刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任-   作:細切りポテト

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私用でごたついてて遅れたンゴ。

泥臭い戦いになってるのは許してクレメンス。


第29話 渾身

直接的な物理攻撃での正攻法で勝利することが困難なライノに対し、胸部にあるライノのスーツを稼働させるエネルギーをスーツ全体に送るコアにダメージを与えてスーツの機能を停止させることを選んだ面々は最大火力の一撃を放つ為に力を貯めている薫を護衛するために可奈美、姫和、スパイダーマンの3人はライノを薫に近付かせないように、動きを封じる為に各々で攻撃を仕掛ける。そして、戦闘不能なエレンは近くで戦闘を見守っていた。

 

「何をする気か知らんが・・・させるか!」

 

 

「せいぁっ!」

 

「ふん!」

 

力を溜めている薫を止めようと頭部の兜の角をこちらに向けて地響きを立てながら突進してくるライノに対し、可奈美と姫和は接近した後に左右に飛んで回避して着地と同時に、斬るのではなく殴りつける鈍器のように渾身の八幡力を込めて御刀を横一閃に振り抜き、腕部の装甲に当ててライノの装甲に金属音と金切声をあげながら御刀がめり込み、足を力強く踏ん張りライノの動きを一時的に抑える。

 

「やっぱスゴい怪力!」

 

「踏ん張れ可奈美!」

 

しかし、ライノの突進の勢いとライノの怪力はあまりに強く、抑えながら踏ん張っている足ごと引き摺られ始める。

スパイダーマンは薫の方にライノが行かないように突進してきたライノに対し正面から挑む。

 

糸の量と範囲が広く拘束力の強いウェブグレネードは先程使い切ってしまったため、今あるウェブの機能で勝負しなければならない。

ライノが地面を脚で強く蹴り上げた瞬間に指と指の隙間にトリップマインを挟み腕を交差してライノの腕、脚の関節をロックし、可奈美と姫和が力業で拮抗している最中ライノの注意をトリップマインから逸らす為にスパイダーマンは堂々とダッシュで接近しながらトリップマインを左右に投げると地面や樹木に吸着する。

 

「そらよっ!」

 

「ぐっ!」

 

「キックは1番、パンチをご希望の方は2番を押してくださいっと!」

 

投げた後に地面を勢いをつけて飛び上がってライノの顔面に飛び蹴りを入れる。

突進の勢いが弱まっていたライノの顔面にスパイダーマンの蹴りはクリーンヒットするがやはり兜が凹む程度であり大したダメージはなく突進の力が強まり始める。

しかし、目的はライノの視界からトリップマインを隠すことでありスパイダーマンはそのままライノの正面に組み付いたままライノの頭部を素早く高速で連続で拳による打撃の殴打し始める。

 

「アカン!ゴールしたらアカン!って言っても聞かないんだろうなぁこのマッチョメンは!」

 

 

「何の話だ?」

 

そして地道に前方に動いていたライノがトリップマインの射程に入るとトリップマインがライノの動きを検知して様々な方向に設置したトリップマインからクモ糸が飛び出しロックした部分に向けて射出される。

 

トリップマインの糸の量は大体人間一人を拘束力する程の量しか無いが自在に設置できる点や狙った相手にのみ飛んでいくというどちらかというと隠密行動向きのウェブで直接的な戦闘では扱いにくさもあるがライノの動きを抑える為に様々な方向から糸で拘束することを選択した。

そして、音で糸が飛んでくる位置が分かるものの複数方向となると回避に使う余力がなく、3人に動きを抑えられ相手をしているとなると全てを回避するという事は至難の業となる。

 

「そう来たか・・・・だがっ」

 

「うわあっ!」

 

「ちっ!」

 

 

ライノは一度足を止めて急ブレーキをかけ、身体を捻って1回転させると突如にバランスが崩れて力業で踏ん張っている二人が身体から離れると姫和には裏拳、可奈美は回し蹴りを入れて吹き飛ばすと同時にトリップマインから放たれるクモ糸の狙いを逸らして当たる位置を少なくし、いくつかのクモ糸は回避し、また多少クモ糸が被弾したが被弾した面積は少ないため、大した拘束力はない。

