刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任-   作:細切りポテト

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ソロドラマが続々延期…ほんま辛いっすわ…。



第49話 凱旋

コンテナの本体の上に乗るスパイダーマンと装備を付けた可奈美。火の手は未だ回らないものの両者がヴァルチャーと対峙しながら前を見据えていると徐々に下方が暗くなっている事から大方東京の都心を抜けたことが想像できる。

 

スパイダーマンの超人的な視力により、着実に鎌倉に近付いていることが視認できた。一方で今の自分たちも敵と同じ高さにいるという好条件なタイミングを逃すとヴァルチャーを倒すことがやや困難になる可能性があると想定しているからか、早めにケリを着けることも視野に入れている。

 

皆のコンテナが撃墜されないように防衛することも大切であるが現在のようにヴァルチャーが飛行可能状態のまま現地に到着した場合、鎌倉は敵の本拠地である上に、格納庫に帰投したら遠距離武装を大量に補充して来るだろう。

 

もし、そうなればこちらの攻撃が届きにくい上空からの遠距離攻撃によって進攻を遅延されるだけでなく親衛隊に挟み討ちにされて本殿に辿り着くまでに大幅なタイムロスを起こす可能性があると両者の頭をよぎっている。

現に里でパラディンを使用されたことで、上空からの攻撃は厄介な事は身を持って学んだことで警戒すべきポイントだと判断して戦略を組み立てている。

 

「じゃあ、可奈美。このコンテナがオジャンになるのは時間の問題だ。それに鎌倉も見えてきた……なるべく早くケリを付けないと」

 

「分かった。その前に乗り移った方良くない?燃えてるしどんどん下がってる」

 

「OK、じゃあしっかり捕まっててよ!」

 

「跳ぶのは私が!ゴメン姫和ちゃん!」

 

『おいまさかまた……』

 

コンテナの高度が下がりつつある最中、コンテナが爆散しかねないため両者とも行動に移す。

 

「そらよっ!」

 

「ちっ!ちょこまかと!俺がまとめて狩り殺してやるよ!」

 

ヴァルチャーに対して左手を向けながら電気ショックウェブを連続でヴァルチャーの周りの上下左右に向けて放ち、回避行動を取らせる。

隙を作っている間に可奈美がスパイダーマンの肩に手を回して密着すると同時にスパイダーマンは隣を飛行する姫和の乗るコンテナに右手を向けてウェブを飛ばす。

 

空気中に触れ、吸着したことによってウェブの硬度と引っ張り強度が強くなったのを視認すると可奈美がS装備を装着することで上昇している八幡力の脚力でコンテナの装甲を強く蹴り上げると力強く、一直線に空中に飛び出す。

 

「野郎…なら、テメェには大して効かねぇから使うつもりは無かったがガキ共相手なら別だ。こんな地味なのよりホントは派手に粉々に吹っ飛ぶのが使いやすいが四の五の言ってる場合じゃねぇな!」

 

しかし、ヴァルチャーはそれを見逃す訳がない。スパイダーマンにはあまり有効ではないが対刀使戦では有効な写シを貫通するボウガンを構えると可奈美に向けて構え、弦を引くとその特殊な素材で出来ている金属矢を連続で放って来る。

 

「……っ!?」

 

「僕に任せて!」

 

可奈美はすぐ様反応するが空中では無防備、だがスパイダーマンはこのボウガンは自分には彼女達ほど有効とは言えない武器であるため自分がタンクになることが効果的と考え、飛びながら左腕を素早く動かして3本の矢を手掴みで掴み取る。

 

スパイダーマンが矢を掴んでへし折ると同時に可奈美が両足を姫和の乗るコンテナの上に付ける。今度は2人分の体重がのしかかったためか、衝撃もかなり強いようで物凄い衝突音が響く。嫌な予感がしていた姫和は咄嗟に機内にある小鳥丸に触れて金剛身を張ることで衝撃を軽減した。

 

「oh…アイアンマンみたいなゴツい脚の為せる脚力……」

 

「何か言った?(威圧)」

 

「いえ!何も!」

 

『おい、地味にこれ心臓に悪いんだぞ……』

 

「も、申し訳ない……」

 

「ゴメン……来る!」

 

「ハハハ!これが止められるか」

 

お互いの身体を離して並び立つ形でコンテナの上に乗っているとヴァルチャーも追撃の手を止めずにボウガンの矢を両者に向けて放って来る。

ボウガンの矢はスパイダーマンに当たったとしても軽く刺さる位だ。素で身体の耐久力が高いスパイダーマンには効果が薄いが写シを貫通し、身体に残る特殊な矢は直撃すれば可奈美にとっては脅威になる。

