刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任-   作:細切りポテト

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私用により思ってたよりかかってしまって申し訳ないでありんす。


報告:2月11日、13~15話に多少の変更を追加しました。


第14話 二羽の鳥と禿鷹

時間は少し戻ってスターク・インダストリーズ日本支部の一室のトレーニングルーム。

 

『次は、ウェブグレネード』

 

「ウェブグレネードォ↑!」

 

スターク社の技術によりバーチャルで作り出した仮想のトレーニングルームでトレーニングダミーのモノアイの機械兵複数を相手にトレーニングコースをおさらいしているスパイダーマン。

被っているマスクからスパイダーマンにだけ聞こえるAIカレンの声がウェブの名称を説明してくれており、黒のアームガード状のウェブシューターから接続されているスパイダーマンの視界に写るHUD(ヘッドアップディスプレイ)でウェブシューターのモードを選択し、ウェブシューターから掌に収まる大きさの黒い球体が出てくる。スタークが開発した新しいウェブ「ウェブグレネード」だ。ウェブグレネードを掴んでトレーニングダミーに向かって投げつけると対象に吸着し球体が炸裂して中から大量のクモ糸が四方八方に飛び出して多くのトレーニングダミーを拘束する。

 

「おお!これいいね!」

 

『他にもあなたが以前に作成していたウェブのモードにも調整が加えられています。例えばテーザー・ウェブ(電気ショックウェブ)を放っても充電は減らず、威力も上がっています』

 

スパイダーマンがウェブグレネードの威力に感心しているとサポートAIのカレンは以前にスパイダーマンが作成したウェブにもアップデートが加えられていることを説明する。

すると、接続してある携帯から着信の文字が表示される事をカレンがHUDに表示して伝えてくる。

 

『恩田累から着信、接続しますか?』

 

「あっ、お願いカレン」

 

HUDから接続し着信に出るスパイダーマン。

 

『あー、もしもし~君が颯太君?もうすぐ帰るからこっちに来てもいいよ~』

 

「了解しました。今向かいます、よろしくお願いします」

 

『はいはい了解~』

 

電話には若い女性の声が聞こえてくる。とても気さくで気の良さそうな人だ。

二人を匿ってくれている人だからきっと優しい人なんだろうなと想像していたが予想通りで安心するスパイダーマン。

そろそろ来ても良いと言われた為スターク・インダストリーズを出発する事にしたスパイダーマン。

時間を確認すると23:00を過ぎていた。

 

「やばっ結構長居しちゃったな、補導されないようにタクシーで行くか」

 

『その方が良いでしょう。マンションの近くで降りましょう』

 

「あーでもマンションに行って部屋に行くって事は二人には正体明かそうか、はぁ…絶対可奈美にしつこく問い詰められるな…」

 

『可奈美とは?』

 

深夜とは言え中学生が歩き回っていると思われない為に私服を購入し制服で出歩かずにタクシーを呼んで近くまで行くことを考えたがマンションに行って合流すると言うことは二人と累には正体を明かすことになるだろう。

流石にスパイダーマンの格好で歩き回るのもおかしな話な上にしばらく行動を共にするのだ、仕方がないだろう。

しかし、スパイダーマンは正体を可奈美に明かすと何が起こるのか若干想像したく無くなって来ていた。

 

「幼稚園から一緒の子。家が隣ってだけだけどね。僕がスパイダーマンになってから何も相談したり頼らずに一人でやって来たから怒りそうかなって」

 

『それは颯太の事が心配だからでは無いですか?私も彼女と同じ立場なら、友人として放っておけないでしょう』

 

「まぁね、それは分かってるんだけど…でも、言いにくいよ。自分からはさ…あっカレン、タクシー呼んどいて」

 

『そういうものでしょうか?後了解です』

 

可奈美との関係性を軽く説明するスパイダーマン。自分に黙って一人で抱え込んでいた事を問い詰められそうだなと危惧しているがカレンはそれは友達として放っておけないからではないかと考察している。

それは分かっているが、自分が人間じゃ無くなって行くんじゃ無いかという不安もあるためそう簡単には割り切れる物ではないと言い切る。

 

そして、覆面をリュックに仕舞いスーツを中に着たまま購入した黒いパーカーとジーンズと野球帽とマスクに伊達眼鏡で一応だが変装し、スターク社を出て呼んでおいたタクシーに乗り込む颯太。