 

直後に頭上に貼り付くスパイダーマンを拘束を逃れた左腕で掴んで後方へノールックで投げ飛ばす。

 

「うわっ!ちょっと!」

 

しかし、スパイダーマンも投げ飛ばされたと同時に両腕のウェブシューターのスイッチを押してライノの両肩に当てて木に激突しながらもすぐに貼り付いて両腕でクモ糸を自分の方へと引き寄せて引っ張り、ライノと拮抗する。

 

「カレン!最大出力!」

 

『了解、最大出力で放出』

 

スパイダーマンは即座にカレンに指示を出すとカレンはすぐさまHUDで電気ショックウェブを作動させ、設計上最大出力でパワードスーツの上からでも相手にダメージを与えられる威力になる電気ショックウェブを最大出力に設定して放出する。

スパイダーマンのウェブシューターから視認できる程の蒼白い高圧電流がライノに向けて流れ始めてライノの両肩に貼りついているクモ糸を伝ってライノに直撃する。

 

「ぐっ!」

 

ライノはショッカーのように振動波を出す為のバッテリーがスーツに仕込まれている訳ではなく、雨天時の漏電による感電対策として高い耐電仕様が施されている訳ではない為、パワードスーツの上からでもダメージを与えられる程の高圧電流を通すことになり物理攻撃に対しては優秀な防御力を誇るライノであっても生身である本体に直接ダメージを与えられる武器には耐性が低かったのだ。

元々対大型荒魂との戦闘を想定して作られている為、そのような攻撃をして来る相手との戦闘は考えにくいため対策のしようが無かったのだが。

 

「高圧電流か・・・っ!だが、気合いがあれば耐えられる!」

 

「いやそれもう人間業じゃないよね!うおあっ!」

 

最大出力の電気ショックウェブの高圧電流がライノの全身を駆け回り、細胞が焼き切られるのではと錯覚する程の痛みが走り意識が一瞬薄れるが気合いと意地で耐えて肩に貼り付いたクモ糸を自由になった左手で掴み、1つに束ねた後に力強く自分の方へと引き寄せる。

 

しかし、スパイダーマンも負けじと物に吸着する能力を使用して踏ん張るが逆にスパイダーマンが貼り付いていた樹木がライノの引っ張る腕力に耐えきれずにへし折れてしまい、そのまま林の中へ投げ飛ばされる。

 

しかし、気合いで高圧電流に耐えて気絶は免れたが電気ショックによるダメージとスパイダーマンを投げ飛ばしたライノに隙が生じる。

 

「今だ!」

 

「うおらああああああああああ!」

 

「・・・・・・・・っ!」

 

スパイダーマンは林へと投げ飛ばされ、木々と衝突して薙ぎ倒しながらもある方向を見て叫ぶと力を貯めていた薫が準備を済ませて地面を蹴り上げて駆け出し、飛び上がってライノに向けて上段から祢切丸を振り降ろそうとしている。

 

大太刀のようにリーチの長い武器を扱う相手に後方に向けて回避をするというのは得策では無い為、一瞬反応が遅れたが急いで左右どちらかに動ければ回避できなくもないと判断し、急いで地面と右腕を繋ぐクモ糸を引き剥がし、まだ痛みが残る両足を動かして右に回避をしようと試みる。

 

・・・・・しかし、足元が田んぼに長靴で入って足が抜けなくなった時のように動かせない。

 

「私たちがいることを忘れるなっ!」

 

足元を確認すると可奈美が右足、姫和が左足にしがみついて八幡力を発動させてライノの足を押さえつけていたのであった。

強力な一撃を振り下ろそうとしてくる薫と電気ショックウェブの高圧電流で意識を刈り取られると思うほどのダメージにより二人にまで注意を向ける余裕が無かったため二人の接近を許してしまった。

 

「しまった・・・・!」

 

「薫ちゃん!」

 

「行け!」

 

「GO!」

 

