刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任-   作:細切りポテト

50 / 67
ウィドウ11月でエターナルズ来年か……何とか終息すれば良いんですけどね…。

ちと長くなり過ぎましたすみません。


第50話 月光

コンテナの着地音が局の敷地内に響き渡る中、その音と土埃を頼りにして駆け付けたスパイダーマンも皆と合流する。

 

着地して地面に突き刺さっているコンテナをよく見ると先程までの戦闘でコンテナに貼り付けられていたが、着地の衝撃で引き剥がされて地上に身を投げ出された上にスーツの翼が切断され、スーツもボロボロなヴァルチャーが片膝を着いてこちらを睨んでいるが彼の性質上何をするか分からない。

飛行能力がなくなったとは言え新たに装備を換装されて空中から再度攻め込まれると厄介であるため敵の戦力を減らすためにここは拘束するべきだろう。

 

「やっほ、翼の折れたエンジェル。動き回られても困るから誰か捕まえに来るまでいい子でお座りしてな」

 

「へっ……せいぜい調子こいてろガキ共。とんでもねぇ戦争はまだ始まったばかりなんだからな、ハハハッ」

 

スパイダーマンが軽口を叩きながら右手のウェブシューターのスイッチを押すと手首の装置からウェブが発射され、ヴァルチャーに命中すると身体もウェブの命中した衝撃で後方に飛ばされて道端に生えている木に貼り付けられる。

 

一方でヴァルチャーが一貫して挑発的な態度を崩さないことに関しては引っかかる物を感じるがこちらに時間は残されていない。気にしている余裕もないだろう。急いで本殿に向かう必要がある。

総意で地を蹴って跳躍することで移動しながら折神家の正面の門まで移動する。

 

人気のない、それでいて電灯も無いためか月明かりが辛うじて道を照らしている正門の前に着くと砂利を踏む音が別方向から聞こえて来る。

 

「侵入者を発見!」

 

「殺しても構わない!やれ!」

 

雪那がある程度戦力を残存させて待機させていた鎌府の刀使複数がこちらを見つけるなり抜刀しながらこちらを睨んでいる。

どうやら、コンテナの着地音から突入がバレたのだろう。

 

「流石にバレるか……」

 

「こんなのに構ってる時間ねぇってのに……っ!」

 

「こっちの稼働時間はリアクター由来でも無限ではありまセン!それまでに大荒魂を討たないと行けまセンのに!」

 

S装備を装着していることにより身体能力が強化されているため、直接戦闘で敗北するということは無いだろうが稼働時間は無限では無い。

なるべく強化されている状態で本殿にいる紫を倒さなくてはいけない。

その上護衛の数もそれなりにいるため、全員を一々相手にしていては大幅なタイムロスだろう。

だが、突破しなければ結果は同じ。そう判断して臨戦態勢に入ろうと構える。

 

ーー刹那。後方から透き通るような凛とした声、ここ数日スパイダーマンは何度か聞いた声が、そして沙耶香は数日前にどこかで一度だけ聞いたような気がする聞こえてくる。

 

「左失礼」

 

凛とした掛け声と同時に7人が立っている合間を的確に円盤状の物体が高速で回転しながら通過したと思いきや護衛の刀使達の手首に円盤が次々に命中すると御刀を手から落とす。

その命中した円盤は………盾のようにも見える物だった。

 

声の主はスパイダーマン達の頭上を跳躍で通過すると同時に引き寄せられるように持ち主の元へ帰ってくる円盤をキャッチする。

そのまま護衛の刀使に接近すると、片方の背後を取って手刀で気絶させる。

そして、流れるように姿勢を低くしながらもう1人の護衛の刀使の足に足払いを入れる。

足元を崩されたことにより転倒しそうになるのをその人物に受け止められ、それと同時に首筋に手刀を入れられたことで意識が途絶えて気を失い、地に優しく寝かし付けられる。

一同が、あまりの手際の良さに驚いていると微かな月明かりがその姿を顕にする。

 

筋肉質で180cm程の長身に、頭部から目の辺りを覆ってはいるが眼の辺りは解放されているAのマークの青の丸いヘルメット、それを固定するベルトを顎にかけている。

そして、全身が青色を基点に構成されつつも両肩には背中と連動して物を背負って走れるようにベルトを巻き、胸には銀色の星のマークと腹部には白を基調として赤の縦ラインの入った腹巻きを装着したまるで星条旗をモチーフにしてるかのようなコスチューム。

そして、最大の特徴はマンホール大の大きさに赤を基調としたカラーリングに銀の丸い模様に中心には青の丸の上に銀の星のマークがある円形の盾。

 

かつてのアメリカの象徴であり、チームの元リーダー。現在は国家反逆罪で行方不明になっている筈の人物、そしてスパイダーマンの訓練に付き合ってくれた人物キャプテンアメリカだ。

 

「キャ、キャプテン!?来てくれたんですか!」

 

「キャプテンアメリカと知り合いなのか?」

 

「あーうん、実は僕に訓練付けてくれてたから」

 

「アンビリーバボーデース……薫?」

 

「…………………」

 

何故そのような人物がこの場所に来ているのか、皆疑問しか湧かないがスパイダーマンは訓練を付けて貰っている間柄である上にトニーが助っ人を送ると言っていたことを踏まえると合点が行った。

 

一方で、彼のファンである薫は固まったまま動かなくなってしまっている。

実際は飛び上がりそうになる程嬉しいが無理もないだろう、逃亡中な上に会う機会など普通は来ない筈の人物がそこにいるのだから。

 

「やぁ、神奈川の坊や。実際に会うのは初めてだね、トニーから話は聞いていた。どうやら事態は既に最悪な状況みたいだな」

 

「そうなんです、キャプテン。今は一刻の猶予も無くて」

 

スパイダーマンとキャプテンが親しげとまでは行かないがそれなりに親密なのか普通に会話し始めたことに皆驚いている。

だが、確実に分かるのは今1人でも味方が欲しい自分たちにとって光明とも言える存在が現れたということだ。

キャプテンは一度、会話を打ち切ると全員を見るように顔を上げて一同を見渡し、流れるように言葉を紡いで行く。

 

「だからこそ、僕が来た。君たちの行く手を阻む護衛の刀使達やSTTは僕たちが引き付ける。その間に君たちは大荒魂を倒してくれ」

 

「ほ、本当にいいんですか?」

 

「どうしてここまでしてくれるの?ここは貴方の国じゃないのに」

 

キャプテンがいや、自分達と言っている様子から他にも協力者がいるという事を何となく察することが出来るがここまでしてくれるキャプテン達の厚意に舞衣と沙耶香は素朴な質問をする。

本来なら彼は逃亡生活中で、自分達のことで手一杯の筈。それでいて祖国でもない他国である日本に力を貸し、それでいて日本の治安組織である管理局と戦うなどリスクが大きいだけの無謀な行動のように見えるからだ。

 

それに呼応してキャプテンは一度だけ、顔を上げて月を見上げるとポツポツと語り始める。

蒼く、透き通るような双眸はここにはいない誰かに向けて。そして、自分に言い聞かせるように力強く語り始める。

 