 

「はっ!せいや!」

 

しかし、可奈美はいち早く反応してすかさず千鳥を振り回して矢を叩き落し、切断された矢は足元に落ちて風に流され飛んでいく。

 

飛行中のコンテナの甲板の上という風で姿勢が安定しない悪環境の中改造されたS装備によってHUDが自動で行う弾道予測によりどこを叩けば落とせるのかという計算が為され、その位置を引き上げられた腕力で御刀を振り抜く事で風の抵抗を上回った。ちなみにスーツの性能はさることながらこの悪環境で飛んでくる矢に当てること自体達人技である

並の刀使だったとしたらこのボウガンの矢の連打ですぐ様ノックアウトされている所だろう。

 

「あのさぁ!禁止兵器連打のやり過ぎは辟易させるから程々にしといた方がいいよ!」

 

「はぁ?勝つためなら何でもするのが俺らだっつってんだろぉが!」

 

しかし、ヴァルチャーの狙いは当てることだけではない。少しでもボウガンで相手の気を逸らして隙を作ることだ。

直後にエンジンを蒸して勢いを付けたままコンテナの下方に潜り込み下方から攻めてくる。

 

「ヤバっ!可奈美はちょっと上にいて!僕は下を!」

 

「了解!」

 

それを察したスパイダーマンは矢を回避したと同時に自身のあらゆる箇所に貼りつく能力を活用してしがみ付きながらすぐ様姿勢を低くしてコンテナの真下に向けて這うような形で移動してヴァルチャーを迎え撃つ。

 

一方でヴァルチャーはガラ空きなコンテナの底を攻撃するために巨大な翼を傾け、翼に付いている刃の部分が底に当たるようにしてコンテナの底を翼の刃が火花を散らしながら削っていく。

それを待ち構えていたスパイダーマンは掌を底に付けて脚を一度畳んだ後に脚を伸ばしてヴァルチャーに顔面に向けて蹴りを入れる。

 

「させるかよっ!」

 

「ちっ!」

 

一歩ミスをすれば落下してスイカになるような状況の中空飛ぶコンテナから乗り移るために飛び出す無茶をやって退ける奴ではあるため、多少の事では驚かなくなって来たがやはり無駄に覚悟の決まってるガキは厄介だと再認識させられる。

明らかに自分が不利な体の向きが逆さまになるコンテナの底に張り付いてこちらを迎えつというのならこちらはそれを回避してやる。その懸命な攻撃を外せば大きな隙ができ、こちらにもチャンスが出来るだろう。

 

ヴァルチャーはスパイダーマンの蹴りが届くか届かないかの距離に近付くと咄嗟に身体を翻し、急降下して回避を行う。

眼前に突き出されたスパイダーマンの足裏は思っていた以上に素早いが避けられない程ではないとヴァルチャーは見た。

スパイダーマンの蹴りはヴァルチャーのヘルメットスレスレを掠ったが予想通りなんとか回避は出来た。相手は張り付いているのが手一杯の状態、反撃のチャンスと言えるだろう。

 

「ガラ空きなんだよ!」

 

ヴァルチャーが身体を翻した反動を付け、スパイダーマンに向けて回し蹴りを入れてコンテナの底と脚のクローで圧迫してスパイダーマンをコンテナから振り落とそうとするがスパイダーマンに微かに首を動かすだけの最小限の動作で回避され、クローが底に突き刺さる寸前で足首を掴まれる。

 

「待ってたんだよ、ここまで接近するのをさ!」

 

「離せこの野郎!」

 

「そおら!」

 

スパイダーマンは逆さまになりながらもコンテナの底にしっかりと脚を着け、ヴァルチャーの足首を掴んだまま一回転してヴァルチャーを宙へと放り投げる。

 

「夜間飛行に連れてってやるよ!そのままあの世にもなぁ!」

 

しかし、投げ飛ばされたことには驚いたがヴァルチャーも負けじとカウンターで手の甲からアンカーを伸ばしてスパイダー右腕の肘の辺りに巻き付け、投げられた勢いを利用して背中に取り付けられているエンジンを蒸すとスパイダーマンの足が底から離れ、そのまま宙へと引っ張られて行く。

 

「おわあああああああ!」

 

「スパイダーマン!」

 

「だけどっ!」

 

