刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任-   作:細切りポテト

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ちと中々時間取れなくて四苦八苦してて遅れました、スマソ。

今回は出番が無い人達が結構いますが次回には出るのでよろぴくです。



第52話 力の価値

キャプテンと真希、アイアンマンと寿々花の攻防は未だに続いていた。

 

真希の迅移による加速でキャプテンの反応速度を超える速度で薄緑を振り抜き、毎度狙う位置を変える事でキャプテンに激しい連撃を繰り出していく。

 

対するキャプテンは反応速度を微かにだが超えられてしまっているためかワンテンポ遅れて盾の最も高度の硬い中央で防ぎ、いなすのが精一杯になっている状態は変わらず防戦一方のままだ。

未だに反撃の糸口が掴めないだけでなく、攻撃も完全には防ぎ切れずに切っ先が頬や太腿、肩口を掠めて行きキャプテンのスーツに細かい傷を大量に作り出していく。

 

「ふんっ!」

 

「ぐっ!」

 

盾で防ぐことには成功したが体内に投与されているノロによる腕力の上昇により力負けをしたことで防御した薄緑の切っ先が逸れていきそのままキャプテンの左太腿を斬り付ける。

皮と肉を裂かれたことによりその部分に鮮血が赤い染みとなってスーツに広がって行く。

 

更にその隙を逃すまいと下段から薄緑の斬り上げでキャプテンにトドメを刺そうとするが咄嗟に盾の中心で防ぐことには成功する。

 

しかし、咄嗟であったためか腕力で力負けしたことにより火花を散らした後に上空へと弾き飛ばされて祭壇の直前の鳥居の前にある通路の瓦の屋根に背中から叩き付けられる。

奇しくもその通路はアイアンマンと寿々花が接近戦を繰り広げている屋根であった。

 

そしてダメージを痛感する間を与える暇も与えないかの如く、真希も屋根の上に乗りキャプテンを薄緑による剣劇で容赦なく追撃して行く。

 

アイアンマンがカバーに入ろうとそちらを見た瞬間にキャプテンと一瞬目が合うが無言のままアイアンマンのツインアイを見つめ返して来る。まるでその瞳からは大丈夫だ。信じていると言っているような力が籠もっているようだ。

 

「他所見をしている暇があって?貴方の相手は私ですわよ!」

 

「全く君もしつこい奴だな、Ms.ピノ・ノワール」

 

「そうでなくては親衛隊は務まりませんからね!今は目の前の私を見なさい!」

 

もちろんそれを許す筈もなく寿々花の追撃に阻まれてしまい、アイアンマンもキャプテン程劣勢ではないがキャプテンのカバーに入るのはかなり厳しいだろう。常に両方の戦局を観察しながら戦略を考えてはいるが一筋縄ではいかないタイプであるため尚更だ。

 

 

「はああああああ!」

 

 

「力強いな!」

 

そして、直後に真希の力強い突きを防御したはいいものの、今度は屋根から飛ばされて鳥居の隣の森林まで移動させられて、更なる真希の追撃を受ける。

キャプテンが辛うじて真希の力強い一撃を姿勢を低くして回避した矢先に薄緑が大木に当たるとそれらを両断し、木々が地響きを立てて倒れて行く。

 

今のが当たっていたら即死だったろうと冷や汗をかくが真希の連続攻撃は止まらず、その腕から放たれる剛剣の一撃をキャプテンが回避する度に木々が薙ぎ倒され、キャプテンと真希、両者の姿が開けた形となり屋根の上という少し高い位置にいるアイアンマンにもはっきりと見える形となる。

これでキャプテンが森林での戦闘で得意とする木々に当てて変幻自在に投げた盾をコントロール出来る要素を大幅にへらされてしまったことになる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

息も絶え絶えに肩で息をし、顔に着いた砂埃が大量の汗によって流れて行くという疲弊しているにも等しい状態。太腿を斬られて以降は特に被弾してはいないものの傷口から血が更に滲み出てきており誰が見てもキャプテンの姿は満身創痍と言っても過言ではないだろう。

 

たが、その圧倒的不利な状況でもキャプテンは真希に対して一歩も引かずに睨み付け、盾の革ベルトを強く握りしめて盾を前に構え、ファイティングポーズを取っている。

真希を力強く睨み付けるその澄んだ蒼い瞳はまるで諦めるという文字を知らないかのようだ。

 

「……まだやれるぞ」

 

折神紫親衛隊という精鋭の証である映えある称号を持つ自分に対し、全く恐れなど抱いていないのか。それでいて自分より弱く、既に満身創痍ながらも諦めを知らない澄んだ瞳は真希に不気味さを与えると同時に徐々に不可解な苛立ちを覚えさせる。

 

……自分は何故、彼のように自分よりも強大な敵に諦めずに挑み続ける勇気を持つことが出来無かったのかと。そんな思考が一瞬脳裏をよぎるがすぐに振り払って行く。

どれだけ足掻こうと力無き正義など無力という事を知っているからだ。

 

「……無駄な足掻きを。貴方は強い、だが僕とは相性が悪かった。今の貴方は防戦一方で手も足も出ない。なのに何故立ち塞がる?そもそも日本のことなんて貴方からすれば所詮は他人事だろう?」