「確かにここはアメリカじゃない……。だが、助けを求めて手を伸ばす誰かがいるのならそこに国境はない。その手を掴むのが僕たちだ。それに……かつて戦った日本の英雄達の魂が安らかに眠れるように、彼らの守った未来をこれから先に繋いで行きたいからだ。微力ながら協力させてくれ」

 

自分はかつて戦時中国を守るために、そして誰かを守る為に超人血清を打つことで超人兵士となることで国の為に戦っていた。

その最中で戦場で多くの敵と戦い、命を奪い、結果として英雄として祭り上げられてしまった。その敵の中には日本兵もいた。

 

ーー結果としてアメリカは勝利して、祖国の人々は救われた。

戦いの中で、敵国だとしても尊敬出来る人達がいた。彼らもまた国や守りたい人たちの為に戦っていたのかも知れない。

戦場で命のやり取りをする以上は誰かが悪いと一方的に断じて良いものではない、死ぬか生きるかだ。自分を責める者は今はいないのかも知れない。

 

だが、自分が戦った事でその人達が守りたかった人たちを不幸にしたかも知れない。そう考えると胸の奥が苦しくなる。

今の日本が戦争も無くなり、荒魂が出現する以外は平和になったことは嬉しく思っている。

だが、その平和な世が出来上がる過程には命を掛けて国を守るために戦った英雄達がいた事、キャプテンは彼らを忘れることは無いだろう。

 

ならせめて、彼らの守った未来をこれから先に繋げていくこと。

今、日本を守るために命懸けで戦う子供達の手助けをすることが自分が彼らに出来る最大の償いなのかも知れない。

 

それだけでなく、目の前で困っている誰かがいると言うのに手を伸ばさなかったら自分は一生後悔すると思っているからだ。だからこそ、リスクを負ってでも彼らに助力するのだと。

皆はその言葉を聞いて言葉も出なくなっているがその覚悟の強さを感じ取ることが出来た。

 

「助かります」

 

姫和がキャプテンに頭敬意を表して頭を下げて、礼をすると先程まで推しが目の前に現れたことで硬直していた薫が多少挙動不審になりながらキャプテンの前まで移動し、緊張で手をカタカタと震わせながら手を差し出す。

 

「あ、ああああの!オレ、益子薫って言います!こっちはペットのねねです!その……キャプテン、ファンです!……握手してください!」

 

喉から絞り出すように声を上げていると上擦った声を上げていてアイドルの握手会に参加したオタクのような反応になっている。皆が苦笑いしているがキャプテンはそんな素振りを見せる事なく彼女に対し1人の仲間として真摯に対応する。

視線を薫の高さに合わせるように屈んで自分から薫の手を取って強く握る。

 

「こちらこそ、よろしく頼む。一緒に戦おう」

 

「ねっ!」

 

いつも嵌めているオープンフィンガーグローブを、ついクセで外すのを忘れてしまったが尊敬している人物に手を強く握られたのだから心拍数が急激に上がるのを実感する。

手のサイズに大きな差はあるがキャプテンにしっかりと握られた手の感触は忘れることは無いだろう。

薫との握手を終えると彼女の頭の上に乗っかっているねねの手を指先で握るような形で握手をするとねねも得意げな表情を浮かべている。

 

「……………オレ今日手洗わねぇわ……」

 

「汚いデスヨー」

 

「ねっ!」

 

尊敬する人物と握手出来た事が余程嬉しいのか自分の掌を見つめていると、ふと思い出した事があった。

スパイダーマンはここ数日、何らかの方法でキャプテンと知り合っていたということだ。今まさにご対面出来たのであまり深くは気にしていないがこんな羨ましい秘密を内緒にされた事は悔しいのかジト目でスパイダーマンを見やる。

 

「つーかお前、なんでキャプテンとトレーニングしてるって言わねんだよ。ズリーぞ、知ってたら見に行ったのによぉ」

 

「いやほら守秘義務みたいなのがあってさ……」

 

「ま、まぁ競争じゃねぇし。実物のキャプテンと握手したのはオレが先だし」

 

薫がドヤっと仁王立ちしていると、キャプテンの超人的な聴覚は何かを聞き取ったのか表情を兵士の物に切り替える。どうやら増援が来たようだ。

 

「どうやら、敵は待ってはくれないみたいだ!君たちは行け!」

 

キャプテンが盾を構えて7人の前に出ると彼らに向けて力強く言い放つ。

その言葉を受けてキャプテンから伝わる覚悟を感じ取った面々は次々に跳躍して正門を飛び越えて行く。

 

「ありがとうございます!キャプテン!じゃあ行ってきます!」

 

「ありがとうございます!」

 

「ご協力、感謝します!」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとう」

 

「キャップもファイトデース!」

 

「キャプテン!良かったら後でサインもお願いします!」

 

「行って来い、神奈川の坊や!お嬢さん達!さて、僕は僕の役割を全うしないとな」

 

キャプテンが子供達の跳躍を見送ると再度こちらに接近しつつある気配を彼らに近づけさせないために手に持っている盾のベルトをキツく握り締めて大地を蹴って進撃する。

自分が彼らにしてやれる事はこれ位しか無い。だが、かつて国を守るために戦った英雄達の魂が安らからに眠れるように、彼らが守った未来を自分が守る。

そう心に誓うとキャプテンの走る速度は更に加速して行く。

 

 

正門を飛び越えると敷地内に入ることが出来た。全員が横並びに立つと目の前に広がるのはあの衝撃的な光景が繰り広げられた御前試合の会場。

全てはここから始まって今に至る。決勝戦の最中に突如として管理局の長である紫を抹殺しようとした中学生と、それに加担するご当地ヒーロースパイダーマンというあまりにも濃ゆい光景は中々忘れられ無いだろう。そんな会場を感慨深そうき可奈美が見渡している。

 

「どうした可奈美?」

 

「ここで出会ったみんなとまた戻って来たんだなって」

 

「そうだな…戻って来れるとは思ってなかった」

 

国の治安維持組織のトップを敵に回してまさか戻って来られるなど誰が想像できるだろうか?いや、普通は出来ない。

当然ながらここに来るまで沢山の脅威が攻めてきて来た。

親衛隊、ヴァルチャー、ショッカー、ライノ。そして、里を襲撃して来たパラディン。どれもこれもスパイダーマンにとっては思い出したくもない強敵ばかりだった。

 

だが、その度に自分たちは力を合わせて乗り越えて来た。きっと、今回だって同じだ。

 

「感慨に耽るのは早い」

 

「あんまし時間も無いしね……ぐっ!やっぱ嫌な感じがあっちからビリビリ伝わって来る。第六感が刺激されてるみたいだ」

 

沙耶香も既に自分なりに気を引き締めているのか喝を入れる。スパイダーマンも大荒魂に確実に接近しつつあるのか全身がゾワゾワした感覚、スパイダーセンスが発動すると嫌な予感がする方向を見やる。

姫和の持つスペクトラム計も同じ方向を指し示しているため、総大将である紫は大方見当が付いた。

 

「これは…祭殿の方角。折神家の一番奥。御当主様しか入る事の許されない禁則地」

 

「じゃあ大荒魂がいるのは…」

 

「よし、行かないと!

