刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任-   作:細切りポテト

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さぁ対決だ。

報告:2月11日、13~15話に多少変更を入れました。

余談:バースの予告見てマモのピーター少しクール過ぎるなぁ、まぁ年長者として雰囲気出すためかなぁ→新しい予告を見る→若干渋いけどいつも通りのピーターだったwwそしてマモのピーターもいいなwwwってなりました。


第15話 バードハンティング

「坊っちゃん、スパイダー野郎が来やがった。こうなりゃなりふり構ってらんねえ、危険な芽は先に摘んでやるぜ。最悪全員死体で構わねぇか?」

 

『お、おいトゥームス殺しはよせ!!生捕りにするんだ!不利なら撤退しても構わない!』

 

 

「チッ!つっても難しいぞ。まぁ善処すっけど五体満足かは期待すんなよ、そんじゃ切るぜ」

 

ヴァルチャーは上空に飛翔しつつ通信機能で捜査本部へと連絡を取る。

勿論スパイダーマンが参戦してきた事を連絡していた。

しかし、戦況は3対2であるため相手を生捕りにするのは不可能であると判断したヴァルチャーは最悪殺しても構わないか栄人に問いかける。勿論完全に職人としてのスイッチが入ったヴァルチャーは最初から殺る気マンマンだが。

当然ながら栄人は友人である可奈美を案じてかヴァルチャーには殺す必要は無い、生捕りにしろと必死に訴える。

が3人とも強敵であるためなるべく努力はするが無力化させるために五体満足で連れて帰れるかは期待するなと悪態をつきながら告げる。

 

しかし、通信を切ると同時に栄人は回収班を向かわせる手配を行っていた。

最悪ヴァルチャーを鎮圧して貰うためだ。自爆装置を押すのがベストだったが意外にも機械の扱いにも精通していた為取り外されてしまっていた。

 

 

 

一方、先程クモ糸を切断する為に御刀を使用し、格納スペースに仕舞う姿を見てヴァルチャーが御刀を使用している事に憤りを感じている姫和はヴァルチャーに問いかける。

 

「何故貴様のような者が、御刀を使っている!?」

 

 

「テメェの許可がいるのかよぉ、殺しの為の道具を殺しに使って何がワリィんだっての!戦場じゃあ利用できるもんは何でも利用すんだよ、洗脳したガキだろうがジェリコミサイルだろうがなぁ!」

 

 

「何だと!?」

 

姫和の問いかけに対し、スパイダーマンと戦闘をしているため視線をそちらには向けずに当然かのように答えるヴァルチャー。

頭のネジが外れているとは思っていたがここまでキッパリ言い切られると逆に清々しいまでに言ってのけられるが、そんな様子を気にすることなくヴァルチャーは持論を展開する。

 

 

「テメェらが使う御刀とやらも、この装備も、この国に住まう荒魂とかいうバケモン、言うなれば人々の生活に邪魔な敵をぶっ殺す為に使われてんだろ?今テメェらもそこの嬢ちゃんや俺という邪魔な敵をぶちのめす為に振るってるようになぁ・・・・テメェの御刀とやらもその為にあんだろうがぁ!」

 

 

「違う!私は・・・っ!」

 

 

「何が違うって?えぇ!?国家に刃向かうただのテロリストさんよぉ!」

 

この国に住む異形の怪物荒魂、その存在は人々を脅かし、生活を壊し、荒魂と人間達の戦いの歴史の中で多くの命が失われていてそれに対抗するのが御刀だ。

そして飛行型の荒魂を追撃し、後々には機動隊や警察にも配備されて戦闘機を撃ち落としたり、立て籠ったテロリストを殺すためにも使われていくのがヴァルチャーユニットだ。

 

言い替えれば自分達の邪魔をする者達を殺す為の道具である事もまた事実であり、ヴァルチャーは殺しの為の道具を殺しの為に使用して何が悪い?今自分達も沙耶香やヴァルチャーという自分達の目的を阻む敵を倒すために振るっている。それと何が違う?とまるで筋など通っていない屁理屈だが、国家に歯向かうテロリストだと正面から揶揄され、母親から受け継いだ小鳥丸を殺しの為の兵器だと吐き捨てられその上ヴァルチャーの威圧的で且つ人を小馬鹿にした態度に冷静さを保てない程怒りのボルテージが上がって来ている。

 

 

 

「姫和ちゃん!相手にしちゃダメ!ペースに飲まれるよ!」

 

 

「ならばお前にコイツらを斬る覚悟はあるのか!?甘い事を言ってるとお前が死ぬぞ!」

 

 

「斬らない!」

 

