刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任- 作:細切りポテト
やっぱこの人がいないとね、今回は短めです。
局長室に呼び出され、入室した栄人。
一人が作業をするには広すぎる程のスペースの部屋には先日可奈美達が匿われていた累のマンションに自身の生徒の沙耶香をけしかけ襲撃させた件で栄人同様に紫に呼び出された雪那とその雪那を呼びに行ったと思われる夜見、そしてこちらに背を向け何故か窓の方を向いて遠くを見つめる刀剣類管理局局長、紫の姿だ。
「鎌府学長、そして針井」
「「はい・・」」
凍てつくのような冷やかなで無機質な声色を前に蛇に睨まれた蛙のように萎縮し、返事をする両者。
紫はその様子を気にも止めずに淡々と続ける。
「追撃を許可した覚えは無い」
「は、反逆者の所在を特定したのでお手を煩せるまでもないかと独自の判断で・・・・」
「私も、本部の会話を盗聴していたトゥームスが独断専行したのを止められず、許可を出してしまいました」
紫は逃走中の彼等を追撃する許可は出していない為、二人にその事を追求し始める。
雪那は所在を特定した為、紫の手を煩せるまでもなく彼等を捕獲しようと独断専行を行った事を説明し、栄人は
トゥームスの暴走を止められず口車に乗せられ、許可を出した事を伝える。
同時に紫は急速に振り返り、鋭い視線で両者を一瞥する。
「勝手な真似は許さん」
「申し開きもございません。私がトゥームスの暴走を止められなかったばかりか奴の口車に乗せられ、彼等を早めに捕獲しようとトゥームスを行かせたばかりにこのような事態になり、局長に多大なご迷惑をおかけしました。如何なる厳罰をも受ける所存です」
「ですが私は許せないのです、紫様に楯突く逆臣が手の届く場所でのうのうとしている事にっ!何故私にお任せくださらないのです!」
「高津学長、お言葉が過ぎます」
「貴様・・・っ!」
射抜くような声色で告げられ、素直に謝罪をする栄人と見苦しく彼等が近くに潜伏しているのに何もしない現状に我慢出来ずにいて、何故自分に任せてくれないのかと出しゃばった態度を示すが夜見に諌められ、不機嫌そうに睨み返す。
隣で見ていた栄人は今の発言に関しては夜見の方が正しいと思うのに自分の学校の卒業生である夜見にここまで辛辣に怒る必要があるのだろうか。
確かに短気で独善的な人物だとここ数日で実感し正直あまり好きなタイプの人間では無いと感じていたが、確かに立場が下の相手に横から正論を突っつかれたら上の立場の雪那からしたらおもしろく無いのかも知れないが、いくらなんでもひどいのでは無いかと疑問に思ったが口には出さないようにした。
「雪那」
「は、はい!」
「貴様はまず、やるべき事をやれ。もういい、下がれ」
そう言って雪那を下がらせる紫。大人しく退室しようとする雪那はしおらしくなっていたが夜見の隣を通り過ぎる際に不機嫌そうに睨み付けながら退室する。
雪那が退室したのを確認すると今度は栄人に話を始める。
「先日のトゥームスの暴走の件だが、こちらで色々と手回しをしておいた。ヴァルチャーの存在は世間には公表はされていない。だが以降は気を付けろ隠蔽にも限度と言うものがある。箝口令を敷いた上で十条姫和と衛藤可奈美は世間的に知られていないため奴等を捕まえても騒ぎにはならないがスパイダーマンは別だ。奴には良くも悪くも知名度がある。奴が消えた途端世間が騒ぎ出し、こちらを怪しむ者達が現れる可能性があるため奴に先日のヴァルチャーの罪状を被せ、奴が捕まえられても文句の言えない人物だと印象操作出来るようマスコミに売り込んでおいた。奴の世間での評価は元より賛否両論。否の者達の方に傾ける事が出きるはずだ」
「はい・・・・」
箝口令を敷いているためか可奈美と姫和が捕まった所で世間で騒ぎは起こらないが知名度があるスパイダーマンが捕まって突如世間から消えればこちらの方に疑いを持つ者が現れる可能性がある事を考慮し、先日のトゥームスがヴァルチャーを装備して起こした騒動をスパイダーマンに擦り付け印象操作をする事にした事を伝える。