二人を振り払おうとするが電気ショックによるダメージで二人に八幡力による超人的な怪力によって抑え込まれて左右に飛んで回避は不可能であることは想像がつく。

そして無情にも力を貯めた薫の八幡力を込めた一撃がライノへ向けて渾身の力で振り下ろされていた。

このまま祢々切丸が振り下ろされればライノのコアに直撃してライノの機能は停止させられて自身は敗北。真希と寿々花が来る前に逃亡者に逃げられるだろう。

ライノは回避が不可能であるのならば一か八かの賭けだが今できる唯一の手段に出る。

 

右腕と地面を繋ぐトリップマインを地面ごと引き剥がして両腕を自由にし、本来なら薫に向けて拳のストレートをお見舞いして迎撃する所だが既に薫は祢々切丸を振り降ろしていたためそれでは間に合わないと判断し薫の視線と祢々切丸の刃先の軌道を眼で注視する。

 

「きえええええええ!」

 

「ふんっ!」

 

祢々切丸が振り降ろされて薫がライノの胸部のコアを注視していたためコアに狙いを定めて来ていると予測し、胸部のコアに向けて振り下ろしてくる祢々切丸を脇を絞めて呼吸を整えると両手のひらを合わせるようにしてライノに直撃する前に祢々丸を寸での所で受け止めた。

真剣白刃取りだ。

 

しかし、直撃を防いで薫の八幡力を込めた渾身の一撃を受け止めることに成功はしたものの振り降ろした際の衝撃までは完全に殺し切れずライノが立っていた地面が砕けて足元が陥没し、足が地中に沈み込み全身が痺れるような衝撃が周囲にも伝わり、足を押さえ込んでいた可奈美と姫和も驚いたが咄嗟に金剛身を張ることで身体の耐久力を上げて衝撃から身体を守ることに成功する。

そして、ライノの装甲の節々にヒビが入り、パワードスーツの内側のライノの生身にも全身を鈍器で強く殴られたようなダメージが伝わるが全神経を筋肉に集中させ、身体中の血管を浮かび上がらせながら歯を食い縛って痛みに耐える。ライノの全身の筋肉が「もうこれ以上は無理だ」といったとしても任務の遂行の為に筋肉に命令し筋肉の限界を超え、薫の一撃に耐えて見せたのだ。

 

 

「何っ!?」

 

「白刃取り!?」

 

「このクソッタレ!」

 

全員が驚いている最中薫が祢々切丸を更に押し込んでライノのコアに当てようとするがライノの腕力と拮抗してしまい祢々丸が押し込めない。

 

「うおりゃぁっ!」

 

「いてっ!」

 

「薫!」

 

「ねね!」

 

するとライノは白羽取りの体勢のまま祢々切丸ごと薫の身体を持ち上げて地面に向けて振り下ろすようにして力強く地面に背中から叩き付ける。叩き付けられた衝撃で地面が砕け、砕かれた土と岩盤の破片が宙を舞う。

今自分の出せる全てを攻撃に集中していたためか、受け身を取る余力が無くライノに祢々切丸ごと持ち上げられた挙げ句抗う隙もなく背中を強打して怯んでしまう。

 

 

大太刀を扱う薫相手の場合距離を空ける方が部が悪いため、祢々切丸を振り回しにくい距離が弱点となる間合いでの接近戦に切り替える。

 

「先に君から沈黙させる」

 

「おいおいおいおい!男女平等メガトンパンチかよ!」

 

二人に足元を押さえられているが足を使わずに拳を地に伏せる薫に向けて振るうことは可能であるため、反撃される前に右手の拳を強く握って右肘を後方へと持っていき、振りかぶって薫目掛けて振り降ろしてくる。

 

「まだだ!・・・・ぐっ!」

 

「姫和ちゃん!」

 

薫がライノの振り下ろされる一撃に焦っているとライノの左足を押さえていた姫和が左足から離れて薫を庇うようにして立ち塞がりライノの右ストレートに対し八幡力を載せた小鳥丸の横一閃で拳に当てて防いだ後に押し返そうとするが小鳥丸とライノの拳が衝突したと同時にライノの腕力に力負けして身体が宙に浮き、左側の森林へ殴り飛ばされる。

 

「任せて!大丈夫!」

 

 