 

ーー真希の問いかけに対し、キャプテンは静かに答える。

 

「確かにここはアメリカじゃない……だが、助けを求めて手を伸ばす誰かがいるのならそこに国境はない。その手を掴むのが僕たちだ。それに……かつて戦った日本の英雄達の魂が安らかに眠れるように、彼らの守った未来をこれから先に繋いで行きたいからだ。そして、国を守るために立ち上がる彼らを信じた!簡単では無いだろう……自由の代償は高い。常にそうだった」

 

キャプテンが舞草に協力する理由は至極簡単。真の意味で日本を守るために立ち上がる彼らに協力し、自分も共に命を賭けると決めたからだ。

そして、戦時中自分が戦ったことで殺めてしまった日本の兵士やその結果不幸にしてしまったであろうその家族のため、彼らが命懸けで戦うことで守った未来を今度は自分が守ると決めたからだ。

 

キャプテンの決意は固い。そして、誰よりも石頭で頑固な彼は一歩も退かないだろうとその力強い瞳は真希に訴えかけてくる。

 

「だが払う価値はある。僕も共に命を賭ける価値があると判断したからだ……僕からも一つだけ聞かせてくれ。これだけの強さがありながら…なぜ荒魂を受け入れたんだ?」

 

キャプテンもフリードマンや朱音の調査、そしてスパイダーマン達の親衛隊との戦闘を記録映像によって知ったトニーから彼女達が荒魂を体内に入れることで身体能力を飛躍的に強化させているという話は聞いていた。

 

キャプテンは実際に真希と戦闘し、彼女は自分よりも高い力を持っていることを実際に戦闘して実感した。だが、これだけ力があるのなら血清を打たなければ喘息体質故に軍に入り、戦うことすら認められなかった自分とは違い荒魂の力になど頼らなくとも充分に戦い続けられたのではないか、こんな馬鹿げた悪事に加担等せずに最前線で人々を守る立場の人間でいられたのではないかと純粋に疑問に思ったのだ。

 

「フッ……貴方と同じだよ、キャプテンアメリカ。強大な敵に挑むための力が欲しかったのさ。それに僕は一度たりとも自分を強いだなんて思ったことはないよ」

 

「ぐっ!」

 

真希の謙虚で自嘲気味な笑みからはどこか諦め、自虐……様々な感情が伝わって来る。

それと同時に喋りながら迅移で加速してキャプテンに接近し、上段から振り下ろして来る。キャプテンがそれを盾で防ぎ、横に受け流すことで反撃に出る。

 

隙が出来たことを皮切りにキャプテンの拳が真希の顔面を捉えようと拳を突き出すが敢えて前に出ることで寸前で躱して見せた。

 

「態と隙を作ったのか……っ!」

 

そう、態と隙を作ったのだ。その間に薄緑を投げて持ち替えるとガードが困難な位置からキャプテンに横薙ぎの一閃をお見舞いして来る。

 

キャプテンがワンテンポ遅れて盾で塞ぐが今度は最も頑丈で衝撃を吸収できる中心ではなく最もヴィブラニウムの密度が低い端っこを狙われてしまったため、力負けして盾はキャプテンの手から離れて簡単には取って来られない位置まで飛ばされてしまう。

 

真希の追撃を転がって回避すると先程こちらに来る山中で倒し、盾を投げ付けたことで遠くまで弾き飛ばした護衛の刀使が所持していた御刀が目に入ったため、それを拾いながら流れるように真希の一撃を防ぎ、拮抗するが徐々に押し込まれて行く。

 

そして、真希はキャプテンを見下ろしながらもポツリポツリと自身の心情を吐露していく。

 

「どれだけ足掻き、手を伸ばそうとも……どんな光でも力が無ければやがて闇に飲まれて消えてしまう。それがこの世界の法則だ。そんな僕の目指す背中は彼方に遠く……見上げる頂は遥か高い」

 

ーー彼女が親衛隊に入る前の頃の話になる。

 

真希はかつて平城学館の出身であり、在学中には御前試合を二連覇する程の実力の持ち主だった。それ故に周囲からの期待、羨望、称賛の声に溢れ皆から信頼されていた程であった。

 

だが―――

 

彼女の実力を評価されてか隊を率いることが多くなりそれに引っ張られるかのように厳しい戦局の任務に駆り出されることが多くなって行った。

だがその度に、彼女以外の者は倒れ、真希はただ一人で前に立ち刃を振り続けた。

 

だが、どれだけ彼女が足掻き、敵を倒そうとも荒魂による被害は無くならない。

そこで気付いてしまったのだ。どんな光でも、やがては闇に呑まれてしまうのがこの世の法則であると。

 

そして、ある時に出会った。見上げる頂きにいる程の絶対的な力。目指す背中を追いかけるだけの力。

それこそが希望となった。上には上がいるという現実を知り、あの日折神紫と直接の対局に敗北し、 自身より幼いものの神童として圧倒的な実力を持つ結芽を前にしてこの強さに並び立てるのならば自分は悪魔にさえも魂を売ってでも人を守るための力が欲しいと願い、アンプルを受け取った……いや、受け取ってしまったのだ。

