刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任-   作:細切りポテト

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余談:バース見てきました!
これまでの映画のシーンを彷彿とさせるシーンも多々あり、3の調子ノリノリダンスした時も同じ音楽使っててすげえ!ってなりました。

ヴィラン達の名前は極力本家の方に準拠する方向で。


第20話 衝撃波と犀

刀剣類管理局捜査本部

 

3人の捜索で何の成果も得られなかった為か鎌府女学院の学長である雪那は何の役にも立てないことに歯がゆさを感じつつも撤収を決断した矢先、本部の通信に自衛隊の横須賀基地から伊豆山中にてS装備用射出コンテナの使用があったかと連絡が入り、所属不明であったため何か関連性があると判断した雪那は意気揚々と撤収を延期し、正確な着地点を割り出すように命じる。

すると同時に司令室に紫から命令を受けた夜見と栄人が本部に入室してくる。

 

「獅堂さん、此花さん。紫様から出動命令が出ました。ご準備願います」

 

「そして、お三方の指揮下に入る新装備の適合者とその装備についてもお話があるため、一度面会室までお願いします」

 

面会室に向けて局内の廊下を歩く4人。

 

真希は栄人に向けて話しかける。

 

「今度の奴はトゥームスよりはマシだと助かるんだが、どうなんだ?」

 

「えー・・・と、片方はまともです。もう片方はトゥームスよりはマシと言えばマシと言うかベクトルが違うと言うか・・・」

 

「どっちですの?ハッキリなさい」

 

「はい、私が話した感じトゥームスよりはマシです。ですがどう受けとるかは人によりますね。実際に対面しないと判断しにくいと言った感じです」

 

「早速胃が痛くなってきた気がする・・・」

 

 

「新装備の適合者はお馬鹿でなければならない理由でもありますの?」

 

 

「うっ、返す言葉もございません」

 

 

栄人の煮え切らない態度に業を煮やす寿々花に問い詰められ、実際に会わないと判断しにくいという言葉に対し不安になってくる面々だが、そうしている内に面会室に到着する。

 

面会室に入室すると、トゥームスの時よりは監視員も少なく手錠もされていないためそこまで危険視はされていないことが見てとれる。

 

1枚の防弾ガラスを隔てて二人の新しい適合者が並んでパイプ椅子に座っている。

 

一人は何か格闘技でもしていたのか引き締まった体躯に坊主頭に剃り込みを入れ、身体中に刺青を彫っているチンピラと言った風貌の20代程の若者。しかし、この男依然にテレビか何かで見たことがあるような感覚に陥る栄人を除く3人。

片方は年齢はトゥームスとさほど年齢は変わらないように見える中年間近のような印象を受けるが何より最大の特徴は筋肉モリモリマッチョマンの変態などという言葉では表せない程の筋肉に2m以上は確実にある身長の強面で視線だけで人が殺せそうな程の、いや確実に何人も殺しているであろう

鋭い目付きをしているが若い方が姿勢をダラリと崩して耳にヘッドフォンを着けながら音楽に乗り、リズムを刻んでいる姿に反し、拳を丸め、手を膝の上に置いて行儀よく座る物静かな印象を受ける男性だ。

 

 

「おい、針井。ほんとに適合者はこんなのしかいないのか?片方はまだ御し切れそうだが人は見かけによらないって言うぞ」

 

「本当に申し訳ありません。彼等が新装備の『ショッカー』と『ライノ』のテストパイロットに最適と判断されたんです」

 

「このお行儀の悪い方はあまり好きになれなそうですわね」

 

「素直に言うことを聞いて頂けたら問題ないのですが・・」

 

4人が固まってヒソヒソと相手の方を向きながら人相を確認して早速不安になっているようだ。

 

 

「シュルツ、シツェビッチ。仕事の話だ。」

 

 

「やっと仕事かおせーんだよ」

 

 

「Да(ダー)」

 

話がまとまった後に二人の方へと向かい合い、適合者と装備の紹介を始める栄人。

シュルツと呼ばれた方は悪態をつきながらかったるそうにヘッドフォンを外して首にかけ、足を組んで机の上に載せる。あまりにも行儀の悪い態度に面々は溜め息をこぼす。

そしてシツェビッチと呼ばれた方はロシア語で了解の意を意味する言葉を発し、微動だにしない。

 

まずは若い方からだ。

 

 

