刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任-   作:細切りポテト

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私用でごたついて遅れたンゴ。7月中は中々時間取れなくて遅くなりそうっす。
新装備の事を潜水艦のメンツが振り返るだけです。特に話は進みません。
余談:ファー・フロム・ホーム見た後にホムカミを改めて見ると見方が大分変わるというか、気付くポイントも多くて感慨に耽りました。そして、実はアーロン叔父さん出ててマイルスにも軽く触れてたんすね。


誤字報告ありがとです。


第31話 振り返り

潜水艦内の寝室に案内され、女性陣は4人用の2段ベッドが2つある船室に移動し、戦闘による怪我の手当てを行なっていた。

 

「颯ちゃんもこっち来て治療しなよー」

 

『僕はもう大体完治して来たからいいの!それに・・・女子が密集してる空間はいづらいし、着替えたりする中に行ける訳ないだろ』

 

「大丈夫だよ、颯ちゃん男子って感じしないし」

 

「もちろん今入って来たらぶっ飛ばすつもりだが、まぁナヨナヨしくて女子みたいな声してるしな」

 

「よくよく見るとソウタンって、ちょこっとだけ可愛い顔してますからネ〜」

 

『アンタらフォローしてんの!?それともバカにしてんの!?』

 

治療の後はこれまでの話をまとめる為に話し合いをするが治療の為に衣服を脱いで着替えたりもするため颯太は扉の外で胡座をかいて待機している。年頃の女子中高生のやり取りを盗み聞きしているようで妙な背徳感を感じていたが年頃の中学生である為か聞き耳を立てて会話を聞くことに専念していた。

 

包帯の数が少ない為、効率的に広い面積に巻く為に姫和が可奈美の脚に包帯をキツく巻き付けると可愛らしい悲鳴を上げながらもう少し優しく巻くように懇願しているとねねが残り少ない包帯に包まりながら転がって遊んでいると姫和が糾弾する。

 

するとねねをぞんざいに扱われた薫が姫和に茶々を入れて口論になっているが思春期の男子には興味はあるが触れてはいけない内容だと思う為、気恥ずかしさで部屋に移動したい気分になっている。

 

 

「包帯が足りてないのに遊ぶな貴様!おい、この荒魂を外に叩き出せ!」

 

「だから、ねねはオレのペットだっつってんだろ、エターナル胸ぺったん女」

 

「え、エターナルゥうう!?」

 

「おう、ねねが懐かない=お前には胸が成長する未来が無いってことだ。お判り?」

 

『僕もう用意された部屋に戻っていいっすかね・・・・?』

 

するとエレンがねねを持ち上げながらすかさずフォローを入れる。

 

「ねねを責めないでくだサイ。包帯が足りないのは私が使い過ぎてしまったせいなのデスカラ」

 

姫和と薫の視線が一点に集中する。その先はデデドンと言うBGMでも流れそうな程の高校生とは思えない程の迫真的な大きさの胸。連日の戦闘で負傷し、この中で最も包帯を使用した為包帯の数が少なくなったのだがその驚異的な胸囲に巻くには確かに相応の量が必要となるだろう。

 

 

「「ぐぬぬぬ・・・・」」

 

幼児体型とスレンダーな体型の持たざる者の2人は視線で人が殺せるのでは無いかという程の恨めしそうな視線をエレンの胸部に向け、悔しさを噛みしめている。

 

「それよりもビックリしたよねー、fine manさんがエレンちゃんのお祖父ちゃんだったなんて!」

 

「確かにな・・・・」

 

先程までfine manの正体であるフリードマンから舞草の経緯や背景を説明され、トニー以外にも姫和の母親である十条篝が舞草に加担していたという衝撃の事実を聞かされ、姫和は心の整理が追い付かなかったが現実を受け止めて今は状況の把握に努めることにした。

 

ねねを膝の上に乗せた状態でエレンが補足の説明を始める。

 

「ヒヨヨンのマムのお陰で準備は着々と進み、いよいよ折神紫に攻勢を掛けようとしたまにその時・・・まさかヒヨヨンが真正面から折神紫にぶっ込み掛けてオジャンになるとは予想外デシタ・・・」

 

「要するにお前のせいで一気に事態がめんどくさくなった。アイアンマンがスパイダーマンに直接スーツを渡す算段も狂っちまったしな」

 