しかし、スパイダーマンもただではやられない。身体がコンテナから離れる瞬間に左手のウェブシューターのスイッチを押してなんとかコンテナの甲板にクモ糸を当てていた。

ヴァルチャーの引っ張る力によって引っ張り強度は強くなって行く。そして、途中でヴァルチャーも引っ張り強度の強くなったウェブと拮抗して空中で不自然に急停止してしまう。

 

「ぐおっ!」

 

スパイダーマンの腕力とコンテナの飛行する力とヴァルチャーの力が拮抗しているとその格好に耐えられないのか徐々にウェブの着いている装甲の部分がカタカタと揺れて剥がれそうになっているのが可奈美の視界に入る。

 

「なんか嫌な予感……っ!」

 

嫌な予感がするため急いでウェブに近付いて行くと、案の定それが的中する。

ヴァルチャーの引っ張る力に耐えられずにコンテナの装甲が剥がれて先程までスパイダーマンを繋ぎ止めていたウェブが宙に浮いてしまったのだ。

 

このままではスパイダーマンは宙に投げ出される。

そう判断すると可奈美はダイブして風に舞うスパイダーマンの生命線であるウェブをキャッチする。しかし、安心する隙など与えない。

掴んだ瞬間に気流だけでなくヴァルチャーのエンジンの引っ張る力も桁外れであるため一瞬姿勢を崩してしまう。コンテナの後方、一歩足を踏み外せば可奈美も宙に飛ばされかねない位置まで引き摺られてしまった。

 

だが、改造を施しているS装備であるためかパワーも上昇しており、発動している八幡力のパワーを上昇させていく。

腕を振り上げ、思い切り後方に倒れ込むような形になるが僅かに可奈美とスパイダーマンの腕力が力勝ちし、伸び切っているがその分引っ張り強度の強くなったウェブの反動が返って来てヴァルチャーとスパイダーマン両方を自分の方へと引き戻して見せた。

 

スパイダーマンが着地したと同時にヴァルチャーもコンテナの前方に激突する形になり、一度コンテナの上をバウンドし、翼をコンテナの装甲に突き立てて衝撃を軽減し、装甲を削りつつ滑りながらコンテナの前方まで移動する。スパイダーマンがそれを見逃さずに自身に巻き付いているアンカーを左手で掴んで思い切り引き寄せようとするが危機を察知したヴァルチャーは咄嗟に手の甲のアンカーを切り離して接近を回避する。

 

その隙にスパイダーマンの肩を台にして飛び出して来た可奈美が攻め込んで来ており、ヴァルチャーの飛行手段を潰すために翼を破壊しようと接近戦を仕掛けて来る。

ヴァルチャーも反応するとボウガンを連射するが勢いを止めずに矢を打ち払いながら突進して来る。

 

しかし、この悪環境で走りながら打ち払い続けるのは困難。所々掠めたり、後少し反応が遅れていたら命中していたと思わされる瞬間も多々ある。

スパイダーマンが可奈美の背に隠れながヴァルチャーに気付かれないように相手の足元に向けてクモ糸を飛ばす。

 

ヴァルチャーは急いで軽くジャンプで回避するがそこに一瞬の隙を作ってしまった。

 

「せいあっ!」

 

 

「野郎っ!」

 

翼に向けて振り下ろされた一撃に反応して咄嗟に剣で塞ぐが力負けして姿勢を崩されてしまいそのまま流れるように下段からの斬り上げでボウガンを両断する。

 

これで写シ対策の矢は使用不可能となる。そのまま翼を切断しようと再度上段からの振り下ろしをお見舞いしようと思ったがヴァルチャーの背中に取り付けられているエンジンを急速に蒸す事で後方に飛んで回避される。

だが直後にスパイダーマンに手元の剣にクモ糸を当てられる。

 

「今だ!くらえ!」

 

「クソッタレが!」

(冗談じゃねぇぞ!アレを食らったらやべえ……チッ!コイツを捨てるっきゃねぇか!)