「こちらが、STT(特別機動隊)向けの対荒魂用戦闘装備ショッカーの適合者ハーマン・シュルツ21歳。元プロボクサーで一昨年に世界チャンピオンにまで登り詰めたものの、直後にWBA(世界ボクシング協会)のトップとファイトマネーの問題で揉め、評議会全員を滅多打ちにして逮捕。出所以降は日本でギャングの用心棒を行っていたそうですが数日前に美濃関付近の銀行を強盗目的で襲撃し、スパイダーマンに阻まれて逮捕されていましたが局長の権限でスーツのテストパイロットとして一時的に釈放されています」

 

 

「どこかで見たことあると思ったら一昨年のボクシングの世界チャンプだったのか」

 

「随分と落ちぶれましたわね」

 

ハーマン・シュルツの経歴を聞かされ、ようやく既視感の正体を理解した面々。

一昨年の年末のボクシングの世界大会で19歳でヘビー級のチャンピオンになった選手がいたことをテレビで見ていて記憶の片隅に置いてあったことを思い出す。

しかし、そんな輝かしい経歴を持ちながら今は一人のチンピラへとなり下がっていて数日前には美濃関近辺の銀行を襲って逮捕されていることを知り、唖然とする。

しかし、どうやら何か反論があるようで反抗的にぶっきらぼうに口を開くハーマン。

 

「その表現は語弊があるな。奴らこの俺様と死力を尽くして戦った対戦相手(ダチ)をチャンピオンじゃなくなった途端に掌返してバカにしやがったからムカついて全員半殺しにしてやっただけだ、俺は間違ってねえ」

 

「気持ちは分からなくもないが限度があるぞ」

 

 

「知らねえな、俺様はチャンピオンだ。チャンピオンだからあの業界じゃ一番偉い俺様の気分を害した奴は俺様にぶちのめされて当然なんだよ。まぁ、その後は知っての通り人をぶん殴る以外金稼ぐ方法を知らねえロクデナシの俺はギャングになって銀行強盗と恐喝で食ってきた訳だ」

 

「まぁ心配はいらねえ俺を捕まえやがったあの野郎をぶちのめせんならアンタらの言うことは素直に聞く」

 

評議会全員を滅多打ちにした理由は元チャンピオンで自身がベルトを勝ち取り、死力を尽かして戦った相手を侮辱された為だと言い切る。

真希に諭されるものの、さも当然かのように悪びれもせず自分は間違ってない等と言い張る傲慢さにある意味で感心を覚える面々であるが、自身の事はロクデナシであると自覚し、言うことは素直に聞く姿勢を見せている為思っていたほどマイペースで馬鹿ではないのかと思い始める面々。

余程スパイダーマンを倒したいのだろうか。

 

 

 

「そこまでスパイダーマンに固執する理由はなんですの?負けてプライドに傷がついたからかしら?」

 

「・・・・・野郎はチャンピオンの俺様の顔に泥を塗りやがっただけじゃねえ野郎のせいでなぁ・・・・」

 

ゴクリ

 

寿々花にスパイダーマンに固執する理由を聞かれると先程までの尊大な態度から一変し、表情が険しくなり低い声でスパイダーマンに対する怒りが直で伝わってくる程の怒気を感じ、息を飲む。監視員を含む面々。

シツェビッチと夜見は表情を変えずに話を聞いているが。

 

 

 

 

「奪った金で行く筈だったアイドルのライブの遠征費が消えただけじゃなくて逮捕されたせいで行けなくなっちまったんだ!チクショー!思い出すだけでムカつくんだよ!コケにしやがってよぉ!」

 

 

((((いや、それお前/貴方が悪い/から!!/のでは・・・))))

 

机の上に載せていた足を下ろして地団駄を踏みながらスパイダーマンに捕まえられた事で強盗した金の取り分で自身が好きなアイドルのライブの遠征費が消え、逮捕され、懲役刑がほぼ確定であるため、ライブに行けなくなったことを逆恨みし、激しい怒りを示している。

 

一同は内心でそれは自業自得だと総ツッコミを入れているがもうツッコむ気力が無いのか心の中でツッコむ程度に留めておく。

 

そこで栄人が話を仕切り直して、ハーマンにテストパイロットを依頼したショッカーの説明に入る。

咳払いをして、携帯の画面から映像を投影して全員に説明を始める。

画面には全身防備の茶色の頭部のフルフェイスのヘルメットに、身体の部分は黄色をベースに網目の模様が入っており、両腕にはガントレットを装備しているパワードスーツが映し出される。

 