 

「見てて……母さん」

 

ーーしかし……

 

「ん?なんだコレ?」

 

皆が一斉に祭壇まで移動しようとした瞬間、放物線を描きながら眼前に橙色のボールサイズの球体が投げ込まれた。球体の頂点には緑色のマークがまるでヘタのようにも見え、所々に緑色の縦線が入っているため何となくだが南瓜のように見えなくはない。

 

視界に映る球体に対して皆すぐに違和感を覚えた。

ーー何故ならその球体からは何かをカウントするかのような機械音が淡々とが聞こえて来るからだ。

 

「まさか!……クソっ!」

 

スパイダーセンスが反応したと同時にその嫌な予感が確信に変わったスパイダーマンは球状の物体にウェブを当ててそのまま明後日の方向へと放り投げる。

宙に投げ出されたそれは臨界点に達したのか球状の物体が夜空で白く光り、轟音を上げながら爆散する。

 

どうやら、本当に爆弾だったようだ。だが、先程投げたタイプのは光量が多い割には威力が低いのか実際目の前で爆発しても驚いて足を止める程度のようにも見える。足止めが目的なのだろうか。

 

直後、緑色の粒子を撒きながらエンジンを蒸して上空を高速で移動する装備に乗った人物が一同が見上げる必要がある高さに浮遊したまま静止する。

 

その姿は蝙蝠の形をしてエンジンの付いた飛行用装備『グライダー』の上に直立不動で乗っており、全身完全防備のパワードスーツの人物だ。

 

全身を深緑色にカラーリングを施し、西洋の民間伝承に伝わるゴブリン という精霊を模したと思われる後頭部に向けて長い頭部のヘルメットは首と連結していてフードのようにも見え、長い耳のように思える両耳のアンテナ付きのイヤーマフ。

 

そして、顔を隠して頭部全体を防御する面は鬼を連想させるがメタリックなデザイン。針井グループが心血を注いで作成した最新型スーツであり、次の管理局からの刺客。グリーンゴブリンだ。

ちなみに先程投げ込んだのは『パンプキンボム』というグリーンゴブリンの標準装備の一つだ。

 

 

皆が次の刺客かと思い身構えると相手は何を思ったのかフルフェイスのヘルメットが自動で後方へと移動することで分離し、素顔を顕にする。

 

可奈美、舞衣、スパイダーマンは驚愕する。確かに管理局内にはいるが絶対にここには来ないだろうと思っていた。

……いや、そうであって欲しいと願っていた人物だった。

 

自社と管理局が開発した、人間の身体能力を大幅に強化する新型の強化細胞『ゴブリンフォーミュラ』との融合による身体的影響なのか血色は悪く、どこか蒼白いようにも見え目元には血涙が流れた後を布で雑に拭いたのか流れて模様の様に見えるため余計に普段とは違う印象を受ける。

だが、それでも昨年から同じ学校の友人として馴染みのある人物であるため見間違える訳がない。

 

実家が経営している会社が管理局に装備を共同で開発して協力している大企業、針井グループの御曹司針井栄人だ。

 

(ハリー!?そんな……嘘だろクソッ!)

 

友人が管理局の刺客として出向いて来たのだ。可奈美と舞衣もショックを受けているが何より言葉も出ない程、嘘であって欲しい……こんなことは夢だと思いたいスパイダーマンが最も現実を受け止め切れていない状況だ。

 

他の面々も同様に困惑した表情を浮かべている。3人の知り合いだという事は察することが出来るが普段の様子からは想像出来ない程明らかに動揺しているからだ。

 

無理もない、これまでは自分とはほぼ親しみのない犯罪者や管理局からの刺客と闘っていたが今目の前にいるのは本来は守るべき隣人の1人だ。特にスパイダーマンはショックを受けない訳がない。言葉が出なくなってしまう程だ。

 

栄人は一瞬咳き込んだ後に口を開く。普段の言葉遣いは変わっていないが声のトーンがやたら低い。それでいてどこか苦しそうにも聞こえる。

 

「全員動くな。久しぶりだな衛藤、柳瀬。出来ればこうなって欲しく無かったよ」

 

「………っ!?」

 

「針井君!?その装備は!?」

 

「ハリー君が何で……!?」

 

「反乱分子の殲滅。そして、舞草の残党から管理局を守るのが我が社の務めだ。だが、俺は出来ればお前たちとは戦いたく無い。今ならまだギリギリ庇える、だから何故舞草に加担してるのか教えてくれ」

 

淡々とその口から語られるのは事情を教えて欲しいという要求であった。向こうもなるべく友人とは戦いたくないという想いは同じであるが向こうにも管理局に協力する会社の人間という立場と、そして守るべき物がある。最悪の場合は命懸けで戦うつもりでここに来ているのだろう。

……だが、どこか様子が変だ。普段は決して言葉にしないような攻撃的なワードが随所に見られる。その事に3人は違和感を覚える。

 

「聞いて!紫様は大荒魂なの!今あの人を止めないと大変なことになる、それは阻止しないと!私もハリー君と戦いたく無い。これまでだってやらされてたことだって分かってるから!私達が争う理由は無いよ!」

 

「私も、紫様を止めたい。これまでは戦う理由も実感が湧かなかった。でも、今は違う。もう、これ以上目の前の人達が傷付くのは嫌だって。全ての人は助けられなくても目に見える人達だけでも助けたい、それが私が今ここにいる理由だよ!」

 

舞衣と可奈美も敵の首領である大荒魂タギツヒメに憑依された紫を倒すためにここに来た以上、なるべく人間とは戦いたくはないがそれでも行く手を阻む者が顕れることは覚悟していた。

まさか友人が今度こそ本格的に敵になるとは思っても見なかったからだ。だが、それでも今自分がやることを見失ってはいない。

 

栄人の方も2人の言葉を聞いて彼女達なりに信念がある事。出来れば戦いたくないという気持ちは同じであることを聞いて心を動かされそうになってしまった。

 

……だが、グリーンゴブリンのスーツは装着者が相手の言葉で揺らぎ、戦闘に支障に来すのを許さない。

スーツを通して伝わってくる特殊な信号が『ゴブリンフォーミュラ』を活性化させることで脳内を刺激してすぐにその迷いを振り切って行く。額を右の掌で抑えるとすぐに落ち着いたかのように話し始める。

スーツの電気信号により細胞を活性化させ、装着者の感情をスーツのエネルギーに変換してスーツの性能を引き上げる事が可能であるが細胞による攻撃変性の影響を強く受けるデメリットがある。

一同は相手の様子が徐々に不安定になっていることに対して一抹の不安を覚えている。これまでの敵は自分の意思で堂々と自分たちの行動や理念を否定し、真っ向からぶつかって来たが今度の相手は何故か苦しそうにしているからだ。

 

「……ぐっ!何を根拠にそんなことを。舞草の首領、折神朱音の演説を聞いたがあの話の中にそれを裏付ける決定的な証拠なんて無い。全ては管理局の気を引くためのブラフ、お前らを騙すための都合の良い嘘に決まってる。奴らの言ってる言葉が心地よく聞こえたとしてもお前たちは舞草に利用されて、騙されているんだ!」