ライノに貼り付いていた樹木ごと投げ飛ばされて遠くまで飛ばされていたスパイダーマンが戦線に復帰しようと移動して来ていた。

木々の頂上をクモ糸でスウィングし通過と同時に、前方に見えるライノに殴り飛ばされた姫和の背中に右手のウェブシューターから放つクモ糸を当て、引っ張り強度が強くなると同時に手首を自分の方へと軽く振ると姫和の身体がスパイダーマンの方へと引き寄せられてスパイダーマンに片手でキャッチされる。

咄嗟ではあるが背中を摘まむようにして持つという配慮に欠ける持ち方ではなく、肩に担ぐという形になる。

 

戦闘中ではあるが同年代の異性とこれ程接近したのは初であり意識すべきではないがほんの少し恥ずかしさもあるものの地上を見ると今度は可奈美が薫の前に立ち、ライノの振り下ろされる拳を防いで押し返すのではなく部分的にカウンターで弾いてライノの剛腕から放たれる怪力の威力を巧みに逃がして薫の方へと近付けさせないようにしながら一進一退の攻防を繰り広げていた。

しかし、ライノ相手に一人で挑み続けるのは至難の業であることは一目瞭然であるためスパイダーマンの方を向いて声を大にして投げ掛ける。

 

「い、今すぐ降ろせ!二人がピンチだ!」

 

「マジだ。OK、了解!」

 

スパイダーマンも地上での可奈美のライノに対し奮闘を確認するとスウィングしながら地上スレスレの位置まで来た際に途中で姫和を地上に降ろし、勢いを付けたまま背後からライノに飛び蹴りを入れる。

可奈美の相手をしていたため、スパイダーマンの飛び蹴りを回避出来ずに直撃するが軽く姿勢を崩す程度であり、またしても大したダメージでは無い。

しかし、一瞬スパイダーマンがライノに組み付く隙を与

える。これだけで充分なのであった。

前方を見ると薫も既に叩き付けられたダメージから回復し、再び祢々切丸を構えて力を貯め始めている。

 

スパイダーマンはライノがフラついた瞬間に背中をよじ登ってまたしても首を足でロックして力を入れて固定するが今回は首を締め上げることが目的ではない。

 

「馬鹿者!それが大して通用しないのを忘れたのか!?」

 

「待って、何度もそんなに無意味なことはしないよスパイダーマンは・・・何か、何か目的があるのかも」

 

「またそれか?無意味だと分からないのか?」

 

ライノと姫和には一度破られた手段を再度取る理由を理解できなかったが、可奈美は冷静にスパイダーマンの方を見ていた。

 

「確かに大してこれは通用しなかった。けど、ここでいいんだよ!」

 

そう言うとスパイダーマンはライノ兜の頭を押さえてウェブシューターを耳の辺りに当てる。

するとすかさずスパイダーマンは叫ぶ。

 

「難聴系ラノベ主人公じゃないサイ以外は耳を防いで!最高にロックだからさ!カレン!こいつの耳に向けて人間が最も不快な音を超大音量で流して!」

 

「何!?」

 

「それって・・・・・」

 

 

 

 

 

「黒板を引っ掻く音だ!ミュージックスタート!」

 

『了解、人間が不快に感じる音波を流します』

 

 

力を貯めている薫は咄嗟に移動したねねが耳を塞ぎ、残りのスパイダーマン以外の全員が急いで耳を塞ぐとスパイダーマンのウェブシューターからハイテクスーツに搭載されていたスタークが遊び心で入れたのか誰得な機能であるがその機能を使用してギイイイイイイイ!と今この場にいる全員の耳をつんざくような不快な音が響き渡る。

この音を敵側の残存している戦力の寿々花と真希が聞きつけ場所を教えてしまうリスクはあるがライノと早めにケリをつけるためにやむを得ずにこの手段を選んだ。

地球上の生物の感覚の中に聴覚がある。空気中の振動を拾い上げ、それを音に変える感覚だ。

 

空気の振動を音に変換する仕組みは驚異的だが中には神経を逆なでするような不快な音もある。

その中で学校に通って先生が授業を行う際によく使用される黒板。誰もが目にしたことがあるだろう。

しかし、クラスの誰かが悪ふざけで引っ掻いたり、チョークで文字を書く先生の爪が偶然黒板に当たってしまった際になる想像しただけで寒気のする皆大嫌いなあの不快な音。誰しも図らずして聞いたことがある筈だ。