その鮮やかな手腕には脱帽する程であり、感心するしか
ない栄人。
反面確かにスパイダーマンは反逆者の一味であり、自分達が捕まえなくてはならない相手で彼相手には辟易しているがこちらの失敗を押し付けること、少なくとも死人が出る前に何とか手を打ってくれた事に関しては感謝しているため、それは違うのではないかと思ったが自分の立場では口出しが出来ないため、黙っていることしかできなかった。
「トゥームスの処分だが、奴を解雇はしない。一応曲がりなりにも奴はヴァルチャーの戦闘データの更新に大きく貢献している。それに・・・奴には後々やってもらいたいこともある」
「よって、トゥームスは24時間厳戒体制での監視の上、出撃命令が出るまで絶対に外には出すな。そしてヴァルチャー破壊の件の賠償金、奴が破壊した駐車場の車の被害額を奴に支払わせろ」
「かしこまりました」
「奴が使用していた機体は修復不可能な程だが、マークⅡの最終調整はどうなっている?」
「ヴァルチャーマークⅡの最終調整には後3日ほどかかるかと」
「急がせろ」
「かしこまりました」
ついに紫は暴走したトゥームスへの処分を下す。
結論としてはまだ解雇はしないとの事だ。
性格に致命的に大きな問題があるとはいえ操縦技術に関しては申し分無いという点と、唯一無事であったヴァルチャーのヘルメットに搭載されている学習装置の更新に大きく貢献している為実力は問題ないと判断したようだ。
しかし、やはり何をするかは安心できないため引き続き厳戒体制下での監視は続ける事になりトゥームスが出した被害額はトゥームス負担で支払わせる事になった。
元より減給を覚悟して行動していたためある程度は従うだろう。
トゥームスに支給していたヴァルチャーはデモンストレーション用の機体であり、最終調整の進捗を紫が尋ねると栄人は調整は未だに終わっていない事を伝えると紫は間髪入れずに調整を済ませるように命じる。
「所で他の新装備の適合者はどうなっている?」
「はい、トゥームスの後に『ショッカー』と『ライノ』の適合者を我が社のAIが割り出しました。交渉は既に済ませておりいつでも出撃できるようにしてあります」
続けて紫は自身も開発に携わっている新装備の新しい適合者の雇用状況を確認する為に尋ねると栄人は急いで端末を取り出し、現在新装備であるSTT機動隊向けの対荒魂用戦闘装備ショッカーと地上戦では最高クラスのパワーと耐久力を誇る、S装備をベースとしたライノという装備の適合者と交渉を済ませた事を伝える。
「では・・・『グリーンゴブリン』はどうなっている?」
「既にグライダーは完成したそうです。ですがスーツの方はまだ時間がかかるそうです」
「そうか」
紫は新装備組の雇用状況を確認した後、最も新しく未だに完成していない、どの装備よりも限られた人間しにしか装備できないグリーンゴブリンという針井グループが心血を注いだ空中戦にも地上戦にも適応できる万能型装備の開発状況を尋ねるが、グリーンゴブリン専用の飛行用の装備であるグライダーは完成したがスーツの完成はまだかかる事を説明する。
そして、栄人は寿々花に報告するように言われていた事を思いだし、口火を切る。
「それと1つ報告が」
「何だ?」
「トゥームスの証言によると戦闘した際にスパイダーマンのスーツが変わっていたそうです。何より我々の新装備にも比肩する性能だったとか。恐らく彼等は舞草と合流を既にしたのかも知れません」
「了解した・・・・・夜見、真希と寿々花とともに出撃する準備を。針井、ショッカーとライノの適合者に準備をさせろ。ただしライノのスーツは夜戦には向かない。夜中に出撃はさせるな」
「「かしこまりました」」
先日スパイダーマンと戦闘をしたトゥームスの証言を元にスーツが既に変わっていた事、既に舞草と接触した可能性を伝えると紫は冷静に淡々と夜見と栄人に出撃の準備を行うように命じる。
その命令に対して声を合わせて了解した旨を伝えて退室二人。
誰もいなくなった局長室で窓の外を見つめながら、誰に話すわけでも無く一人で話し始める紫。