『けど、スタークさんからスーツを貰えて無事辿り着いたから結果オーライじゃないかな』

 

「私は私の目的の為に動いたまでだ」

 

『まぁ、裏でこんな大掛かりな組織が水面下で動いてるなんてそう簡単に想像付かないですしね』

 

姫和が紫を襲撃したことにより、攻勢をかけようにも以前よりも警戒が強くなってしまった為、計画が一から練り直しになってしまったが目的が同じなのであれば味方に付ける事を思い付いて結果的に無事に辿り着いたことは僥倖とも言えるだろう。

何より、舞草の計画を姫和が知るということは困難であるため、彼女ばかりを責めるのは酷な話だ。

しかし、マイナスなことばかりでは無い。現にこの状況が生み出されたお陰で折神家が非人道的な研究をしている物的証拠となるノロのアンプルを回収できたのだ。

 

「でも、収穫もありマシタヨ!コレをサナ先生に解析して貰えば、折神家が人を人為的に荒魂化させる非道な研究を行なっているって証明になれば折神紫体制に大打撃を与えることができるという訳デス」

 

「んで、オレたちは任務完了。後はジジイと学長がなんとかする」

 

『あーそれに、スーツの偵察ドローンで奴等の駐車場での車輌を一斉にスキャンして親衛隊が身体から荒魂を出す瞬間の記録映像も取ってあるから後で博士に渡せば何かしら役に立つかも。それに、僕らを捕まえるついでに世界中からその手の技術のエキスパートを雇って新装備のテストを行なってる事も証拠になると思う。それぞれ未確認の装備もあるだろうし一通り見返しとく?』

 

トニーから渡されたスーツにはマスクを被って視認した映像を記録しておく機能が備わっているため、颯太がマスクを被っている間に遭遇した出来事は全てスーツの記録映像として残っている。

その説明を受けて室内にいる一同は驚いたがトニーの技術力ならあり得なくは無いと状況にも慣れ始めて来た。

 

「マジか、そんな機能あんのかよ。超見てえ」

 

「OK!入ってきていいデスヨー」

 

「じゃあ・・・・失礼します・・・・ぶふぉっ!」

 

薫とエレンに入室の許可を貰うと、やはり女子だけが密集した空間に入室するのは気が重いが扉のノブを下に下げ、前へ押す。

 

先刻までは部屋の外にいた為室内の状況を詳しくは把握していなかったが室内に入室するとベッドに腰掛けて脚に包帯をキツく巻き付けた可奈美、そしてその隣に座る姫和、そして反対側のベッドに腰掛ける薫、そして床に胡座をかいているエレンの姿を確認出来たが、エレンの姿を見た瞬間に顔を赤面させて慌てて顔を横に向けて視線を外す。

無理もない。今のエレンの格好は制服のワイシャツのボタンを全開にはだけさせ、胸元を包帯のみで巻いて隠している非常に際どくて扇動的且つ、アメリカ人の遺伝子なのか日本の平均的な女子高生よりも格段と発育が良い力強さと弾力を主張する豊満な胸が包帯でのみ隠されているという一部のマニアックな人達が好みそうな格好だ。女性に免疫が無い颯太が直視できるものではない。

昨日の夜にショッカーとの戦闘でエレンを受け止める際に失敗して顔を埋めてしまってその感触を知っているため思い出すと同時に恥ずかしさが倍増される。

 

「ちょ、ちょっとなんて格好!大丈夫だって言ってたじゃないか!」

 

「私は別に気にしまセン。自分より二個年下のキッズですからネ」

 

「いや、でも・・・・」

 

エレンは自分よりも年下の相手であるためか特段気にした様子を見せてはいないがその扇動的な格好は思春期真っ只中の中学生には刺激が強いためか視線を合わせられない颯太。

すると薫が間髪入れずに話かけてくる。

 

「それよりスーツで撮ったって映像見してくれよ。気になるじゃねーか」

 

「あーそだね。よし、マスク被った後に携帯に繋げるからちょっと待ってて」

 

上手いこと話題が逸れた為、スーツの映像を見せることにする。刺激が強いエレンの方を極力見ないようにしながらリュックのチャックを開けて中に入れていたハイテクスーツのマスクを取り出して被り、電気ショックウェブの影響で使用出来なくなっていたが潜水艦に乗る直前に復旧した携帯を取り出す。電源を入れるとどうやら復旧したようでメッセージ欄には舞衣からのメッセージが多く届いていた。