人間は個人差があるが15~2000Hzまでの周波数なら問題は無いと言われているが黒板を引っ掻く音は2000Hz~5000Hzとされこの周波数は人間の耳によって増幅され不快感を煽る。

その不快な音がスパイダーマンのウェブシューターからライノの兜の集音機能を通してライノの脳内に直に流れ始めている。

 

ライノは普段の物静かな姿から想像できないような絶叫を上げている。どうやらライノにもこの音波が不快な音だったようだ。いくら身体を筋骨隆々の肉体に鍛え上げようと人間の生まれ持った脳の機能までは鍛えようがないのかかなり悶えている。

またスパイダーマンも両手が塞がっている為、スパイダーマンもその音波を聴いてしまうためほぼ自爆技に近いがライノの動きを抑制するために取れる手段を選んだのだ。

 

「うっ、ぐおああああああああああああ!」

 

「僕らの、心音や呼吸音や足音、そんな些細な音でも聞き取れる位耳が良いんだろ!?だったらこいういう嫌な音もより強く拾っちゃう筈だ!」

 

更に、ライノの視界が狭い代わりに聴覚を発達させた些細な音でも聞き分ける集音機能はオンオフが出来ずにスパイダーマンの流す音を通常の人間よりより強く広ってしまう。

それも直接耳に当てて音波を流し込まれているのだから尚更だ。

ライノは音波の不快感に耐えきれず身悶えて絶叫しているがスパイダーマンも不快な音に耐えながらライノの耳から手を放さないようにしている。

 

「・・・・このっ!」

 

「うあっ!」

 

ライノは腕を伸ばしてスパイダーマンを両腕で掴んで持ち上げると同時に地面に思いきり叩き付ける。

叩き付けられたと同時に背中を強打すると音波が止まるとライノは仰向けに倒れているスパイダーマンを逃がすまいと右足でスパイダーマンの胸から腹の辺りを全体重をかけて踏みつけて、ぐりぐりと地面に押し込む。

ライノのパワードスーツを含めた体重とライノの脚力がスパイダーマンの身体を圧迫していき、あまりの威力に昨日の戦闘の時のように肋骨が折れ、臓器にもダメージを与えられて呼吸が苦しくなってくる。

 

「少しじっとしていろ!」

 

「ごふっ・・・・僕だけに注意がそれるのも待ってたんだよ!」

(こんな所で負けられない!大分セコいし無茶苦茶だし作戦にすらなってないけど、泥臭く諦め悪く食らいついて活路を見出だす!)

 

地団駄を踏むように何度も力強く踏みつけられて、マスクの下で吐血するスパイダーマン。しかし、ライノにこれ程までには接近出来た上に注意が自分に向いている。

踏みつけられる痛みに耐えながらスパイダーマンは両手の掌のスイッチを押す。

スイッチを押すとウェブシューターの機能の1つ、スプリットを選択し、糸が複数の方向に裂け、掌のスイッチを何度も連続で押して肩や腕の間接の節々に当てるとクモ糸を束ねて力付く掴んで引っ張り、踏みつけられながらライノの腕を押さえて拮抗する。

 

すると再び可奈美と姫和がライノの足にしがみついて八幡力を発動して足を押さえる。

 

「今度は外すなよ!チンチク!」

 

「準備はいい!?」

 

「僕らの心配はいい、全力で行け!」

 

「薫!」

 

「ねねー!」

 

3人が命懸けの覚悟を決めて全力でライノの動きを封じ、戦闘不能ながら勝利を祈るエレンとねね、全員が最も攻撃力の高い、重要な役割を担うことになった薫に全てを託す。

 

 

(何故だ?なぜ君たちはそこまで抗う?国を敵に回してタダで済むわけがない。事情があるのかも知れないが君たち子供が命を懸けてでもやることなのか?何故今もこんなにボロボロになりながらも何度も立ち上がってくるんだ・・)

 

 