「確かに頭のネジは外れているが、訓練がある程度必要な上に飛行能力と機動性以外に突出した点が無いヴァルチャーを初見でここまで動かせるとはな。中々に人間離れしている」
紫はトゥームスがヴァルチャーを試験飛行もロクにせず、思ったよりは善戦しスーツの戦闘データの更新に貢献した手腕を誉めている。最も、誉めているのは操縦技術のみで人間性に至っては一ミリも評価していないが。
「スパイダーマン・・正体は分からぬが恐らく貴様も我等と同様の存在、または我等の研究の副産物か・・・だが人に味方した程度で、愚かな群衆に祭り上げられいい気になっている貴様なぞに我は負けぬぞ」
今も遠くへ逃亡しているスパイダーマンに向けて呟く紫。
スパイダーマンの正体は未だに分からないが会場で対面した時から同族のような、不思議と他人とは思えないような感覚を覚えたが自身は負けるつもりはないと遥か先の窓を見つめ、いつも以上に顔つきを険しくしていた。
一方その頃。
首都東京の新聞社「デイリー・ビューグル」の社長室の椅子に座るちょび髭の初老の男性。デイリー・ビューグル社長、武村順一。社内や世間では「J武村(じぇいむそん)」のあだ名で通っているこの男は御得意様である刀剣類管理局からのタレコミを受け、急いで記事を作成している。
内容は先日ヴァルチャーと戦闘した際の被害をスパイダーマンのせいだと擦り付け、印象操作を行う為のものである。
この人物は昨年スパイダーマンが現れてから批判の記事を書いている人物であり、スパイダーマンを心の底から嫌っており、スパイダーマンが何かするたびに重箱の隅を突くように調べ上げバッシング記事を新聞に載せまくっている。
動機としては、自分には決してできない、スパイダーマンの行動力への嫉妬や、ヒーローの概念そのものへの不信感、さらに覆面を付けた強盗に、妻を殺害された事から、「本当に善人なら何故顔を隠す!顔を隠すのは、悪事をたくらんでいる証拠だ!」と考えているからである。
「やはり私の言った通りだ!スパイダーマンは荒魂同様街を脅かす悪党だったのだ!急いで記事を作成しろ!見出しはこうだ!悪党スパイダーマン、住宅地を襲う!うむ完璧だ」
Jムソンが指示を飛ばし社員は急いで新聞を発行していく。いつもならJムソンのつまらない戯れ言で片付け適当に無難にこなしている社員達だが管理局からのタレコミであるため躍起になりパソコンを操作していた。
「待っていろパイダーマン!貴様がお天道様の下を歩いていられるのは今のうちだと思えー!」
Jムソンは社長室の机の上に足を乗り上げ拳を天高くかざして声高に叫ぶ。端から見れば不審者にしか見えない光景だがいつものことであるため大抵の社員はその様子をスルーしながら作業に戻っていく。
しかし、強いて1つ彼に哀れむ点を挙げるとするならば管理局という権力者から渡された偽の情報を流させられ掌で踊っているだけだということだろうか。
場面は変わって伊豆。
舞草側の指令を受け、休暇中であったにも関わらず上層部から衛藤可奈美、十条姫和、スパイダーマンが伊豆に向かっている事を伝えられ、入団テストの試験官として出向いている少女二人と一匹。
長船女学園の古波蔵エレンと益子薫とそのペットのねねは車に揺られながら3人と合流する為に伊豆へと向かっていた。
「はぁ~ダリィ~・・・何でダルい御前試合が終わった後に出向かなきゃならんのだ、あのおばさん後で覚えてろよ」
「ね~」
「まぁまぁそう言わずに!そんな薫に1つやる気が出るgood newsがありマスヨ!」
「あ?」
面倒くさがり屋で大して興味も無かった御前試合も終わり、ようやく待ちに待った休暇を楽しんでいた所上司に命令され、3人の入団テストを行わなければいけなくなった為、車の窓に寄りかかりながら虚ろな目で自身の上司に対する不満を垂れ流している。
しかし、この時点では新入りの入団テストをしろとしか言われていないためご当地ヒーローもとい今は国家の敵スパイダーマンも一緒とは言われていなかったためやる気が出ていなかった。
