刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任-   作:細切りポテト

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ドクター・ドリトルといい2分の1の魔法といい見たい映画が次々と延期になって行く……状況が状況だから仕方ないですが…。ブラックウィドウは今のところは延期しないみたいですがなんとか放映してくれたら嬉しいですね…。


第48話 天空

スパイダーマン達が横須賀港から鎌倉までを経由する上空、そんな中ハゲタカをモチーフにした頭の丸い形状のヘルメットに緑のツインアイが妖しい光を放っている。

なにより最も特徴的なのはパワードスーツの背中に取り付けられているバックパックから火炎を吹き出していて、左右に取り付けられている巨大な機械の翼は刃状の花が左右に3本、計6本存在し、翼に取り憑かれているティルトローター式のタービンエンジンが高速回転することで後方に向けて風を起こして飛行速度を格段に引き上げている。

 

更にはコンテナを撃墜する任務のために携行させているのは紫色で丸い形状にオレンジのバイザー型のメインカメラに重火器やボウガン、衝撃波を放つためのスピーカー型の砲門が取り付けられている円形の戦闘用ドローン、パラディンである。

 

その相手こそ夜空を飛行するコンテナ6機を鎌倉に近づけない様に事前に紫から上空を攻めて来る敵が鎌倉に近づく前に撃墜して始末しろという命令を受けて出向いて来た最初の刺客、上空を自在に飛び回る力を持つヴァルチャーだ。

 

そして、上空をコンテナに乗って移動する際はどうしても乗っている面々は無防備になってしまう上に、S装備の稼働時間には制限があるため電力の節約のためにあらゆる場所に自在に張り付き、超人的なバランス感覚を持つスパイダーマンが護衛役を買って出ており、生身を上空に晒しているため、時折コンテナの速度に姿勢を崩されそうになりながらも接近しているヴァルチャーの姿を認知する。

 

「映画みたいな日だ!空飛ぶコンテナにしがみ付いて…っ!鳥男とツーリングっ!うおっと!」

 

ヴァルチャーはこちらの姿を補足するとパワードスーツの両翼に取り付けられたタービンエンジンを稼働させながら猛スピードでコンテナに接近して来る。その最中、舞草の里の殲滅戦に使用していた戦闘用ドローン、パラディンの操作パネルを引き続き装備している。

 

視界にコンテナ6機とそれを護衛するスパイダーマンを捕捉し、里での戦闘で大半が破壊されて残りの数台しか残っていないパラディンを操作すると左右に散開して行く。

 

「そんじゃあ始めようかぁ…とんでもねぇ戦争って奴をよぉ!全員を庇いながらどこまで持つかなぁ、スパイダーマンさんよぉ!」

 

『里の殲滅を指揮してたのはお前か……よくもあんなことを』

 

『ね!』

 

ヴァルチャーがスパイダーマンと6人と相対した途端に殺意を剥き出しにして攻撃を開始すると右端のコンテナの方から里で舞草の仲間を攻撃した1人であるヴァルチャーに対して憤慨している薫が怒りによって低く、それでいてドスの効いた声色になりながらコンテナ内のモニターを通して睨み付けている。

普段の気怠げな感じは残しつつも今回ばかりは割と本気でキレている様子が伝わって来る。

 

「悪いが俺だって年端も行かねえガキ共を攻撃するのは心が痛んだんだぜ?だが、これはあくまで仕事なんでな。それに…国を脅かすテロリスト共を治安組織のトップ様がどんな手使ってでも排除すんのは当たり前じゃねぇか」

 

しかし、ヴァルチャーは全く悪びれる様子もなく淡々とあくまで里での殲滅戦での行為はビジネスでやっているだけ、舞草は世間から見れば国を脅かすテロリストだから国が排除しようと動いても仕方ないという他人事のようなスタンスを貫いている。

 

しかし、そんなヴァルチャーの態度に対していくら世間から見ればテロリストとは言えあのようなことを平然と行う管理局、ひいては紫やヴァルチャーのやり方は悪辣だとして舞衣はヴァルチャーの態度に憤慨している。

尚且つ姫和は以前にハイテクスーツの犯罪データベースに記録されていたヴァルチャーの装着者であるトゥームスの経歴を触り程度であるが知っているため、人をテロリスト呼ばわりする資格は無いと糾弾する。

あらゆる陣営にいる人々の心を煽り、武器を売り捌いて戦いを引き起こして自ら戦場に立って金を稼ぐテロリスト同然の行為をしているヴァルチャーにだけは言われたくなかったからだ。

 

『そんなの…っ!?』

 

『よく言う。お前は人の心を弄んで武器を売りつけて戦いを起こしている立派なテロリストだと言うのに』

 

「まぁ最近のガキは物知りでいらっしゃること。そこまで詳しけりゃスタークの野郎が探り当ててやがったか…奴のせいで俺らの商売は上がったりだ、つくづく俺の商売を邪魔する忌々しい野郎だなぁ死の商人のクセによぉ」

 

こちらに付かず離れずの距離を保ちながらパラディンを操作するヴァルチャーと相対したスパイダーマンが身構えると散開したパラディンが空飛ぶコンテナを囲むように移動する。

そして両端を飛行する現在無防備なエレンのコンテナと薫のコンテナを撃墜しようと攻撃を開始し始める。

 

