のPCにも同じようにメッセージが送られ場所を指定されるのであろうが今日の夜には累の家に行って二人と合流する予定である事も周知されているのだろうか。
そして、先程のFineManという人物からのメッセージに書いてあった新しい力とは?そして、学長もスタークは自分に渡したい物があると言っていたなと、この1文が引っ掛かっていたため、起立してスタークの方に向き直る。
「あの…スタークさん。FineManさんや学長が言っていた渡したい物って一体…?」
「あぁ、これが僕が日本に来た最大の目的だ。これを見てみろ」
スタークはどこからともなく銀色のスーツケースを取り出し机の上に乗せてくる。
そして、スーツケースが自動で開かれるとそこには折り畳まれた赤と青のツートンカラーを基調に、黒いクモの巣の模様が施されている新品同様のスパイダーマンスーツがあった。
「僕らからのプレゼントだ、着てみろ坊主」
「あ、あの…!?こんなかっちょいいのいいんですか!?」
「あぁ、今そう言ったろ?多少君のよりは改良してあるが僕の独断と偏見で作ったスーツだからな、特にその手首の装置に関しては君の好みをなるべく変えたくないから意見やらも聞きたい。」
自身が尊敬するスタークからのプレゼントという事もあり感極まってしまい一瞬口調が子供っぽくなりかけるが眼を輝かせながら新しいスーツを見た感動は抑えきれないのかスタークに満面の笑みを浮かべるがスタークは一切動揺はせずに着替えに居合わせないように一旦退室する。
意気揚々と着替える颯太だが妙にスーツのサイズがでかくブカブカの格好で親の服を無理矢理来た子供のような、ハロウィンのコスプレような不格好な姿になる。
「あのースタークさん。着替えたんですけどサイズが大きいですー」
「胸の蜘蛛のマークを押してみろ」
着替えたがサイズが大きい事を告げると着替えが終わった事を理解したスタークは再度部屋に戻りながら胸についている黒い蜘蛛のマークを押すように指示してくる。
「これか…うわっすげえ!」
蜘蛛のマークを押すとサイズが自動で調整され体にフィットし調度良いサイズになる。
瞬きをすると眼のシャッターが動き視界もうまく調整できる事を確認し、以前のは殆どただの布の覆面であったが新しいスーツは非常に楽に周囲が見渡せるようになる。
「サイズはそこで自動で調整できる。どうだ着心地は?」
「最高です!マジパナいッス‼他には何があるんですか!?」
「あらゆる機能を着けている」
最新鋭の機器が搭載されている新しいスーツの着心地に興奮し完全に馴れ馴れしくなっているがスタークは新しいスパイダーマンのスーツには様々な機能をつけていることを説明する。
「さっきも言ったが君の意見も取り入れたい。ウェブシューターは君はどうやって開発した?」
「あーそれはですね」
スタークにウェブシューターはどうやって開発したのかを尋ねられ、昨年に作成した時や48時間の充電式になるが種類を増やした方法を説明する。
スタークはその説明を一瞬で理解し、次の質問を飛ばしてくる。
「壁を登るときはどうしている?粘着手袋でも使ってるのか?」
「いえ、壁には自然に吸着できるんでその手の類いのはつけてません」
「じゃあウェブシューターの素材はどうやって集めた?安物だが強度は悪くない。子供の小遣いでも買えるようにリサイクルショプ?バザー?」
「あー、学校で使わなくなった資材とかこっそり頂戴して。後、糸は針井グループが開発した液状プロテインを改造した物です」
「………僕には遠く及ばないが日本にまだこんなキテレツ君がいたとはな」
スタークは素直に誉めるタイプではないため多少ひねくれながら手頃な資材でウェブシューターや糸を作るその発想をキテレツ大百科のようだと揶揄しながら手腕を認めているようだ。
「OK、ウェブシューターの原理は理解した。大方僕が予想していた通りの作りのようで安心した。お陰で1から作り直す心配は無さそうだな」