しばらく走行していると携帯が震える。誰かからメッセージが来たのかと思い確認すると舞衣から一件のメッセージが来ていた。

その内容を確認すると驚愕して眼を見開く。

 

『大変なの!可奈美ちゃんと十条さんの居場所が本部に バレて鎌府の刺客がそっちに行ったみたい!』

 

「マジかよ…了解っと」

 

「そして、ついさっき大きな翼のついた装備を着た人が追撃に向かってるって!気をつけて!」

 

(はぁ!?なにそれ!?……多分針井グループが技術提供して作った新型装備か…っ!)

 

その内容は累のマンションの場所がバレてそちらに刺客が二人も向かっている事を警告するものであった。

このままタクシーに乗っていてはそれなりに距離もあるので間に合わないと判断した颯太は運転手にここでいいと降ろさせ、代金を払って路地裏でリュックからマスクを取り出して被り、急いで服を脱いでスパイダーマンへとなり変わる。

新しいウェブシューターに変更はしたものの叔父から買ってもらった腕時計はスパイダーマンにとっては大切な御守りも同然の物だ、どんなときでも肌身離さず持って行くのは変わらない。

 

「カレン!今すぐこの住所をスキャンして最短のルートを設計して!その間に僕は累さんに連絡する!」

 

『了解、住所をスキャン…最短ルートを設計、完了しました』

 

「はやっ!」

 

カレンに最短ルートを設計させるように指示を出すと即座に現在地から目的地までの最短距離のルートを設計し、そのルートがHUDの画面に表示される。早速新スーツの性能を体感して驚くスパイダーマンだがなりふり構わずに設計されたルート通りに建物の屋上の上を走り、建物の間をジャンプで飛び、高層ビルに糸を飛ばして東京の摩天楼を飛び回りながらHUDに接続して累に電話をかける。

 

『あーもしもし、どしたの~』

 

「あぁ!累さん、無事ですね!マンションの場所が敵にバレました!今そっちに鎌府の刺客と翼を着けた奴が向かってるんです!二人を連れて避難するか迎撃してください!」

 

『えっ?翼?何?』

 

累さーん、どうしたんですかー?

 

取り込み中だろう、今は待て

 

 

電話に出た累に対し、マンションに刺客が向かっている事を伝えるがテンパっているため多少支離滅裂な言動になっている。そのため向こうも困惑しているが恐らく危機が迫っている事は伝わったようだ。そして二人も近くにいることも確認できる。

 

累が二人に避難する為に御刀を持たせているのが通話の様子で伝わるが直後に窓ガラスが割れる音がする。

恐らく迎撃することになるのだろう。一応だが事前に伝えた事で早めに対応出来たが安心は出来ない。

翼を着けた装備をしている輩が未知数で何をするか分からないからだ。

通話を切って落下していく力を利用し再度空中に上がり、高度がかなり高くなった際に両腕を広げると脇からムササビのような膜「ウェブ・ウィング」が張られ、空中をそのまま滑空し、夜景に彩られた華やかな街を真下に今自分は初の摩天楼でのスウィングがこんなタイミングであることを実感し皮肉混じりに叫ぶ。

 

 

 

「初の摩天楼でのスウィングがこの後バトルとかもう最っ低(さいっこう)!」

 

『矛盾しています』

 

場面は変わってマンション

 

 

累が帰宅して以降夕飯を共に食した後に、デスクトップの置いてある窓際の部屋に案内し、FineManとコンタクトを取っていた。

その最中にスパイダーマンから電話がかかってきたと思いきや焦った様子で敵に住所がバレた事と刺客が向かっている事を伝えられる。

にわかには信じがたいが冗談ではこんな事は言えないだろうと確信し、可奈美に千鳥を持たせ避難する準備をしていたら窓ガラスを割りながら可奈美よりも年下に見える白髪に色素の薄い鎌府女学院の刺客、糸見沙耶香が乱入してくる。

乱入してくると同時に近くにいた姫和に上段から斬りかかるが咄嗟に小鳥丸を構えて一撃を防ぐ。

 

「可奈美!累さんを連れて一旦奥まで下がれ!」

 

「うん!」

 

防いだ後に手で押し返し、可奈美に指示を出すとその言葉に頷き、累を保護しつつ奥まで下がらせる。

 