「お前が悪いんだろ!ぐっ!風が強くて狙いが安定しない…ならこれだ!」

 

しかし、スパイダーマンはその行動を見逃さなかった。

パラディンが移動したと同時にスパイダーセンスが発動し、左右を囲むことは予想出来たため、飛行中であり姿勢や軌道が安定しない中でありながら一瞬手を明後日の方向に向けたかと思いきや早速新調したウェブシューターの電気ショックウェブのスイッチを押す。そして、気流に乗せてパラディンが通過する位置とタイミングを読んで左右に放つ。

咄嗟に判断出来たのは里でアイアンマンとのトレーニングで目隠しでリパルサーを回避したり、組み手をする訓練をしていたためか空間把握能力が自然と鍛えられていたのかも知れない。

 

暗闇が広がる夜空に一瞬雷光が走ったのかと錯覚する様な蒼白い光はパラディンがコンテナを攻撃を開始しようと砲門を展開したと同時に着弾する。

 

直後にアークリアクター由来の発電所並みの電力による高圧電流が流れ、一撃でパラディン達の全身を巡ってショートさせる。それだけ電圧が大幅に引き上げられていることが容易に想像できるだろう。

そして、ショートさせられたパラディンは内部でオーバーヒートを起こして空中で爆散し、粉々になる。

 

一撃でパラディンをショートさせて破壊する威力には皆驚いているが、累、フリードマン、スパイダーマンの3人で協力して作成した努力の結晶である改造ウェブシューターの威力には感心するしか無かった。

 

『爆発……っ!?』

 

「いよっしゃ!やっぱスゴいな2人とも!」

 

「なんつー威力してやがんだ……だが、まだ終わりじゃねぇぞ。奴を潰せ」

 

『copy』

 

流石にパラディンを一撃でショートさせて破壊する程電圧が引き上げられていることにはヴァルチャーも驚いたが今度は狙いを変えてスパイダーマンを攻撃するように指示を出す。

すると、再度パラディンはフォーメーションを組んでコンテナを護衛しつつバランスを保ちながら貼り付いているスパイダーマンを包囲し、コンテナから突き落として排除するために本体の下に付いている衝撃波を放つためのスピーカーのような砲口が開く。

 

「ヤバっ!今度の狙いは僕か!」

 

「…っ!?」

 

今狙いは自分に集中している。衝撃波を屈んで回避すれば乗っかっているコンテナに当たってしまう。だが、ここで敵のヘイトを集めて空中に飛び跳ねて回避すればコンテナには当たらないだろうが空中に投げ出されてしまうというどう足掻いてもリスキーな道。

更に嫌がらせの如く今度は今貼り付いているコンテナの隣を飛行する姫和の乗るコンテナをも同時に攻撃しようとしておりこちらの選択肢を潰しに来ているという3連コンボだ。

 

「さぁて、どっちを取るんだぁ!?」

 

自分が取れる最善の選択を取るならばどうすれば良いのかをすぐに考慮して実行に移す。

 

「衝撃に備えて!」

 

『うわっ!?何!?』

 

ギリギリまでパラディンのヘイトを引き付けて衝撃波が放たれる瞬間にコンテナの甲板を力強く蹴り上げてジャンプするこでジャンプした際の脚力で可奈美の乗るコンテナの高度がガクンと下方へと下がり、パラディンの衝撃波がスパイダーマンとコンテナの間を通過していく。

 

「くらえ!」

 

それと同時にスパイダーマンは飛びながら右手のウェブシューターで姫和の乗るコンテナに乗り移るために気流に乗せてクモ糸を当てつつ左手で背中に差した右向きのヴィブラニウムブレードを抜刀しながら身体を捻らせて姫和のコンテナを狙うパラディンへと投げ付ける。

 

投げつけられたヴィブラニウムブレードは縦方向に回転しながらパラディンに突き刺さると本体を貫いて爆発を起こす。

 

「ごめんちょっと揺れる…よっと!」

 

『なっ!?急すぎるぞ!……ぐっ!』

 

『胸は揺れないけどな』

 

『貴様…っ!今くらいは自重しろ!』

 

スパイダーマンは引っ張られるような形で姫和の乗るコンテナに着陸…いや、もはや衝突に近い形で飛び移って着地すると機内にいた姫和にもその衝撃が伝わる。

ちなみにヴィブラニウムブレードは投げたと同時に左手から出したウェブを柄に当てており、着地の際に左手を自分の方に引くことで引き寄せられるように手元に収まり再度背に差している鞘に納刀する。

 

更にこちらを牽制するかのようにすぐにウェブでの攻撃も放って来るためパラディンも回避行動を取って後退せざるを得なかったりと中々有効打が与えられない。

 

「どうしたの?アイツの攻撃は僕に掠ってすらないよ!」

 

スパイダーマンとヴァルチャーは再度睨み合いをしながら里での殲滅戦でも感じていたがやはり以前より実力が上がっていることを再認識し、残りのパラディンの数も3機しかない事を鑑みると更に攻撃の手を強める必要があると判断して自身も仕掛けることにした。

 

(仕留め損なったか…しぶてぇ野郎だ。だが、地の利はこっちにあんだよ!)