可奈美はヴァルチャーがわざと姫和を怒らせてペースを崩そうとしている事を何となく見抜き、相手にするなと告げる。

しかし、相手は自分達を容赦なく殺す気満々の危険な相手、そして任務遂行の為に自身の命を省みず例え写シを剥がされようと斬りかかってくる沙耶香。

斬らなければ自分がやられるこの状況で、このような敵を斬る覚悟はあるのかを問いかける。

しかし、可奈美の答えは「斬らない」という強い意思の籠った言葉だった。

 

「へえーおもしれぇガキだなテメェは、なんなら素手で闘り合おうってか?俺はどっちでも構わねえけどな!ハハハ!・・・おっと」

 

意図を全く理解していない、もとい出来ないヴァルチャーはツボにハマッたのか先程までスパイダーマンに向けて怒っていた感情や、二人を威圧していた時とは打って変わってからかうように笑い出す。

 

 

直後スパイダーマンが空中に向けて放つウェブをヴァルチャーは上体を反らす事で攻撃が当たる面積を少なくしながら横に回避し、姿勢を変えてすかさず光子熱戦銃で反撃をする。

 

(なんつー操縦テクだ!まともな射ち合いだと決め手にならないかも・・・・っ!)

 

(ちっ!さっきのガキの方が厄介だがこっちは遠距離攻撃もして来やがるから下手に隙を作るとこっちが的になるな・・・ったく、めんどくせぇ!)

 

そんなクモ糸と光弾が飛び交う状況の中相手の後ろには交戦中の3人だけでなく人が住んでいるマンションもあるためヴァルチャーの注意を自分に向けるためにいつもの軽口でおちょくり始めるスパイダーマン。

マンションの住民のほとんどが戦闘に怯えて籠りきりになっている為、尚更注意を引くべきだろう。

 

 

「Hey!ビッグバード!君のカラーにそぐわないけどハイテクなの持ってんね!どこで拾ったの?子供相手にそんなん持ち出して住宅地でぶっぱとか大人げないんじゃない?」

 

「別に黄色くねぇだろうがベラベラ喋りやがってこのオカマ野郎が!戦場じゃテロリストのガキを潰すために街を焼くなんざ日常茶飯事だっつーの!テロリストにはテロで立ち向かうってなぁ!」

 

 

「この俺がオカマだとぉ・・?ってそれコルテラル・ダメージのネタ?もしかしてシュワちゃん映画好き?気が合うかも!でもごめんね、僕コマンドー派なんだ!」

 

軽口でヴァルチャーを挑発しヴァルチャーの銃から放たれる光弾を回避しながら車の上に乗りそのままジャンプして高さを利用する為にマンション向けてクモ糸を放ち勢いを利用して飛び上がり空中でヴァルチャーにクモ糸を放つ。

しかし、ヴァルチャーも上空を高速移動しながら熱戦銃でクモ糸を的確に撃ち落としていく。

しかし、弾切れ寸前まで撃っていた為、銃からはエネルギー切れを伝える警告音と光が点滅していて残量は思っていたより少ない事に気付く。

 

 

(ちっ、試作品の弾数なんざこんなもんか・・・・おっ、いいこと思い付いたぜ)

 

 

ヴァルチャーは残弾が残り1発なのを把握した瞬間に真下の駐車場の様子を見てあることを思い付く。

 

先程可奈美の動きを封じる為に翼から放った超音波の巻き添えで車の大半が大破し、車体が潰れている為かガソリンが漏れ始めていることを確認した。

 

 

スパイダーマンがガソリンが漏れている車の位置の中心

に来るように誘導するように移動するヴァルチャー。

スパイダーマンもそのままヴァルチャーを追撃しようとする。

 

 

「行けよ!」

 

 

ヴァルチャーを追いかけてヴァルチャーに向けてクモ糸を放とうとするもののウィングスーツの翼についている可奈美に破壊されて計4体しかない羽根をスパイダーマンに向けて全て発射する。

 

「僕らが言うのも何だけど鳥が使うにしちゃ進歩し過ぎじゃない!?」

 

『追尾式の射撃武装です。ある程度は自動で追いかけて来るでしょう。ですが対象に突っ込む以外に機能は無さそうなので高速発射で撃ち落としましょう。』

 

「ビーム撃ってこないだけ良心的だね!それで行くか!」

 

 

「誰と話してやがんだ・・・」

 

ヴァルチャーの両翼の端から放たれた羽根の刃が空中でスパイダーマンの姿をロックし、変則的な動きで四方向にバラけながらスパイダーマンに襲いかかる。

一方ヴァルチャーはスパイダーマンは一人でベラベラと喋る奴だとは思っていたが今のはまるで誰かと会話をしているように見える為、妙な違和感を覚え、困惑する。

 

こちらに向けて飛んでくるヴァルチャーの羽根をカレンがスキャンして分析すると即座に自動で追尾してくる刃のついた羽根をスパイダーセンスで感じ取ったスパイダーマンは落下しながらスパイダーセンスで自身を狙う位置を予測してウェブシューターの高速発射のモード「ラピッド・ファイア」に切り替えて飛んでくる羽根に向けて両腕を交差して左右からの飛んでくる2本の羽根に当てて撃ち落とす。

 

(よっしゃ!2本落とした・・・・ってそっちからも来るのか、ならこれも試すか出力強め、スタークさんの猿真似だけど!)

