刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任- 作:細切りポテト
昨夜でのショッカーとの戦闘での疲労が蓄積し、夜見にもダメージを与えられたため消耗により写シも張れず戦闘の続行がほぼ不可能なエレンを可奈美は急いで木陰に隠し、エレンももう既に自身は戦闘続行できる状態ではないことを察してか力なく肩で息を切らしながら無念そうに木にもたれ掛かっている。実質戦線離脱に近いだろう。
前方から攻めてくる夜見を姫和と薫が相対し、後方から来るライノをスパイダーマンと可奈美が対処する。
「やべー感じしかしねーぞおい・・・っ!」
「お前達は後ろのデカブツを!」
前方では虚ろな眼をしつつもその中に闘志が宿る瞳をしている夜見の奮う剣戟のその力強さに弾かれ、叩き伏せされ、そして押されながらも交互に攻めることで一進一退の攻防を薫と姫和は繰り返している。
「「了解!」」
後方ではライノは一瞬エレンがもたれ掛かっている木の方を見ると戦闘不能のエレンを巻き込まないように周囲の物を投げ付ける戦法は避け、すぐに正面にいる可奈美とスパイダーマンの方を向いき地面を蹴り上げ、肩を前に突き出して全パワーを肩に集中させたショルダータックルを仕掛けて来る。
巨体とパワードスーツの重さの割にはかなり速いが避けられない速度では無いため可奈美とスパイダーマンは左右に飛んで回避する。
「最初に言っとくけどこいつのタックルめちゃくちゃ痛いから気をつけて!生身で受けたらミンチだ!」
「それ痛いってレベルじゃないよね!」
回避する際にスパイダーマンは違和感を感じていた。
何故先程の駐車場での戦闘のように森中に生い茂っている木や地面を引っこ抜いて投げつけて来ないのか。
直撃すれば大ダメージを受けるのは確実な一撃だが避けられなくはない速度で突進をするメリットが理解できなかった。
「せいやっ!」
回避と同時に可奈美が千鳥を横一閃に八幡力を込めて右肩の部分に振るうが装甲があまりにも硬く、直撃しても分厚い装甲に遮られて途中で止まってしまう。
「うっそ!?」
更に千鳥を挟むその鋼の装甲の壁にガッチリとハマってしまい、千鳥が簡単に引っこ抜けなくなってしまう。
そうしている間にライノは巨大な左手を伸ばして千鳥をデコピンで弾いて遠くに飛ばし千鳥が地面に刺さり、そして御刀が身体から離れた可奈美の首を掴む。
「うっ!」
「すまない。なるべく早く済ませる」
ライノは首をつかんだまま可奈美の身体を持ちあげ、首が折れない程度に力加減をしながら首を締め上げて意識を落とそうとしてくる。
首が折れない程度の力ではあるが完全に首に入っている
上にライノの怪力からはそう簡単には抜け出せず気管が圧迫され、呼吸困難に陥り意識が朦朧とし始める。
その矢先にスパイダーマンが手を左右に構えて眼前から数M先の木々に当てる。
そして、身体を後ろの方へと力を入れて踏ん張り糸の引っ張り強度が強くなり地面を蹴ると飛び出したパチンコ弾のように一直線にライノの背中に向けて飛び付く。
「やめろ!」
ライノの背中に飛び付いて肩まで登り、肩の上に乗っかり、可奈美の首を絞めている指に向けて、ウェブシューターのモードのひとつ、糸が二方向に裂けるウェブであるスプリットを選択して連続で指に向けて放って全力で自分の方へと身体を仰け反らせながら強く引っ張る。
「ゴホッ、ゴホッ・・・っ!」
指が肩の上に、手から見れば後方にいるスパイダーマンの方向へ引っ張られたことにより指が可奈美の首から離れて可奈美を手離させることに成功する。
ライノの締め上げる指圧の圧迫から解放され、喉を抑えて咳き込みながら千鳥を地面から引き抜く。
「くらえ!新必殺見様見真似首四の字固め!」