「決め手に欠けるか……なら、コイツで逝っちまいな!」

 

ヴァルチャーはスーツの両翼に装備されている右3本、左3本の計6本装備されている刃状の羽を2本ずつ、計4本を翼から分離させるとタッチパネルで操作したパラディンと交互に変則的な動きで皆のコンテナに襲い掛かる。

 

強風が吹いている上に変則的な攻撃をされると予想が困難になるため確実に倒せる厄介な敵を倒しつつ防御に徹することにした。

そういう意味ではパラディンからの攻撃の方が明らかに威力が高いことは身を持って経験しているためパラディンだけは優先的に破壊することがベストであると判断して制圧にかかる。

 

「次はこれだ!」

 

まず初めにパラディンがコンテナの下に潜り込もうと隣を飛行する舞衣の乗るコンテナの下に潜り込み、スパイダーマンの電気ショックウェブが当たりにくいようにしながら下方から攻撃を仕掛けようとしているのを目視すると左手で自分が乗っているコンテナの甲板に向けて一度だけ跳ね返るウェブの機能リコシェに切り替えて手首のスナップを利かせながら放つとコンテナの甲板に当たると跳弾し、コンテナの真下に潜り込んで狙いにくくなっていたパラディンに命中させる。

ウェブが命中したパラディンは砲口と視界がウェブで塞がれて下手に砲撃すると暴発する状態になり、視界が糸で塞がれている中浮遊していると速度が出ているコンテナに弾かれて流されるように後方に飛ばされて行き、爆散する。

 

 

更に右手のウェブは糸を長めに発射し、空気中に触れたことで凝固した糸を左手で途中で掴んで横向きに投げつけると気流に乗ってパラディンの通る位置に向けて漂い、先端がパラディンに当たると同時に気流によって引き延ばされたウェブが近くにいたパラディンにも命中する。

 

そして、すかさず電気ショックウェブを片方に当てると糸を通して繋がっているパラディン同士に電流が連鎖して同時にショートして爆散する。

これで全てのパラディンが全滅するが振り向くと黒煙に紛れてヴァルチャーが飛ばした4枚の羽が姿を現しジグザグに蛇行すると途中で分かれて1枚はスパイダーマンに向けて。そして残りは散開して距離が離れて手が届かない端っこのコンテナに向けて襲撃させて来る。

 

「全部は無理か……ならっ!」

 

先程残りのパラディンを倒したばかりで嫌がらせの如く続く追撃に備える間もなく、反応が一歩遅れてしまったがコンテナを護衛することが最優先であるためヴァルチャーに背を向けた姿勢のまま両手のウェブシューターのスイッチをワンテンポズラして2回押すことで距離や高さも異なる位置を飛行してコンテナのエンジンを狙っていた分離したヴァルチャーの羽に直撃させるとショートして航行不能になり落下していく。

 

しかし、両手が塞がっている上に自分の方に来ていた羽の攻撃の回避は間に合わずに左腕の上腕部を掠めてスーツの袖の繊維を切り裂かれてしまう。袖の下から覗く腕の傷口から鮮血が軽く吹き出してコンテナに血液が付着する。

 

「ぐっ!」

 

『颯太君、大丈夫!?』

 

「大丈夫!掠っただけ!」

 

「先にテメェから潰す」

 

皆が各々に心配しているがそんな隙を与えないが如く羽を翼に戻したヴァルチャーはスパイダーマンがコンテナに貼り付いて護衛している以上こちらも有効打が出せずにジリ貧になると判断して先にスパイダーマンから始末することを優先事項とし、スーツの肩部分にある格納スペースを開くとそこから三尺八寸程の特殊な…恐らくヴィブラニウムには劣るかも知れないがかなり硬質な金属で生成されている長剣を取り出すと翼のタービンエンジンを蒸し、乱気流を物ともしないスピードで接近して来る。

 

先程の攻撃により怯んだ隙を見逃さずに背後を取って脚部に取り付けられているあらゆる場所に引っ掛けたり、物を器用に掴んだりも出来る停泊用のクローを展開する。

そのまま、滑り込むように脚のクローをコンテナの甲板に付けると装甲の表面を削りながら飛び散った破片を気流に乗せてスパイダーマンに向けて飛ばしつつスパイダーマンを刺した上に突き落とそうと突きの構えで突進する。

 

「ちょいさぁっ!」

 

飛び散った甲板の破片は弾丸の如く襲いかかりスパイダーマンの背後に命中して地味なダメージを与えて行くが相手を怯ませるには充分であり、そのまま背中を突き刺そうと長剣を突き出すと咄嗟に身体を逸らされてしまい、軽く背中を掠めた程度のダメージだが押す力も加わっている。

その衝撃でスパイダーマンの足裏がコンテナから離れて身体が浮き、一瞬ジェットコースターで高い位置から急速に落下した時のような浮遊感がスパイダーマンを襲う。

そして直後に上空に投げ出されて気流に乗せられて後方に飛ばされて行く。

 

「うおわぁ!」

 

「あばよ……ぐっ!クソッタレが!」

 

このまま地上に落下してトマトのように潰れて死ぬ。そう思っていたが身体が浮いたと同時にヴァルチャーの両肩に向けてウェブを飛す。

近距離であったため、両肩に貼り付き、後方にスパイダーマンが吹っ飛ばされている影響により引っ張る力が強くなり、糸がより強靭となって強度が増して行く。

飛ばされる威力を軽減されたことで既の所で爪先をコンテナの端に辛うじて着けることが事が出来た。

 