 

「ショック・ブラスター!」

 

 

真下と頭上に来ていた残りの2本は直撃する寸前にウェブシューターのモードを音波のパルスの衝撃波を飛ばすモードの「ショック・ブラスター」に切り替え、スタークがアイアンマンで空中を飛行する時にリパルサーの推進力を利用している事を参考にし、真横に向けて出力を強めに発射してその放たれた衝撃波を推進力にして空中でほんの少し移動する。

するとヴァルチャーの2本の羽根は当たる瞬間のギリギリでスパイダーマンに回避された事によりお互いに衝突して大破する。

 

しかし迎撃に徹していた為、高度も車の少し上程まで来ており見事にヴァルチャーが誘い込もうとしていたポイントに着地する位置に来てしまっていた。 

そしてスパイダーマン落下して地上に着地しようとするタイミングを狙い、車に向けて光弾を放つ。

 

「あばよ、マヌケ」

 

 

「何言ってんのー?全然明後日の方向ですけどー?」

 

 

『地上の車の数々からガソリンが漏れ出しています。このまま落下すると中心位置に落ちて引火、爆発に包まれるでしょう』

 

 

「はぁ!?マジ!?それ先に言ってよ!」

 

 

スパイダーマンが着地したと同時に光弾が車に直撃し、車が連鎖爆発を起こし、炎でダメージを与えつつ酸素と視界を奪ってから接近戦に持ち込む算段だとAIカレンの分析から判断したスパイダーマンはやむを得ず一番手頃な駐車場の街灯に向けてクモ糸を放ち吸着すると強くなった引っ張り強度の反動を利用して、腕を後ろに引っ張ることで反動を付けて移動する。

 

ヴァルチャーの放った光弾が半壊した車に直撃し、引火する事で爆発し、カレンの分析通り着地予定だった位置が数々の車の爆発により火の海になり、ギリギリ直撃は避けられたものの爆風により吹き飛ばされ空中では受け身を取ることが出来ずそのまま街灯に激突する。

 

「うおぁっ!」

 

「「!?」」

 

「・・・・」

 

超音波の影響からある程度回復したがまだ本調子ではないのか未だ交戦していた可奈美と沙耶香、姫和の3人も連鎖爆発を起こした車の爆風と轟音と火の海になっている駐車場に驚き一瞬戦闘を止めたが、すぐに沙耶香は気にする様子もなく斬りかかってくる。

一瞬反応が遅れたが横凪ぎに千鳥を振ってその剣戟を弾く。

 

ヴァルチャーの狙いとしては車の爆発でダメージを与える事であったがその前に気付いたとしてもどこかに避難する必要があるためその瞬間に隙ができる事を狙い、その瞬間を見逃さずに格納スペースから無いよりはマシ、武器が全て無くなっても良いように念のため見張りの刀使から無理矢理拝借した御刀を取り出し正眼に構え、突きの構えを取りウィングスーツの背部エンジンを最大まで蒸かしながら高速で一直線にスパイダーマンに突っ込む

 

「ゲホッゲホッ!あっぶな!あいつより先にフライドチキンになるとこだった・・・・」

 

『二酸化炭素を一気に吸い込んだ影響で少し息苦しいかもですが、耐熱機能により思ったより熱によるダメージは少ないようです』

 

車の爆発に吹き飛ばされ、連鎖爆発により酸素を奪われ、二酸化炭素を吸い込んだ事により息苦しさにより街灯に激突した後も咳き込んでいた。しかし、スタークが作成したスーツの耐熱機能により思ったより熱によるダメージは少ない事を内心感謝していた。

その矢先、スパイダーセンスで危険を感じ取り、上空からエンジンで加速しながらヴァルチャーが繰り出して来た突きを横に転がる事により紙一重で回避し、スパイダーマンが先程いた位置をヴァルチャーが通り過ぎる。

 

「逝っちまいな!」

 

「おっと!」

 