「ゴホンッ話を戻しましょう。こちらが彼にテストパイロットを依頼した新装備、ショッカーの概要です。現在御刀以外で荒魂を倒すことは不可能であり、STT(特別機動隊)では到着までの時間稼ぎが限界です。そこに比重を置き、荒魂を倒すのではなく振動波で姿勢を崩し、動きを止め、時間を稼ぐ。というのがショッカーの荒魂戦での運用です。装着者の身体能力を引き上げつつ両腕に装備されているガントレットに振動波を収束させて対象を殴り飛ばしたり、収束した振動波を音速で発射することも可能です。そして、スーツの用途としてはガントレットの振動波は荒魂を殴り飛ばせる威力であり、生身で使うと使用者の身体に負担がかかるため、その振動波に耐える為にあります」

 

「なるほど拳のエキスパートで自分で怪我しねえようにうまく使える奴は俺位ってことか」

 

 

「確かに量産化出来れば機動隊での死亡者の数を減らすことに貢献できるかも知れないな」

 

ショッカーの概要を受け、ハーマンは何となく自分が選ばれた理由を納得しつつ頬杖をつきながら興味深そうに見ている。

 

 

「言っておきますが貴方分かっていますわね?自分の仕事を」

 

「あー俺難しい話良く分からねんだけど、ようはコイツらと、合流したと思われる奴を思いっきりぶん殴りゃいんだろ?簡単じゃねえか」

 

「・・・・・・作戦では夜中にお前にスパイダーマンの相手をしてもらう。そして、スパイダーマンを捕まえたら親衛隊の皆さんの援護に向かってくれれば問題ない。後誰も殺す必要はないからな」

 

「そりゃ心配ねえ、銀行強盗も恐喝も平然とできる俺だが殺しはしねえ主義だ。チャンピオンは下々の者を手にかけはしねぇんだよ。金は奪うけどな」

 

寿々花に怪訝そうな顔で自身のやることを理解しているのか、暴走して民家を攻撃したりしないかの確認を取るとハーマンは軽いノリで返す。

頭はあまり良くないのか、管理局の事情、舞草の存在、逃亡者たちとの因縁。そして作戦をざっくりとは理解していて間違ってはいないが非常に大雑把なその様に声も出ない面々。一応、暴走して民間人を襲う心配と相手を殺す心配は無さそうだが・・・・。

 

「はぁ・・・・。そして次は」

 

「「ライノ」の適合者アレクセイ・シツェビッチ42歳。元々貧民街の出身で20年前にロシアから移民してきた移民で、漁師として働いていましたが相模湾岸大災厄の海難事故で漁船が沈没。そして行方不明になり、瀕死の所をギャングに救助され、以降は組織の敵を排除する用心棒として勤めているそうです。組織ではなく彼個人にコンタクトを取り、逃亡者の捕獲を依頼しました」

 

「組織は俺を救ってくれた。その恩に報いるだけだ。仕事を個人的に引き受けたのも恩を返すためだ。だが」

「この子達は本当に自分の意思で悪いことをしたのだろうか?何か、事情があったのでは無いだろうか?」

 

ハーマンの様子に溜め息をつきながら今度はライノの適合者、アレクセイ・シツェビッチの経歴を説明する栄人。

アレクセイの引き受けた動機としては組織に恩を返す為に大金を手に入れる事が目的のようだが、今一つ思い悩んでいるのか、ギャングの暗殺者にしてはかなり甘いことを言い始めるアレクセイに全員が少し意外そうな顔をする。

隣に座るハーマンでさえもだ。

 

 

「ギャングの暗殺者ともあろう方が反逆者に同情ですの?」

 

 

「ギャングのくせに随分おセンチだな」

 

 

「俺は自分を救ってくれた組織に感謝はしている。だが、いつの間にか流されて後戻り出来なくなってしまった」

「彼女達も本当は誰かにやらされているのではないか、やりたくてやってる訳では無いのではないか。そう考えてしまう。俺は罪のない子供を手にかけたくはない」

 

「彼女達の行動の理由を知るために捕獲するんだ。それからでないと話は始まらない」

 

寿々花に質問され、ハーマンには横から皮肉を言われるものの特に気にする様子もなく話を続けるアレクセイ。

自身の命を救った組織の為に働き、何人もの敵を殺してきたアレクセイだが、敵だからとは言えまだ未来のある子供を手にかけることには抵抗があるのか彼女達の意思で行ったものでないのなら戦いたくはないと甘いことを言ってのけるが栄人もアレクセイにはやりたくなくてもやらなきゃいけないことをやるしかない境遇にシンパシーを感じているのか、アレクセイを気遣って捕獲する理由をしっかりと説明する。

 

 

「ならば、仕方がないか。アレクセイ・シツェビッチ、全身全霊を持って対象を捕獲する」

 

「なら問題なさそうだな。そして、これがお前に今回テストパイロットになってもらう新装備「ライノ」の概要だ。お三方もご確認ください」

 