 

「それは……」

 

「それでも、私達は自分の意思で舞草に加入した。騙されてるからなんかじゃない。今は例えテロリスト扱いされても私は舞草の一員として戦うって決めた。絶対に元の私たちの日常を取り戻して見せる!だからお願い……そこを通して!」

 

確かに紫が大荒魂だという事実は言葉にするだけでは朱音の演説の内容を証明する手立てはない。

祭壇に行けば証拠はあるかも知れないがもし、説き伏せるのに時間が掛かってしまったら?そうしている間に増援が来て囲まれて仕舞えばタイムアップでこちらの負けだ。それでは全てが無に帰す。

両者の間に緊張が走り、焦燥感だけが募って行く。どうすれば良いのか分からなくなってしまっているのだ。

 

「だが、もう状況は変わった……っ!今のお前達はどう繕っても国に逆らうテロリストだ。お前たちにはお前たちの信念があるようにこっちにはこっちのやるべきことがある。国の転覆を企んでる奴らがいて、そいつらがこの国を守って来た局長を始末しようとしてる……そんな状況下で俺たちだって引くわけにはいかない。譲れないから……俺達も舞草と戦うしか無い。もう決めたんだよ」

 

彼女達から伝わる絶対に投降の意思を見せない彼女達の瞳からは力強い覚悟が伝わって来る。

 

ーーそうだった。彼女達はもうとっくの昔に決めていたんだ。スパイダーマンに連れられ、管理局から離反したあの時から……。

 

所詮は安全な世界で丁重に守られて来ただけの一般人の視点から見れば彼女達の行動はどれだけ異常な物に見えるだろう。

彼らが歯向かう相手は国の治安組織のトップだ。これまで存在していたありとあらゆる勢力を粛清し、国を自分の味方につけて来た相手だ。

それに仇を成す者には安息の地などない。他の果てまで追い掛けて始末する。

そんな相手に立ち向かい、反逆するなど自殺行為以外の何物でない。そうなって欲しくないから説得を試みたが彼らは一歩も引かなかった。

 

そして自分の甘さで彼らに手心を加えたことで彼らが攻め込んでくる状況を作り出してしまった罪が自分にある。

自分が立場に縛られていた事、そして結芽や親衛隊の面々という新たに大切な人達が増えてしまったことによりどちらを取るかの板挟みに苛まれて決められなかったあの時から……いや、それより前から彼女達の覚悟は決まっていたのだろう。

 

だが、既に自分も選んだのだ。遅くなってしまったがそれでも自分の意思で戦うことを選んだのだ。

 

結芽の、残された時間の中で例え死んだとしても最後まで戦い続けるという自分には無かった強い意志。自分もいつしかそんな彼女に心を惹かれ、心を動かされていたという事。

 

唯一誰しにも与えられていて金では手に入らない平等な概念、『時間』。

限られた時間の中で自分のやるべきことは決めること。人間にとって最も大事なことを自分も決めた。

 

皆それぞれに立場があり、信念があり、人格がある。全員が全員納得出来る結末など用意出来るわけがない。譲れないからこそ、戦いは起こる。

 

今の自分は管理局の人間として表面上は長年日本の平和を守って来た局長である紫を舞草から守る必要がある。

会社の最大の太客だからでは無い。紫の正体を知らず、管理局を信じ、現状維持を望む保守的な側の人間だからこそ紫が倒されると生じてしまう問題があるという事に気付いているからだ。

口を開けば利益利益とグチグチうるさい父親の得にもなってしまうのは非常に癪であるが。

 

「……もし、局長が討たれてその座から離れればこれまであの人が抑止力となって抑えていた悪意や勢力が枷から外れて解き放たれる。その先にあるのは混沌の未来だ、それらはいずれ日本に牙を向いて多くの人が傷付く。俺は管理局の人間としてそれを阻止しないといけない。悪いがこっちも引く訳にいかねぇんだよ!」

 

その言葉から伝わる凄みにより、一同が硬直してしまう。

姫和は紫を倒してこの事態を収束させて母親の無念を晴らしたい。これまでそれを支えに戦って来た。だが、倒した先は?彼女が今の立場から退いたとして引き起こされる問題もあるかも知れないことまでは考える余裕も無かった……いや、考えないようにしていた為か瞳孔を散大させてしまう。

 

だが、それは一瞬の迷い。ここで紫を倒さなければ全てが無に帰してしまう。その言葉を振り切って前を見据える。皆、同じ気持ちでこちらも一歩も引くつもりはない。

 

 

一歩も引かない姿勢を見せる一同に対し、既に言葉では止まらないと判断して残念そうに目を伏せる。やはり、やるしかないのかと……。

逡巡している最中、突如として栄人の脳内にズキリとした言葉では形容できない痛みが走り、瞳孔を更に散大させて頭を抑える素振りを見せる。

 

『これ以上の接敵は危険です。敵勢力を鎮圧するために殲滅プログラムに移行します』

 

栄人が頭を抑えて動きが静止すると、スーツに内蔵されているAIの声が脳内に直接響いて来る。スーツのAIがスパイダーマン一行の危険度を測定し、排除すべき敵だと判断してか特殊な電気信号を送ることで装着者と融合したゴブリンフォーミュラを刺激することで対象の精神を攻撃的な物に変性させ、アドレナリンを過剰分泌させながら脳内を侵食して行く。

 

自身に起きている異変に気付き、自身が纏うスーツに向けて夜空に向けて雄叫びを上げる。

 

「よせっ、やめろ!あの2人はダメだ……っ!やめろおおおおおお!」

 

「早くそのスーツを棄てるんだ!マズい予感しかしない!」

 

「ハリー君!」

 

スパイダーセンスが反応したことにより、固まってしまっていたスパイダーマンも正気を取り戻して警告する。そして、可奈美も声を荒げている。2人の呼びかけがギリギリの意識を繋ぎ止めるがその抵抗も虚しく打ち消されてしまう。

既に自我をスーツに支配され、冷徹な視線を一同に向け低い声で呟く。

 

「………なら、仕方ない。結芽ちゃん!」

 

「待ってましたー!お任せってね!」

 

ヘルメットが強制的に閉まったことを皮切りに本格的に舞草の殲滅を決断したグリーンゴブリンが叫び声を上げると同時に、グリーンゴブリンの背後に聳える満月を背景に1人の人間が跳躍した姿が見える。

 

揺れる薄桃色の長髪、こちらを好戦的に見下ろす肉食獣のような闘志が宿る翠色の瞳。グリーンゴブリンから指示があるまで待機していた結芽がニッカリ青江を振りかぶりながら7人に向けて奇襲を仕掛けて来る。

 

戦闘の方針は結芽に任せているため、グリーンゴブリンは自分の役割である親衛隊のサポートをこなす為に彼女達の戦闘補助に置いて非常に厄介な相手だと認識しているためかスパイダーマンの方を見やるとグライダーのエンジンを蒸して、上空へと舞い上がる。

 

 

「奴等を足止めしろ……行け!」

 

そして、腰のホルスターに連ねて装備されているパンプキンボムに似ているが幾らか小型な球体で、特徴的なのは左右に黒い翼のような物が付いているため蝙蝠の形にも見える手裏剣のような刃物。