「貴様、鎌府の!」

 

睨みを効かせると沙耶香は無念無想を発動させ瞳が淡い光を放ちながら再度斬りかかり、防いだ姫和はその速さに驚いている。

一旦距離を取り、ベランダに出ると再度突きを繰り出してくる沙耶香の攻撃を回避し、手すりに登りベランダから飛び下りる。狭い所で戦うより多少は広い駐車場で戦う事を選択したからだ。

落下していく最中姫和を逃がすまいと御刀「妙法村正」を振り降ろす沙耶香の剣劇を受け身の取りにくい空中であるにも関わらず姫和は身体を捻る事で小鳥丸を振って防ぎ、両者とも地面に着地する。

 

(一瞬の加速でなく、持続的に迅移を使っている…そんな事ができるとは…っ!)

 

本来は段階ごとにシフトチェンジの要領で一段階(2.5倍速)、二段階(6.25倍速)と加速する迅移だが、段階が上がれば上がるほど非常に神力の消耗が激しい。

沙耶香は自身の能力無念無想で行動が単調になる変わりに技の持続力を上げていると姫和は察知している。

 

踏み込んだ瞬間に迅移を持続させている沙耶香の速度には劣り、斬り込まれてしまい1度写シを剥がされてしまう。

 

(ならばこちらも…っ!もっと、もっと深く!)

 

反撃に出た姫和は迅移を発動させ、沙耶香に斬りかかるが一撃目は回避され、後ろに回り込まれる。

それに呼応するように更に加速して突進し、沙耶香が反応するよりも先に中段から横凪ぎに小鳥丸を振るい、切り払うと沙耶香の写シが剥がれ後方に飛ばされるが沙耶香は難なく着地する。

 

(技の影響か…もう写シは張れないようだな)

 

無念無想の影響のせいで消耗しているのか写シは戦闘中に1度しか張れないと姫和は推測する。

流石にこれ以上挑むのは命の危険があるため攻撃はしてこないだろうと予測したがまだ、無念無想ら解除しておらず瞳が淡く光っており、もう一度妙法村正を正眼に構え戦う意思を見せる沙耶香。

写シ無しで斬りかかってくると思われる沙耶香の行動に驚愕する姫和だが、目の前の沙耶香に気を取られ上空から二人の様子を見ている者の存在には気付いていなかった。

 

場面は変わって上空。

 

雪那から沙耶香の援護を許可されたヴァルチャーは上空から二人の戦闘の様子を格納庫から盗んできた新装備の光子熱線銃を構え、ヘルメットの視界を拡張する機能を使用して観察していた。

 

「おいおい、急いで飛ばして来てみりゃ押されてんじゃねぇか。敵さんもあんまし弱ってねぇみてえだしよ…しかし、見たところスパイダー野郎がいねぇな…監視カメラの通り別行動してやがんのか、なら野郎が来る前に1羽くれぇ焼き鳥にでもしとくか…」

 

ヴァルチャーが到着した頃には二人は既に駐車場まで移動し、一対一で戦っている所を見ると一人が沙耶香を引き付け、戦う力の無い累を避難させて後から乱入すると推測できる。その上スパイダーマンの姿が見えない事から別行動を取っていると判断し、合流される前に一人でも無力化すべきだと考え、数が増えられると厄介だと判断したヴァルチャーは自身も仕掛ける事にした。

姫和の反撃により1度斬られて後方に飛ばされた沙耶香が再度斬りかかろうとしている姿を見て姫和の方へと狙いを定めて光線銃の引き金を引くヴァルチャー。

 

 

「おうおう皆さんお元気なこって…逝っちまいな!」

 

光子熱線銃から紫色の光が銃口に集束し、一点に集まり熱を帯びた光がヴァルチャーに気づいていない姫和に向かって放たれる。

 

地上にて

 

沙耶香と姫和が正面から向き合い、無念無想の影響により行動が単調化している沙耶香が写シ無しで斬りかかろうとするモーションに対応しようとしていると地上まで来ていた可奈美が大声で姫和に呼び掛ける。

 

「姫和ちゃん後ろに避けて!」

 

「…っ!?」

 

その言葉の意図が分からなかったが無意味にこのような事は言わないと察知した姫和は言われた通りに後方に避けると自身が先程立っていた位置に光弾が降り注ぎ地面を陥没させ、地面に焼け跡がついている。