 

すると直後に電気ショックウェブのスイッチを押しており、ウェブを通して高圧電流が流れ始める。

このままでは剣を通して電流を浴びると察したヴァルチャーは止むを得ず手に持っていた剣を投げ捨てて感電を回避する。

 

「外した!……おっとっと!」

 

「ふーあっぶねー!」

 

可奈美は倒しにかかった一撃を回避された上にコンテナの先端であったためか踏み込みのせいで足を踏み外しかけて前から落下しそうになるが突如として後方へ引っ張られてコンテナの真ん中程まで移動したので落下を防ぐ事が出来た。

 

完全に手元に武器が無くなったヴァルチャーが一瞬背後を見るとこちらの本拠地である鎌倉。ましてや折神家が視認できる程まで近づいている事を確認する。何としてもヴァルチャーは鎌倉に到着する前に突入するメンツを1人でも多く排除しなければならない。

残された時間が少ない以上、こちらも一手を打たなければならない。

ヴァルチャーに搭載されている一度撃てば再度換装が必要になるが相手が生身を晒している人間である以上成功すれば有効打となるだろう。

最悪、一瞬でも隙を作る事が出来ればこちらの勝ちであろうと判断して使用を決断する。

 

「やっぱしぶてぇガキはめんどくせぇ……なら、コイツでくたばりやがれ!」

 

ヴァルチャーがそう宣言すると両翼が分離するかのように展開され、翼に搭載されているティルトローター式のタービンエンジンが後方を向いて急速に回転し始めて風を集め始める。

 

「はっ……っ!?アレはマズい…!?」

 

「何があるって言うんだ……」

 

そして、可奈美はそれを見て察知する。以前、アレを直に食らった事があるからだ。スパイダーマンはそれを見たことがある訳ではないためか何が何だか理解していないようだ。

今、この状況下でアレを喰らえば確実にこちらが負けると判断して、それを使われる前に何とかしなければ……と言った思考が頭を巡る。

御刀のリーチでは届かない。なら、リパルサー・レイで妨害をしようと掌をヴァルチャーに向けて放ち、それに便乗したスパイダーマンもウェブを放つが風に揺られて姿勢が安定しない上に最小限の動きで回避されてしまう。

 

「テメェらが生きてる人間である以上、コイツに対抗する術はねぇ!」

 

ヴァルチャーの翼に風が収束され、翼から超音波が放たれようとしている。マズい、アレに直撃すれば立つことすら困難になる程平衡感覚を破壊され、力も入らなくなってしまう。そうなればこちらは一方的に嬲られて終わるだろう。

 

(どしよう……あの音を聞いたら私たちの負け……っ!どうすれば……

聞かなくて済む方法……方法は……あっ!こうなれば一か八かで!)

 

ヴァルチャーのヘルメットの緑のツインアイがこちらに冷徹な視線を送り、完全に決めに来ている事が察する事が出来る。

焦りも生じて冷や汗を掻くが、頭の中で一つの線が繋がり、効かなければこちらの負け。だが、もし成功すればこちらにも反撃するチャンスが出来ると判断してHUDの通信機能に接続して舞衣の乗るコンテナに向けて通信を送る。

 

「舞衣ちゃん、透覚で音を掻き消して!」

 

「何があるんだ……?」

 

「えっ?…うん、分かった!」

 

唐突に、それでいてかなり真剣な剣幕で言われた為、一瞬困惑したが何か考えがある事は理解できた。

指示通りに舞衣は咄嗟に孫六兼元に触れると刀使の能力の一つ、聴覚を強化する能力透覚を発動する。集音マイクのように特定の音を集中して聞き取ったり、ノイズをカットするといったことも可能となる。これもまた使い手はそれほど多くないが、これと先の明眼と合わせると機械よりも正確な情報・状況分析が可能となるが使い手が少ない能力であるため、この二つを併せ持つ者は少ない。

今回は言われた通り透覚を発動して、音を掻き消す方の使用方法を用いる。

 

ヴァルチャーの翼はタービンの回転によって集めた風を収束し、放つ超音波に乗せる衝撃の威力を高めると翼の普段は装甲で隠されているスピーカーから地響きがしたかと錯覚するほどの強烈な超音波を放って来る。

 

翼から放たれた超音波がスパイダーマン達に襲い掛かって行く。この音波を直接聴くと不快な音波により脳にまで衝撃を与えられ、しばらくの間平衡感覚を失う程のダメージを受けてしまう。

 

「こいつで楽になりな!」

(ハハハ!これで終いだ!何とか鎌倉に着く前に始末出来たか)

 

しかし、その音波がスパイダーマン達に当たるが衝撃により後方にまで押されていくが両者が互いの手を掴む事で踏ん張っている。

歯を食いしばっているのは感じられるが超音波の影響を受けて戦闘不能になる様子は見られない。

 

「何だと!?」

 

ヴァルチャーは本来ならば戦闘不能になっている筈の両者がケロっとしている様に驚きを隠せなかった。

 

「間に合った……」

 