グリーンゴブリンの標準装備の一つ『レイザーバット』を複数個同時に引き抜いてスパイダーマンから他の刀使達を引き離して孤立させるために撹乱目的で狙いを付け、腕を交差させた後に投擲する。

 

グリーンゴブリンの手から離れたレイザーバットは生命を得たかの如く分裂して左右の翼の役割を果たす刃が上下に高速で動くことでスピードを増し、自動で散開しながら一同に襲い掛かる。

 

「結芽ちゃん!方針は君に任せる!」

 

「おっけー!」

 

「針井君!」

 

四方八方から自動追尾で攻めて来るレイザーバットの襲来により一同が散開して個々にレイザーバットを迎撃する。

 

「狙いは……きーめた!」

 

「………っ!?親衛隊の!」

 

「いいねぇ。相手がお姉さんなら私はきっと」

 

しかし、そうしたことにより孤立した可奈美に狙いを付けた結芽が落下と同時に斬り下ろしを入れてくる。

それを防ぐことに成功するがそのまま力業で押し込まれて行き、会場の中にある寝殿造の席にまで移動させられてしまった。

 

可奈美を前にして結芽は余裕な態度を崩さない。差し詰め恐らく自分が最後の戦いになるであろうこの大舞台における最初の贄に相応しいと判断したのか既に獲物を狙う狩人の視線になりながら口角を吊り上げてニッカリと笑うとそのまま怒涛の猛攻を仕掛け始める。

 

「待ってろ!今行く!……このっ!邪魔だ!」

 

姫和が可奈美のカバーに入ろうとするが執拗に追撃して来るレイザーバットの猛攻により足止めを喰らいうが正面からの突きで一体を破壊する。

しかし、背後からの攻撃には一歩遅れてしまい避けきれずに肩口にレイザーバットの翼が抉り込むようにして突き刺さる。

 

写シを張っていた状態であるにも関わらず、それを貫通して肩口に刺さったレイザーバットに驚愕してしまう。

これは、里で見たパラディンやSTTが使用していたあの矢と同じく対刀使用の武装と同じ物……恐らく紫が開発した物であると察した。

 

「ぐっ!……写シを貫通して来る武器!?あのボウガンと同じ技術か!」

 

自分たちを直接倒すのは困難ではあるが一時的に動きを封じる分には充分過ぎる武装、それでいて自動で追尾する機能があるということはかなり厄介だと実感すると急いでレイザーバットを肩口から引き抜いて握り潰す。

 

孤立したスパイダーマンが皆を襲うレイザーバットを撃墜しようとウェブシューターを構えるとグリーンゴブリンの視線はこちらを向いておりグライダーはこちらに向かって来ていることを視認すると狙いが自分だと理解する。

 

その相手を引き受けるために、足止めとして厄介なレイザーバットが次に飛行する位置を軌道、狙い、速度を直感で大方把握するとレイザーバットの通過ポイントに向けてあらかじめ電気ショックウェブを放つと全弾命中してショートを起こして破壊に成功する。

そのまま別方向に走りながら地を蹴って跳躍して空中まで移動し、正門の屋根の上に移動する。

 

「皆は行って!ここは僕が引き受ける!」

 

「お前は俺が倒す!」

 

完全に孤立したスパイダーマンであるが今はグリーンゴブリンの相手を1人が担えるのなら自分が戦うのが合理的。

計算外の戦力があることで予定が狂ったが皆の負担を軽減出来るのならやらない理由はない。

グリーンゴブリンがグライダーのエンジンを蒸して空中を高速で移動しながら

足元にある円形の収納スペースが自動で開くと中からパンプキンボムが自動で射出されるとそれをキャッチし、そのままスパイダーマンに向けて投げつけて来る。

 

今度は自分を倒しに来ているのなら、先程より威力は高いのかも知れない。スパイダーセンスで危機を感じ取ったことで敷地内の高い建物にクモ糸を飛ばして移動する事で回避する。またしても皆から離れてしまったが敵を引きつけることが出来たため、悪い選択ではないのだろう。

臨界点に達したパンプキンボムが光って爆発すると、轟音と爆熱を上げながら正門を見る影もない程にまで粉砕し、瓦礫は熱を帯びて溶け出している。

 

「お前を一歩も通しはしない……これが俺の役目だ!」

 

「もうやめろ!こんなこと!」

(クソっ!何で……こうなるんだよ!こんなこと、誰も望んでなんかいないのに!)

 

これをまともに喰らえば人間なら即死であろう………あまりの高い破壊力に戦々恐々とするが今は自分が囮になって皆を先に行かせること。恐らくこの状況で最善なのは最大の戦力である可奈美と姫和を何が何でも祭壇まで送り出すこと。そう判断した舞衣がエレンと薫に指示を出している。

 

……なら、自分は自分の役割を全うするだけだ。

そう判断したスパイダーマンは着地と同時にグリーンゴブリンを真っ直ぐに見据えて姿勢を低く、腰を落としながら臨戦態勢に入る。

それを敵対と認識したグリーンゴブリンは背中に刺してある日本刀を引き抜くとその刃は深緑色をしているが月の光を浴びているため美しく刀身を煌めかせている。

 

一方、結芽と可奈美は寝殿造りの本殿の中で斬り合いを続けていた。

ーーその力量、まさに互角。

 

一進一退の攻防を繰り返している。強いて言うならば可奈美がやや防御がちになっているが言い換えればお互いに一撃も攻撃が当たっていない。S装備による身体能力の強化によって大幅なパワーアップが加えられてはいるがここまでまともに打ち合えるのは可奈美本人の技量があってこそだろう。

 

だが、肝心の結芽の方はS装備も付けず。体内に投与されているノロも基本的に生命維持にしか使っていない。御刀と自身の技量のみだ。

結芽も自分のタイムリミットを微かながら感じ始めて来たが、今はそれよりもこの対決を全力で戦いたい。

湧き上がる焦燥感。だが、嫌いじゃない。自分をここまで滾らせたのは紫以来だ。自分はこれ位強い相手との戦いを待ち望んでいたのだから。

 

「ははは……すごいや。おねーさん、やっぱり私が戦うにこれ以上ない位相応しいよ!」

 

だが、どこか様子がおかしい。あれだけ激しい剣劇の中であるとは言え、長い時間打ち合っている訳ではない。

だが、彼女は長時間マラソンを走ったかのように肩で息をしながら身体を上下させている。

 

(この子、何か急いでる)

 

その異変を感じ取っているが、ここまで強いと本気で勝負をしてみたくなってしまうではないか。戦闘民族の血が騒が無い訳がない、同時に本来の目的までも見失いかけてしまう程滾ってしまう。

 

結芽が少し狭くなった気管で新鮮な空気を吸って吐き出すと息も絶え絶えになりながら今の正直な気持ちを話す。

 

「楽しいね…」

 

「……うん!」

 

両者がお互いの力量を認め、力と技でぶつかり合うこの瞬間。2人は既に剣を通して通じ合ったと言えるだろう。

だが、まだ足りない。もっとお互いを知りたい。

以前に栄人が話していた。彼女は自分のように勝負が好きだと、似た物同士だからきっと親しくなれると。

 