「はい、ありがとうございます。スタークさん」
「後はそうだな。本当は君みたいな12歳の子供には補助輪プロトコルで全機能をoffにして無茶しないか監視したい所だが状況が状況だ」
「13歳です。ていうか来月で14になります」
「お口チャック!今は大人が喋ってるんだ。僕からすれば大差無いぞ12歳も14歳も」
スタークは新しくスーツを託す上でまだ13歳の子供であるスパイダーマンには危険な事はしないように全機能をoffにしてGPS等で監視するべきだと考えていたら話している最中に年齢を訂正され、不機嫌そうに返すスターク。確かに40後半のスタークからすれば12歳も14歳も大差無いのは事実だが。
「仕方ない。サポートAIと拡張偵察モードとGPS追跡機能等までは開放し、瞬殺…ゴホンゴホン拡張戦闘モードの機能はoffにさせて貰おう」
「ん?今なんか物騒な事言いかけませんでした?」
「何、子供の気にすることじゃ無いさ」
スタークがoffにする機能と使用させても問題ないと思う機能を選択している際、拡張戦闘モードという機能を一瞬だが瞬殺と言いかけた為聞き返すと、顔をそっぽ向きながらはぐらかす。
「よし、機能の選択は終わった。後はサポートAIに挨拶でもしておけ」
「え?サポートAI?」
スタークはPCを操作しながら機能の選択を行いサポートAIの使用を許可するとスーツ全体が一瞬光り、スパイダーマンの視界にはHUD(ヘッドアップディスプレイ)への接続が可能となり視界に様々な機能の文字が羅列されている画面が表示される。
スーツの使用権限がスパイダーマンに移った証拠であろう。すると
『こんにちは、颯太』
「もしもし、もしもし!?」
スパイダーマンのマスクを被っているスパイダーマンにしか聞こえない声で女性の声でサポートAIが語りかけてくる事に驚きテンパってしまう。
「落ち着け、サポートAIだ。君をアシストしてくれる。名前の1つでも着けてやれ、スーツのお姉さんじゃ変だろ?」
「あっそうですね。なら携帯で調べて後はダイスで決めよっと……そい!…カレンか」
『カレンと呼んでも良いですよ』
「オッケーカレン。これからよろしく!」
スタークに名前をつけるように言われ、携帯で海外の女性の名前を調べダイスアプリで出た目でカレンという名前になり、決定した。
スタークにウェブシューターの説明や意見交換をしたり、スーツの機能選択を行っていた為かなり時間が過ぎそろそろスタークが空港に向かうべき時間になっていた。
「そろそろ出た方がいい時間か。坊主、僕はもう出るがスーツのトレーニングメニューをこなすのとマニュアルは頭に叩き込んどけよ。マニュアルは持ち出し禁止だからな」
「分かりました、スタークさん」
「全くこの国は年端も行かない嬢ちゃん達が命懸けの仕事をしてたり、こんな坊主がヒーロー活動してたりで忙しいな」
「えっ……?」
「ただの独り事だ。じゃあな、負けるなよ坊主」
スタークは荷物を纏め、社長室から退室する前にスパイダーマンにトレーニングメニューを行うことと、マニュアルを読んでおく事を言い渡す。
そして小声でこの国の子供たちは戦争をする国家でもないのに命懸けな事をスタークは少し嘆いており、かつて武器を売っていた事への罪滅しではないが少しでも出来ることがあればしてやりたいという気持ちを態度には出さずひねくれた口調で表現する。
その後は振り返らずにスパイダーマンを激励する言葉を送りながら退室する。
「じゃあカレン。僕はマニュアルの内容頭に叩き込んだりトレーニングメニューやるから累さんから帰宅したって着信あったら教えて」
『いいですよ』
「…………叔父さん。僕、トニー・スタークに会ったよ。思ってた以上にかっこいい人だった」
スパイダーマンは累がマンションに帰宅する時間前まではトレーニングメニューを行うこととマニュアルの内容を読むことに没頭する事にした。
