刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任-   作:細切りポテト

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リアルが忙しい&すぐ眠くなるようになって遅れましたメンゴ。やはり最大の敵は時間と眠気。
今回は消化試合気味なので深く考えず軽い気持ちで見てくだされ



第56話 背水

舞草の残党一行が折神邸に突入してからそれなりの時間が経過し、迎撃に来た面々との各々の戦局が加速して行く最中、御前試合の会場にて結芽の足止めを引き受けた薫とエレンだったが結芽を先行したメンツを迎撃させるために乱入して来たライノとショッカーに阻まれ、結芽を逃してしまう。そして未だに御前試合の会場から進めないままでいた。

 

何としても彼らを撃破して先行した面々に追いつこうと奮戦するもボクシングの世界チャンピオンとギャングの戦闘員という戦闘技術の達人がS装備にも引けを取らない強力な性能のスーツを着ているためという事もあり、一度は交戦経験がある者同士で各個撃破に挑むがライノとショッカーにはまともなダメージは与えられず、逆にこちらは手痛いダメージを受けてしまっているという状況だ。

 

その上薫の装備はライノの突進の直撃を直に受けたことにより装甲に亀裂が入り、ショッカーの振動波を纏ったガントレットによる拳の連打を直に受けたエレンの装備は装甲のあちこちに凹み傷が出来ており、バイザーにはヒビが入り、一部の回路が切れショートを起こして火花が散っている。

しかし、それでも送り出してくれた舞草の仲間たちや一緒に戦ってくれてる者達に応えるためにあちこち痛む身体に鞭を打って立ち上がり、未だに余裕そうに立ちはだかるライノと指をポキポキと鳴らすショッカーを睨み付けて啖呵を切る。

 

「って散々カッコ付けたけどやっぱキッツいな……でも、絶対勝つぞ。皆が待ってんだ」

 

「OK、付き合いマスヨ」

 

「ね!」

 

エレンと薫が互いに目配せをしてエレンは左拳、薫は右拳を横に突き出すとグータッチをして互いに気合を入れる。

長期戦が難しいならば短期決戦。そして状況に応じて臨機応変に2人と1匹の連携攻撃で攻める。信頼と絆がミソだ。

 

未だにやる気満々な眼前の敵対者を前にするとショッカーはガントレットのスイッチを入れる事で振動波を纏う。前回戦闘した際はエレンの頭脳プレーとスパイダーマンの懐から落ちたウェブシューターでガントレットを封じるという咄嗟の機転に敗れた経験があるためかより警戒心を強めてファイティングポーズを取る。

 

「気ぃ付けろよ。あの女嘘臭え片言でふざけてやがるが悪知恵が働きやがる。何か企んでんぞ。おまけに短時間だがバカみてぇに硬くなるオカルトパワーを使うからな、油断すんじゃねぇぞ」

 

「了解。あっちの子の怪力にも注意しろ、下手に食らうと負ける。後、悪いんだがライノの稼働時間は長くない。早めにケリをつけたい」

 

「だな」

 

ショッカーからの忠告を聞きつつもライノの残りの稼働時間をチェックすると残り10分以下を切っていた。常時高火力の怪力を発動し、その上超耐久という強力なスーツである代わりに他のスーツに比べて非常に燃費が悪く、通常のS装備以上に稼働時間が短いという難点を抱えている。トニーによる改造が加えられているS装備を装備している彼女達と長時間戦うのはリスキー以外何物でもない。

ショッカーのスーツはまだ稼働時間に余裕があるものの単独で彼女達を同時に相手取るのは厳しいため、一気にカタを着けるのが最善だろう。

その上、装備に対する説明はショッカーも一緒に受けており、ライノの稼働時間がショッカーよりも圧倒的に短いという事を珍しく覚えていたこともありライノの言いたいこともすんなり理解できため、早急にケリを着ける方向にシフトする。

 

「oh、薫並にアバウトなのに無駄に頭の回転は速いハマハマには言われたくありまセンネ」

(確かあのライノっていう装備、薫じゃなければほぼダメージが通らない上にとてつもないパワーがありましたネ……おまけにこっちのスーツもダメージが蓄積してあちこちガタが来てマス……タイムリミットも考えると下手に長引かせるのはクレバーではありマセンネ……)

 

向こうもこちらを見逃さずに倒す気でいる事を理解したエレンはショッカーに向けて軽く挑発する。一方、挑発はボロボロな自分を奮い立たせるための強がりの意味合いもあるが。

 

「おい、何か今オレ遠巻きに適当って言われてないか……?」

 

「ね!」

 

事実だろ?とでも言いたげに頭の上に乗るねねに指摘され、苦い顔になる。自分も基本適当でマイペースなのは否定しないが敵対組織である舞草をモグラと覚えたり自分を小学生扱いして来た関心のある事以外はとことん適当だと初見で理解できるショッカーと同列にされるのは流石にショックだった。

 

(何か……トニトニが改造してくれたスーツで他に使えそうな機能は……っ!?)