1人で皆からの期待、羨望、使命感。それらを1人で背負い続けることに耐え切れなくなって荒魂の力に逃げてしまった。

 

(そうか……僕は本当は……)

 

キャプテンとの会話の中で根底にあったのは仲間を失うこと、負けることへの恐怖心から来ていたのだと実感させられてしまう。

だが、それを悟られる訳にはいかない。真希は更に目を細めてキャプテンの瞳を睨み付ける。

 

この男も自分と同じで戦うための力を求めて手を伸ばした。だが、自分よりも弱く、今も満身創痍ながらもこちらを睨み続ける彼からは自分とは違う何かが感じ取られる。真希はどうしようもなく、それが羨ましく思えてしまう。

 

「膨大な闇に立ち向かい続けるならば自らも闇でいなければならない。それに対抗できるように並び立てるだけの力を得る。その目的の為ならどんな手だって使う。貴方もそうして超人兵士になった筈だ!」

 

徐々に強くなって行く真希の語気に圧倒されているがキャプテンは真摯に真希の瞳を見つめながら彼女の話を聞いている。

殺し合いをする敵の言う言葉など本来はあまり真剣に聞く必要も余裕も無い筈だがキャプテンは彼女が話を終えるまでは黙って聞く姿勢を貫いていた。

 

彼女の言っている事も理解出来てしまうからだ。自分もかつてアメリカを守る力を手に入れるために超人兵士誕生の実験に参加し、他人から渡された力で強くなった人間だ。

過程や立場が違くとも彼女の気持ちも分かる。完全否定するつもりはない。

 

ーーだが、彼女の言い分も分かるからこそ、退けない理由がキャプテンの中にはある。

拾った御刀で真希が薄緑を喉元に押し込もうとしている切っ先を峰で押さえながら絞り出すかのように語り始める。

 

「……僕は君の言っている事が分からないと言えば嘘になる。僕はかつては徴兵からも弾かれる喘息持ちのモヤシだった。皆が命がけで戦っているのに体質のせいで国のために戦いたいという願いは叶えられず悔しい日々を送った。だからこそ祖国を守るために超人兵士の実験に参加した。危険な賭けであったとしても祖国を守るための力を手に入れるために手を伸ばした」

 

「なら僕の言うことが分かるだろう?」

 

真希はキャプテンも自分と同じ力に挫折した人間だと知り、もしかすれば話せば分かってくれるかも知れない。出来るならこの人を討ちたくない、そういった感情が湧き上がってくる。

 

「君達なりに力に手を伸ばす理由があることは分かった……僕に君たちを咎める権利はない。君は言っていたな、自分を強いと思ったことなど一度もないと……それは力に挫折して力の価値を知った人間だからこそ得る感情だと思う。僕もかつてはそうだったからな……」

 

「分かったのならそこを退いてくれ」

 

真希の冷たく言い放ってはいるが余計な犠牲は極力出したくないのか、自分の言い分を理解できたのならば退いて欲しいと言う願いを込めてキャプテンに言い放つがキャプテンは瞳を大きく散大させながら反論する。

彼女達を咎める権利は無くとも、同じく力を求めた者が間違ったことに手を貸すことを見逃すことはもっと間違っているからだ。

 

「You move……断る!今の管理局は変わってしまった。大荒魂に乗っ取られているんだ。折神紫がその首領だ、奴は完全に管理局を……いや、この国の治安組織全てを支配してると言えるだろう」

 

「何を恐れ多い事を!紫様が局長として国を守ってきたからこそ日本は平和になり、荒魂被害での犠牲者は減ったんだぞ!」

 

キャプテンの身も蓋もない発言を聞いて紫を護衛する立場である彼女からすれば看過出来ない発言であったため、過剰に反応してしまう。

自分たちが仕えている相手が……そんな筈がない。と自分に言い聞かせるがキャプテンの嘘を付いている人間の発言とは思えない真剣な表情に戸惑ってしまい、一瞬薄緑を押し込む手を緩ませかけるが徐々に力を込め直す。

 

「それは奴が当主になってから様々な勢力を粛清して荒魂の被害をセーブしていたからだ。20年間貯めていたノロが適量になるこの日のためにな。奴が完全復活を果たしたらタギツヒメは邪魔者を自由自在に殺せる力を得る。だから僕らで止めるんだ」

 

「何を……」

 

キャプテンが薄緑を抑える力が徐々に強くなって行く。自分と同じ力に逃げた人間だと思っていたキャプテンの口から語られる言葉からは信念と、そして揺るぎない強い意志と高潔なら精神を感じられた。

 

スティーブ・ロジャースは国を、人々を守るために力に手を伸ばした。

だが、それは失うこと、負けることへの恐怖による逃避ではなく国を守りたいと言う純粋な願いだったからだ。

 

だが、血清を打った結果超人になっているとは言え、その力は人間の延長上。チームの中で一番強い訳でも無ければ、時にはより強い仲間が来るまでの時間稼ぎに過ぎないこともある。

 