回避と同時にどさくさに紛れてヴァルチャーの背中に向けてクモ糸を射出して当てる事に成功するがそのまま

一気に上空へと加速して飛翔すると踏ん張る間もなく糸を掴んでいたスパイダーマンも空中へと引っ張られる。

 

だがその途中で、片手で間近の街灯を掴むと街灯を掴む腕力とヴァルチャーのウィングスーツの引っ張る力が拮抗し、両者からの力により街灯が曲がり、形を変えるほど変形し、今にも折れそうになる。

 

「ぐっ!」

 

ヴァルチャーも飛翔している途中で突然強い力に引っ張られ空中で動きが止まり、驚く。

背中に着いたクモ糸が引っ張られた事により引っ張り強度が強くなり尚且つ片腕でとはいえスパイダーマンの怪力に掴まれているせいでこれ以上は前に前進することが困難になっていた。

しかし、ヴァルチャーが空中で身体を力強く回転させるとスパイダーマンが掴んでいた街灯のアームが折れる。

 

「嘘!?折れた!・・・ってうわあああああ!」

 

街灯が折れ、拮抗していた力から解放されたヴァルチャーはさらに上空へ、マンションの屋上のヘリポートの付近まで引き上げられ、反動で折れた街灯も手から滑り落ち地面に落ちる。

空中で糸を掴みながらも高速で飛び回るヴァルチャーの動きに振り回され、マンションの壁に叩きつけられ、衝撃による痛みを感じたがそんな暇も与えず身体を引き摺られるスパイダーマン。

ヴァルチャーはそのまま高速で飛び回りながらスパイダーマンを引摺り回し、叩き付けて体力を奪うつもりだ。

更にマンションの周りを飛びながらスパイダーマンの身体を引摺り回すヴァルチャー。

 

 

「うあっ!いった!」

 

「ハハハ!そのままじわじわ痛ぶってやるぜクソ野郎が!」

 

しかし、糸を離したとしても着地と同時にまたヴァルチャーから追撃を受けるだけだと考えているスパイダーマン。

そこで1つある機能を思い出したスパイダーマン。

 

 

-先日、スタークインダストリーズのトレーニングルームでスーツの機能をおさらいしていた際にあるウェブには威力の調整が入っているという事をカレンに説明されていた事を思い出した-

 

『他にもあなたが以前に作成していたウェブのモードにも調整が加えられています。例えばテーザー・ウェブ(電気ショックウェブ)を放っても充電は減らず、威力も上がっています』

 

「ふーん、それで威力ってどんなもんなの?」

 

『恐らく、通常の威力では生身の人間、機動隊までなら失神させる程で、最大出力で撃てば特殊なパワードスーツを着ている相手にもスーツの上からでもダメージを与えられるしょう』

 

「何それこっわ!出来ればあんまし撃ちたくないなぁ・・・」

 

この時、カレンから電気ショックウェブの威力に大幅なアップデートが加えられていた事を伝えられ一歩間違え無くても凶悪なウェブだと伝えられ、使用は極力控えたかったスパイダーマンだがこのままではジリ貧だと考えたスパイダーマンはやむを得ず使用する事にした。

引き摺られながら左手をウェブシューターのスイッチにかけ、スーツのマスクの視界から見えるHUD(ヘッドアップディスプレイ)に接続し、ウェブのモードを切り替える。

 

「あのさぁ!今止まれば痛い目見なくて済むかもよ、早く地上に降りなよ!これでも親切心で言ってるんだけど!」

 

「その手に乗るかよバーカwwwテメェはこのままくたばりな!」

 

「あっそ!じゃあどうなっても知らないよ・・・・くらえ!電気ショックウェブ!」

 

スパイダーマンの警告を無視するヴァルチャーに対し、どうやら遠慮はいらないと判断したスパイダーマンは電気ショックウェブのスイッチを押す。

するとスパイダーマンが掴んでいる糸から眼で視認できる程の蒼白い電流がヴァルチャーに向けて流れ始め、ヴァルチャーのウィングスーツに到達するとヴァルチャーの全身にスパイダーマンのスーツから流れる高圧電流による電気ショックが伝わり、全身の細胞が焼き切れるかのような激痛が走る。

 

「ぐあああああああああ!」

 

「人の話はちゃんと聞こうね、お馬鹿さん!」

 

屋上のヘリポートまで来た所でヴァルチャーの飛行速度が減速し、スパイダーマンは安全に飛び降りてヘリポートに着地し、飛び乗る前にウェブの機能の複数の方向に裂けるウェブ、スプリットを作動させヴァルチャーのスーツの節々に張り付け、屋上のヘリポートに固定した。ヴァルチャーは気絶はしなかったもののかなりのダメージを受けたのか空中で痛みに耐え、もがいている。

今が反撃のチャンスだ。

 