しかし、ヴァルチャーも両肩同時にウェブが張り付いた上に体制を立て直すのに利用されて様々な力が加わったことで拮抗して硬直状態になるが隙を作らないように残っている左右の翼をスパイダーマンに向けて飛ばそうとして来る。

 

「テメェはさっさと落ちてスイカになれ」

 

「まだシーズンじゃないよ!ちなみに僕はメロン派だからね!」

 

だが、スパイダーマンはすぐに足の裏をコンテナにしっかりと着け、ヴァルチャーの両肩に当てているウェブを1つに纏めて掴み、思い切り横に向けて引き倒す事で姿勢を崩させる。

 

「この…っ!」

 

「うおらぁ!」

 

そうしている間に翼を飛ばし損ねている隙に糸から手を離したスパイダーマンがコンテナの甲板の上を走りながら殴り掛かって来るとヴァルチャーは咄嗟にスーツのエンジンを蒸して甲板から脚を離して距離を取りスパイダーマンの拳を回避する。

しかし、スパイダーマンは追撃するように両手を前に構えてクモ糸を飛ばして来るが改良されて空気抵抗への対策が施されているとは言え風力により速度はある程度減衰されてしまう。

よってヴァルチャーには回避されてしまい一度距離を取るために移動することを許し、雲の中に隠れられたことで姿を一度見失う。

 

(クソッ!何なんだあの野郎は…落ち着け、野郎のスーツはただの服に色塗っただけのポンコツじゃねぇか。俺が遅れを取るわけがねぇ、落ち着けよ俺)

 

ヴァルチャーは新しく改良が加えられてスピードが以前よりも上がっているだけでなく以前は不足気味だったパワーもある程度カバーされている今のスーツを着てスパイダーマンと一進一退の攻防を繰り広げている。

 

しかし、こちらのスーツは以前よりも改良が施されているのに対し相手は恐らく以前とは違う。改造されているウェブシューターはともかく以前のような様々なバリエーションがあるウェブや高性能な機能を有しているスーツでは無くほぼただの服であることは戦闘を通して理解出来る。

 

その上向こうは高速で飛行するコンテナの上にしがみ付き6人分のコンテナを護衛しながら戦闘するという圧倒的に不利な状況。

且つこちらは空中を自在に移動できるという一見するとこちらに負ける要素は無いというにも関わらずパラディンは全て破壊され中々有効打が出ないという泥試合だ。

ここまで、何の力もないただの服でしかないスーツで善戦する姿は、里での戦闘でも感じたが奴は既に以前の奴ではないことは容易に想像できる。

 

(何のつもりか知らねぇがどうやらよほどお行儀の良いトレーニングを施してやがるらしい…野郎が育てあげたもんをぶっ壊すか…ハハッ尚更負けらんねぇなおい!)

 

以前は子供の技術や財力では到底用意できないであろうと思われる、ましては管理局の装備にも匹敵する高性能スーツの性能でゴリ押しして自分と戦っていたが今度は違う。

本体のレベルが短期間でここまで上がっているとなるとやはりそれなりに場数を踏んで相当質の良いトレーニングを受けたのだろう。

 

そしてその特訓を付けた相手こそこの小僧にスーツを用意した戦争屋達が忌み嫌う存在。テロリストを殲滅するヒーローであり自分たち武器商人にとって最大の商売敵アイアンマンことトニー・スタークだろうとヴァルチャーは予測している。

 

現に作戦前に確認した舞草の構成員のリストの中に以前からスターク・インダストリーズの創始者であるハワード・スタークと親交があると武器商人達の間で噂になっていたフリードマンがいたことを確認したため、関連性はあると想像している。

やはりどこまでも自分の邪魔をする忌々しさからヴァルチャーは奴に協力するこのガキ共を必ず潰すという念が湧き上がる。

 

すると、その意思に呼応するように新型装備の核であるコアに搭載されているノロの格納ユニットが淡い光を放ち、スーツを着ているヴァルチャーの身体能力を更に引き上げて行くのを実感する。

 

「へっ、いいじゃねぇか、盛り上がって来たねぇ!」

 

「何を……っ!?」

 

ヴァルチャーはエンジンを蒸し、翼のタービンが火花を散らすほど更に回転を増して行くことにより、先程よりも高速で飛行しながら雲の中に隠れ、旋回してこちらの狙いの予想を立てにくくしてから再度攻撃を仕掛ける。

 

「行けよ!」

 

コンテナより高度を高く取り、先に予めHUDに接続してターゲットをスパイダーマンに絞り、翼から羽を4本分離するとジグザグと交互に蛇行しながらスパイダーマンを四方八方から襲撃する。

しかし、スパイダーセンスによる予知が働いた事により攻撃が来たことを察知して四方八方から襲い掛かる羽を迎撃するモーションに入っている。

 

(これを全部落とせれば楽になる!確実に決めないと!)