舞衣が既の所で透覚のノイズカットを発動したことにより、周囲を無音にする事でヴァルチャーの超音波を無効化して防ぐ事が出来たようだ。

しかし、後一歩発動が遅ければ超音波が直撃していたであろう。正直成功するかは五分五分だったが何とか超音波を切り抜けることが出来た。

 

「よし、可奈美。一気に決めよう!」

 

「うん!」

 

ヴァルチャーが奥の手を封じられ、装備にも負担を掛ける程の大技を使った反動で動きが鈍くなっている今が好機。それを見逃す両者ではない。

片やヴィブラニウムブレードを構え、片や千鳥を構えて頷くと同時に正面を向いて並走しながらコンテナの上を走って行く。

 

コンテナの先端まで来ると2人とも力強くコンテナを蹴ってヴァルチャーの飛行している位置まで飛躍する。

 

「「はあああああああ!」」

 

両者が同時に上段から剣を振り下ろすとヴァルチャーは翼でガードしようとするが既に遅い。

八幡力とスパイダーマンの自前の怪力によって振り下ろされた刃先が機械の翼の根本に食い込んでいき、金属を切り裂く金切り声を上げながら翼がウゥングスーツから離断される。

 

「クソッタレがああああ!」

 

翼が切断されるがまだ背中のエンジンがある以上は何をされるかは分からない。翼を切り裂いてヴァルチャーの横を通り過ぎると宙でヴァルチャーの背中に向けて右手のウェブを当ててて背中のエンジンに回し蹴りを入れる。

それと同時に可奈美の腕を掴む。

 

「ぐおっ!」

 

スパイダーマンの蹴りによりエンジンが潰れた事によりヴァルチャーは完全に飛行能力を失った。そして、蹴られた勢いのままコンテナの方まで飛ばされて行く中スパイダーマンがウェブを連射する事でヴァルチャーを拘束して行く。

 

ヴァルチャーが姫和の乗るコンテナの上に直撃すると同時に表面に吸着して落下を防がれる。またしても敵に命を助けられるという屈辱を味わう羽目になった。

その直後に前進するコンテナの上にスパイダーマンと可奈美が落下に近い形で着地する。ウェブを当てて引っ張られて来たようだ。

2人は拘束されて身動きが取れない自分を見つめているが殺意を感じられない。そんな2人の様子を見て皮肉げに相手を茶化すような口調で語りかける。

 

「何だよ甘ちゃん共……今俺を殺さねぇと後で損するぜ?」

 

「僕達が挑むのは大荒魂だ。だから人間は討たない。そう決めてるんだよ、悪いけど」

 

「貴方を裁くのは私達じゃない。法律だよ」

 

「クソガキ共が……その甘さが命取りになるって思い知る時が来るぜ……その時お前らが絶望する姿が目に浮かぶ……ハハハッ!」

 

ヴァルチャーが負け惜しみに近い言葉だがかなり不吉な事を言っているとエレンの乗るコンテナから通信が入る。

 

『見えマシタ!もうすぐ鎌倉デス!』

 

『皆、着地する時の衝撃に備えて!』

 

『この調子で本拠地まで行ければ』

 

どうやらコンテナが着地のために地上に向けて徐々に高度が下がって来た事により折神家周辺やその前に聳える市街地が見えてくる。

下の世界には民間が立ち並び、その前には市街地がありビル群が並び立っている。

皆が着地に向けて準備を始めていると姫和から通信が入る。

 

『……っ!?おいマズいぞ!可奈美の乗っていたコンテナが!』

 

既に戦闘の余波で高度が下がり、軌道も大幅に変えられてしまっていた可奈美が先程まで乗っていたコンテナは完全に破損し、機体は急降下。

火はまだ小さいものの炎上しつつあるコンテナは既に折神邸の付近にある市街地に突っ込む勢いだ。

 

「このままじゃビルに突っ込むよ!」

 

「おっとーこのままじゃあビルの中にいる連中はお陀仏だなぁスパイダーマンさんよぉ」

 

もし、コンテナがビル群に追突して大爆発を起こせば大惨事だ。それでは余計な犠牲が増えてしまう。こんな状況だがそれは避けなければいけない。

 

「可奈美は着地の準備をしてて!僕はあのコンテナをどうにかする!