スパイダーマンは両腕からクモ糸をヴァルチャーの両翼に飛ばし糸がしっかりと吸着するのを確認すると身体を後ろの方へと思い切り踏ん張り、反動を付けて足を離すとそのまま勢いに乗ってヴァルチャーの腹に向けてドロップキックを入れる。

 

「でやぁ!」

 

 

「ぐおっ!」

 

 

蹴られた衝撃でヴァルチャーが後方へと飛ばされ、ヴァルチャーを固定していた糸が千切れていく。

そのままスパイダーマンはヴァルチャーの肩に手を置きジャンプで頭上を越えてウィングスーツの背後に飛び乗る。

 

「飛べねえ禿鷹はただのハゲだ・・・・まぁ別にハゲて無いっぽいけど!」

 

 

「テメェ、まさか!?」

 

ウィングスーツの上に乗ったままいつもの変声期を向かえた声で出せる最大限野太い声でジョークをかました後に、ヴァルチャーは次にスパイダーマンが何をする気なのかに薄々勘づく。

次の瞬間、ウィングスーツのエンジンの部分に狙いを定める拳を大きく振りかぶり、力任せに降り下ろす。

 

「させっかよ!」

 

かなり全力で殴ったがヴァルチャーが再度空中で身体を捻って振り落とそうと揺らしてきた為か狙いが逸れ、エンジンの少し上の部分を殴ることによりエンジンの半分が潰れた程度で完全に破壊は出来なかった。

 

しかし、飛行が前よりも自由が効かなくって来ているようであるため再度背後を攻撃する。

エンジンを無理矢理蒸かし、高速で上空を移動し揺らしながら振り落とそうとしてくるヴァルチャー、しかしスパイダーマンは自身の壁などに引っ付く能力を利用し、ウィングスーツに張り付いて振り落とされ無いように踏ん張っている。

 

(左の翼が右よりは器用に動かせてない。なら、もう片方もこうすれば!)

 

振り回されながらスパイダーマンはヴァルチャーのウィングスーツの翼の動きに違和感を覚えた。

そして可奈美の八幡力を使用した一撃によりダメージを受けて右よりは自由に動かせなくなっている左翼を確認すると右足を上げ、しっかりと背中に吸着したまま右の翼を踏みつけるように何度も蹴るスパイダーマン。

 

「墜ちろ!カトンボ!」

 

「テメェが虫呼ばわりすんじゃねえ!クモ野郎が!」

 

「悪いね!蜘蛛って厳密に言えば虫じゃなくてクモ目だよ!」

 

 

何度か力強く蹴りを入れた事でスーツから蒼白い火花が散り始めた、その直後に右翼が潰れ、姿勢が安定しなくなったヴァルチャーは空中を錐揉みしながら地上へ落下していく。

 

「テメェ!」

 

 

(このままだと相手の方は転落死しかねない・・・っ!僕は決めたんだ、人に化けた荒魂以外は討たないって!だからこんな奴でも助けるさ、助けりゃいんだろこんちくしょーめ!)

 

半ばヤケクソになりながら、自身の中で人に化けた荒魂以外は討たない。そう決めていたスパイダーマン。

例え、相手が傭兵で女であろうが子供であろうが容赦なく殺すことが出来る危険な相手だとしても助けられるかも知れない命を放っておく事が出来なかったスパイダーマンはそんな優柔不断な自分に対してヤケクソになりながら落下していくヴァルチャーの落ちていく位置を確認し、そちらに向けてウェブグレネードを投げつけるとウェブグレネードがウィングスーツに吸着し、ヴァルチャーはそのまま落下しながら駐車場の少し後ろの木が生えている庭へと墜落する。

 

その途中でスパイダーマンが付けたウェブグレネードが炸裂し四方八方に飛び散って木々に吸着し、衝撃を大方軽減する事が出来たものの重力と落下速度に耐えきれず糸が千切れて、木々の下に背中から落下する。

背中から落下したもののウェブグレネードにより勢いを軽減された事により背中を強打した以外のダメージが無い事に驚くヴァルチャー。

 

(何考えてやがんだあのガキは・・・・傭兵である俺をナメてやがんのか?敵に情けをかけられるなんざぁ傭兵にとっちゃ最大の屈辱だぞクソッタレが!)