(おにーさんの言ってた通りだ……教えてくれてありがとねおにーさん)

 

確かに、そう納得させられてしまった結芽は心無しか自然と笑みが溢れてしまう。それに釣られて笑みが溢れる可奈美。

 

だが、忘れてはいけない。今は時間がこちらに味方をしてはくれない作戦中だと言う事に。

 

「横槍ー!」

 

「ぐあっ!」

 

睨み合いをする両者の静寂を破るかのように何かが結芽に力強い体当たりを入れて、距離を離す。

そして、その人物はタックルの勢いを殺さずに庭まで強制的に移動させる。

 

「ダイナミーック!リパルサーverだ」

 

右腕を前に突き出して掌を可奈美に向けると独特の起動音がすると同時に掌に光が集まって行き、白い閃光を可奈美に当てて長距離まで吹き飛ばす。

 

レイザーバットの足止めから抜けたエレンと薫だ。

 

そして、リパルサーで吹き飛ばされた可奈美を姫和がキャッチすると肩に担いでそのまま通路へと走り去っていく。

 

「行くぞ可奈美!」

 

「あーっ!ちょっと!姫和ちゃん!?まだあの子と決着が…」

 

肩に担がれながら名残惜しそうに結芽がいる筈の庭の方へを向きながら不満げにしていると舞衣に一喝される。

 

「いいから!」

 

その有無を言わせない迫力に押されてつい、何も言えなくなってしまう。

 

本殿を越えて決勝戦の会場である庭の方ではタックルされた姿勢のまま結芽は引き摺られていた。

 

「この……っ!」

 

このままでは逃げられてしまう上に決着を付けられない。水を差されたことに怒っている結芽は自分に密着するエレンに向けて右肘を振り下ろして肘打ちを入れようとするがスルリと抜けられて距離を取られてしまう。

 

そして、移動してきた相棒薫の隣に立ち通せんぼをするかのようにこちらを見ている。

勝負に水を差されたことに対して非常に憤慨しているのか2人に向けて怒号を上げる。

 

「もう少しだったのに!なんで余計な真似するの!?」

 

その悔しさがら伝わって来る結芽の非常を前にして両者共一歩も引かずに挑発的な態度で迎え撃つ。

こちらも相手が任務の上とは言え仲間の借りがあるためか内心穏やかではないからということもあるだろう。

 

「その顔を見られただけで残った甲斐がある。ざまぁみやがれ」

 

「傷付いた舞草の仲間達、あなたには大きな貸しがありマス」

 

「だから何!?そんなの弱いのが悪いだけでしょ!知ってるよ!お姉さん達二人弱いからここに置いてかれたんだ。それって千鳥のお姉さんと違って二人がかりでないと私を抑えられないってことだよね!」

 

結芽から放たれる言葉の数々。自分たちは立場は違えど命懸けで戦っている。それで負けて傷付いたのならそれは負けた者が弱いと言う事、戦いとはそういう世界だ。

確かに間違った事は言っていないが逆鱗に触れられてしまっているためかつい余計な事まで言ってしまう。こちらにはタイムリミットがあり、時間が無いというのに邪魔をされたのだから余裕が無い彼女からすればそれ程腹立たしいことなのだろう。

 

「そうだな。ま、ムカつくけど」

 

「事態を冷静に把握し最良の判断をとれる指揮者がいることが頼もしいデス!」

 

一言余計だが言っている事は全て事実であるため強くは否定出来ない。大人しくその事実を認める。

だが、自分たちの戦力の中。尚且つ時間にも限りあがる以上はこちらも譲歩は出来ない。ツーマンセルに特化している両者なら彼女を抑えて時間稼ぎが出来ると考えた舞衣の判断を素直に称賛している。

 

「だから何!?いいよ!すぐに片付けて追いかけるんだから!」

 

結芽が迅移で加速して一気にカタを付けようと横一閃に振り抜くがエレンにそれを弾かれ、後方に下がると入れ替わるように割って入って来た薫の上段からの振り下ろしが弾かれて姿勢を崩した結芽を追撃してくる。

 

一瞬焦ったがすぐに右に飛ぶ事で回避に成功するが八幡力を込めて地面に叩き付けられた祢々切丸の一撃は地響きを起こしたと錯覚する程の衝撃であり巨大なクレーターが出来ている。

 

「チッ。一拍遅れたか……着てたのがハルクバスターだったら仕留め切れたか?」

 

「少しは楽しませてあげるのでご安心くださーい!」

 

「時間…ないのに…!」

 

苛立ちが限界値まで達しているのか、それともタイムリミットが更に迫ってしまったことを自覚しているのか額を抑えて2人を憎々しげに睨み付け、瞳孔を散大させる。

 

一方、スパイダーマンはグリーンゴブリンをなるべく皆から遠ざける為にスウィングしながら距離を取りながら誘導している。

内心では焦りと不安が押し寄せているが今は私情を挟んでいる場合じゃない。大丈夫だ、自分のウェブならば相手を傷付けずに無力化出来る。自分を信じるしかない。そう、自分に言い聞かせる事しか出来なかった。

 

だが、グリーンゴブリンもスパイダーマンを逃すつもりは無い。反逆者の1人として倒すべき敵だ。

搭乗しているグライダーの速度を上げながら再度レイザーバットを起動させてスパイダーマンを追尾させる。

 

こちらを執拗に狙って来るレイザーバットを目視で確認するとクモ糸から手を離して折神邸の森林の中に逃げ込む。木々の枝がレイザーバットの飛行を妨げてくれるからだ。

 

森林の中をスウィングしてレイザーバットが森林に入って来るのを確認すると

ウェブを網の様に仕掛けてネットを作って通路を塞ぎ、更に自分は一度高く跳躍する。

 

レイザーバットが自分を追うために上空に行こうとするとウェブの網に引っ掛かり、身動きが取れなくなる。

その隙を逃さずにウェブのネットに向けて電気ショックウェブを放つと全体に電流が連鎖してショートを起こしてレイザーバットを破壊する。だが同時に上空に身を晒したことでグリーンゴブリンに見つかり、更なる追撃を受ける。

 

「どうした、逃げるだけじゃ勝てないぞ!」

 

「ぐあっ!」

 

グリーンゴブリンにグライダーの速度とパワーの乗ったラリアットを喰らいそのまま建物の壁まで押されて行き、思い切り壁に叩き付けられる。

あまりの腕力の強さにより壁が粉砕されてしまっていることからその威力が窺えるだろう。

 

だが、ショッカーやライノの攻撃にも耐えられるスパイダーマンの耐久力も伊達では無い。かなり痛みは走ったがまだ意識はハッキリとしておりまだ立って戦える位にはぴんしゃんしている。

 

グリーンゴブリンが抜刀している深緑色の日本刀を両手で持って振り下ろそうとした矢先、上空から光の閃光の雨が大量に降って来る。

 

それを察知したグリーンゴブリン は急いでグライダーのエンジンを蒸して後方に飛んでそれらを回避する。

 

「ちっ、新手か」

 

「これって……スタークさん!」

 