 

ヴァルチャーの羽の残りの枚数はこれで全てである事は翼から飛ばしに来る際に確認してあるためここで全て撃墜するべきと瞬時に攻撃が来る位置や方向を予測。

まず、初め少し距離があり当てる事が困難な左側から来る羽を撃墜するためにはまず近付く必要があると判断して隣を飛行する可奈美の乗るコンテナに飛び移るためにコンテナの先端まで走る。

 

助走と勢いを付けるためだ。とは言え右から来る攻撃への対処を疎かにしてはいけない。羽の攻撃の位置と速度から予測し、同じタイミングで飛行したり並列して飛行はしないことは理解しているため走って位置とタイミングをワンテンポ遅らせて微妙にズラすことで羽に向けてウェブを放つ。

 

位置とタイミングを微妙にズラした電気ショックウェブは飛行するヴァルチャーの羽に的確に直撃させると先程と同じようにショートして航行不能になって小さく爆散する。

 

 

「あーミスったらマジで死ぬなコレ!」

 

『な、何する気デス…?』

 

『まさか…』

 

ヤケクソ気味に叫びながら右からの攻撃に対処しながらコンテナの先端まで走ると隣を飛行する可奈美の乗るコンテナに飛び移るために思い切りコンテナの甲板を強く蹴り上げて気持ち左側斜め前に向けてジャンプする。

 

「I can't fly!」

 

『それ、飛べて無い……』

 

ジェットコースターよりも強い浮遊感に襲われながらも狙い通りにコンテナの正面まで飛ぶことが出来た。

 

「ぐあっ!やっぱいってぇ〜」

 

『痛いで済むんだ…』

 

しかし、やはり勢いは強いがためにまたしても衝突に近い形で可奈美の乗るコンテナに着地することに成功し、コンテナの上を2、3回転がる。

そのまま左側を確認すると既に再度コンテナに乗った自分に向けて羽が突進して来ており、完全に間合いに入られそうだと判断したスパイダーマンは背中に差しているヴィブラニウムブレードを抜刀して横薙ぎに一回転しながら振り抜く。

 

完全にヴィブラニウムブレードの間合いであったためスパイダーマンの横一閃が命中し、ヴァルチャーの羽が潰れて爆発を起こす。

しかし、爆発で視界が悪くなっている隙にスパイダーマンの頭上からヴァルチャーは翼のタービンを高速回転させて高速で接近して来る。

 

「ガラ空きなんだよ!」

 

「ぐっ!」

 

ヴァルチャーが高速で接近して勢いを付けながら標準装備されている剣を思い切り振り下ろす。

その一撃をスパイダーマンは手に持っていたブレードの刃の部分で受け止めるが上空からの位置エネルギーと翼と背中についているエンジンの出力により振るう剣の力にもかなりの重量と威力が加わっており、空飛ぶコンテナの上であり、風も吹いている上に揺れて姿勢が安定しにくい中では防ぐのが手一杯になっており、拮抗しているが微かに力負けして押されてしまい、膝を軽く曲げながらも踏ん張っている状態になる。

 

「いい加減くたばれヒーローもどきが!」

 

「悪いね!ちょっとやそっとじゃくたばらないのがヒーローもどきなのさ!」

 

ヴァルチャーは拮抗していて踏ん張っているスパイダーマンに対して自分は少し高い位置に浮いている状況であるためか右脚で蹴りを入れて相手の姿勢を崩し、よろめいた隙にコンテナの上に着地して脚のクローを甲板に引っ掛けて固定する。

直後に両翼を振り上げたかと思うと切断も可能な細かい鋸状の刃が付いている翼の部分でスパイダーマンと自分の間にある甲板に向けて翼をコンテナの装甲に突き刺す。

 

『うわっ!』

 

『可奈美ちゃん!?』

 

コンテナの機内は何とか人が入れるスペースであり自由な身動きは取りにくいが何かが甲板の装甲を突き破って来ることを直感で察知し、微妙に身体をズラすことで直撃を回避する。

自分の顔面スレスレを通過したのはヴァルチャーの翼の刃の先端部分だったと気付く。

後一歩反応が遅れていたら直撃していた可能性があると思うと刃に写る自分の顔を見てゾッとするがヴァルチャーが翼で更に装甲を切り裂こうと翼を更に奥深くに差し込もうとする前にスパイダーマンが左手でヴィブラニウムブレードを持ちながら突進し、隙を作るために電気ショックウェブをヴァルチャーに放つと同時に突進する。

 

「させるか!」

 

「やりあう気か?えぇ!?」

 

自分に向けられた攻撃に対して反応したヴァルチャーは翼をコンテナから離して手に持っていた剣で応戦して来る。

ウェブを回避するとお互いの近接武器同士がかち合うことでスパイダーマンの掌には乱雑だが何よりも殺意の篭っていて、その一撃からは以前はスピードはあったが腕力に関してはライノに比べると格段に劣る程だったのが懐かしく思えた。

 

 

「しぶてぇんだよ!ガキが!」

 

「ぐっ……姿勢が安定する地上なら…っ!」

 

再度縦に振り抜いた一撃をスパイダーマンにガードされるがやはり安定しない上空ではヴァルチャーが一枚上手。そのまま再度押し込もうとして来る。

ヴァルチャーは押し始めるとスパイダーマンの精神に揺さぶりをかけて精神攻撃をするためにヘルメットの下で歪んだ笑みを浮かべると素直にスーツのいや、このスーツを強くする技術とそれを動かす原動力を称賛し始める。

 