 

 

ヴァルチャーは今ここで息の根を止めないと何度でも自分達に危害を加えるであろう自分を見捨てず生かしたスパイダーマンに対し、感謝の気持ちなど一ミリも沸かない。

空軍を追い出され今日まで傭兵として金のために多くの兵士、民間人、テロリスト、中には上空から町1つを焼け野原にしてきた自分からすれば敵から施しを受けるなどこれ以上ない程の侮辱だ。

傭兵としての最大のプライドを傷付けられたと言っても過言ではないスパイダーマンの行為に対し、商売を邪魔された時以上に苛立ちを隠せなくなっていくヴァルチャー。

 

ウィングスーツからも蒼白い火花が飛び散り始めており、装備の損壊率も90%以上を越え、右の翼も大破し、もう既に数メートル浮いて飛ぶのが精一杯な程であるがスパイダーマンに対する殺意だけでまだ立ち上り拝借してきた御刀をまたしも拾い上げ、再度狙いを定め始める。

 

「野郎・・・・っ!よくも俺をナメ腐りやがったな」

 

『トゥームス! もうスーツを棄て撤退しろ!下手にそれ以上無理に動かすとウィングスーツが爆発する!』

 

「へぇーそいつぁ良いこと聞いたぁ・・・・悪いな坊っちゃん、このまま手ぶらじゃ帰れねぇ。ヴァルチャーぶっ壊しちまうかもだがターゲット共にダメージは与えっから許してチョンマゲ」

 

『何をする気だ!?バカな真似はよせ!』

 

怒りで冷静さを失っているヴァルチャーであったが、捜査本部の通信から栄人から通信が入る。

機体にかなりのダメージが蓄積していた為かスーツの損壊率が思っていた以上に酷く、蒼白い火花が飛び散っている事からこれ以上下手に動かし過ぎるとウィングスーツが爆発する旨を栄人から伝えられすぐにスーツを解除するように伝えられるがスーツが爆発するという発言を聞き、一旦冷静になりひとつ思い付いた事があり、スパイダーマンに殴られた事により半分が欠けたヘルメットから覗く顔が不気味に歪んでいく。

そして、ヴァルチャーのウィングスーツをパージして庭の中に隠れる。

 

 

一方、マンションの壁にクモ糸を飛ばし、スウィングしながら着地するスパイダーマン。

 

「こっちは大体オッケー!そんじゃあ、やっちまえ!」

 

ヴァルチャーがウェブグレネードで衝撃を吸収して不時着した姿を確認し、再度追撃が来ないかを警戒して構えるスパイダーマン。

 

スパイダーマンとヴァルチャーが上空で戦闘をしている間も交戦は続いていたようだが回復してきた可奈美が沙耶香の太刀筋にも慣れ始め、 無念無想の影響で動きが単調化してきた動きを読み容易くいなし始める。

 

(この娘の剣、前はこんなんじゃ無かった。剣から何も伝わって来ない)

 

無念無想により迅移を発動させながら突きを繰り出して来る沙耶香。だが、単調になっている今の動きでは可奈美を捉える事など出来ない。

そして、突きを身を低くして回避し可奈美は自身の気持ちを魂に乗せて叫ぶ。

 

「そんな魂の籠ってない剣じゃ何も斬れない!」

 

繰り出した突きを姿勢を低くして回避し、その間に潜り込んで沙耶香の御刀、妙法村正の柄を掴んで奪い取り、後方へ投げる。

言葉通り沙耶香を見事に斬らずに無力化したその姿にその場の全員が脱帽していた。

沙耶香も御刀を投げられた為、戦意も喪失し、可奈美を見上げている。

 

「覚えてる?1回戦で戦った衛藤可奈美。あの試合すっごく楽しかった!沙耶香ちゃんの技、ずっとドキドキしっぱなしだったんだよ!また、いつか私と試合してくれない?」

 

 

「約束!」

 

先程まで命のやり取りをしたいたとは思えないほど爽やかに、そしてフレンドリーに手を差し伸べながら友好的に接する可奈美。

直後に手を取られ、戸惑っている沙耶香。

両者の間にスポーツの試合の後のような和やかな空気が流れている。

 

 

「ところがぎっちょん!」

 

すると唐突に男の声がその和やかな時間を崩壊させる。

マンションの庭の木の陰に隠れながらヴァルチャーの遠隔操作のスイッチを押すトゥームス。

 

スイッチを押すと四人の背後から蒼白い火花を飛び散らせながらダメージが蓄積し、既に大破しているヴァルチャーのウィングスーツが独りでに動き出し四人に向けて直進してくる。

 

「 Addio (アッディーオ)、ガキども!纏めて御陀仏!鎌府の嬢ちゃんは避難しな!・・・おっと壊れちまったか」

 

すると隠れていた木の陰から出てきたトゥームスがヴァルチャーの遠隔操作スイッチを操作しながら逃げる旨を伝えて走り去ろうとする。

すると同時に遠隔操作スイッチが壊れ、ヴァルチャーのウィングスーツは更なる暴走を始める。

 