アレクセイは栄人の話を聞き、彼女達が本当に悪いのか、どんな事情があってしたことなのかを知るために捕まえるのだと諭されたことで了承する。

そのままショッカーが写された画面を切り替えるとサイをモチーフにしたかなり大柄な全身装備の鼠色のアーマーが映し出される。

 

 

「ヴァルチャー同様S装備の発展型であり、対大型荒魂用の決戦装備「ライノ」。通常のS装備よりもパワーと耐久力に特化した装備で、計算上は大型の荒魂の突進を受けてもビクともせず素手で荒魂を持ち上げられる程のパワーを有します」

 

「凄まじいですね」

 

シュミレーション用に作成された映像ではライノが荒魂に突進されても微動だにしない映像と荒魂を持ち上げて投げ飛ばす様や、突進で大型の荒魂を撥ね飛ばしている様が流れる。

夜見はその圧倒的なパワーを見て、凄まじいと語彙力を低下させる程に感嘆としている。

 

「はい、攻撃力と耐久力はピカイチです。ですが、欠点としては全身装備な上特に頭部は視界が狭く、変わりに集音性が高いのですが夜戦では安定した戦闘が難しいことと、スーツが重いため、動きが多少鈍重になる点や稼働時間が短いことです。対荒魂戦でも超短期決戦を想定して作られています」

 

「力が強すぎるが故にか、色々と惜しい装備だな」

 

「物には物の使い時がありますわ、彼らを追い込めるタイミングで使うのが無難でしょう」

 

ライノの運用方法が限定的であり、汎用性は低いことを知らされ歯がゆい気持ちになる真希だが、限定的だからこそ真価を発揮する場面があるのだと寿々花に諌められる。

 

「とりあえずだ、シツェビッチ、シュルツ。作戦中お前達はこの3人の指揮下に入り、余計なことはせずに状況に応じて3人の指示に従ってくれれば問題ない」

 

「俺は野郎をぶちのめせんなら文句はねーよ」

 

「元よりそのつもりだ」

 

 

「ならば、出撃の準備をして装備を積んだヘリがあるヘリポートに向かってくれ。シツェビッチ、恐らく今日は夜中での戦闘になるだろうから今日は出撃しなくていい。シュルツが出てくれ」

 

「早速か、いーじゃん」

 

「了解した」

 

 

雇い主である栄人の指示を素直に聞き入れ、トゥームスよりは遥かに扱いやすい面子であることに安心しつつ二人に出撃の準備をするように指示をする。

 

「では、皆さんよろしくお願いします」

 

「あぁ」

 

「分かりましたわ」

 

「かしこまりました」

 

栄人は3人に向けて二人の指揮をお願いすると3人はすぐに了承する。

安心したその矢先

 

「おい、デカブツ。てめえの出番はねぇかもな、俺様が全部かっさらっちまうからよ。大人しく倉庫の置物でもしてな」

 

 

「どうだかな、そういう奴に限ってうまく行かない。特にお前のような井の中の蛙はな」

 

 

「あ゛?てめぇ挑戦か?今ここで勝負してやろうか?3分でリングに沈めるぞオラ」

 

 

「コラコラ喧嘩はするな。シュルツ、お前の相手はスパイダーマン達だ。相手を間違えるなよ」

 

「チッ、行くぞ」

 

「失礼する」

 

 

ハーマンが挑発的な態度でアレクセイに肩パンして、尊大な態度でマウントを取って接している。ガキか。

アレクセイは大人であるためか、あまり本気にはせず適当に受け流すとその態度が気に入らなかったのか喧嘩腰でメンチを切りながらファイティングポーズを取り、今にもケンカし始めそうな雰囲気だ。

栄人が急いで仲裁に入ると先程までの勢いはすぐに失せて舌打ちしつつもアレクセイに行くぞと共に行動することを許しつつも退室する。

反面、アレクセイは一言断ってから退室していく。

 

 

「はぁ~胃が痛ぇ・・・シツェビッチはまともなのが救いですよ」

 

 

「僕も同じだ、言うことをある程度聞いてくれるだけトゥームスより遥かにマシだが、アレも大概だぞ」

 

 

「どうして殿方は拳で解決だのタイマン勝負だの安直な思考にいたるのでしょうね」

 

「それはシュルツさんがその極地を行っているだけな気もします」

 

それぞれに対面した新しい適合者への感想を述べつつしばらく歩き、出撃のためにヘリポートへと向かう3人を見送るために栄人もついてくる。

 

「今になって私達を出すなんて、紫様も随分勿体つけましたわね」

 