ライノは顔に土くれが付着し、衣服が泥にまみれながら、所々擦りむいて血を流しながらも、何度薙ぎ倒しても折れずに立ち向かってくる年端も行かない子供達の姿を見て困惑すると同時に自身が惨めな気持ちになっていた。

何故自分は彼女達のように運命に抗おうとしなかったのか、流されるまま自分の居場所も生活も何も残っていないからと楽な方へ楽な方へと流されてウジウジとしている自身は身体だけがでかくて小さい人間なのだと劣等感を駆り立てる。

 

だが、今自分がこの任務に臨んで彼等と敵対しているのは自身を救ってくれた組織への恩を返すためだ。

自分の劣等感等今は関係ない。命を救ってくれた組織への恩を返す。この気持ちだけは間違いなく自分自身から生れた気持ちだ。

それたけでいい。だから負ける訳には行かない。例え自分が彼等よりも小さい人間であったとしても、力でその差を覆す。

ライノは更にスーツの力を開放してスパイダーマンを更に強く踏みつけて意識を奪いに行く。一瞬クモ糸を握る力が弱まったがスパイダーマンはすぐにもう一度クモ糸を強く掴んで引っ張る。

ライノの足を押さえている可奈美と姫和も負けじと抵抗しいるが振り払われるのも時間の問題だ。

 

「俺にも、君たちと同じ負けられない理由がある!」

 

「くそっ!こいつ急に力が!」

 

「押さえるのも限界かも・・・・っ!」

 

 

この一撃で決められるかが勝敗を握る鍵となる。

 

全員からの声を受け、先程から力を再度溜め直し準備が完了しいる薫は蜻蛉の構えを取りながら力強く、そして低く、熱さの籠った声で返す。

祢々切丸を握るオープンフィンガーのグローブの下で掌が汗ばみながら握る力を更に強くして擦れた熱が掌を熱くする。

 

「ったく・・・・本っ当に、めんどくせぇ!」

 

言葉は悪いが全員の意思を無下にせず、必ずやり遂げると承った言葉だ。

 

「うおおおおおおおおおおおおお!」

 

今度は外すまいと心に決め、成長期の高校生にしては短い足で地面を蹴り、駆け出しながら飛び上がって自身の背丈よりも遥かに高いライノと同じ高さまで飛びあがり自身の身の丈よりも大きい祢々切丸を両腕と同時に振り上げてライノの胸部のコアを向けて渾身の力を込めて振り下ろす。

いつもよりも力と熱が籠っているのは皆の覚悟を背負っているからだろうか、それとも案外思っているより自分は熱くなりやすい性格なのか、自身でも分からないが今の自分は負ける気がしなかった。

 

「これがオレの・・・・・全力だっ!」

 

ライノは3人に力業で動きを封じられていたがスーツの力を更に開放して足元の姫和と可奈美を振り払うが薫が祢々切丸を振り下ろすスピードの方が早く間に合わない。

 

薫が全身全霊の一撃を込めた一振りはライノの胸部にあるコアに力強く衝突し、刃先がコアに深くめり込むと同時に下方に向けて思い切り振り抜くことで機能停止どころかコアを粉砕し、ライノのパワードスーツの鋼鉄の装甲も切り裂き、破壊する。

 

ライノの生身のアレクセイに切り傷は与えていないが今回は防御が間に合わなかった為、意識を失ってはいないがライノのパワードスーツが破壊されて装着を解除されると同時に後方に仰向けに倒れる。

 

「オレらの勝ちだ」

 

「あぁ俺の完敗だ、そして君たちの勝利だ」

 

倒れる前のアレクセイに勝利宣言をするとアレクセイは素直に自身の敗北を認め、既に身体を動かす体力も無いのか生身で襲ってくるということは無さそうだ。

 

「ナイスデス薫ううううう!」

 

「ねね!」

 

「やったね皆!」

 

「まぁ、今回だけは感謝しといてやる」

 

「ごふっ・・・・・今の君、最高にヒーローだったぜ・・・」

 

薫がライノのスーツを破壊するとエレンとねねが薫に飛び付いて姿勢が崩れる。可奈美が勝利を喜び、姫和は素直にはならずに遠巻きに賞賛し、スパイダーマンは寝転びながらサムズアップして薫を讃えている。