叔父と自分も尊敬していたトニー・スタークに会い、ナルシストで傲慢だが想像以上に立派な人間であった事を独り言で既にこの世にいない叔父に向けてボソリと呟くスパイダーマン。
夜になり場面は変わって折神邸、刀剣類管理局本部。
「やはり防犯カメラに写っていたのは平城と美濃関の制服だ。スパイダーマンの姿は確認できないが二人を乗せていた車の持ち主と場所を特定したわ。部屋の持ち主は恩田累、元美濃関出身の刀使。10年前に御刀を返納、現在は八幡電子に勤務」
捜査本部にて防犯カメラを解析し、上着を羽織りつつも制服を着ていた為居場所が大方特定されてしまっていた。
そして、二人を匿っている部屋の持ち主である累の部屋の住所までを割り出すにまで至っていた。
そして、その会話を本来その場にいない筈のある人物が聞いていた。
格納庫でトゥームスは寝たフリをしながら隠し持っていた盗聴器を格納庫に来る前にすれ違った雪那にこっそりとつけ、小型のイヤホンで本部での会話を盗み聞きしていた。
恐らく居場所が特定したのならこの神経質そうな女はすぐにでも奇襲を仕掛けると思いトゥームスも行動を起こすことにした。
「あーワリワリ、ちょっちトイレ行きてぇんだけどいいかぁ?」
「分かった、逃げないようについていく」
「おいおい嬢ちゃん、野郎の俺と連れションなんて気が引けんだろ?そこのメット被った兄ちゃんに頼みな、俺は繋がれてて何もできねえからよ」
「そ、そうだな。じゃあお願いします」
トゥームスはトイレに行きたいと言い出すと見張りの刀使が同行しようと言うと、男である自分のトイレに着いていくというのは気が引けるだろうと表面上気遣った言葉をかけ近くにいた全身武装した機動隊の隊員を同行させるように提案すると、見張りの刀使も同調し機動隊にトイレまでの見張りを頼んだ。
そして、しばらく歩いてトイレの前まで行くと。
「早く出てこいよ」
「へいへい分かりましたよ」
機動隊の隊員の言葉に適当に返事をしながら言葉を返しトイレに入って行き、隊員が後ろを向いてトイレが終わるのを待っていた矢先、首筋に打撃を入れられ一瞬で気を失う。
「ワリィな、ちょっち服借りんぜ」
隊員から鍵を奪い、手錠を解除してトイレへと引摺り込み、機動隊の隊員の服装に着替えてヘルメットを被ってトイレから出てヴァルチャーが置いてある区間に入る。
ヘルメットで顔を隠しているため特に誰も気にする様子はなく、誰にも気付かれないように机に置いてあるヴァルチャーのウィングスーツの起動スイッチを押す。
スイッチを押すとヴァルチャーの背部のエンジンが稼働し、ボタンを操作するとヴァルチャーの翼部が独りでに動き出し、全員が視線を向けるが既に遅い。
遠隔操作をしながら武装した機動隊と刀使にスーツが体当たりを仕掛け全員を薙ぎ倒す。
見張りの刀使の所持していた御刀を拾い上げ軽い口調で拝借する。
「借りてくぜ」
専用の鳥をモチーフにしたフルフェイスのヘルメットを被り待機状態にさせたヴァルチャーの装備の方を向いて搭載されてあるX線スキャンを作動させ自爆装置の位置を確認し、ドライバーでこじ開けて取り出し、適当に格納庫の外に棄てる。
「そんじゃぁハゲタカらしく、雛鳥の死肉を漁りに行きますかね」
恐らく居場所を特定したと同時に雪那は刺客を送り込んで奇襲を仕掛けると考えている為、戦闘で疲弊している所を横からかっさらう事で報酬を独り占めしようと考えているトゥームス。
ヴァルチャーのウィングスーツを装着し、格納スペースに先程拾い上げた御刀を収納し、一対の操縦棍を握りエンジンを蒸かしながら翼を展開すると、翼が格納庫の壁を突き破る。
そして、そのまま上空へ一気に飛翔する。
「UUUUUU~Yheaaaaaaaaaaaa!!」
これまでに無い飛行速度と高度に長年空を飛んできた『ヴァルチャー』は感極まって喜びの歓声を上げる。