スパイダーマンは飛びついた後にライノの背中にウェブグレネードを残りの全て、残り数8個を貼り付けており、その後、エレンに入団テストの際にされたように見様見真似で脚をライノの首に掛けて首四の字固めを決めて脚でライノの首を締めながらライノのスーツの兜の蒼い眼の部分にクモ糸を当てて視界を封じ、ライノの頭部を叩くように数回殴るがやはり兜が凹む程度だ。
直後にスパイダーセンスが発動して、ライノが手を上に向けようとしている様を見て、スパイダーマンを引き剥がそうとして手を頭に向けて振るい始めると判断し急いで飛び下りて地面に着地し、飛び下りた際にライノの手にウェブのモードの1つ、トリップマインを貼り付け狙いは地面をロックオンする。
直後にトリップマインが発動してライノの腕と地面をクモ糸が繋いで動きを封じるがライノなら地面ごと引き剥がして来るのは想像に難くないため、直ぐ様攻撃に転じる。
飛び降りると可奈美が隣に並び立ちスパイダーマンはライノの腹部に蹴りを、可奈美は自身が出せる八幡力を最大限発動させて斬り付ける。
しかし、やはり切断には至らなかったが強い衝撃で相手を後方へ押し飛ばすことは可能でありライノを大きく仰け反らせることに成功するとライノは後方の木々に衝突し、貼り付けていた全てのウェブグレネードが作動する。
球状の容器が炸裂して、中から大量のクモ糸が四方八方に拡散される。今回は残っていたウェブグレネード全てを使用したため、後方の木々や地面に背中から出たクモ糸が幅広くビッシリと貼り付いている。
いくらライノが計算上大型のムカデ型荒魂を撥ね飛ばせる怪力であろうと簡単には抜け出せ無いだろうとスパイダーマンは推測していると思った通り、徐々に破ろうとしているが薫と姫和に加勢する時間は稼げると判断した。
「あんたはそこでお留守番だ、OK?」
「ぐっ・・・!」
すると後方では先程まではライノの呼びかけに応えられる程度の意識があったものの今は既に意識が無い、目に映る者全てを敵と判断し破壊し尽くす鬼と化した夜見が写シすら張らず、生身のまま御刀を振るう剣戟に薫が弾き飛ばされ地面を転がり、姫和は得意の速さを活かした高速戦闘のパリィで翻弄しながら応戦していたが鍔迫り合いの際に力負けしてそのまま叩き伏せされてしまう。
やはり腕力はアンプルを大量に接種した夜見の腕力は通常よりも格段に底上げされているためかまともな斬り合いではこちらが部が悪い。
「こっちだよ!今度は私たちが相手になる!」
「つってもコイツ、今ハルクみたいな怪力になってるだろうから無刀取りは難しいかも・・っ!」
地面に伏している姫和と薫から注意を逸らさせる為に二人は大きめの声をあげながら夜見の気を引く。
可奈美は八相の構え、スパイダーマンは腰を低く落として脚を広げ、指をウェブシューターのスイッチにかけながら夜見へと相対する。
二人の声が耳に入り、視界に捉えると獲物の標的を二人に変えて襲いかかってくる。
スパイダーマンは本来ならウェブグレネードを使いたかった所だが先程ライノを拘束する際に使い切ってしまったため、正面から勝負に出ることにした。
先程薫と姫和と戦闘をしていた際に左手を斬って傷口から荒魂を飛ばす戦法を取っていなかったため思考力が失われているように見えるが周囲に荒魂を纏いながら我武者羅に突っ込んでくる。
スパイダーマンは夜見の足元にクモ糸を飛ばして靴と地面を接着させるが少し怯むだけで勢いのまま脚力で引き剥がして尚も突進してくる。
予想に反して纏わりついていた蝶の小型荒魂の群れが遠距離攻撃が可能なスパイダーマンを押さえるべく襲いかかる。
「この技嫌い!」
それを手と蹴りで払っていくが動きを阻害され、つくづくこの攻撃をされるのは苦手だと実感する。
それに応じて接近した可奈美が夜見の剣戟を多少押されながらも生身の相手を斬らないように細心の注意を払いながら的確に捌き、一進一退の攻防を繰り広げる。