しかし、それでも彼は一歩も退かない。どれだけ劣勢で相手が強力であったとしても立ち上がり続ける。例え血清が無くとも、盾が無くとも困難に立ち向かい続けるだろう。

肉体が、時代が、自身を取り巻く環境が変わったとしても超ド級に諦めの悪いモヤシのスティーブ・ロジャースであり続けることが彼の最大の武器だからだ。

 

 

キャプテンアメリカはいつだって証明して来た。

ーーメディアが何と言おうと関係ない。

ーー政治家や群衆が何と言おうと関係ない。

ーー国全体が黒を白だと言っても関係ない。

勝敗に関係なく、立ち上がり続ける彼の背中に奮い立たされた皆が着いて来る。

かつて友が言った。「俺が着いて行く男は1人。弱いくせに逃げないモヤシ野郎だ」と、そんな彼だからどんな時でも最後には味方がついて来る。

 

……故に、世界の全てがどけと言うのなら真実の川のそばに立つ木のようにどっしりと地面に根を下ろし、こう言ってやるのだ。

 

you move .そっちがどけ。と

 

薄緑を押す力で勝っている筈なのに心の強さでこの男に勝つことは出来ないのではないかと思わされてしまい、震える手に力を込めることで震えを押し殺して行く。

 

「それに僕は君たちの事も放っては置けない!僕と同じで力を求めて手を伸ばした者が間違ったことのためにその力を振るっているというのなら、僕にはそれを止める義務がある!」

 

「……残念だよ、キャプテンアメリカ。舞草に騙されているとは言え貴方のような人をここで始末しなければならないということが……このまま、押し込ませてもらう!」

 

真希はやや悲しげに目を伏せると、敵であろうとも一方的に糾弾して完全否定して叩いたりなどせずに真摯に対応するこの人を討ちたく無いという想いはあるがそれでも自分には自分の使命がある。精神的には負けても反逆者には負けられないという使命感を前にして更に押し込むと切っ先が微かにキャプテンの喉元に触れて行く。

 

 

キャプテンのピンチを前にするが寿々花の連続攻撃によりアイアンマンは防ぎ、いなすことで手一杯になっている。

そんなアイアンマンの思考を乱すために敢えて挑発的に煽って来る。

 

「お仲間がピンチですわよ、お助けしてあげてはいかがかしら?最も無理な話でしょうけども!」

 

「クソッ!意外とエネルギッシュだな。ここまで弾けてると実はピノ・ノワールなんじゃなくてビールちゃんなんじゃないのか君」

(やはり長期戦は不利だな。単純な接近戦主体の相手なら……アレで行くか)

 

アイアンマンは互角の勝負を繰り広げているが未だに互いに決定打が出せていない。

 

アイアンマンの中に打開策の一つとして一度はある人物には破られた、とある機能を使う時かと思考を巡らせているが寿々花には特に気にする様子もなく呆れた態度で返してくる。

プライドが高く真面目な彼女からすれば自身を奮い立たせるためや敵の注意を引くためにジョークを言って自分を落ち着かせている彼らの強がりの内情など知る由も無いのだが。

 

「スパイダーマンといい貴方といい、戦闘中に冗談ばかり。お寒いですわよ」

 

「まぁそう言うな、ビールちゃん。男の冗談を笑って流せる余裕も淑女の器だぞ。全く。君はかなりの才女に見えるのに何故ノロドーピングなんて自分で自分の限界を決めちまうような勿体ない真似をしたのやら」

 

アイアンマンが相手にプレッシャーを掛ける意味合いもあるが年端も行かぬ子供が何故体内に荒魂を入れてまでして身体強化を図ったのか。そうまでしてまで強くなりたい理由があるのかと思い問いかけて来る。

 

『自分の限界を決めるような真似』そのワードが耳に入った途端相当触れられたく無いことなのか、あるいは図星だったのか一瞬彼女の眉が不愉快そうにピクリと動いた。そして、その一瞬をアイアンマンは見逃さない。

 

そして、悔しそうに目を伏せる寿々花は自身の心情、劣等感、強くなる事への貪欲なる意志を零して行く。

 

語りながら彼女の脳裏にはいつも隣にいる、親衛隊に入る前の御前試合で一度も勝てずに強く意識している相手の背中が思い浮かんでくる。

 

「貴方には分からないでしょうね。放って置いたら振り向きもせずに行ってしまう人……私などには目もくれずに。そんな相手に水を開けられたくない、どんなことをしてでも追い付きたい人間の気持ちなんて」

 

しかし、人を怒らせる天才アイアンマン……いや、トニー ・スタークはいつものように軽妙な調子で返して来る。だから何だと言わんばかりにだ。

 

「うーん、分からないな!僕はいつだって美女と変な奴には追い掛けられる側の人間だからなっ!」

 

「貴方に言うだけ無駄でしたわね」

 

寿々花は苛立ちの篭った口調で淡々とため息を吐きながらアイアンマンを睨み付けて来る。

目の前にいる天才と称され数々の功績を成し遂げて来た相手には自分の気持ちなど理解できるわけがない。きっと常に誰よりも先を歩き、迷いも悩みも挫折も知らないのだろうと内心で毒づく。

 

だが、アイアンマンは自分の半分も生きていない子供に対して一方的になじるという事は精神的にまだ大人になり切れていない自分でも気分の良い物ではないため自分なりの考えを伝える。