「君が紫様のお側を離れるなんて珍しい」

 

紫の秘書官として常に紫の補佐に回っている夜見が戦線に出ることが意外なのか真希は夜見に話しかける。

 

「索敵には私の力が役立ちます」

 

 

「申し訳ありません、皐月さん。本来山岳地帯ならばヴァルチャーで上空から索敵させるべきなのですが、私の判断ミスでヴァルチャーを壊してお手を煩わせてしまって」

 

「いえ、お気になさらず。これも私の仕事です」

 

本来ならば飛行能力があり、上空から索敵も可能なヴァルチャーを出撃させれば夜見に負担をかけなくて済んだことを謝罪するがいつも通り淡々と問題ないと返す。

 

「そういえば結芽は居残りですの?」

 

 

「彼女が出れば不必要な血が流れますので」

 

 

「確かに」

 

 

「針井、僕達が留守の間時間が空いている時で良いから結芽を頼めるか?」

 

「今私達も忙しくてあの子に構えません。ですが栄人さんが構ってくださるお陰でお暇な時間が減って最近少し楽しそうですしね、頼みましたわよ」

 

 

「お願いしますね針井さん」

 

「えっ?・・・・はい。勿論。任せてください!」

(な、何で3人揃って俺に言うんだ?まぁ、クライアント様を退屈させないのも俺の仕事か。それに・・・この忙しくて殺伐としてる中彼女といるとほんの少しだけ解放されてるような、不思議な気持ちになれるし)

 

3人から時間が空いている間に結芽の相手をしてやって欲しいと頼まれ、驚いてワンテンポ遅れて反応し、敬礼する栄人。

3人としては自分達は今、逃亡者を追うことに尽力していて彼女に構う時間が無いものの栄人がたまに空いている時間に彼女に付き合う事で暇な時間が減り、少し楽しそうにしているため信頼して結芽を頼むと頼まれるが、当の本人は自分に与えられた重要な仕事だと思いつつも結芽といるとほんの少しだけ安寧を得ていることを自覚しつつも心の中にしまう。

 

「しかし、やはり動いてますわね。折神家管轄外のS装備が存在するなんて」

 

「折神家と針井グループと管理局以外あの装備を開発、運用できる組織などない。本格的に合流を始めたんだろう。連中が噂通り特祭隊内部の造反分子ならあり得なくもない」

 

「紫様は十条姫和達が彼らと接触すると踏んで泳がせていた。ということなのかも知れませんわね」

 

紫が二人を安易に追わずに逃がしたのは反乱分子である舞草と合流させ、まとめて倒すためだと予想している寿々花の筋の通っている推測に納得しつつも歩みを止めない面々。

 

ヘリの前につき、乗り込む3人を見送る栄人。

3人に向けて、声をかける。

 

「それでは皆さん、お気を付けて。皆さんの無事と成功を祈っています」

 

「心配するな」

 

「誰に言っているのかしら?」

 

「ははは、ですよね・・」

 

「では、針井さん。また後ほど」

 

 

それぞれが既に準備万端で問題ない様子を見せるとヘリが駆動音を立てながら離陸し、風圧により髪と服がはためくものの飛んでいくヘリを姿が見えなくなるまで見送り、完全に見えなくなると同時に捜査本部へと戻っていく。

 




ヴァルチャーが悪い奴にし過ぎたので悪党のレベルを少し下げることにしたぜ。

余談:バースを見て私のこれまでで好きなスパイダーマン映画のランキングベスト3は1位はスパイダーマン2で2位はホームカミングで3位はアメスパ2でしたが、バースが1位になりました。

ほんと初代2は今でも好きな映画です。ホームカミングはこれまでとは違い軽いノリの小規模な感じがウケない人も結構いて賛否両論(偏見)ですが、キャラクターが良くてピーター・パーカーとしてはMCU版が一番好きですね。そしてホームカミングのヴァルチャーは個人的実写化ヴィランで1位です。個人的に楽しくて明るい気持ちになれる映画って感じです。
アメスパ2はエンディングが一番好きな終わり方です。最も悲しくもあり最もかっこいい終わり方だなと思います。

OK、じゃあもう一度だけ説明するね!バースは情報量がスゴいのにゴチャついてなくて明るくて楽しいだけじゃなくて、「勇気」を貰える映画でした。
ホームカミングでもうちょい欲しかった所を押し上げてくれた感じで本当に素晴らしかったです。
挫折と葛藤からのヒーローへの転換、伏線の回収も本当に見事で皆にオススメできる映画でした。もっかい見たくなってきたな・・・。

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