「あっやばっ」
可奈美を力任せに後方に押し飛ばし、夜見から撒き散らされた液状のノロの残滓に足を滑らせ尻餅をついた際に追撃しようと千鳥を持っている右手の手首を足で踏んで抵抗出来なくし、御刀を降り下ろそうとしている。
「斬れ可奈美!そいつはもう人じゃない!お前が死ぬぞ!」
「皐月隊員・・・何がどうなっているんだ・・?」
姫和は今の夜見は完全に人としての自我を失って暴走し、目に映る者全てを破壊する鬼と化している夜見を斬らなければ可奈美は斬り殺されると警告する。
ライノは姫和の発言がどういうことなのか理解できず置いてきぼりになり、夜見の尋常ではない様子に困惑している。
その叫びも虚しく手を完全に封じられていて抵抗しようにも夜見の力を振り払うことはできない。
直後にスパイダーマンが夜見の御刀を持っている方の手である右腕に向けて右手の掌のウェブシューターのスイッチを押してクモ糸を飛ばして夜見の右手の甲の辺りに当てる。
「取った!うおらっ!」
「・・・・・・・・っ!」
スパイダーマンがそのまま地面に向けて思いきり引き倒して姿勢を崩させようとするが夜見は少女の身体からは想像も着かない程の怪力で抵抗し、地面へ糸を引っ張る力に抗っている。
直後に夜見の方が腕を振り回すとスパイダーマンの身体が持ち上がり、宙に浮きスポーツの応援でタオルを振り回すように軽々と振り回され地面に何度も叩き付けられる。
「ちょっ!何このゴリラパワー!君たちって女ハルクだったの!?ヴぇっ!」
クモ糸を掴まれ、腕を振り回す夜見に地面に叩き付けられながらも軽口は忘れないスパイダーマン。
最後に1回転の後に木に叩き付けられ、背中から木に直撃して地面に顔面から落下する。
「ぐあっ!乗り心地最悪のメリーゴーランドだ・・・っ!可奈美!」
まだ、クモ糸はスパイダーマンと夜見を繋げているが夜見はスパイダーマンより前に足元の可奈美から始末しようと今度こそ御刀を降り下ろそうとしている。
クモ糸を飛ばしていたとしても暴走している夜見の怪力には簡単に破られる上に恐らく意識を失うか目に映る敵全てを排除するまで止まらないだろう。ならば、意識を奪って気絶させるしかない。
それにウェブシューターでクモ糸を飛ばしていたら夜見が水神切兼光を可奈美に押し込む速さの方が速いだろう。
このままだと可奈美が殺される。スパイダーマンはまだ自身と夜見を繋げている物、夜見の手に着いている自身のウェブシューターから出ているクモ糸を出している方の手のウェブシューターのスイッチをいじる。
「やるっきゃ無いのかよっ!カレン、人間が気絶する位に調整よろしく!」
『了解、出力を調整します』
「電気ショックウェブ!ぐううっ!」
スパイダーマンの掛け声と共にスパイダーマンのウェブシューターから出ているクモ糸から蒼白い電流が夜見に向けて流れる。
相手を殺さず、可奈美も殺させない為に取れる最善の手段は今は写シを張っていない生身の夜見になら通用するであろう電気ショックウェブを選択した。
「ぐう・・・・・・・・っ!」
右手の甲に貼り付いたクモ糸を伝って皮膚の下にある神経に直接電気が流れる。神経に電気が流れると、神経網を伝って電気ショックは瞬時に全身に及ぶ。
夜見は今全身を伝う電気ショックにより、 人体には安全な範囲であるが身体が痺れ始めて意識が遠のき始める。
もがいている際に踏んでいた可奈美の手から足を放してよろめき、意識が遠のいたことにより身体が過剰に投与したノロに耐えられなくなり身体から紅黒い炎のように液体を撒き散らしながら気絶して崩れる。
「なんだ、この感じ・・・・」
ウェブグレネードの拘束から脱出したライノ、斬り伏せられて倒れてい面々はその炎のように広がるノロに呆気に取られてしまっていた。