 

「まぁ、実は半分本当で半分嘘だがな。僕にだって唯一いつかは追い付きたい人がいる。誰よりも国を愛していて賢い。だが、僕を簡単には認めてくれなくていつだって厳しく、冷たくて、愛してるとも好きだとも言われたことがない相手がな」

 

自分が20歳の誕生日に逝去した父親、ハワード・スターク。

アメリカの軍事企業《スターク・インダストリーズ》の社長にして創設者。

アメリカで最高の機械工学士を自称しているがその名に違わず、半重力システムの基礎部分を作り出すなどの天才ぶりを見せ、1940年代当時の最先端テクノロジーを幾多も作り出し、世界平和に貢献した偉大なる存在であり憧れの存在だ。

 

存命中トニーと父親の仲は決して良くは無かった。お互いに不器用で素直になれなかったということもあってか不和が続いていた。

それだけでなく、ハワードは一度もトニーを認めてくれることは存命中実現し無かった。プライベートでは自分を仕事や研究の邪魔者扱いし、寄宿学校へ無理矢理自分を押し付けた冷たい父親として彼に長年憧れを持ち、尊敬していても素直になれず父を敬遠していた。

 

だが、アイアンマンとして活動を始めてしばらく経った頃。自身の命綱てわあったリアクターから出る毒が身体を蝕み命に危険が迫った時、父が残していた映像を見て知った。

生きている間一度も自分を認めてくれなかった父が誰よりも自分を信じてくれていたこと、そして未来への鍵を託してくれていたこと。

 

……そして、父の言葉はトニーを奮い立たせる切欠となった。

 

自分自身の限界を決めず、突破口の切り口を変え、バッドアシウムという元素を合成し、新たな動力源として新型アーク・リアクター「リパルサー・トランスミッター」を開発運用、無害化と高出力化に成功した。自分に降り掛かる試練を、壁を、何度打ちのめされようとも、叩かれる度に強くなって行く鉄の意志を持って乗り越えて来た。

 

「だが、その人は亡くなって30年近くなった今でも僕に大切なことを教え続けてくれる。そして、本当は誰よりも僕のことを信じてくれていたからこそ、自分に乗し掛かる試練を自分の力で越えることが出来た……だからいつかは他人から与えられた力なんかじゃなく自分自身の力で越えたいのさ」

 

「………」

 

「いいかお嬢ちゃん、記録ってのはなぁ破る為にあるんだよ」

 

アイアンマンの口から語られる言葉の数々、試練や壁、憧れはいつかは自分自身の力で乗り越えるために存在するのだと。

先程まではあだ名で呼んでいたが本気で語りかける時はお嬢ちゃん。と大人として接していることが見て取れる。

 

……寿々花はアイアンマンの言葉を受け、表情には出さないが心臓を握られているような痛みが走って行く。

自分の荒魂との融合を受け入れ、ある人物に強さに水を開けられたく無いがために自らプライドを捨てて手に入れた力。

自分でもピンポイントかつ個人的な理由だとも思うが手に入れたことを後悔はしていないと思っていた。

 

だが、眼前の天才として誰もが辿り着けない場所にいる人物も自分達と同じで試練に迷い、苦しみながらもいつかは追い越したい人がいる等身大の人間なのかと感じ取った。

 

彼は天才だから試練を乗り越えて来たのでは無い。もしかしたら、自分の限界を決めずに常に降り掛かる試練に挑み続けて来たからこそ、この男は強いのでは無いかと。

 

一瞬だが、寿々花は思ってしまった。水を開けられたく無い人に追いつくために禁忌に容易く手を伸ばした時点で自分は自分の限界をそこで決めてしまったのでは無いかと。自分は彼女には勝てないと認めてしまっていたのでは無いかと気付かされその事を本気で恥じた。

 

だが、今は任務の最中。余計な私情を挟むべきでは無い。アイアンマンに気付かされた自分の弱さを胸に隠して敵対者であるアイアンマンに向けて九字兼定を正眼に構える。

 

「あらそう……なら今後の参考にさせて頂きますわ!」

 

迅移で加速しながらアイアンマンに接近し、高速の剣劇を再度浴びせようとして来る。

アイアンマンは自身に迫って来る敵を正面に捉え、小声でスーツのAIであるF.R.I.D.A.Yに語りかける。技量が上であるならば一から八かの賭けでリスクも伴うがこれしから方法が無いからだ。

 

「技量は向こうが上なんだっけ?なら、恐らく一回しか通用しないだろうが……行けるか?」

 

『ボス、いつでも行けます。相手の攻撃を受け続けなければいけないのでミスは出来ません』

 

「シビアだなったく………攻撃パターン分析」

 

『スキャン開始』

 

宣言と同時にアイアンマンがヴィブラニウムブレードを両手の手の甲から展開させて迎撃し、寿々花からの攻撃を受けては弾き、受けては弾きを繰り返して行く。

 

時には防ぎきれずにスーツに刃が命中して装甲に切り傷を付けていき、その度にスーツの中にいるトニーにも強い衝撃を与えていくがアイアンマンは尚も彼女からの攻撃を真っ向から迎え撃ちながら逆転のチャンスを待つ。