かなりスピードはあるが先程よりはスピードは落ちている為、回避は可能だろうと判断できるがこちらに近付くたびにあらゆる箇所から炎が飛び出している。

 

スパイダーマンは飛んでくるヴァルチャーのウィングスーツを視認した直後にスパイダーセンスが発動し、ただ回避できれば良いだけではないと感じ取った。

それと同時にカレンがヴァルチャーのウィングスーツをスキャンして分析を始める。

 

『蓄積していたダメージがスーツの耐久力の限界を超え、ウィングスーツの爆発まで残り1分。尚且つ遠隔操作スイッチが破損した事により暴走。このままだと所構わず飛び回り、爆発してマンションに被害を及ぼすでしょう』

 

「マジそれ超最悪!僕らが避けれても後ろのマンションに突っ込んで爆発って事!?」

 

「何だと!?」

 

「どうするの!?スパイダーマンさん!」

 

カレンの分析により、仮に自分達が回避できても暴走したウィングスーツがマンションに突っ込んで爆発すれば大惨事所では無くなると判断したスパイダーマン。

ヴァルチャーの狙いとしてはもし仮にウィングスーツを止めずに回避した場合後ろのマンションの住人に被害が出る。ならばそれを止めるためにこの爆発寸前のウィングスーツを止めるために躍起なるだろう。

少なくともスパイダーマンは確実に止めに来る。

鼬の最後っ屁のような悪足掻きだが、これ以上に無いほどの卑劣な嫌がらせだ。

 

その発言に驚き耳を疑う3人。

写シを貼ったまま斬ればいつもなら問題ないが全員苛烈な戦闘による疲労によりもう既に残り一回分も貼れない状態だ。

可奈美にどうするのか聞かれたスパイダーマンは1つ方法を思い付いた。

 

 

 

「被害が極力少なくなるように上空で爆発させるとかかな・・・」

 

「だが、どうやって上空まで運ぶ!?」

 

「僕がアイツに取り付いて上空まで移動させてその後飛び降りるとかかね」

 

「だ、大丈夫なの?」

 

 

「し、しししし心配するな!俺がついてる!」

 

 

「一人称、ブレてる」

 

 

「でもやるっきゃない!僕を信じろ!ほらこっちだ暴走特急!」

 

 

思い付いたはいいが、上空まで運ぶ方法が思い付かない為、姫和に力強く質問されるとスパイダーマンは自身がウィングスーツに取り付いて上空まで運ぶ案を出す。

直後に可奈美に大丈夫なのか心配される。

勿論不安が無い訳ではなくむしろ不安しかないが安心させる為に精一杯虚勢を張るものの噛んでいる上に声も震えて上擦っており、一人称も普段の僕から俺にブレている程動揺している素振りを隠しきれていない。

勿論沙耶香には冷静に一人称がブレている事を冷静に突っ込まれるが、その事で少し落ち着いたスパイダーマンは自身に向けて突っ込んで来るヴァルチャーのウィングスーツをジャンプする事でかわし、ウィングスーツの真上で両手を構えてクモ糸を発射して吸着させウィングスーツの上に着地するスパイダーマン。

 

「どうどう!なんて言っても聞かないんだろうなぁこの暴れ馬は!どっちかっていうと鳥だけど!」

 

「こんな時でもふざけるのかお前は!一歩間違えばお前が死ぬぞ!」

 

「大丈夫大丈夫!知ってた?蜘蛛って意外と頑丈なんだよ!イヤッホオオオオ!」

 

 

左右に両手にクモ糸を手綱のように持ち、クモ糸を自身の方へと引っ張る事でウィングスーツは方向を変え、先程の位置から垂直に上空へと飛翔していく。

地上からぐんぐんと離れていき、こちらを見上げる3人の姿が徐々に小さくなっていく姿を見て、先程は姫和の前で強がっていたが実際にやってみるとかなり恐ろしく、軽く泣き言を言いながらも上昇を続けるスパイダーマン。

 

 

「ひぇー!こんな状況じゃ無かったらマジ最高なんだけど今は状況が状況だから超最悪!」

 

『爆発まで後30秒』

 

「もうちょい早く飛べないのかよこのポンコツ!」

 

累の住む高層マンションの中間辺りを過ぎるとカレンが爆発までの時間を知らせてくれるが今のスパイダーマンにとっては死への秒読みに近いため、本当に心臓に悪い。

 

上昇は更に進み、マンションの屋上のヘリポート付近まで来る。

 

『爆発まで残り15秒』

 

「よし!もうちょいだ!一気に上がれ!」

 

取り敢えず残り10秒以内にマンションの屋上を通過出来た事に多少希望が湧くが更に上空に行かないと安心出来ないため気を抜かずに更に上昇する。

 