特に事情を知らないライノは今眼の前で起きている事が信じられないかのようにただ立ち尽くしてしまっていた。
無理もない。人間の身体から発火したかのような熱を出し、大量のノロを周囲に撒き散らしたのだから。詳しい事情はよく知らないがただ事では無いことは理解できる。
そして寸での所で可奈美が夜見の身体を抱き止めて支える。気絶して意識を失ってはいるがまだ呼吸があり心音も聞こえる。夜見の生存を確認して可奈美は安堵する。
「良かった・・・・生きてるよ」
「多分、ノロと荒魂の力のバランスが取れなくなったんデスネ。人の身体にノロを入れるなんて無茶にも程がありマス」
「荒魂をあんな風に使うからだ」
「ね!」
戦闘不能で隠れていたエレンが木にもたれ掛かりながら推測をし、薫がぶっきらぼうに言い切るとねねも同調している。
しかし、約1名本気で困惑している者がいた。
(じゃあ、僕は何で平気なんだ・・・?彼女は何回もアンプル投与してたけど僕は研究所で1回噛まれて身体が変化して以降はずっと安定してる・・・何でなんだ・・・)
スパイダーマンは疑念を持ちながらも今はそんなことを皆の前で言う訳にも行かずマスクの下で唇を噛んで歯痒い気持ちになりながら俯いていた。
しかし、その様な猶予も許さず背後からスパイダーセンスを感じ取り、バク転で後方に飛んで回避する。
「しまった忘れてた!」
呆気に取られている隙を狙ってライノが拳をスパイダーマンの背中に向けて振るって来たのであった。
スパイダーマンが回避するとライノの拳は空を切り、先程までスパイダーマンが立っていた位置を通過する。
ライノの巨体が歩く音に全員が反応し、その方向を振り返る。暴走した夜見に気を取られていて拘束していたライノにまで注意が行き届いていなかったため、全員が「しまった」と思い構える。
可奈美は夜見を木にもたれかけてかられてゆっくりと寝かせる。一方薫はねねにエレンを避難させるように指示を出し、ライノに向かって斬りかかっていく。
「おい、もうよせ。この人数相手にやる気かよっ!」
「悪いが君達を捕まえるのが俺の仕事だ。ライノが、手と足がまだ動くのなら仮に君達全員は仕止め切れなくとも隊長達が来るまでの時間は稼ぐ。後続の為に考えて動くのは当たり前だろう?」
「そのクソ真面目っぷりをもっとマトモな事に使えなかったのかよ!」
大柄なライノとは対極の小柄な薫がライノの前に立ち塞がり、大太刀である祢々切丸を振り回しながら数が勝るこちらが有利であるため無益な戦いを避けるために戦闘を続行する意思があるライノを威嚇する。
ライノは逸らさずに薫の眼を見ながら振り回される祢々切丸を拳による打撃と足の蹴りで防ぎ、最後に回し蹴りで蹴り飛ばしながら淡々と自身の考えを話す。
「そう・・・・出来たら良かったんだろうがな・・・」
「どういう事だ!?」
「君達の事情を俺が知っても罪を軽く出来る訳でもなくどうにもならないように、俺の事情を無関係な君たちが知ってもどうしようも無いし無意味なことだ。俺達は敵同士だからな。それに」
ライノは本心ではないが互いに捕まえる、逃げる、抵抗する間柄である以上事情はあるのかも知れないが知ったとしてもどうにもならないことは世の中にはたくさんある。彼等が標的であり、捕まえるのが自分の仕事であるのなら無用な感情は捨てて取り組めばいい。そう割り切ってライノは任務に臨んでいる。
可奈美と姫和が左右からの挟撃をライノは身体を1回転させて攻撃を行われる前に腕を振るって弾き飛ばす、森林の中へと二人は飛ばされていく。
「おめおめと逃げ帰って皐月隊員の決死の覚悟を無駄には出来んっ!」
「うあっ!」
「何て怪力っ!」
「でもその割には僕らの事殺す気無いよね!」
「捕獲が命令で抹殺は命じられていないからだ」