それと同時にアイアンマンのスーツのヘルメットのHUD内のカメラを変性させ、視界に捉えた寿々花の動きを細かく演算しながら彼女の攻撃パターンを解析して行く。

 

「はぁ!」

 

「おっと」

 

寿々花の放つ突きを斜め上から左腕のヴィブラニウムブレードの薙ぎ払いで防がれるがすぐ様細かい上段からの再攻撃で牽制していく。

アイアンマンが押されて始めるとすぐ近くでは真希がキャプテンに薄緑を押し込もうとしている鳥居の付近まで来ていた。

 

だが、角度的に建造物が視覚となり助けには入れそうに無い。アイアンマンは後ろをチラリと一瞬だけ見るだけで理解した。

 

……だが、両者から少し離れた位置にキャプテンの戦況をひっくり返せるかも知れない隠し球がそこに落ちていた。

 

その他所見をしている隙を逃さずに寿々花はアイアンマンの懐にまで接近しようとするがアイアンマンが超近距離では既に剣を振るよりも素手での戦闘に切り替えた方が効果的と判断してリパルサーを駆使したインファイトに切り替える。

 

「どうしましたの?受けてばかりでは勝てませんわよ!」

 

寿々花の下段からの斬り上げを少ない動きで後方に下がることで回避しつつ地に向けて左手のリパルサーを放つ事で軽く跳ね上がり、そのまま勢いを付けて右腕のヴィブラニウムブレードで斬り付けるがその動きは迅移を使用することで回避してアイアンマンの背後を取る。

 

(貰った……っ!)

 

アイアンマンは大振りの一撃を外したことで背後がガラ空きになってしまい、隙が出来る。このまま背後からスラスターを破壊すれば彼は地上戦一択となり勝機は自分の元にやって来る。

 

そう確信して、上段からの切り下ろしでアイアンマンの背部スラスターを狙う。九字兼定の刃がヴィブラニウムブレードを振り抜いた姿勢のままのアイアンマンの背中を捉え、スラスターが裂けて砕ける。と寿々花は踏み、アイアンマンの背後から上段の斬り下ろしを打ち込もうとする。

 

……だが、それと同時にアイアンマンのスーツに内蔵されている女声の無機質な音声は淡々と告げる。

 

『分析完了』

 

その言葉にハッとした寿々花だが時既に遅し。アイアンマンが左腕に装備しているヴィブラニウムブレードを後ろ向きのまま振り抜く事で互いの切っ先と切っ先をぶつけることで、九字兼定による上段からの一撃を防いで見せた。

 

 

ーーそして、マスクの下でトニーは低くドスの効いた声色で静かに呟く。

 

「ぶちのめすぞ」

 

かつては友だった者を怒りに支配された拳で倒すと決めた時に放った呪詛。

だが、今のアイアンマンにとって言葉の意味は別の物に変わっている。あの時とは違う今度はきっと………

 

そのまま腕を上に向けて振り上げることで切っ先を滑らせ、九字兼定を巻き上げて横に薙ぎに払うことでそのアイアンマンのテクニカルな動きに釣られて寿々花がバランスを崩した瞬間にアイアンマンは振り向きながら右手の掌のリパルサーを起動させながら背後に向けて放つ。

接敵している寿々花にではなく、キャプテンの手から離れて取手を地に付けている盾に円形の盾に向けてだ。

 

……リパルサー・レイが盾に命中すると跳ね上がり、鳥居に命中して跳弾する。

 

「このまま……押し込ませてもらう」

 

キャプテンが徐々に真希薄緑を押し込もうとする腕力と拮抗し、切っ先が首筋に微かに当たり一条の血が一直線に滴り落ちている。

 

しかし、遠方から聞こえる独特な起動音が鳴る。そして、キャプテンはそれが何かを弾いて打ち上げた音を超人的な聴力で聴き取った。

 

「ぐっ……!うおおおおおおおおお!」

 

真希の背後で起きたとある異変に気付いたキャプテンはアイアンマンの意図を察知して真希に悟られないように雄叫びをあげながら押し返そうと力を入れていく。その際に左手の手の甲の辺りの角度を前に向けながら。

 

「ぐっ!まだこんな力が」

 

キャプテンの左腕と逆転の一手の位置が一直線になった時、急激に力を増した自分を困惑した表情で見つめる真希の瞳を睨み返しながら小さく、それでいて力強くこう言ってやるのだ。

 

キャプテンの左手の前腕から手首に掛けて巻いてあるバンドが一瞬蒼白い淡い光を放る。

 

「左失礼」

 

「?………はっ!?」

 

キャプテンの発言の意図を理解できずにいたが直後に背後から何かがこちらに引き寄せられていることを察知し、咄嗟に背後を振り向くと先程簡単には取っては来られない位置まで弾き飛ばした盾が自分という障害物越しに持ち主へ戻るかのように宙に浮き、こちらに迫って来ていた。

 