そんな様子を見かねてやる気を出させる為にもう1人テストを行う人物について語り始めるエレン。
「あの二人にスパイディも一緒に行動してるそうデス、うまく行けば握手出来るかも知れマセン!」
「よし!今行こう!すぐ行こう!速攻で行こう!ガンガン飛ばせー!」
「ねー!」
「急にやる気になりましたネ・・・」
先日のヴァルチャーとの戦闘の後にスパイダーマンが二人と合流した事をエレンの口から伝えられるとその言葉を聞いた瞬間一変する。目の色を変え、輝かせながら急にやる気になり拳を握って天高くかかげる薫。
ねねもその動作を真似して小さい手を上に上げている。
元々特撮ヒーローが好きな彼女であるが現実に存在するヒーローにも関心を示している。
むしろアメリカには何人もの本物のヒーローが活動しているため羨ましいと思っており、舞草に入って最もテンションが上がった事が正式なメンバーではないが影の協力者であるアイアンマンことトニー・スタークに会う事が出来たことだと思っている。
実際に間近で会ったことは無いが、ビデオ通話でスタークと対面した時はアイドルの握手会に参加したドルオタのようなテンションになり、周りに落ち着くように諌められ、スタークも軽く困惑していた程だ。
「くぅ~これでスパイダーマンだけじゃなくて俺が憧れてるアメリカンヒーローのアイアンマンとキャプテンアメリカもいたらもっと最っ高なんだけどなぁ・・・ま、スパイダーマンに会えるだけで充分だけどな」
「トニトニにはごく稀に会うじゃないデスカ」
「ヒーローが並んでかっこよくポーズ決めてる所が見たいんだよオレは」
「そういうもんデスカネ」
「そういうもんだよ、見つけたら絶対に握手かグータッチしてもらうぞ」
「3人の入団テストだと言うことも忘れないでくだサイネ~」
「へいへい分かってる分かってる・・・く~ヒーローショーに行くみたいだぜ、テンション上がるな~」
「ね~」
「大丈夫デスカネこれ・・・」
普段の省エネでダウナーな状態からは想像できないほどテンションが上がっており、実際にこれから行くところにスパイダーマンに会ってみたいのは勿論だが、海外でも人気のヒーローアイアンマンとキャプテンアメリカもいたら更に最高だと豪語するがスタークは今海外にいる上に、キャプテンも今は行方が分からず、日本にいるとは到底思えない上に実現不可な光景だと理解している為、軽い冗談だと言う薫。
エレンは自分達の協力者であるスタークには稀にだが会うではないかとツッコミを入れるが薫的にはヒーローが並んでポーズを取っている所が見たいと言う、割とヒーロー映画や特撮を見ていると何となく注目したくなる所を見たいのだと豪語する。
その様子を見て深く気にしない事にしたエレンだが薫はすぐさま肯定し、スパイダーマンに対面した際には握手かグータッチをして貰うのだと意気込んでいる。
これから自分達が3人に会う目的は3人の入団テストの試験官をするためだと言うことを忘れるなと忠告するが素っ気ない態度で受け流しながら、窓の外を眺めこれからヒーローショーに行く時のような童心に帰るような気分になっている薫とその様子に同調するねね。
いつもよりはノリにノッている薫の様子を見て、楽しそうで何よりだと心の中で安堵するものの目的を違えないか不安になるが自身は彼女を信頼している為、キチンと仕事はこなすだろうと思っており口で言うほど心配はしていない。
そして二人と一匹を乗せた車は山中へと入っていく。
余談:映画だとライノとショッカーの扱い散々だからなぁ・・ライノは続編をやる予定で作ってたのと予告に出過ぎてた反面実際の出番で落差を感じたのもあるかもだけど、ショッカーに至ってはスーツも没になり、お前実写化されてたっけ?って人結構いそう。
多少活躍しただけショッカーの方がマシと捉えるかスーツを貰えただけライノの方がマシと捉えるかそれは・・・貴方次第だ!(やり○ぎ都○伝説風)
でもPS4版のショッカーとライノのスーツはかっこいいし実写化ライノの件のアメスパ2の終わり方は一番好きな終わり方なのでOKです!