 

「何だ!?」

 

突然の攻撃に驚き上空の方を見上げると驚きで瞳孔が散大し、更に驚愕する。

そこには月を背景に2m近くはある巨大な機械の翼を着けたウィングスーツに鳥をモチーフにしたフルフェイスのヘルメットから緑色の眼が怪しい輝きを放ち、こちらに向けて80cm程の銃を構えた珍妙な装備を着けた人物が空中に停滞しているのだから。

 

「ちっ…よく見えてやがる。いよぉ、鎌府の嬢ちゃん!援軍だ!助っ人に来たぜ援護は任せな」

 

「了解、続行する」

 

突然の登場に全員が状況を読み込めていない状態だがヴァルチャーは沙耶香に向けて自身は援軍だと説明すると沙耶香は頷き姫和と可奈美の方を再度見やる。

 

 

「何だ貴様は!?管理局の新型か!」

 

「傭兵がテロリスト様に名乗る名なんざ無ぇっての、こちとらボーナスがかかってんだ、覚悟しなぁ!」

 

「姫和ちゃん!来るよ!」

 

姫和はヴァルチャーの装備を見るなり恐らく刀剣類管理局。針井グループと折神紫が開発している新装備ではないかと推測する。

しかし、ヴァルチャーは会話に応じるつもりは無いようで自分はこれから雇われた内容通りにテロリストを倒して捕獲することが仕事であり、この仕事がうまくいけば一獲千金であるため殺る気満々のヴァルチャーは好戦的に銃を構え、住宅地であるにも関わらず発砲する意思を見せている。

可奈美はヴァルチャーと沙耶香が仕掛けて来ると姫和に声をかけ、姫和もその言葉を聞いて仕切り直す。

 

沙耶香が無念無想を発動したまま写シも張らずに姫和に斬りかかって来る。

しかし無念無想の影響で動きが単調になっている沙耶香の動きは迅移で加速して回避する。しかし

 

 

「動きが見えんだよ!」

 

 

ヴァルチャーに回避のルートを読まれ光弾で追撃され、数発被弾するが写シを張っているため肉体は無事だがダメージが無い訳ではなく光弾の熱と破壊力を体感し、写シを1度剥がされるが再度張り直す。

 

「ぐっ…………まだだ!」

 

「お友だちのスパイダー野郎が来る前にぶちのめしてやらぁ!」

 

直後可奈美はヴァルチャーの翼が大きい事は角度によっては視界を遮り死角を作ると思い、回り込んで姫和を牽制する為に光弾を発射した際に八幡力で同じ高さまで跳躍し背後からエンジンを破壊して地上へ落とそうと接近する。

 

「てやぁ!」

 

「ちっ…!ちょいさぁ!」

 

 

パワードスーツによりヴァルチャーは常人よりも反射神経が強化されている事もあってかギリギリ可奈美がエンジンを狙った一撃に反応し身体を高速で捻り、左の翼の先端の1本1本が切断も可能な硬質な刃になっている部分で防ぎ拮抗するが八幡力相手には力負けし、地面へと叩きおとされる。

 

しかし、攻撃を防いだ左の翼部にはダメージを負い右翼よりも自由には動かせなくなるが落下しながら背面でエンジンを蒸かし減速して姿勢を保ち落下を防ぐ。そして、隙を作るために背面で飛行しながらヘルメットの中のディスプレイの画面が捉えた落下中の可奈美に狙いをつけ右に3本、左に3本の計6本ある翼の1本1本の刃状になっている先端の羽根が1本ずつ自動で分離し、2体が可奈美を追尾して変則的な動きで襲いかかる。

 

「行けよ!」

 

「ちょっ、何これ!」

 

自動で追尾してくる2本の刃のついた羽根を空中で姿勢が取れない中、身体を捻って回避し、カウンターで千鳥を振って的確に切断し破壊する。

 

「ったく、この国のガキはどうなってやがんだ!…けどなぁっ!」

 

しかし、最初の2本は囮。そして後から飛ばしてきた本命の羽根2本は振り抜いた時に体勢が崩れたままで隠れて見えなかったため対応しきれず直撃し、身体を斜めに斬られて写シを剥がされ地面に落下する。