スパイダーマンはその光を何度も見て来た。独特な起動音、そしてこの音速の如き速さ。これは、リパルサーレイ であると。

上空を見渡すとそこにはスラスターを蒸して空中に静止してこちらを見ている赤と金の鎧を身に纏った鉄の男、スパイダーマンの師の1人アイアンマンだ。

後から合流すると言っていたが、今がその時の様だ。

 

「やぁ、スパイダーマン。苦戦してるみたいだな、手を貸すか?」

 

 

これまで向こうの都合もあって彼に頼れない状況にあり、何度も彼がいてくれたらと思ったことだろう。だか、それでも自分なりに自分の力で苦境を潜り抜けて来た。

そんな嬉しい増援がまたしても来てくれたのだ。内心では嬉しくて仕方がなくて涙目になっているが今は作戦の遂行が優先される。

自分のやるべきことは何かを即座に判断してアイアンマンに声を掛ける。

 

「ここは僕が何とかします!スタークさんは可奈美と姫和を祭壇に向かわせてください!」

 

「分かった、踏ん張れ坊主!」

 

今この状況下で大事なのは最大戦力2人を祭壇に向かわせる事。猫の手も借りたい状況だが、最優先事項はそっちだ。

スーツの力に等頼らず自分の力で乗り越えようとする意志、何よりも自分が今何をすべきかを理解した上で適切な判断を下すその様に内心感心したあるアイアンマンはリパルサーを起動して祭壇に向けて飛翔して行った。

 

可奈美も落ち着きを取り戻し、祭壇へ向かう通路への道すがら俯きながら舞衣は走る速度を減速させてしまう。どこか思う所があるようだ。

その様子を察した可奈美に呼び止められる。

 

「どうしたの?」

 

その問いかけに対して今でも俯いたままポツリポツリと心境を吐露する。

 

「私達には…時間がないから……私達の最大戦力は間違いなく可奈美ちゃんと姫和ちゃん。この二人だけでも大荒魂の下に届けないといけない」

 

この限られた時間の中で最大戦力の2人を送り届けること。それが自分が指揮官として取るべき最善の選択だと判断してこの決断をした。

だが、それは同時に預けられた仲間に命懸けで戦って来いと言って置いていくという事。初めて実戦でこのような決断をしてしまったことを重く受け止めている。

 

「私達の誰でもあの子を一人で抑えるのは難しい。二人でもどうか…だからあの場での最善はツーマンセルに長けた薫ちゃんとエレンちゃんだと判断して……それに、針井君まで敵になって……その相手を颯太君に任せた。誰よりも辛い筈なのに……」

 

彼女の口から吐露させる言葉からは指揮官を任された事や自分が行った指示が正しかったのかと自分に問いかけ続けているのだろう。

彼らもここに来た以上、命を懸ける覚悟の筈だ。誰も彼女を責めたりなどしないだろう。

 

直後に乾いた音が廊下に響き渡る。可奈美が自分の頬にセルフビンタをかましていた。

熱中し過ぎて作戦よりも対決を優先させたことへの一喝。そして、友に心労を掛けたことへの一喝。これでバッチリ目が覚めた。

 

「痛~…ごめん!もう大丈夫だから!熱くなって大事な事忘れないから!」

 

「舞衣ちゃんがいてくれてよかった!ハリー君なら大丈夫、きっと颯ちゃんが何とかしてくれるよ。信じよう、2人を」

 

セルフビンタをした後のためか頬が赤く腫れているがそれでも希望は捨てていない。ここにいる共に戦う仲間を信じること、今は敵対している友を信じること。

 

「私も。舞衣に従う」

 

「皆……うん!」

 

3人から全幅の信頼を寄せられ、自分がいま出来ることが何なのかを本格的に理解し始めチームとしての信頼関係も構築され始めていること。そして、皆が自分を信じてくれていることを強く実感した矢先……。

 

「うあっ!」

 

舞衣の立っていた位置の隣の襖を突き破って、飛蝗の大群が作物を襲い、蝗害を為すかのように群生行動を取りながら小型の蝶型荒魂に突撃され、そのまま引き摺られながら隣の部屋まで移動させられてしまう。

 

皆も驚くと同時に舞衣が弾き飛ばされたいや、運ばれた部屋に入ると次なる刺客が待ち構えていた。

毛先以外が白に染まり、感情が死滅したかのように無表情な少女。この人物を我々は知っている。

 

「親衛隊第三席……皐月夜見」

 

以前もこのように手首を御刀で傷付けることでそこから小型荒魂の群生を率いていることを思い出した。管理局の人体実験の賜物により特殊な戦い方が出来る彼女も中々に厄介であったことを思い出す。

 

「姫和ちゃん!」

 

「くそ!囲まれている……」

 

背中合わせでお互いをカバーするつもりたか完全に周囲一体を荒魂の群生で囲まれてしまっている。

時間が無いと言うのに更なる足止めを食らったことで焦りが生じている最中冷静に対処法を模索している者がいる。

 

「明眼……左前方!一気に突っ込んで!」

 

「了解!」

 

舞衣の瞳が水色に淡く輝くと明眼を発動して視覚を強化してどこかに抜けられそうなポイントを探し出して見せた。

 

襖を蹴飛ばして一気に部屋から退室して撒こうとするが夜見の操る群生は執拗に追撃して来る。

最大戦力の2人は先に行かせる。ならば誰か1人が残って相手をするのが先決。

そう判断してか舞衣は夜見に向けて立ち塞がる。

 

「舞衣ちゃん!?」

 

「今度はこれが最善なの!行って!」

 

「でも……」

 

この数、それでいて親衛隊である夜見を一人で相手取るのはかなり厳しい。

こちらの状況を知るや否やスーッと自然に和室から夜見が出てきてこちらを淡々とした眼で見つめている。

だが、心配そうな可奈美に答えるように沙耶香が前に前進して群勢を斬り裂いて視界を晴らす。

 

「大丈夫!舞衣は私が守る」

 

「二人とも早く来てね…先に行って待ってるから!」

 

「うん!」

 

2人にこの場を任せた可奈美と姫和が移動して行くと、指示を聞かずにこの場に勢いに任せてこの場に残ったことに後ろめたさを感じてかどこか恐る恐る沙耶香は問う。

 

「舞衣…怒ってる?」

 

「うん。言うこと聞いてくれない子に怒ってる」

 

案の定な答え。それを堂々と言い切られた為か少し落ち込んだ表情になる。

それはそうだろう。ここに戦力が多く残存するよりも敵の大将を倒すのならば1人でも多い方がいい。私情を優先させたのだから怒りはするだろう。

 

「だから罰として新作のクッキー、全部食べてもらうから!」

 

「任せて!」

 

「何故貴女は……」

 

 

だが、1人では抑え切れる相手とも思えない為残ってくれたこと自体は心強い為、快諾すると背中を合わせてお互いを守る陣形を組む。

2人の様子を見ながらどこか思う所があるのか夜見はボソりと呟く。だが、任務に私情は持ち込まない。目の前の敵をただ倒す、それだけだ。

 

 

先行した可奈美と姫和が祭壇まで近づくと門に続く石段の上に2人の影が待ち構えていた。

こちらの様子を見て先回りして待ち伏せしていた真希と寿々花だ。

 