『爆発まで残り5秒』

 

マンションの屋上のヘリポートからも更に離れ、ここならば被害は少ないと判断したスパイダーマンは糸から手を離し、ヴァルチャーのウィングスーツを強く蹴り、反動を着けて距離を離そうとする。

そして、スパイダーマンがウィングスーツから離れた直後。限界を迎えたウィングスーツが上空で爆発する。

 

 

「カレン!パラシュートよろしく!」

 

『了解、パラシュート展開』

 

爆風に押されて更に降下しながらカレンに指示を出す。マンションの屋上よりもかなり高い位置から落下していき、掴まる場所も無い為、上空で背中のクモのマークが点滅し始めてパラシュートが出てきて開き、ゆったりと地上に降下していく。

 

そして、スパイダーマンは何事も無かったかのように着地し、パラシュートを切り離す。切り離されたパラシュートは風に流され燃えている車の所に飛んでいき焼かれて灰になる。

 

「これで全員無事かな?」

 

 

「本当にやってのけたのか?・・・・お前は」

 

「超ヒヤヒヤしたけどね!命懸けじゃなかったらそこそこ最高だったけど!あー・・・ていうかそろそろここからズラから無いと警察やら管理局が嗅ぎ付けるかも」

 

スパイダーマンは全員に向き直り、いつもの軽い口調で無事を確認する。

姫和はスパイダーマンが誰も傷付けずに惨劇を回避した手腕を見て、やはり本当に人間なのか、そして明らかに性能が桁外れなスーツを新調している事に疑念はあるが内心では怪我人がおらずら自身も誰も斬らずにすんだことにホッとしていた。

 

「そうだね。そろそろ行こう。累さーん!もう出てきて大丈夫ですよー」

 

「あー怖かったー・・・何度かもう死ぬかもって思ったよー。ほんとありがとね、スパイダーマン!」

 

「あなたの親愛なる隣人スパイダーマンとしてやるべき事をやっただけです、それに皆がいたから勝てたんですよ!」

 

スパイダーマンのそろそろ移動した方が良いという提案に賛成した可奈美は隠れていた累を呼び、マンションから出てくる。

あれだけ光弾が飛び交い、車が爆発して火の海になるような光景が繰り広げられたのだから一歩間違えばトラウマになりかねない光景に驚いていたようだが事態を納めてくれたスパイダーマンに感謝する累。

 

「あ、あの・・・・ごめんなさい。私達のせいで」

 

「あーいいよ気にしなくて。君は命令されただけだろ?一番必要以上にハチャメチャにやらかしたのはあのビッグバードだし。あの野郎今度会ったらフライドチキンにしてやるからなべらぼうめ!それに、君は僕に何もしてないだろ?誰も怪我してないしさ」

 

「だから、大丈夫。なっ!」

 

沙耶香が自身の救援に来たヴァルチャーが必要以上にハチャメチャに暴れ回り、尚且つ尻拭いまでさせてしまった事を謝罪する。

しかし、スパイダーマンとしては別段沙耶香に何かされた訳ではない上に、何よりヴァルチャーに散々引っ掻き回された事に頭に来ていた為、沙耶香の緊張を解すためにふざけた声色でジョークを言いつつサムズアップする事で多少空気が和むがその直後

 

 

 

 

 

「いてっ!」

 

上空から処理するのを忘れていたヴァルチャーのウィングスーツの残骸の一部がスパイダーマンの脳天に直撃する。

完全に気が緩んでいた為、スパイダーセンスが発動しても反応に遅れてしまい、頭上から来た残骸に気付かずに脳天にクリーンヒットし、横に倒れるスパイダーマン。

せっかくヴァルチャーを撃退し、怪我人を出さずにウィングスーツを破壊した大立ち回りを見せた直後に処理し忘れたウィングスーツの残骸が頭に直撃して倒れるという非常にしまらない姿に姫和は困惑。可奈美、累は苦笑い。沙耶香は無表情で見つめていた。

 

「せっかくちゃんと決めたのに何でこうなるのおおお!?」

 

『私は知りません』

 

 

 

 

 




ブラックパンサーとIWとバースがアカデミー賞にノミネートされましたね。
ブラパンの民族風の音楽やら世界観やらとても素晴らしい映画だったと思います。なにより外せないのはヴィラン、キルモンガーの存在でしょう。
私個人としてはMCUのヴィランでは一番キルモンガーが好きなヴィランなった程素晴らしい悪役だったと思います。次点はヴァルチャーとウィンター・ソルジャーですかね。
そして、公式Twitterでヴェノムとデップーがアカデミー賞逃したことについて言及してたのは草生えましたww


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