可奈美を斬りつけた羽根は自動でヴァルチャーの元に戻り、元々あった位置の翼部に収まる。

 

「うぐっ!」

 

 

 

落下の衝撃に備える事が出来ずに足から着地した痛みで一瞬身動きが取れ無くなりその隙を見逃さなかったヴァルチャーは、光子熱線銃の弾道が見えていた視力や、死角になる角度からエンジンを狙って叩き落とそうとしてきた判断力、さらに姿勢が安定しない空中、更に今は深夜で電灯等で多少マシだが周囲が暗いにも関わらず囮の羽根を初見で対応した可奈美が1番厄介、尚且つ左翼部にもダメージを与えられた為、恐らくこのままではこちらが確実に押し負けると判断した。

 

 

(設計上まだ試作品で1回しか打てねえらしいがやんなら今しか無ぇな、てかやんねーと俺らが負けんぞ!)

 

 

そして、着地して反応が遅れた可奈美に向けてヴァルチャーが空中で両翼を展開すると翼から地響きがしたかと錯覚するほどの強烈な超音波を発すると振動で前方にある駐車場の車の窓ガラスが次々に割れ始め、可奈美は耳をつんざくような、鼓膜が破られるかと思う不快な音波に対して咄嗟に持っていた千鳥を落として耳を塞ぐ。その隙に光子熱線銃を構え、追い討ちをかけようとする。

 

 

「うあぁ!」

 

 

「厄介なてめぇから先に焼き鳥だ!」

(クソッ!ワリィな坊っちゃん。俺の傭兵の勘が告げてるぜ、こいつは野放しにしときゃあ俺らにとって脅威になる・・・っ!こいつを放っておいたら依頼の成功率は格段に下がっちまう。依頼が成功しねぇのは元の子も無ぇ、なら・・・ここは先にこいつをぶちのめして安牌を切らせてもらうぜ!)

 

「可奈美…っ!くっ邪魔をするな!」

 

超音波を直で受け、脳にも衝撃が伝わったせいかまだ視界がぼやけ、御刀を拾おうとするも平衡感覚が狂い足が覚束無い可奈美、すぐにへたりこんでしまう。この案山子同然の相手に熱線銃の光弾を当てる等造作もない。

熱線銃の銃口に熱を帯びた光が再度収束し始め一点に集まり始める。

姫和は急いで可奈美の意識を覚まそうと声を荒げて叫ぶが動きが鈍くなっている今ではかなり危険だと判断し、迅移で加速して助けようとするも無念無想を発動中の沙耶香に斬りかかられ阻まれる。

鍔迫り合いになり、何とかして可奈美の元へ行こうとするも中々前に進めず、絶望感と焦燥感が増していく。

 

「逝っちまいな」

 

「くっ…!」

 

「可奈美!」

 

最早絶望的、ヴァルチャーは先程の軽快な口調とは打って変わって死にかけの動物をこれから捕食する為にトドメを刺さんとする禿鷹のような凍てつくように冷たい声色で淡々と告げる。

御前試合前日の岐阜での通行人にぶつかられて千鳥を落として飛んできた車に潰されそうになった時、あの時の光景が頭を過る。

あの時、咄嗟にスパイダーマンが来てくれたからどうにかなったものの、いつだってそんな都合良く奇跡が起きる訳じゃ無い。自分はこのままあの光弾に直撃して死ぬのかと覚悟を決め、もし、万に一つ願いが叶うのなら、もう1度皆に会いたかったな…。自分が無茶な行動をして、心配をかけてしまった美濃関の友人や家族の顔が浮かぶ。

ヴァルチャーの指がそのまま光子熱線銃の引鉄を奥に押し込もうとする姿を見て眼を瞑る。

 

(ごめん、皆……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウェブグレネード!」

 

 

「何!?」

 

「えっ」

 

「…」

 

「何だと!」

 

 

ヴァルチャーの真横からから変声期を迎え声変りしているがやや高めな声が響き、全員が声の方を向くと既にヴァルチャーの眼前に黒い球が飛んできており、可奈美を狙い打つのに全神経を集中していたヴァルチャーはそちらにまで注意が向かずワンテンポ遅れて反応すると黒い球体がヴァルチャーのウィングスーツの胸部の辺りに貼り着けられる。

 

「アーンパンチ!」

 

「ぐあっ!」

 