両者は冷酷な視線でこちらを見ながら2人を見下ろしている。今度は完全にこちらを始末しに来ている顔だ。

 

「ごきげんよう。伊豆以来ですわね」

 

「必ず来ると思っていたよ」

 

「さぁ。続きだ」

 

「斬るか斬られるかですわ」

 

両者の瞳が血の様に紅く妖しく輝き、嫌な予感が更に増して行く。以前伊豆で撒いた時はそのような事はして来なかったがスパイダーマンが伊豆での野営地に潜入した際に彼女達の瞳に同じような現象が起きていたのをスーツの機能である赤ちゃんモニタープロトコルが記憶していた。

それを見たことがあるら両者は彼女達は人体実験によりノロとの融合を果たしていたのではないかと裏付ける事が出来た。

 

「その目は!」

 

「この禍々しさ…やはりノロを!半ば荒魂と化してまで折神紫を守ると言うのか!」

 

その問いかけに対し、真希は先程まで紅く灯っていた光が消え普段通りに戻りながら腕を縦に振りかぶって切っ先を2人に向けて来る。

 

「力無き正義は無力。力でなければ守れないものもある」

 

「そして力でこそもたらされる幸福だってあるというものですわ」

 

「言えてるかもなっ」

 

「なっ!」

 

「何者!?」

 

2人が写シを張りながら抜刀して2人に飛び掛かろうとしており、可奈美と姫和も臨戦態勢に入ろうとした矢先、山側からやや自嘲気味に、それでいてどこか皮肉っぽそうな声色と共に円形の盾が高速回転しながら真希と寿々花の前を通過する。

 

「蕎麦のお届けでーす!」

 

思いがけない奇襲に驚き、バックステップで回避すると上空から2本の金色の光が一直線に向けて放たれ、それが回転する盾に命中すると光が盾の回転で反射されて、並び立つ真希と寿々花の間に向けて襲い掛かる。

 

このままでは命中すると判断してお互いに左右に飛ぶことで回避するが結果として見事に分断されてしまった。

 

空からの攻撃に驚いている一同だがそれを放って来た張本人が独特の起動音を立てながらその姿を顕にする。

可奈美と姫和の前に立つように右膝と右拳を同時に着ける独特な着地をするその人物は全身をメタリックな装甲を見に纏い、赤を基調として頭部のヘルメットの面の部分は黄金色。2人がよく知る鉄の男、アイアンマンだ。

アイアンマンは即座に起立して掌を寿々花の方へと向けている。そして、盾を投げつけた人物が手元に戻って来た盾を掴み、前方に構えるようにして真希の前に立ち塞がる。

 

先程までこちらに外敵を寄せ付けないように奮闘していたキャプテンだった。

周囲を囲む敵を無力化しながら先行している最中、可奈美と姫和が祭壇の門の前に来た姿が見えたと同時に立ち塞がる真希と寿々花が見えた。

どうやら、2人だけになっている所を見るにこの2人が最大戦力でありこの2人を何が何でも届けることが重要なのだという舞衣の判断を即座に理解して介入して来たようだ。

 

「スタークさん!?」

 

「キャプテン!?」

 

突如として現れた増援に驚きを隠せない両者。だが、アイアンマンとキャプテンもあまり時間が無い事は理解している。

アイアンマンはスパイダーマンから2人を託されている。その想いに応えるため。そして、キャプテンはこの最悪な状況下でありながらも冷静な戦況判断を下した指揮官に敬意を評しつつ、それを完遂させようと言う意思を滲ませて盾のベルトを強く握る。

 

「坊主から君らを先に行かせろと言われたからな。ほら、さっさと行け」

 

「君達が鍵だ!ここは任せろ!」

 

「ありがとうございます!」

 

「お願いします!」

 

2人が分断されている今がチャンス。このチャンスを逃さない為に可奈美と姫和は改造S装備により強化された八幡力により跳躍力を増しながら門を飛び越えて行く。

 

2人を無事に祭壇に届けたことを確認した両者は再度自分たちと対峙する敵対者である真希と寿々花の方へと視線を向ける。

真希は2人を祭壇に行かせたことに対する苛立ちを覚えているのか口調がどこか不機嫌気味になりながら自分の前に立ち塞がるキャプテンとアイアンマン を睨み付けている。その視線からはまるで憤慨、失望……様々な感情を含んでいる。

 

「随分と落ちぶれたな、キャプテンアメリカ。かつての英雄が今は反逆者共の味方をするなんて」

 

「良いのかしら?社長さん。こんなことをして、御社のイメージに関わるのでは無くて?」

 

2人の挑発的とも取れる言動。だが、言葉の節々や口調から苛立ちが感じられる程時折語気が強くなっている。

向こうも自分たちが目の前にいる以上そう簡単には祭壇には近づけないのだろうと思っている為か殺意を久々と感じる。

 

ーーだが、2人ともその程度では怯まない。何度も修羅場をくぐって来たのだ。

そして、日本を守る為に子供たちが命懸けで戦っている。

ならば自分もそれに応えよう。2人は一歩も引かずに立ち塞がる。

それに……

 

「それでも僕は、日本を守るために立ち上がる彼らを信じた。僕も共に戦う価値があると判断した、それだけだ!」

 

「生憎僕は好かれたくてやってるんじゃないんだよ。ま、変な奴らにはやたら好かれるけどな……こうして君と実際に肩を並べて一緒に戦うのは久しぶりかもな。よし、キャプテン。色にちなんでピノ・ノワールちゃんは僕に任せろ」

 

「誰が赤ワインですか!?」

 

「分かった、僕はもう片方を相手取る」

 

彼女のワインレッドの髪の色からそれを揶揄するアイアマンに対して憤慨する寿々花。だが、そんな様子も梅雨知らずにアイアンマンとキャプテンは目配せをしている。

信じられる仲間が側にいると言うのは何よりも心強い。一度は道を違えた、性格も生き方も正反対な2人は何度もぶつかり口喧嘩をした。

チームが引き裂かれた後、お互いに罪悪感により手を伸ばせずにいた。

だが、この日本で出会った友の為に懸命になれる子供たちから勇気を貰い自分から踏み出すことでもう一度友となることが出来た。

 

その子供たちには感謝している。だから、彼らが生きるこの日本を守ることでそれに応えたいと感じている。

互いの気持ちが同じになった時、真の逆襲(アベンジ)が始まる。

 

自分たちを前にして一歩も引かないキャプテンとアイアンマンを前にして、相手がかつて皆からの尊敬と畏怖を集めていた英雄といえど紫の前に立ちはだかるのなら反逆者。それを蹂躙するのが我ら折神紫親衛隊だ。

 

自らの使命を全うする為に地を蹴り上げ、キャプテンに向けて薄緑を上段から叩き入れる。

 

「……いいだろう。なら、僕らの強さをその星条旗に刻むがいい!」




映画だとあまり活躍しないレイザーバット君……こっちでもあまり活躍しなくてスマヌ……まぁ、基本パンプキンボムとグライダーぶっ刺しと剣ぶん回しがメインだから仕方ないね。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。