 

「どうかするってどうするの!?」

 

「どうにかするんだよ!」

 

かなり焦っているためか会話のドッジボールをしてしまうが今は一刻の猶予もない。スパイダーマンはコンテナにウェブを当てて飛び移ると視界の先にある

ビル郡の谷間とコンテナの幅を把握する。

まず初めにやるべきことはこのまま行けばコンテナの横に取り付けられている右翼と左翼がビルに当たりかねない。ならば隙間を通れるように傾け無くては。

左手のウェブを左翼に当てるとコンテナの甲板の上で力強く踏ん張り、思い切り自分の方へと引っ張る。

 

「曲がれええええ!」

 

スパイダーマンの怪力により徐々にだが水平だったコンテナを垂直に傾けて行く。危うく左翼がビルに当たりかけたが何とか回避する事に成功した。だが、まだコンテナの落下の勢いは止まらない。

コンテナがビル群が並ぶ市街地を抜けると管理局以外の近隣住民は誰かが避難させてくれたのか民家に明かりは無く、管理局周辺以外はほぼ無人であることは想像出来る。

だが、コンテナは確実に管理局本部に向けて前進している。

 

「近隣住民は避難させてるのかな?舞衣、明眼の熱探知で局周辺の生体反応を探して!このままだと墜落は避けられない、なるべく人がいない所に着地させないと!」

 

「分かった!………本部には結構いるけど周辺や研究施設付近にはいないよ!」

 

「了解、頑張る!」

 

目標を決めるとスパイダーマンは左右を見渡すと避難して人がいない局周辺の建物を確認する。

研究施設付近に不時着させるには軌道を変えるしかない。ならば……。

すると、落下しながら既に人がいないことを確認しているため、右翼の上に乗って身を乗り出しなが隣の建物の壁を思い切り蹴る事でコンテナの軌道を研究施設付近に向けて強引に変える。

そして、軌道が変わった後は周辺の建物の頂上に向けてクモウェブを発射して貼り付けそれを力強く引っ張る。

 

「ふん!ぬおおおおお!ぐあっ!」

 

コンテナの上を脚力で強く踏ん張りながら糸を強く握る事で怪力と伸びたウェブの引っ張り強度によってコンテナの速度が減速し、勢いを殺して行く。

しかし、落下は止まらずついには不時着してコンテナの上にいるスパイダーマンにも強い衝撃が伝わる。

 

「一本ずつじゃ足りないなら……こうだ!」

 

それでも勢いが止まらず滑り続けるコンテナに対してまだウェブの数が足りないのだと判断して今度はウェブを何度も周辺の建物に連射して、それを強く握る。

複数のウェブが強靭な引っ張り強度となったことで徐々に勢いは減衰して行く。

 

 

かなり勢いは減衰したがコンテナは止まらない。

地を滑るコンテナは一度バウンドして研究施設の壁、それも何かを厳重に保管していると思われる場所に突っ込み、轟音を上げながら激突する。

 

 

結果として怪我人は出ていない上に、もし減衰させなければ研究施設は更に崩壊していただろうが万事休すと言った所だろう。

すると直後に少し離れた位置に連続でコンテナが着地し、地震が起きたと錯覚する程の揺れを起こしている。

 

その揺れは管理局本部にも伝わっており、捜査本部にいる真希や寿々花も感じ取っており、モニタ越しに移っている着地点を確認している。

 

「くっ……!」

 

「トゥームスはしくじったのか……やってくれる!」

 

 

「…………」

 

管理局の医務室ではコンテナの着地による地響きを聞き、未だに医務室に入院した夜見は戦闘で負傷した日から数日経っているためか幾らか身体を動かせる程には回復しているため、まだ重い自分の身体を引き摺って彼らの迎撃に備える為に部屋から退室して行く。

 

 

格納庫では整備士が急いでメンテナンスを進めている中、ハーマンとアレクセイが待機しているとコンテナの着地による地響きで格納庫がグラグラと揺れ、辺りの機材や棚に置いてある工具を薙ぎ倒していく。

 

「おわっ!たくっ、あのガキ共滅茶苦茶しやがるな……ま、じゃねーとぶっ潰し甲斐が無ぇ。オラ、とっとと急がねーとここもやべーんじゃねぇか?」

 

「は、はい!すぐに!」

 

ハーマンが意気揚々と右拳を左の掌に軽く打ち込みながら闘争心を燃やし、更に整備士達を急かしているとアレクセイが再度諫めに入る。

 

「急かすな。慌ててメンテナンスに失敗したら元の子もない。すまない、ペースは上げても落ち着いて的確に行ってくれ」

 

アレクセイの発言を聞いて少しだけ安心した整備士は真剣な表情になりながらショッカーとライノの最終メンテナンスに移って行く。

一方でハーマンは舞草側が陽動のために行った朱音の演説をアレクセイが真剣な表情で聞いていた事から彼らに情が移り、任務に支障を来さないかの確認を取るためにメンチを切りながら問い掛けてくる。