スパイダーマンはライノが駐車場での戦闘した時のように木等の障害物を投げ付ければ少しでも楽に立ち回れるのに接近戦ばかりをし、殺意が感じられないことを問うとライノはまたしても淡々と返す。
障害物を投げ付けないのは投げ付けた障害物が蓄積されたダメージにより戦闘不能で避ける術が少ないエレンを巻き込まないようにしているのだが、最大の理由は戦闘不能な相手を無慈悲に追撃しなくとも捕まえられると考えているからというのもあるが。
ライノの拳をジャンプで回避した矢先にライノの顔にクモ糸を当てて視界を封じ、視界が封じられている内に正面に立って腹や胸部を蹴りとパンチで殴打する。
かなり全力で殴っているがライノの硬い装甲の前では拳の形に凹み、身体を軽く後ろへ仰け反らせる程度で本体へのタメージは徐々には与えられているが決して大きくはない。
「キエエエエっ!」
そして、後ろから薫が斬りかかるとまるで見えているかのように後ろ足を薫のいる方向を見ずに素早く突き出してくる。
「なっ!?うおっ!」
視界が封じられている筈なのに分かっているかのように的確に蹴りを打ち込まれたことに驚いたが咄嗟にガードして、ダメージを軽減するがライノの力強い蹴りの前では軽々しく蹴り飛ばされる。
そして、視界が封じられているにも関わらず眼前のスパイダーマンに目掛けて我武者羅にではなく回避しなければ確実に当たるような鋭い拳を連続で的確に放ってくる。
「分かったぞ、見てるんじゃ無くて聞いてるんだな!サイって確か視界が狭い変わりに聴覚が発達してるって話を聞いたことがある。もしそれをスーツに取り入れてるなら仮に視界を封じられても音で相手の位置が分かるように集音性を高くして心音や呼吸音、声を拾って僕らの位置を逆算してるんだな!」
「正解だ。例え視界を封じられてもある程度は音で君達の位置が分かる」
スパイダーマンが推測を語るとまたしても見えているかのようにスパイダーマンに向けて拳を放ち、地面を強く踏みつけた際の脚震でスパイダーマンを吹き飛ばし、顔に付着したクモ糸を剥がしながら種明かしをする。
吹き飛ばれていた全員が各々集まって円陣を組んで互いの背中を守るように1ヶ所に固まり、状況分析を始める。
「どうしよう?S装備がベースだから逃げ回って時間切れを待つのがいいんじゃないかな・・・?」
「多分無理だと思う。音で私たちの位置が分かるなら追ってこれるだろうし、木とかを投げ付けたりとかでわざと逃げ回らせて親衛隊の人達の方へと誘導させられて挟み撃ちにされると思う。それに直感だけど・・・時間切れを狙ってたら全員倒されるか親衛隊の人達と合流される気がする」
「確かに渡された機械から親衛隊の奴等の反応が消えた。位置を読んでたのはバレてるだろうよ」
「じゃあどうするんデス!?」
スパイダーマンがS装備をベースにし、更にパワーを格段に強化しているのなら稼働時間は長くはない。バラバラに逃げ回って時間切れを狙う事を提案するが直後に昨夜に夜見の操る荒魂の大群により真希と寿々花が待機している位置まで追い込まれた事を参考にし、逃げ回ったとしても誘い込まれる可能性を考慮し、逃げるという選択肢もベターではないことを説明する。
戦闘不能のエレンが言葉を挟むと薫が祢々切丸を肩に担ぎながら当然のようにサラっと返す。
「あ?簡単だよ。思いっきりぶっ叩いてここでぶっ壊せばいんだよ」
「ねね!」
「初めて意見が合ったなチンチクリン、その方が手っ取り早い。賛成だ」
薫がこの場でライノを全員で攻撃して装備を破壊するという提案をすると真っ先に隣にいた意見が同じなのか、性に合うのか姫和が賛同し、ねねが「そうだ!」とでも言わんばかりに右手を上に上げる。
意見が合ったのが少し嬉しいのか姫和と薫は視線を合わせると息ピッタリに肘を水平に曲げて互いの肘と肘をコツンとぶつける。