その直後飛んできた勢いを利用した赤と青のスーツの男に顔面を殴られ、鳥をモチーフにしたフルフェイスのヘルメットの半分が砕け、そのまま殴り飛ばされ地面に激突する。それと同時に黒い球体ウェブグレネードがタイミングを狙ったかのように赤い光が点滅し始め、四方八方にクモ糸が散乱し、車や地面、様々な方向に張り付けられ動きを封じられる。

 

「クソッタレが!」

 

 

「いよっしゃ!間に合った!やぁ、ビックバード!焼き鳥にされる前にケツ捲って大人しく巣に帰りな!」

 

 

『良くできました』

 

 

「す、スパイダーマンさん!?なんか前とスーツ違くないですか?」

 

 

可奈美の眼前に着地し、子供のようにガッツポーズを決め、軽口でヴァルチャーを挑発する赤と青のスーツの男スパイダーマン。

スパイダーマンにしか聞こえない声でAIカレンは誉める。

しかしその姿はこれまでのスーツとは形状が違う、手首の装置であるウェブシューターがリストバンド型と腕時計の形をしたものではなく黒いアームガード状へと変更され、スーツも体にフィットした姿になり体型がくっきりと出る物となり、肩には黒いライン、眼はただの布であったのが自動で視界を調整するシャッター機能、腰にウェブシューターのカートリッジを入れるホルスター等以前あったときとは違う姿に時間が経ち超音波の影響から解放された可奈美は気付いていた。

可奈美は岐阜での時のように自分を助けたスパイダーマンに驚いた反面、勿論感謝もしているがスーツの違いが気になっていた。

何とか可奈美の危機に間に合った事を内心ホッとするスパイダーマンだが、いつもの調子で3人に話しかける。

 

「ヤッホーお嬢さん達、お元気?ちょっと親切な足長おじさんから貰ってさ」

 

 

「標的参戦、任務続行」

 

 

「ふざけている場合か!状況を見ろ状況を!」

 

 

ヴァルチャーの方にも視線は配りつつふざけた口調でスタークからのプレゼントだとは流石に今は言えない為、お茶を濁すが沙耶香の剣を必死で受け止め、何とか押し返した姫和に怒られる。

 

「確かにピンチか…よし、僕があ」

 

「どいて、姫和ちゃん!私が相手する」

 

ほぼ復活した状態の可奈美が八相の構えをしながら沙耶香と姫和の間に割って入る。

スパイダーマンは恐らく可奈美が何をするのかを何となく察した為、沙耶香は可奈美に任せる事にしたその矢先羽根を飛ばしてクモ糸を切断したり、ヴァルチャー自体が高機動向けの装備でありながら格闘武装が極端に少ない事を懸念してか自衛用に無いよりマシか程度で持ってきていた御刀を格納スペースから取り出し、クモ糸を切り払ったヴァルチャーが起き上がり再度空中へ上がりスパイダーマンの方を向き欠けたヘルメットから見える顔から殺意の籠った視線を向けている。

 

「やりやがったな、クソガキが」

 

「あー…お嬢さん、そっちは頼むね。僕はこれからバードハンティングだからさ!」

 

「うん、任せて!」

 

ヴァルチャーのこれまで何人も殺して来たであろう真の殺戮者の顔になった視線に恐怖心を覚えたが今ヴァルチャーの敵対心は自分の方に向いている。なら、自分が相手をすべきだろう。

復活した可奈美の力を信用しているスパイダーマンは可奈美に沙耶香の相手を任せると、その信頼の心に応えるかのように可奈美が力強く返してくる。

そんな二人の様子を見て、二人がこんなに信頼し合っているのか不思議な様子で見つめる姫和。

そして、軽く肩を回した後にヴァルチャーに向けてクモ糸を放つスパイダーマン、これから乱入者も含めた第2ラウンドが始まる。

 

 

 

 

「さぁ、第2ラウンドだ!」

 




far from homeの予告が来てうはー!って感じでテンションが上がり、夏が楽しみになってきました。
MCUのフェーズ4の一作目という事で期待出来ますねぇ!まぁ、その前にアベ4で色々覚悟させられそうですがね……。
しかし予告公開早々ミステリオ自演説流れてるのは流石に草。
そしてやっぱMCU版のヒロインはまたしてもネッド君なんですかね。
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