自分達のことを本当に心配してくれていたんだなと実感し、2日程合っていないだけなのに何年も会っていないかのような懐かしさを感じる。

返信したいが海中では電波が透過せず返信は難しいため、地上に出たらになるが早く彼女を安心させる為にも後で自分も可奈美も姫和も無事だと言う事を伝えなくてはいけないと実感する。

 

マスクを被るとスーツのAIであるカレンがスパイダーマンにのみ聞こえる無機質な声で挨拶をしてくる。

 

『こんばんわ颯太』

 

「やぁ、カレン。皆と話をするからカレンの声を皆に聞こえるようにして」

 

『了解です。こんばんわ皆さん』

 

スパイダーマンが宣言するとスパイダーマンのスーツから機械で加工した無機質なカレンの音声が全員に聞こえるようになる。

一度その光景を見ている全員は初見程驚いてはいない。

 

「HI!カレン!」

 

「こんばんわカレンちゃん!」

 

「ああ」

 

「オレもペットだけじゃなくてサポートAI欲しいなー。希望としてはジャービスみたいなの」

 

「ねねっ!」

 

エレンがカレンに挨拶をし、薫の発言により一瞬自分のポジションが危うくなった危機感を感じ取るねねは白目を剥きながらガーン!という文字が頭上に浮かぶかの如き驚きようだ。

 

「カレン。僕のこの復旧した携帯に僕がスーツで見た映像を記録するシステムで見た映像を送って。何て名前だったか忘れたけど」

 

『了解です』

 

スパイダーマンは自身がスーツを着ている状態で視認した映像が記録されるシステムの名前が思い出せないことが脳内で引っかかりつつもカレンに指示を出す。

しかし、何という名前の機能だっただろうか。スーツに関しては覚えることが多すぎてパッと思い出せない時がある。

 

そのスーツの機能は何故かあまり堂々と口に出して言って欲しくないネーミングだった気がしていたが指示を受けたカレンが名前を口にしようとした際に段々の記憶の引き出しが開き始めて焦りが強くなり始める。

 

「あ、しまった!カレンやっぱちょい待って!」

 

『貴方の見た映像は全て記録済みです。機能名は・・・・・・・・・・・・・赤ちゃんモニタープロトコルです。ちなみに補助輪機能というスーツの機能を制限するシステムでもこの機能は使用可能です』

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「・・・・・・・・・・・ぷっwww」」」」

 

しかし、時は既に遅し。無情にもカレンはトニーが如何に颯太を子供扱いし、ヒーローとして初心者であると見ているかが分かる機能の名前を告げる。中学生にもなって赤ちゃん扱いのネーミングにスパイダーマン以外の一同は一斉に吹き出してしまっている。あの普段はクールな姫和でさえもだ。

カレンの無機質で淡々とした丁寧な口調が更に笑いを誘い。薫に至っては腹を押さえて床を叩きながら爆笑している。

 

「oh・・・あんまりなネーミングデスネ」

 

「ははは!赤ちゃんwモニターwwプロトコルwwアイアンマンのネーミングセンス最高かよwww」

 

「ダメだよ薫ちゃん!笑っちゃ・・・・失礼だよ・・・でも補助輪機能ってwふふっww」

 

「・・・・・・・・」

 

エレンはあんまりなネーミングセンスに同情しているが笑いを我慢する表情を崩さないようにしているのが精一杯のようだ。

爆笑する薫に注意する可奈美であるがツボってしまっている為、注意しながら吹き出すというフォローになってないフォローをする。

姫和は最大限気を使って声に出して笑わないようにしているが、顔を後ろへ背けて手で顔を押さえて肩を震わせている。笑うのを必死に我慢している状態だ。

 

全員に噴き出されて羞恥心で憤死しかけるが、なんとか堪え説明を始めるスパイダーマン。

マスクの下のHUD(ヘッドアップディスプレイ)に映る記録映像を操作しながら携帯に接続して、画面にもHUDの映像を映るようにする。

ひとしきり笑った後、全員一度携帯の画面を注視する為スパイダーマンの周りを囲む形で集まる。

 