アイアンマンがリパルサーで飛ばした盾をキャプテンの左腕に巻いてあるバンドに内蔵してある専用の磁石を用いて引き寄せていたのだ。

注意を自分に向けさせながら、アイアンマンが飛ばした盾をこちらに持って来させる。更に言うならば真希の隙を作るために一芝居打っていたのだ。

 

「感謝するぞ山ガール。木こりの歌に乾杯」

 

「真希さん!」

 

「僕を見ろ」

 

寿々花が声を荒げた隙に先程言われた言葉を相手にそのまま返してやりながら

両腕を前に構えて掌にリパルサー・レイの光を収束させ寿々花に向けて高出力でぶっ放す。

 

「うあっ!」

 

収束されたリパルサー・レイはかなりの威力であった為、直撃と同時に全身に強い衝撃が伝わり写シを剥がされてしまう。

 

「まだまだですわ!」

 

「いや、ゲームセットだ」

 

すぐに写シを貼り直し、立ち上がり反撃の意思を見せて再度斬りかかろうと九字兼定を振り上げるが攻撃パターンは既に解析済み。

振り上げたと同時に左腕のガントレットに隠してある特殊なワイヤー『グラップリングフック』を射出して九字兼定の柄に寿々花の手首ごと巻き付けるとそのままグラップリングフックを巻き取るようにしながら思い切り地面に向けて引き倒す事で彼女の姿勢を崩し、更にグラップリングフックを切り離す。

 

そして再度両手の掌のリパルサー・レイを起動させて寿々花に向けて放ち直撃させる。またしても同程度の威力のリパルサー・レイを受けたため彼女の写シの限度を越してしまい、九字兼定も手放してしまった。

 

壁に力無く持たれ掛かりながら、自身と対峙するアイアンマンを前にして自らの負けを悟る。

攻撃パターンの分析という予想だにしない機能を使われたことで敗北を喫してしまったが悪い気はしていない。

 

攻撃パターンを分析するのならばアイアンマンはその相手を真剣に見て、分析しなければ真価を発揮しない。自分を対戦相手として真剣に見てくれたことに内心では感謝している。

 

「私の敗北ですわ、社長さん」

 

「僕の勝ちだ。MS.ピノ・ノワール」

 

寿々花に向けて右の掌を向けているアイアンマンに向けて先程とは打って変わって穏やかな様子で問い掛ける。

 

「貴方、言っていましたわね……追い付きたい人がいると言うのなら自分自身の力で追い付くと。私もそうなれるでしょうか……」

 

「知らん。だが、君がノロドーピングなんぞに頼らなくともソイツに振り向いて貰えるか、対等に並び立てるか証明できるのは君だけだ」

 

アイアンマンはマスクの下で真剣な表情になりながら問い掛けに応える。

 

君なら出来る。と優しく言うことは誰にでも出来る。だが、アイアンマンは基本的に若者に対してはスパルタだ。実際に彼女が水を開けられたくないという相手に追い付けるか、並び立てるかは今後の彼女次第であるからだ。

 

「そう……ですわね……」

 

だが、厳しく突き放すだけが大人ではない。ある程度はフォローも入れなければ性質の悪い新人潰しと変わらない。

アイアンマンはぶっきらぼうな口調になりながら語る。彼自身、自身の持つ誰よりも優れた技術と頭脳により優れた者が持つ苦悩や恐怖を知っている。

 

「……まぁ、どれだけ優れた人間だって悩みの1つははあるだろう。人々から羨望され、期待され、信頼されている人間にも苦悩や迷いは付き物だ。その重さに耐えきれずに1人で抱えてしまう時もあるだろう」

 

そして、アイアンマンの脳裏にはいつだって隣で寄り添い、力になってくれた1人の友の姿を思い出していた。

チームが離散してしまう事態を招いてしまったトニーに対し、着いてきた事で負傷させてしまったことを悔いていた際に彼は言った。

「後悔はしていない」と笑顔を浮かべ、逆にトニーを励ましてくれた心強い友

の姿だ。

 

「だが、そんな時一番ありがたいのは隣に立って次は一緒に行くか?って言ってくれる奴がいることだと君より少しは大人のつもりのおじさんは語るのであった」

 

「そうですか………」

 

「じゃあな、おやすみお嬢ちゃん。夜更かしはお肌の天敵だぞ」

 

アイアンマンがHUDを操作すると手の甲から放たれる一本の小型の針が寿々花の首筋にチクリと刺さると瞬時に強い眠気が襲って来た力無く壁にもたれ掛かるようにして動きを止めると安堵したような表情のまま寝息を立てている。

 

どうやら麻酔針のようだ。万が一のため相手を傷付けずに無効化するために用意していた物が役に立ったということだろう。

強敵を1人鎮静化することに成功したアイアンマンはキャプテンの助太刀に入るべくスラスターを蒸してキャプテンの元へと飛翔する。

 

……一方その頃

 

真希が背後に迫る盾に対して咄嗟に姿勢を低くして回避するがそれと同時に力を緩めてしまったがためにキャプテンを鍔迫り合いから開放してしまい透かさず腹部に膝蹴りを入れられ、体勢を崩してふらつきながら後方へ後ずさる。

 

「でりゃあ!」

 

「ぐあっ!」

 