 

「つーか、お前あの演説聞いてマジな顔してたけど鵜呑みにしてねーだろうな?あんなん芝居だろ芝居。それで奴らに肩入れして手ぇ抜いたらシメるぞコラ」

 

「問題ない。気になる点はあるがアレは明らかな陽動だ。注目を集める為の演技かも知れないからな。俺は俺の任務を全うするだけだ」

 

「そうかよ」

 

アレクセイも演説には聞き入ってしまっていたが彼らの目的は実際陽動だったという事、朱音の発言には確たる証拠も無いというのに鵜呑みにし過ぎるのは軽率だと判断してか自分なりに彼らと戦い、局長である紫を守る任務を全うするという気持ちに切り替えている。

ハーマンも気になる所はあるが嘘は言っていないように感じたため、特に気にしない事にしてショッカーとライノの最終調整を傍目で眺める。

 

一方、ようやくスーツとの適合を終えて針井グループ専用の格納庫から出てきたグリーンゴブリンはスーツに搭載されている数々の武装の概要を確認をし、専用の蝙蝠の形をしたその上に足を乗せて飛行する専用の装備『グライダー』を手に取って地面に置く。

 

「おにーさん、終わった?」

 

「ああ、結芽ちゃん……丁度今スーツとの適合が終わった所」

 

「おにーさん……大丈夫?」

 

するとこちらに合流するために歩いて来た結芽と対面する。全身を完全防備のスーツに身を包んでいるが一瞬フラついたように見えるグリーンゴブリンに向けて心配そうに声を掛けてくる。

 

「大丈夫だよ。ちと疲れたけど……これくらいどうって事ないさ」

 

「そう……あのね、おにーさん。私」

 

何とか気丈に振る舞いながら大丈夫だと豪語するグリーンゴブリンに対し、少しだけ嫌な予感というか心配だという気持ちが湧き上がっては来るが再度その姿を見て声を聞いた際にもう一度だけ、もう一度だけで良いから……と自分の気持ちを最後に伝えたい。それを分かち合いたいという想いを腕を後ろで組みながら頬を赤く染めながら伝えようとしたが時間はそれを許してはくれなかった。

 

5機分のコンテナの着地音が響き渡り、大地を揺らすかと錯覚する程の揺れと轟音が結芽の声を掻き消してしまう。

グリーンゴブリンは一歩も退かずに直立不動のまま轟音がした方向を見やっていた。結芽の声は掻き消されて聞こえていなかったようだ。

 

「来たか……行こう、結芽ちゃん。舞草から局長を守るために」

 

「………うん!おにーさん!」

 

少し残念だが、自分に残された時間も敵が攻めて来るまでの時間も残されていない。残された時間の中で大切な人達と共に戦い、そして自分の強さを証明する恐らく最後の戦いに向けて結芽はグライダーに乗って移動するグリーンゴブリンの後を追って行く。

 

 

 

 

「限りなくアウトに近いセーフ……おっと、皆は少し遠くに落ちたか。行かないと」

 

地響きを聞いて皆が到着した事を察知すると皆と合流するためにコンテナから飛び降りて音がした方向に向けて走り出すスパイダーマン。

だが、この時スパイダーマンは気に留める余裕が無かったため、気付くことは出来なかった。

スパイダーマンがコンテナを不時着させ、コンテナの先端が研究施設の壁に激突して突き刺さったことにより何かを保管していたと思われる倉庫の扉が完全に壊れ、蠢く黒いコールタール状の液体が瓦礫から這い出て来ようとしているという事に。

 

時は少し前に遡り、コンテナが不時着する少し前

 

管理局のとある一室ではテレビで全国生中継で放映されている朱音の演説を見ながらコーヒーを左手に持っているが右腕は肩から下が存在せず、白衣を纏った恐らくギリギリ青年と呼ばれる年代に見える白人の研究者が優雅に椅子に腰掛けている。

机の上にはノロと生物の遺伝子を結合させたアンプルの構想を纏めた設計図や管理局のほんのごく一部、雪那や紫、ましてや自分位しか調査に携わっていない地球外からの異形、シンビオートについて現段階で判明したことをレポートに纏めている用紙が並べられてある。

 

「やれやれ、豪快な人達ですね。ナイストラップで知性は感じますが、品性を感じられない……まぁ、ヒステリックで口煩いとある御仁よりは遥かにマシですが」

 