「はいはい赤ちゃんね・・・・よし、これでHUDの映像を携帯の画面に映るようにできたな。じゃあカレン一昨日の夜に戻して」

 

『了解です』

 

スパイダーマンが指示を出すとビデオの早戻しのようにスパイダーマンの視界に映っていた映像が巻き戻されていく。

そして、2日前の映像を映し出す。

そこにはスパイダーマンがスーツを着用して調子に乗ってテンションが上がっていたのかスーツを渡されたスタークインダストリーズ日本支部のトレーニングルームにある鏡に姿を映して、正体を累のマンションにいた2人に明かす際どうやって明かすか、どう接するかを考えていた時であり1人で小芝居をしている姿が映し出された。

 

『やぁ、お嬢さん達。イケてるマンションだね。HI、可奈美。お噂は颯太君より兼ね・・・・うーん、キザすぎ。じゃあ、どストレートに。真実は・・・・私がスパイダーマンだ。ダメダメダメ、これじゃパクり!』

 

自身が出せる爽やかな声を精一杯再現しながらキザったらしく大人ぶった接し方を鏡にトレスするスパイダーマン、その結局は徒労に終わった黒歴史な前振りを見せられスパイダーマンはスーツの下で顔を赤くし、他の面々は苦笑いを零していた。

 

「何をしているんだお前は・・・・」

 

「これ何て言って正体明かすか考えてた時の奴じゃん!これじゃ無くてもうちょい先!」

 

スパイダーマンが再度指示を出すと今度はトニーがスーツを作成の際に作成する際に用いる金槌を持ち、力こぶを作りながら野太い声を上げているスパイダーマンの姿が映し出される。

ネタが伝わった薫は手でハンマーの取っ手に付いている紐を持って振り回す様を真似している。

 

『俺はオーディンの息子、マイティソーだ!』

 

「颯ちゃんここまで残念だったっけ・・・・」

 

「これ、新スーツの着心地が良くて調子に乗ってた時の奴だ!ちょっと飛ばして!」

 

『何故ですか?とても面白いモノマネです』

 

カレンは少し映像を先に早送りをするとマンションを襲撃して来た沙耶香に加勢して来た管理局が雇った新型装備ヴァルチャーが映ったシーンが見えた為、スパイダーマンが一時停止を命じると映像が静止する。

そこには2m近くはある巨大な機械の翼を着けたウィングスーツに鳥をモチーフにしたフルフェイスのヘルメットから緑色の眼光を光らせるS装備の発展型のパワードスーツ、ヴァルチャーの姿が映し出される。

 

「あーここだ。一昨日の翼をつけたビッグバード。着てたスーツは高速で空飛べたり、機械の羽を飛ばしてくる位で現状新装備の中で一番性能は地味だと思うけど装着者は一番僕らを殺すことに躊躇がない非常にやりにくい相手だったな」

 

「近隣への被害も考えずに私達を潰しに来た奴か。傍若無人な態度といい。危険な奴だ。御刀を殺しの為の道具などと・・・・っ!」

 

「正直危なかったよねー。間一髪だった」

 

実際にヴァルチャーと対面して対決し、その危険度を身に染みて体感した3人はその日の事を思い出して顔をしかめている。

自分たちの在り方を侮辱されたことに憤る姫和、危うく殺されかけた可奈美、そしてこれからの戦いは命懸けで危険な戦いである事を実感させられたスパイダーマンの表情は曇っていく。

 

「伊豆で言ってた昨日の装備ってこれのことデシタカ」

 

エレンは3人を入団テストとして腕試しの為に勝負を仕掛けた際にスパイダーマンに管理局との関係性を疑われてジョーク混じりに聞かれて何の事か知らなかった為答えられ無かったが、先日にヴァルチャーと戦闘し、追ってと思われる自分達も一味なのかと推察したと把握する。

 

『名前はエイドリアン・トゥームス45歳。殺人を含む犯罪歴多数。経歴上問題行動の数々で空軍を追い出されて以降は傭兵として活動を行っているだけでなく戦場で拾った装備を売り払う武器商人も行っている事から雇主が保釈金を払うことで難を逃れた事や名前を変えて転々としている為服役の経験はほぼ無いようです』

 