「ハッハァ!最高だなぁコイツァ!慣れねえ装備はちと扱いづれえが…武装さえ分かりゃ後はなんとかなる!」
格納庫に置いてあった銃を腰に下げ、操縦棍を握りながら空中を旋回しながら試験飛行をするヴァルチャー。
先程盗聴で聞いていた住所を記憶していたヴァルチャーはその場所へのナビを起動する。
『おい、トゥームス!お前何勝手な事をしている。すぐに戻れ、今なら咎めないぞ!』
「よぉ!坊っちゃん!話は聞かせてもらったぜ、今が攻め時だ。スパイダー野郎と合流する前に連中をぶちのめすのが得策だと思うぜ?これでも減給は覚悟の内よ!」
空中を錐揉み飛行していた所通信が入る。雇い主の栄人だ。
恐らく格納庫にいた誰かが連絡したのかヴァルチャーが独断専行した事を咎められ引き返せと言い付けられる。
しかし、盗聴器で本部の話を聞いていたヴァルチャーは敵の居場所が分かったのなら攻め時だと言い張り、減給を覚悟でスパイダーマンと合流される前に倒すべきだと告げる。
『いいから、戻れ!余計な真似はするな!』
『そうだ、余計な真似はするな!用心棒のハゲタカ風情が!』
「おいおいキレ安い姉ちゃん。これは俺の独断専行よ。アンタには何のデメリットも無ぇ。それに流石にアンタん所の生徒さんが優秀でも3対1はキツいだろ?俺が野郎のマンションに向かってアンタの生徒さんを援護するってのはどーだい?俺を放置してもあんたにとって損は無ぇと思うけど?」
『何を、奴ら等沙耶香がいれば充分……まぁ言われてみればそうだな。なら、私は口出ししない。精々交戦中の沙耶香を援護していろ』
「grazie(グラッチェ)、話が分かるタイプで助かったぜ。坊っちゃんよぉ、俺は別に殺しがしてぇ訳じゃ無ぇんだ。ただ仕事を確実に成功させてぇだけなんだよ。多少減給してくれたって構わねぇから今ここで野郎と合流する前に連中を取っ捕まえりゃ仕事の成功率は上がるしアンタらも少しは楽ができる」
ヴァルチャーは流石に天才と言われている生徒が向かったとしても3対1で不利だと言う認識を利用し、雪那に沙耶香の援護に回ることを提案する。
元々雪那としては沙耶香が単独で倒させる事で自分の私兵が有能である事を紫に認めてもらう魂胆であったが確かに3対1は厳しいというのも筋は通っている上に一利あるためあくまでヴァルチャーには口出しをしない事に決めた。
おもしろい位に思い通りに動く雪那に対し笑いを堪えるので精一杯だがいつもの調子であろうと努めるヴァルチャー。
「それに・・・お友達の罪が更に重くなっちまう前に捕まえられりゃあアンタも御の字だろ?違うか?」
『・・・っ!それは・・・でも・・・・。分かった。だが、全員生け捕りにしろ。そうじゃ無いと俺は貴様を許さねぇからな!後、不利になってヤバくなったら無理せず逃げろ!』
「へいへい分かりましたよ。そんじゃ切るぜ」
ヘルメットの中でヴァルチャーは顔を冷たく歪ませながら諭すような口調で栄人に語りかける。
逃亡中の友人である可奈美が逃走を続けると言うことは更にいくつもの罪状がついてしまうと言うこと。
仮に捕まったとしても自分が父親に土下座してでも罪を
軽くするつもりだが、それでも限界はある。
ヴァルチャーの甘言に乗せられてしまい、罪が重くなりすぎる前に捕まえる事が出来ればと思い悩んだ末に死人を出さない事を条件とした。
ヴァルチャーはその言葉に対して軽い口調で賛同し、通信を切る。
「さぁ………一獲千金だ!」
ヴァルチャーは操縦棍を強く握り、ウィングスーツのエンジンを蒸かし更に加速し、真下に見える夜景を背景にエンジンの音をBGMにしながらマンションに向かう。
IW視聴してハイテクスーツで意外だったこと、ハイテクスーツのウェブシューターって自動で装着出来たんかい!?って感じです。
マジ公式さん576通りのウェブシューターのモードの概要知りたいから資料作って欲しい(無茶ぶり)
AIカレンやハイテクスーツの元ネタはホームカミングを見てください(ステマ)