「ははは!やっぱコイツはすげぇ…っ!ノロ、荒魂…コイツはとんでもねぇ兵器になるぜ、ビジネスのし甲斐がありそうだ」

 

『何だとてめぇっ!』

 

『聞き捨てなりまセン!』

 

ヴァルチャーの発言はねねと、言うなれば代々荒魂を家族として共に生きてきた一族である薫のスタンスを否定するもの。そして、エレンは祖父がかつてノロの軍事転用への研究を行おうとしたら間接的に大災厄という悲劇を起こし、傷付きながらも猛反省して今日まで生きていること。

自分の両親がS装備の研究に関わり、誰かを守るためにの力にしようとしている技術を人殺しのための道具にして金儲けをしようという言葉は彼女たちの地雷を踏み抜いたに近い発言だろう。

 

「こいつらをうまい具合に軍事転用できりゃ大抵の奴は手が付けられねぇ兵器が出来てどこの国の奴らもこぞって欲しがるぜ。それを世界の覇者にでもなりてぇ金持ちにでも売っぱらえばガッポリ金儲けが出来る訳だ。最初に転用を考案したアメ公の守銭奴共は見る目があるぜ」

 

『だからってノロを殺しのための道具に利用して悪い人に売り付けるのは間違ってる…』

 

『そんなこと、ノロも……誰も望むわけが無い!』

 

ヴァルチャーの物言いに対して沙耶香も、人一倍荒魂を憎む気持ちを持っている姫和ですら反発している。

彼らはあくまで人間の傲慢さが原因で生まれるものではあるが、あくまで自然に発生してしまうものでもあるため、それを故意に犯罪や争いの為に利用することは流石に看過出来ずに怒鳴ってしまう。

だが、ヴァルチャーはそれを嘲笑うかのように悪びれもせずに続ける。

 

「はぁ?金儲けに利用出来そうなもんを利用して何が悪い?利用価値があると判断して守銭奴共も目を付けたんじゃねぇのか?…それになぁ、世の中には戦争で得をする奴が大勢いるのよ。それだけじゃねぇ、国民自体怨み憎しみに燃え盛って戦争してぇ国だっていっぱいあんだよ。そんな奴等のお陰でオレ達みてぇな戦争屋の食い扶持は無くなる事ぁねぇ!皆が得をしてwin-winな訳だ。つーかテメェらのバックにいるスタークもかつてそう言った奴らのニーズに合わせてとんでもねぇ兵器を売り捌いてただろうが!」

 

世界には未だ戦争が終わらない国や、情勢に納得出来ずに戦争をしている国、

中には憎しみの怨嗟を絶つ事が出来ずに復讐を望んでいる人間が両手の指では数え切れない程いるのだろう。

 

以前はそう言った人間たちからの頼み、彼らの願いを叶えて賞金をもらう為に戦地を駆けていた。依頼して来た相手も得をするし、自分達も金が入る。まさにwin-winだったと思っていた。

だがアイアンマンが登場して以降。彼に目を付けられれば大抵の戦争屋は一瞬で全滅させられてしまう。

 

そのため完全に戦争屋としてはほぼ廃業に近い状態となり細々と戦地で拾った武器やヒーロー達が戦った後の残骸を集めて武器を改造した物を隠れながらひっそりと売り付けることで食い繋いで来た、皮肉にも自分から天職を奪った奴と同じ方法で。

 

「大体野郎は何の稼ぎでタワーを建てた?オモチャを何故作れた?全部武器を売って稼いだ金でじゃねーか。俺と何が違う?……まぁ、奴が日本のガキ共に協力してやがんのはちと意外だったがあの目立ちたがり屋のことだ。テメェら日本のガキ共を利用してここ最近の失敗の汚名を返上しようと考えてんだろうよ、全くあいつらしいぜ」

 

「そんな…ことっ!」

 

確かにトニーがアイアンマンになれたのは、自分が会社の仕事で開発した武器を売り捌いた金が資金となり本人にも知識や技術があるからだ。

 

ヴァルチャーが彼のことを一方的に敵視していることもあるが兵器を売り捌いて多くの人間を死に追いやり、ヒーローになった後でもその戦いの余波に彼らだけが悪いわけでは無いが巻き込まれている無実な人、その皺寄せを受ける人もいるにも関わらず、さも称賛される姿には懐疑的な物を感てじいるからという面もある。

 

「どこまで聖人ぶってヒーロー面しようが奴の根っ子は変わらねぇ、自分以外を見ちゃいねぇ死の商人のままだ。それに、スタークや大将のように金と権力を持ってる奴らはやりたい放題だ。奴らはテメェらのことを気にも止めねぇ。手足となり道を作って戦おうが奴らの眼中にねぇ。俺らは奴らの出した食べ残しを食ってる。そんな世の中だ。だから奴にとってはてめぇも都合が良い道具なんだよぉ!」

 

彼らの本質を知らない人間からすれば彼の活動は偽善のように見えるのだろう。

ヴァルチャーの突き刺さる刃のような言葉の数々。かつて武器を売っていたトニーの矛盾。それは今では消し去ることの出来ない過去なのかも知れない。

 

そして、徐々に腕に込めた力が増して行き更にスパイダーマンを追い込んで行く。少しでも力を緩めれば喉元に剣の先が捻じ込まれそうになり、それを防ぎながらも喉から声を絞り出す。