そして、カレンはスパイダーマンに殴られてヴァルチャーの欠けたヘルメットから素顔を覗かせるヴァルチャーのテストパイロット、エイドリアン・トゥームスの経歴を説明すると以前に説明を聞いたスパイダーマン以外は唖然としていた。

無理もない。傭兵として戦場を駆け抜け、トニーがアイアンマンとして活動を始めて以降はなりを潜めていたようだが、それだけで無く戦場で拾った武器を売り払う武器商人として活動している可能性まである事を知らされたのだから。

 

「こんな危ない奴を雇ってるって証拠を抑えているなら後で使えるかもなこの映像。オバハンが解析したアンプルだけじゃ信憑性が無いって言われたらこの映像も込みで突き出してやろうぜ」

 

「名案だし、その手で行こう。だけど相手は治安維持組織を牛耳ってる相手だよ。0から証拠を作れるような物さ。20年前の件だって今日まで隠蔽出来てるし、この時の戦闘ですら僕のせいにされてるんだろうなぁ・・・絶対今頃あの編集長この情報に踊らされて僕のことノリノリで叩いてるよ」

 

「あーあの大袈裟なちょび髭オヤジか。アイツ絶対暇人で他にすることなくてお前のこと叩いてんだろーから気にすんなよ。お前のアンチスレの大体の建て主絶対アイツだから」

 

 

薫が映像を見せられてパイロットの名前と顔も特定しているのならば証拠として取っておく事を提案すると勿論手札の1つとして隠し持っておく事を説明するがやはりちょっとやそっとでは尻尾を出さない折神紫体制にどこまで通用するかはわからない。

やはり相模湾岸大災厄の真相を今日まで見事に隠蔽し、この騒動をスパイダーマンのせいにして報道させていることも拍車をかけている。

 

 

次は昨日の夜での戦闘。ショッカーと戦闘した時の映像だ。

ヴァルチャーとの戦闘の後からの様子を早送りで飛ばす。ショッカーとの戦闘ではエレンがショッカーとの交戦の最中に偶然介入した形になるため一部始終を収めている訳では無いが戦闘している様子やテストパイロットであるハーマン・シュルツの素顔も記録している為確認する価値はあるだろう。

 

「よし、次は昨日の奴だ。カレン早送りよろしく」

 

『了解です』

 

「よし、そこだ・・・・ぶっ!」

 

『ふぁ、ふぁやふろいふぇ!ふぉのらいへいはまふぃい!ひぬ!(は、早くどいて!この体勢はマズイ!死ぬ!)』

 

『このままでは敵と戦う以前に窒息するでしょう』

 

『そ、sorry!』

 

スパイダーマンが静止を命じるとカレンが直前に早送りを早めたのかショッカーにダメージを与えられてまともに立つ事すら危うかった際にエレンを受け止める事に失敗し、転倒と同時にエレンがスパイダーマンに覆いかぶさる形で伸し掛かり、エレンの胸がスパイダーマンの顔に直撃し、埋もれて窒息しかけた瞬間だ。

視界全体に胸がドアップで映し出された瞬間スパイダーマンは盛大に吹き出し、エレン以外の面々、特に姫和と薫から白い目で見られた。半面ねねは緩んだ表情になっている。

 

「ねね~」

 

「そうか、やっぱお前もそういう星の星人か・・・」

 

「ふーん」

 

「いやちょっと誤解だって!これは敵にダメージ与えられててまともに立ってられなくて無理矢理受け止めようとしたら失敗して・・・っ!」

 

「そうデスヨ、あれは事故デス。私は気にしてマセンカラ!」

 

スパイダーマンが弁明するとエレンがすかさずフォローしてくれたおかげで一旦場は落ち着いたがやはり女性陣からの冷ややかだ。そんな視線に晒されながらショッカーの全身像が映る瞬間に止める。

黄色のカラーリングに網目状の模様のスーツ、頭部を守るための鋭い目付きのツインアイのブラウン色のヘルメット、両腕にガントレットを装備しているややヒロイックなデザインのパワードスーツ、ショッカーが映し出される。

そして、エレンとスパイダーマンにスーツのフルフェイスのヘルメットを破壊された際に装着者であるハーマンの素顔が晒され、犯罪データベースに記録があったためハーマンの経歴がカレンから説明される。

 