中継を眺めながら飲み干したコーヒーカップをテーブルに置くと部屋から見える夜景を眺め始める。

既に夜中で暗くなっているが月の光が窓の外の世界を辛うじて照らしている。

 

「しかし、コンテナの上にスパイダーマンが貼り付いているとは興味深い。蜘蛛の接着能力でしょうか?恐らく、私たちの研究のおこぼれと偶然が重なった結果かも知れませんが質は悪くありませんね」

 

研究者が夜空を眺めていると遠方から何かがこちらに向かって来ていることが見て取れた。

目を細めて見てみると舞草がノーチラス号から射出したS装備の射出コンテナがこちらに向けて飛んで来たのだ。

 

「思ったより早いですね。衝撃でカップが割れないように仕舞わなくては」

 

研究者がコーヒーカップを仕舞おうとするが一機だけ急降下しながら位置を変えて別の場所に不時着しようとしているのが見て取れた。

 

そして、その光景は研究者の瞳孔を散瞳させるには充分過ぎる出来事だった。

そう、急降下して地面を滑って行くコンテナの行く先は……シンビオートが保管してある特殊な保管庫の場所だったからだ。

 

「アレは……まさかっ!?チッ、冗談じゃありませんよ!あそこの保管庫にはまだ研究途中のシンビオートがいると言うのに!」

 

もし、コンテナが研究所に激突して保管庫を破ったりしたらシンビオートが外に出るかも知れない。未だにシンビオートは調査中であるにも関わらずこんな些細な事で脱走したとなれば自分が責任を負わされるからだ。

そして、紫や雪那はシンビオートをノロと人間の融合の強化パーツや研究のセカンドプランとして見ていて、あまり重要視せずに過小評価しているが研究者はシンビオートを知りたいという知的好奇心を持っているため脱走など尚更許せる訳が無かった。

 

その瞬間に研究者は急いで、シンビオートが地球上でも生存できる特殊なケースを持って駆け出していた。

 

研究者が大急ぎで息を切らしながら研究所まで移動すると最悪な事にコンテナは保管庫のある部屋の壁を突き破っており、保管庫のあった場所に直撃していた。

そして、保管庫がコンテナの先端に潰されてひしゃげて形が変形した場所から抜け出そうと必死に足掻いているコールタール状の生物が形を変え、分裂する事で抜け出そうとしており、地球上では単独では生きられない彼らは酸素を求めて何かに寄生しようと辺りを探すように蠢いていた。

 

「ハア…ハア……全く、肉体労働は専門外だと言うのに」

 

研究所はシンビオートを救出するために急いで酸素を送るシンビオート専用のケースを持って移動し、瓦礫を退かそうと近付こうとするとコンテナのエンジンが爆発して研究者とシンビオートの間を炎の柱が立つ。

どうやら既に限界に達していたようだ。

 

「ぐあっ!最悪ですねホント!」

 

研究者は何とか合間を潜り抜け、二酸化炭素によって呼吸を奪われてしまうが何とか保管庫に近付く。

 

ふと見ると最悪な状況は続くようであり、脱出する際に分離したシンビオートの片割れは炎に包まれる寸前であったがもう片方は違った。

 

先程出た炎に身を焼かれており、形を滅茶苦茶に変形させながらまるで苦しんでいるかのように激しく暴れていた。

 

「もしかして……貴方達は炎……いや、熱が致命的な弱点なのですか……?こんな状況で知りたくありませんでしたよ」

 

研究者は思いもよらない形でシンビオートの弱点を知ることが出来たが既に火の手も上がっておりこのままではもう片方も焼け死ぬ上に片腕しか無い自分では両方を助けるのは非常に困難と判断して炎上している方のシンビオートは見捨て、無傷な方のシンビオートを救助して撤退する事を決意した。

 

「申し訳ありませんが、貴方を助けている余裕はこちらにはありません。無事な方を救うのがベターです。非常に残念ですが結果的にいいデータが取れました、それでは」

 

助けを求めるかのように暴れるシンビオートを他所に無傷な方のシンビオートをケースに入れて研究者は炎の中から抜け出し、走り去って行った。

 

置いて行かれたシンビオートはその後ろ姿を見つめているかのように静止しているがこのままでは自分は焼け死ぬと判断し、業火から脱出する。

体組織の大半が焼け爛れて満身創痍、既に虫の息と言った状態のまま生にしがみ付くために当ても無く、ただ生きるために、なんでも良いから宿主を探す為に本殿の方へと這って行く。




東映版のアーツと超合金レオパルドン出るのは流石に草
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