「いやでもちょと君達何でも力で解決するのは・・・」
「でも、このままズルズル行くよりいいよ。私もこの場で倒すのが合理的だと思う」
「はぁ・・・しゃーない。たまにはパワーゲームで行くかっ!でも正攻法じゃ僕らの攻撃は簡単には通らない。何か弱点を見つけないとっ!カレン、あいつのスーツを解析して!」
『解析を開始、頭部から全身に至るまで分厚い装甲で守られているため、数十t以上の打撃を与えなければ装甲を破ることは不可能でしょう。しかし、S装備がベースであるため胸部にあるコア。あの部分から全身に流れるエネルギーによりスーツパワーを引き出しています』
三人の提案に乗ったスパイダーマンがカレンに解析を命じると即座にスーツの解析を行う。解析の結果によると先程スパイダーマンが何度殴打しても凹む程度で可奈美の八幡力の怪力でも切断は不可能であったため相当頑丈であることは理解できる。
「なるほど、ってことはあのコアを破壊できればスーツの機能を停止させられるかもって事か」
『恐らくはそうでしょう。しかし、貴方が胸部を殴打しても大したダメージが無いことを鑑みるにあのコアそのものにもかなりの衝撃を与えなければ破壊は不可能でしょう。そして、狙いがコアに集中すればそれだけこちらの手の内を読まれることになります』
「つまり、一番火力ゴリラな人がアイツのコアを破壊すればいいってこと?」
「おい、ゴリラ言われてるぞ奈良盆地」
「どう見てもお前のことだチビ!刻むぞ!」
『はい、その通りです。しかし、先程も申した通りチャンスは数回も無いでしょう』
全員がカレンの解説を聞いて出した結論。それは、最も火力の高い者がライノのコアを攻撃し、残りの者達はライノの封じてその高火力の者が一撃を打ち込めるようにチャンスを作るということだ。
ライノは構えを解かずにこちらの出方を伺いながら臨戦態勢に入っている。
「よし、皆死ぬ気でアイツを押さえるよ!」
「誰も死なせない、そして・・・・勝つ!」
「私は・・・こんなところで終われないっ!」
スパイダーマン、可奈美、姫和がライノを押さえる役割を担うことになり3人は並んで前に出て可奈美と姫和は自身の御刀を正眼に構える。
そして、その後ろで最も攻撃力が高く、ライノのコアを狙う役割を狙う薫が祢々切丸を肩に担いでいるがやはり気だるそうにしている。
スパイダーマンは薫の方を向いて被っているマスクのシャッターが動きながらウインクする。
「頼むぜヒーロー!ここで決めたら超カッコいいぜ!」
「しくじるなよ」
「お願いね、薫ちゃん!」
「・・・・・ったく、こんなメンドクセー役割柄じゃないんだけどな。けど、ここで逆境をぶっ壊して皆の期待に応えんのがヒーローってもんだよなぁっ!」
自身を守り、隙を作りライノの動きを押さえる3人に呼び掛けられるとダルそうに頭を掻いた後にヒーローと呼ばれた事が嬉かったのか口角を吊り上げて不敵に笑い、片手で祢々切丸持ち上げホームラン宣言をするバッターのように祢々切丸の切っ先をライノの方へと向けて啖呵を切る。
「超カッコいいデース!惚れ直しマシター!」
「ねねー!」
薫が蜻蛉の構えに入り、今自身が出せる渾身の一撃を打ち込むために一度心呼吸をし、瞳を閉じて肩の力を一度抜く。
そして、力強く開眼して相対するライノを強く睨んで足で思いきり地面を踏みつけると靴が地面を小さく砕く。
そして、祢々切丸を握る手に力を込めて力を貯め始める。
「全力全開の最大火力でぶっぱするにゃ少しチャージが必用だ。ちと時間が掛かるが、粘れよお前ら。こっからのオレは・・・・最初から最後までクライマックスだぜ!」
長くなりそうなんで一旦ここで。
ファーフロムホームまで1ヶ月切りましたね、楽しみ♪
遅れたけど5月29日スタークさん誕おめ!