『犯罪データベースから照合。ハーマン・シュルツ21歳。元プロボクサーで一昨年に世界チャンピオンにまで登り詰めたものの、直後にWBA(世界ボクシング協会)のトップとファイトマネーの問題で揉め、評議会全員を滅多打ちにして逮捕。出所以降は日本でギャングの用心棒を行っていたそうですが数日前に美濃関付近の銀行を強盗目的で襲撃し、颯太に阻まれて逮捕されていました』

 

「コイツ、御前試合の前日に美濃関周辺の銀行を襲って逮捕されてた奴なのは本人から聞いたけど、実は一昨年の大晦日のボクシングの世界大会でチャンピオンになってたのか・・通りですごい厄介な奴だった訳だ。しかも銀行強盗の動機がアイドルのライブの遠征費が欲しいからって・・・」

 

「えっ?私そんな理由の巻き添えで死にかけたの・・・」

 

可奈美は御前試合の前日にハーマンの一味の運転するトラックに撥ね飛ばされた車に直撃しそうになったためそんなふざけた理由で死にかけたことに戦々恐々としている。

するとエレンはハーマンがスーツの名前をショッカーと名乗っていたことを思い出していた。

 

「装備は確かショッカーって言ってマシタネ。STT向けの装備らしいですが使い手のハマハマが初見とは思えない位に使いこなしてマシタ」

 

「撃ってくる振動波はメチャクチャ速いし、そのガントレットで殴られた時の痛みは言葉じゃ語れない位だったよ。あの威力は多分荒魂殴り飛ばせると思う。おまけに電気ショックは効かないし何より本体がバカみたいに強い・・・・」

 

「強いのかぁ・・・・・ちょっと戦って見たかったかも」

 

「イーッ!ってこれは違うショッカーだな」

 

「ハマハマ・・・敵にもあだ名を着けるのか・・・」

 

ハーマンが格闘技界隈ではかなり有名な人物であったが今は一人のチンピラになり下がってはいるものの初見でショッカーを使いこなし、エレンとスパイダーマンを相手に互角以上に渡り合う手腕は素直に評価しており、エレンがいなければスパイダーマンは確実に敗北していたであろう勝負であったため忘れられない敵になったともいえるだろう。

薫はショッカー違いで某特撮番組の戦闘員による戦闘員の為の魂の掛け声を真似している。

姫和がエレンが人見知りせずに様々な人にあだ名を付ける人物とは言え命がけの戦いをした相手であるハーマンにもあだ名をつけているフレンドリーさに困惑している。

 

エレンはハーマンとは本気の勝負を繰り広げた相手であるが単細胞だが裏表がなく、堂々としていて勝利したエレンに譲歩してエレンのことを報告しない約束を守るという義理堅さを知っているため次に仮に会う時は敵かも知れないが、憎めない相手であるため悪感情はない。

 

 

「ハイ!昨日の敵は今日の友デス!それに約束通りハマハマが私と戦闘した事を内緒にしててくれたお陰で敵の拠点に潜入できマシタ!ハマハマが義理堅い性格で助かりマシター」

 

「ほーん・・・・そうかい」

 

薫はエレンの様子を見て相棒である自分が共に戦って助けに入ることは叶わなかったのは心苦しい上に、相棒をここまで追い詰めて疲弊させ、翌日のライノとの戦闘に大きく影響を与えた相手ではあるため対面したことはない画面に映るショッカーの装着者のハーマンに憤りを感じないでもないがエレンが笑って許しているのなら特別に許してやらなくもない。

しかし、相棒がここまてま評価する相手なら会う機会があればどんな奴か見てやろうじゃないかと心の中で思いつつジト目で視線を送る。

 

そして、スパイダーマンは映像を進めて、本日の日付で止める。次は昼間にかけて全員が激しい戦闘をした相手、ライノについてだ。

携帯の画面には全身を覆うS装備のカラーリングの名残のある黒銀の鋼の装甲、サイを連想させる頭部の兜には眉間の部分に鋭利な角、蒼く光るツインアイのパワードスーツ、ライノが映し出される。

スパイダーマンはライノと夜見の会話でライノという単語を発していたのを覚えていたためライノと呼ぶことにした。

 

 

「次は今日の奴か。確かライノって言ってたな」

 

「全くこのマッチョゴリラに会うのは勘弁して欲しいぜ」

 