確かに過去は消せないのかも知れない。だが、自分は知っている。ここ数日共に過ごしただけで何もかもを理解出来る訳ではないがこれだけは理解している。

 

「確かにあの人は…いつも一言多いし、人を選ぶタイプだけど……」

 

「あ?」

 

スパイダーマンの絞り出すような声に対して聞こえてはいるが敢えてわざとらしい反応をするがそれでも、臆することなく言葉を紡ぐ。

 

「確かにあの人が作った武器で多くの人が死んだかも知れない……本当に誰よりも先のことを考えてるからそれが行き過ぎて悪い方向に働いてしまうこともあるのかも知れない…だけどっ!」

 

かつてトニーには長年共に過ごし、世話もしてくれていたが徐々に歪んでいったとある重役が秘密裏に影で危険な勢力にも武器を売り捌いていたが本人は一線を超えないことを信条にしていた。

だからこそ、その力に目を付けられてテロリストに拉致された際には自分が作り出した武器が悪用されて多くの人間が死んでいた事実にはショックを受けてしまったのだ。

だが、洞窟でのある人との出会いは彼にとって人生を変える出来事だった。

 

「あの人は自分の持ってる力を、技術を…っ!誰かを守る為の力に変えたんだ!洞窟で助かった自分の命を、決して無駄にしないために今日まで色んな人を助けて来たんだ…っ!リスクだってあるのに僕らに力を貸してくれてるのも…脅威から人々を守るために僕らを信じてくれたからだ!それが出来るのは科学の力を守る為の力に変えた彼が…彼こそがアイアンマンだからだ!だから絶対に……お前なんかとは違う!」

 

 

そして、トニーは過去の出来事を猛反省して自分の力を人助けのための力に変えた。『その命、決して無駄にするな』。この言葉を忘れた日は一度も無かっただろう。だが同時に、時にはそれが呪いとなって彼を縛り、追い詰める事もあったかも知れない。

 

実際彼は優秀であっても完璧では無い。元々は一般人に近い精神力であった為か追い詰められたり死にかけたりした時はヤケを起こし、酒に溺れて家で暴れたこともある。

誰よりも賢いが故に常に人類への脅威に対してあらゆる手段や策を用意することもあるがそれが行きすぎて悪い方向に進み、間接的にチームの間に亀裂を生んでしまったりもした。

 

……だが、それでも彼が今でもアイアンマンである理由はヒーローである重責に悩み、苦しみ、時には誰かと衝突して現実に押しつぶされそうになりながらも何度も何度もスーツを身に纏って人々を、愛する人達を守って来た。時には自分の命に関わる事であろうとも常に行動で示し続けているからだ。

決してヴァルチャーのように力を自分のためだけに使い、それをビジネスに使って金儲けを企む奴とは絶対に違う。

 

そんな彼の背中を見ながら鍛えられ、そしてハッピーから彼も皆と同じように悩む等身大の人間である事を教わったことで自分も悩み、苦しみながら戦う道も決して間違いでは無いと信じる事が出来た。

だからこそ、こんな奴には決して負けない。いや、負けてはいけない。そう言った意に呼応するかのように徐々にヴァルチャーの剣を押し返して行く。

 

「何だこの野郎……っ!急に力がっ!?」

 

直後に思い切りスパイダーマンが力押しでヴァルチャーを押し返すとすぐ様左手首のウェブシューターのスイッチを押してウェブを発射して肩にウェブを当てる。

ウェブを掴んで自分の方に向けて引っ張り、ヴァルチャーを自分の元へと引き寄せると頭を軽く退け反らせてヴァルチャーのヘルメットに向けて頭突きを入れる。すると、衝撃で相手が怯み、距離が離れる。

 

「てめぇ……」

 

「はあああああ!」

 

スパイダーマンはすぐ様その隙を見逃さずに翼を振り回せない距離まで接近し、拳を振りかぶってヘルメットに向けてキャプテン直伝の右ストレートをお見舞いすると拳がめり込み、ガラスの部分が割れてヴァルチャーの身体がコンテナの前方へと飛ばされて行く。

 

しかし、ヴァルチャーも負けじと咄嗟に脚でコンテナを強く踏み付けるようにして蹴りつけると機体が大きく傾き、スパイダーマンもバランスを崩す。不運にもヴィブラニウムブレードを落としてしまうが柄を足で踏む事でなんとか落下を防ぐ。

 

「なら、奴を信じたことを後悔させてやる。そして、教えてやるよ、テメェらの技も所詮は殺しの技だ。暴力では何も救えねぇってことをなぁ!」

 

ヴァルチャーはコンテナが揺れて傾いている隙に手の甲に隠してある着地や装備の解除、または方向転換に使用する鉄状のアンカーを発射するとスパイダーマンのウェブシューターの少し上のあたりの手首に巻き付き、エンジンを蒸して引っ張るとスパイダーマンの腕力と拮抗する。

 

だが、このアンカーは囮。今のうちに手に持っていた剣を振りかぶって投げ付けて来る。狙いはスパイダーマン……に見せかけて背後にあるコンテナのエンジンだ。

 