真希が回避した盾をキャッチすると手に持っていた防御に使っていた御刀をポイッと投げ捨てる。そして、真希にダッシュで接近し、ふらつきながら立ち上がる彼女に向けて盾を右腕を振りかぶって水平に投げ付け来る。

今度はワンテンポ遅れてしまった為咄嗟に薄緑で水平に振って防ぐのに精一杯であり、キャプテンはそのまま自分の方へと跳ね返って来た盾を左脚で蹴飛ばす事で真希を追撃する。

 

「何!?」

 

 

「だあああああああああ!」

 

構える隙すら与えない連続攻撃に対して今度は防ぐ間もなく盾が頭に直撃してノックバックを受けているとキャプテンは既に真希の眼前まで迫っており拳を強く握りながら強烈なボディブローをかます。

 

キャプテンの拳が真希の腹部に突き刺さると全身に衝撃が伝わり、写シが剥がされ意識が薄れて行き弱々しく膝から倒れ込もうとした矢先にキャプテンに受け止められる。

 

「スティーブ……ロジャース……」

 

完全に自分の敗北を認める。自分は彼に、どれだけ不利でも諦めないモヤシのスティーブ・ロジャースに敗れたのだと精神的にも認めざるを得なかった。

キャプテンは倒れ込んで来た真希に対して非難する訳でも無く、真剣な表情のまま彼女に向けてキチンとフォローを入れる。

 

「見事だった。僕は君たちを責めるつもりもなければ咎めるつもりもない。君たちは今回、騙されて力の使い方を間違えたんだ」

 

「なら……僕はどうすれば良かったんだ。これからどうすれば……」

 

敗北し、薄れて行く意識の中でキャプテンの言っていることが本当ならば自分のしてきたことは何なのか。

そんな彼女に対し、キャプテンは答える。

 

「弱さを認め、前に進むんだ。生まれてからずっと強い者は、力に敬意を払わない。だが、弱者は力の価値を知っている。それに、憐れみも……それを知ったのなら忘れずに君のままでいてくれ」

 

かつて自分が血清を打つ前に言われた言葉。

力を手にするのならば力強さだけで無く、強い心を持ち続けなければならない。力に挫折し、無力さを知った人間だけがその痛みを知っている。

 

「行き先が見えなくとも勇気を持って一歩を踏み出すことから始めるんだ。例え小さい一歩でもそうやって少しずつ積み重ねて行くんだ。そうやって立ち直り、もう一度目標を見つけよう」

 

「…………」

 

「そして、時には悩んだ末に一人で問題に立ち向かうと決め、打ちのめされることもあるかも知れない。だが、その時に信じるんだ……まだやれる。立ち上がり続ける限り君は1人では無いということを」

 

 

曇りのないキャプテンの瞳から伝わって来る。その言葉によって心の奥底が熱くなって行くような感覚に陥って行く。

 

「綺麗事だな……だが……」

(少しだけ信じてみたくなるじゃないか……)

 

 

自分も彼のように諦めて強さにすがるのでは無く、例えどれどけ不利でも自分の意志で脅威に対して一歩も引かずに立ち向かい続けることが出来るだろうか。そんな想いが芽生え始めると同時に意識の糸が切れて気絶するとキャプテンは優しく木に寄り掛からせる

 

直後にスラスターを蒸しながらアイアンマンが飛行して来ており、右拳と左膝を同時に付ける独特なヒーロー着地をして周囲を確認してキャプテンの無事を確かめる。

 

一見、スーツのあちこちに切り傷が目立ち満身創痍に見えるがキャプテンは何とか元気そうであり内心でアイアンマンはホッとする。

 

「そっちは片付いたか?キャプテン」

 

「なんとかな。よし、坊や達を助けに……と行きたいが遠くからこちらに迫って来る音が大量に聞こえるんだが」

 

キャプテンが超人的な聴力で離れた場所からこちらに近づいて来る複数の大量の足跡を聴き取ると、アイアンマンは横須賀に敵を一極集中させた上でコンテナで移動するというプランを聞いていたため、大方予想が付いている。

 

「恐らくヒステリックウーマンが横須賀にアッセンブルさせた鎌府の刀使達をこっちに寄越して来たんだろうよ。連中を坊主たちや祭壇に近付ける訳にはいかない、行けるか爺さん?」

 

現在交戦中の彼らの助太刀に行きたいがこの後大量に押し寄せて来るであろう雪那が連れてきた鎌府の刀使達が相手となるといくら改造したS装備を付けているとは言え多勢に無勢。

タイムロスになる可能性も充分にあると判断して彼らの露払いをするのが今取れる最良の手段だろうと確認を取る。

 

そして、キャプテンの答えはいつだって決まっている。

 

「勿論だ、行くぞトニー!」

 

キャプテンとアイアンマンが肩を並べて隣に立つとアイアンマンが左の拳、キャプテンは右の拳を横に突き出して互いの拳と拳を合わせ、これから攻め入って来る勢力に向けて突撃して行く。




この方々は早めにやった方がキリがいいと思って描き切れなかったメンツもいますがそこは次回触れます。サーセン。

5月29日、スタークさん誕おめ!

mafexのEGキャップにムニョムニョ振り回すパーツあって良いっすな。

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