ライノに最もダメージを与えた薫であるがやはり、装着者の身体能力だけでなく桁外れの耐久性とパワーを思い出すと頭が痛くなってきた。

可奈美は真剣な表情でライノを見つめている。すると戦いの中でライノの装着者であるアレクセイから感じ取ったことを告げる。

 

「颯ちゃん、この人も検索できる?なんか私、この人犯罪とか悪いことに自分から手を出すようには思えなかったんだ」

 

「確かに、この3人の中では一番大人っていうか理性的っていうか・・カレン、見つけられる?」

 

カレンが即座にライノを解除させられて姿を見せたアレクセイの顔をデータベースに接続して検索を試みるが検索には一切引っ掛からない。つまりは逮捕歴がないということだ。

前二人と違い、検索結果に出ないことを姫和が疑問視し始める。

 

『犯罪データベースから照合・・・・・・犯罪データベースに記録がありません』

 

「どういうことだ?これまでの奴は少なくとも適性が高いが犯罪者だったじゃないか。装備のテストの為、最も性能を引き出せるとはいえ犯罪者を雇う場合は装備を盗んで犯罪を犯してもおかしくない者、仮に消えても誰も困らないから極秘で逃したり匿ったりできる相手を選んでいたのではないのか」

 

「わかんねーけど、それを揉み消せる大がかりな犯罪組織の一員とかそれを知ってる奴は消されるとかなんじゃねーの。だとすると逮捕歴がないのも納得だけど。にしてもオレら複数で戦ってやっと勝てるようなメンドクセーマッチョゴリラには戦闘じゃ会いたくねーな。敵だけどクソ真面目で悪い奴じゃ無さそうな感じはしたけどよ」

 

「ねね!」

 

薫なりにライノの正体を考察し、人物的に進んで犯罪に加担するようには見えないが、本気を出してはいるのだろうが殺す気でかかって来てはいない。もしくは相手がどのくらいならギリギリ死なないのかを熟知しているのではと推察しつつこれまでの関連性から犯罪者かそれに類する組織の一員なのではという推測は大まかには当たっている。

 

「よし、これで敵が送り出して来た新装備の奴らを一通り把握出来たね。これで仮に次にまた攻めて来た時に事前情報無しって言う事は避けられるといいけど」

 

管理局が採用した新装備のテストパイロット達とそのスーツの性能を確認して振り返ると、戦闘で苦戦させられた苦い思い出や敵の人物像をおさらいした事で戦闘での反省点や仮に次に攻めて来た際に少しでも事前情報無しで戦闘するという事態を避けられるようになれば御の字であろう。

 

「oh、もうこんな時間デスカ・・・戦闘での疲れが取れてないのでもう寝た方がいいかもデスネ」

 

「だな、オレもマジ疲れた。これでまたしばらく休暇が入るといいけどな」

 

「じゃあ、僕も部屋に戻るよ。おやすみー」

 

「颯ちゃんもお疲れ、おやすみー」

 

「おやすみ・・・・」

 

 

長い時間話し込んでいた為か、携帯に内蔵されている時刻に視線を移すと深夜に差し掛かる時間だ。

よく見ると皆、連日の戦闘で相当疲労が溜まっているのか目の下に隈が出来ていたり目をショボショボとさせながら半開きになって大きなあくびをしている。そろそろ就寝してもいい頃合いだろう。会話を御開きにしてそれぞれが寝台に移動してスパイダーマンのマスクを外した颯太は部屋から退室していく。

 




長くなりそうなんで一旦ここで。

ファーフロムホーム、良かったです。

何を言ってもネタバレになっちゃう気がするので内容にはあまり触れません。
単独映画としての完成度も半端無かった上にエンドゲームを見た人には是非見て欲しい映画です。

ホムカミ見たときアクションとスウィング若干少ないのと少し動きが分かりにくいかなーって思っていた部分もありましたがファー・フロム・ホームだとアクションとスウィングが格段に増えててかっこ良くなってたのでアクションとスウィングに関してはもう文句なしです。

とにかく熱さとエモさで言えば実写スパイダーマン映画屈指だなって感じました!

取り敢えず言える事は・・・・・・早く続きが観たい!


余談:アイアンマン~ファー・フロム・ホームまでの合計上映時間って3000分らしいっすね。

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