スパイダーマンもスパイダーセンスは反応したが向こうが気流に乗せて投擲する速度の方が早く自分の横を通り過ぎる速さには反応し切れず通過を許してしまう。

急いで左手でアンカーを掴んで腕力で引きちぎるが間に合わず、投げた剣が非情にもコンテナのエンジン部分に突き刺さるとエンジンが破損して出火を起こす。

誰が見ても察する事が出来る。このコンテナはもう持たない、乗っている方が危険だと。

 

「おら、早くしねぇとテメェも焼けるぜ」

 

「くそっ!可奈美!装備付けろ!」

 

スパイダーマンがコンテナ内にいるまだ火の手が来ない機内にいる可奈美に物凄い剣幕で声を掛ける。

 

『えっ!?』

 

「乗ってる方が危険だ!早く!」

 

「分かった!」

 

スパイダーマンの迫力には押されてしまうが徐々に炎による熱がジワジワと浸透して来ている事を察すると千鳥を手に持ち、急いで機内にあるスーツのコアに手をかざして装着の準備を始める。

しかし、それを阻止しようとヴァルチャーがアンカーの切れた部分を引っ掛けて自分の元に引き寄せることで剣を回収すると追撃を仕掛けて来るがスパイダーマンが何とか抑えている。

 

「させるかよ!」

 

「こっちの台詞だよ!」

 

「付けたよ!」

 

「オッケー!じゃあ手を上に向けてリパルサー・レイって所押してみ!」

 

翼を突き刺された事により微かに切れ目が出来ている為か微かに外の様子がチラりと見える程度だが2人が交戦しいることは見て取れる。

 

装着が完了して起動状態に入ると頭部のヘルメットに付属しているオレンジ色のバイザーにREADYの文字が浮かんだ後にHUDに接続となる。

基本的に身体能力を上げるための物であるため通常の物には複雑な機能は付いていないがトニーが改造を施したことにより電力をアークリアクター由来に変換して稼働時間がある程度引き上げられている上にバイザーにはHUD、掌にはアイアンマン同様の飛行安定装備であるリパルサー・レイが搭載されている。

 

HUDの操作が初めてであるため、慣れない様子で画面を操作しながら機能のリストを調べると『リパルサー・レイ』と日本人である面々にも分かりやすいようにカタカナで表記されていたため、容易に見つけられた。

 

「うーんと…あった!」

 

「もうちょい左…今だ!」

 

スパイダーマンはスパイダーセンスで背後からリパルサー・レイが来る位置を察しつつヴァルチャーの狙いを自分に絞らせるために敢えて鍔迫り合いに留めている。

 

そして打てと言われたと同時に掌からリパルサー・レイが放たれ、切れ目を入れられていて脆くなっているとはいえコンテナの甲板を突き破って一直線に飛ぶ威力には驚いてしまった。しかし、同時に恐らく人間に当てれば1人を転倒させることは容易という推測も立ててはいるが。

 

スパイダーマンがギリギリまで注意を自分に引きつけていると背後からリパルサーが放たれた事を感じ取るり、咄嗟に姿勢を低くして回避する。

そして、スパイダーマンが死角になっていた事により反応が遅れたヴァルチャーの胸部装甲にリパルサー・レイが命中して後方へと飛ばされて行く。

 

「何のつもりだ……うおっ!」

 

「ジャンプ!」

 

「うん!……うわっと!……ありがとう」

 

殺傷能力は無いがかなりの衝撃が走っているのかヴァルチャーが押し飛ばされて距離を離されている隙にS装備を着けた可奈美がジャンプで甲板に上がるとスパイダーマンに手を取られる形で着地する。

 

「っぶねぇ……やっぱ他のガキ共の分も作ってやがったか」

 

「ゴメン、流石に全部は計画通りには行かなかった」

 

「ううん、無理も無いよ。よくこの状況で粘ったなって思う」

 

スパイダーマンに身体を支えてられながら上空に身体を晒したことで吹き付ける強風やバランスを取るのが困難な最中こちらに対面するスパイダーマンのマスク越しか最大限努力したが申し訳いと思っている様子が伝わって来る。

 

羽の刃に切られて服の袖が破けているためかそこから出血していたりと軽症ではあるがもうすぐ目的地である鎌倉の付近までよく粘ったなという感想の方が強く出ているため責める気にはなれなかった。

 

「悪いんだけど手を貸してくれる?君が落っこちないように僕がサポートする。アイツをぶっ飛ばして皆を送り届けないと!」

 

「分かった!任せて!」

 

スパイダーマンの声色からは自分を信用し、共に力を合わせよう。という意思が伝わって来る。これまであまり自分を頼ろうとしなかったスパイダーマンから向けられる信頼は心地よく、同時に嬉しかったため力強く頷く。

 

半壊してたコンテナの上に乗りながらこちらと相対するヴァルチャーに対して力強く見据える。

ヴァルチャーの方も拳がめり込んだ後が残り、ヘルメットのガラスの部分にヒビが入っているが緑色のツインアイからは戦闘続行の意思は消えておらず、冷たく2人を見下ろしながら任務遂行の為に彼らを排除すべく翼を広げてスパイダーマンに対して武器を構える。

 

「よりにもよってあの厄介なガキか。纏めてここで始末してやる」




コンテナ君、装甲削られたり蹴られたり突き刺されたりエンジン壊されたりで大変ンゴねぇ…ま、空を自由に飛べる奴が相手だから仕方ないよね!

コンテナ「解せぬ」

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