すると、その皆の様子に気を良くしたのか途端に調子に乗り始める。

 

「そうだろうそうだろう。もっとMVPのオレを崇め奉れ、オレに休暇と賞与という報酬を寄越すのだ・・・・・やべ、どっと疲れた・・・・・。もう歩けねぇ誰かおぶってくれ・・・」

 

「ハイハイ、分かりましたヨ~」

 

「それよりもこの騒ぎだ、すぐに他の親衛隊も駆け付けるぞ」

 

「心配ご無用!既にタクシ一を1台手配してマスカラ!」

 

しかし、全身全霊の力を込めた攻撃を何度も放った為、既に薫の体力は限界に達しており力なく寝転ぶと運んで貰うことを懇願する。

 

ライノの踏みつけから解放されたスパイダーマンは覚束無い足で立ち上がろうとするとすぐに崩れ落ちそうになり可奈美に肩を貸される形でようやく立つことが出来る状態になっていた。肋骨が折れ、折れたら肋骨が肺を引っ掻いていて呼吸をする度に痛みが走るがスパイダーマンの再生能力があれば数時間経てばある程度は完治する為、スパイダーマン自身は大して気にしてはいない。

 

そして、エレンがいつの間にかどこかに連絡を取り、既に逃走の準備を進めていたようだ。

一行はそのタクシーと称す物がある場所に行こうと歩みを進め、山を下る。

 

アレクセイは彼等の姿が遠ざかって見えなくなると自身には無い眩しさを感じたが、ノロの過剰投与に肉体が耐えきれずに気を失って負傷している夜見の姿を確認すると起き上がってそちらに歩み寄り、肩に担いで治療を最優先させる為に駐屯地代りにしていた駐車場に戻る。

 

「すまない皐月隊員。無様にも負けてしまった。本当なら生身でも彼等を追うべきなんだろうが貴女が心配だ。ここは退こう」

 

「皐月隊員。貴女からは彼等と同等の、いやもしかするとそれ以上に強い覚悟と意思を感じられる。例え自分がどれだけ傷付こうとも何かを成し遂げようとする純粋な力だけでは語り切れない強さがある。俺には・・・・・それがあるつもりでいたが実際はまだまだ足りないのかも知れない。あの若造の事を偉そうに言えた立場でも無いな」

 

意識の無い夜見にはアレクセイの言葉は一切届いていないがアレクセイは独り言のように語りかけながら夕映えに染まる森林を歩いて行く。

 

下山した一行は港から舞草の構成員の操る小型のボートに揺られ海上を移動していた。

しかし、これから逃走を図るにしてはかなり陳腐に見える。

勿論約1名乗り気ではない様子だ。

 

「こんなボートで逃げ切れるものか、連中の事だ。すぐに海軍に連絡して・・・」

 

「多分だけど、これが本丸じゃないよね?」

 

「オフコース!私が呼んだタクシーはこれでなくて、アレデスから!」

 

駐車場で寿々花とエレンの尋問の内容を聞いていたスパイダーマンはエレンの身内のこと、そしてスタークが舞草に協力しているという点を踏まえるとこのボードではなく別の物を用意していると考えてその旨を伝えるとエレンは即答し、エレンが視線を沖の方へと向けるとボートの先の海面がゆらゆらと揺れ始め海を割るようにして黒い鉄の塊が姿を現す。

 

アメリカ海軍所属の潜水艦が海上から姿を現すと薫とエレン以外は呆然としていたがある程度怪我が治ってきたのかスパイダーマンは幼子のように軽くテンションが上がっていた。

 

「うひょー!すっげー!僕生の潜水艦なんて初めて見た!」

 

「ようこそ舞草へ!ささ、早く乗りマショ」

 

エレンの導きにより急いで全員が潜水艦に乗船し、海中深くへと潜水し、一行は親衛隊一行の追跡から逃れることに成功したのであった。




アッサリかもだけど複数対1だしってことで許して。

マーク85とアイアン・スパイダーのフィギュアーツかmafex欲しい・・・・。
ファーフロムホームまで後8日!まぁ、初日には行けなそうですけどね・・・・とりまファーフロムホーム公開日前後には1回は出せるようにしたい!

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