 

エレンの方も冗談を交えつつ伊豆での戦闘で得た情報やハイテクスーツの機能によって彼らのスーツについて復習したことを思い出しながら、それでいて振動波による応用の効く攻撃や振動波をバリアのように展開する事で攻撃を防いでくる防御壁だけでなくライノと違ってスピードもあるショッカーをも相手にするのは厳しいだろうということを懸念しつつ使える物が他にないかHUDで残された機能を確認する。

 

すると、そこに一つ。胸部に内蔵されているアークリアクターをはめ込んである部分に使えそうな機能を見つける。その機能は以前薫と一緒にDVDで見たニチアサヒーローの必殺技に似た機能があった事を思い出した。

 

(これは………前に薫と見たDVDでヒーローが使ってた武器に仕様が似てマスネ。確か……)

 

ーー脳内の記憶を辿って行く……それは休日にゴロゴロしながら薫の部屋でDVDを見ていた時のことだ。薫はテレビの前でサイリウムを振って応援しながら熱中している最中自分は寝転がってポップコーンを頬張りつつ流し目で見ていたのだがテレビの画面に映し出される広場のような場所で黒を基調色とした周辺のフレームが緑色のガシャポンのようなギミックのヒーローが水色のアンキロサウルスのような怪人と交戦し、苦戦している場面だった。

 

『クソやっべえな……でもがんばれー!』

 

『ね!』

 

そのヒーローが怪人に欄干に抑え付けられるとハンマーのような形状をした拳を何度も叩き込まれながらも一瞬の隙をついて必殺技を撃つためのプロセスを完了させる。すると直後に胸に銀色の砲台のような武器が形成され、腕で怪人を押さえ込んで動けなくすると即座に砲口を密着させる。

 

『ブレス○○ャノン……っ!』

 

その掛け声を放つと同時に砲口に真紅の光を収束させて一気に零距離で放出させる事で形勢逆転する場面だった。

 

『おー零距離ぶっぱかっけえー!捨て身とは言え泥臭く勝つのも良いよなー』

 

『ねー』

 

『WOW、なんかアイアンマンの武器にも似てマスネー』

 

余程今の自分は疲れているのか過去の休日のイメージが一瞬頭をよぎった。しかし、同時にピンチな状況とは言え似たような武装があるとは言え、創作のアイデアを何でも鵜呑みにするのはどうかとは思った。

だが、リスキーとはいえ発電所にも匹敵する電力量を誇るアークリアクターの残り電力を全て消費するこで、今の蓄積されたダメージでは反動に耐え切れずに装備が壊れる可能性はあるが全電力を消費したこの機能の攻撃はかなりの威力を誇るようだ。使う価値はあるのかも知れない。

 

(ですがやはりリスキーデス……やるにせよ彼ら相手なら多分チャンスは一度。厳しいデス)

 

だが、相手と接敵しなければいけない上にショッカーには完全にこちらの行動全てを警戒され、金剛身の時間制限の弱点を知られているため難しい。やはりこれは捨て身の戦法であるためかなりの危険を伴うと判断し、手段の1つとして取っておこう。

 

「ほざいてろ、テメェらが何して来ようが全力でぶっ潰す!」

 

「一気にケリを着ける」

 

こちらの準備を待たずに相対するライノとショッカーは漸く立ち上がることで精一杯の2人に対し一切の容赦を捨てる。

本気で倒しに行くためにショッカーは振動波で地面を殴りつけることで自分を飛ばす事で微妙に宙に浮きながら超加速してこちらに突進し、ライノは地面を思い切り強く踏み付ける事で地震が起きたと錯覚する程の脚震を起こすことでまずは2人を怯ませ、そこから確実に攻め込める状況を作り出そうとする。

 

「来るぞ!」

 

「OK!」

 

「ね!」

 

ライノとショッカーが全力で攻め込んで来たことを理解した両者と1匹は視線を

一瞬だけ合わせると息を合わせて各々が取るべき今最も適切な行動を取る。

5段階金剛身によりダイヤモンドを凌ぐ防御力を持つエレンは地上に残ったまま

脚震を受け止めライノと対峙し、薫は一度跳躍して脚震を回避してショッカーに狙いを付ける。

 

「なんて力……っ!?」

 

「ならまずは君からだ」

 

「伊豆では見てるだけデシタガ今度は違いマスヨ!」

 

エレンが脚振を防いだ後に再度写シを貼り直すとライノは脚震を防がれはしたが先程の一撃は倒す目的では無かったためすぐに次のモーションに移行する準備はしていたため、予定通り難なく地上に残ったエレンに接近して勢いの乗った前蹴りをかまして来る。

 

「ふん!」

 

まだショッカーによる振動波を纏った拳の連打を受けたダメージは残っているがライノのスピードはなんとか回避出来る速度だ。

 

「えりゃああああ!」

 

すぐ様身体を右に傾けて回避するとライノが続け様に脚で地を踏みつけて地面を踏み砕く程の威力の乗った追撃をして来たがライノの左腕に手を置いて跳躍し、回避しつつライノの側頭部に向けて回し蹴りをお見舞いする。しかし、鈍い金属音が響くものの当のライノは一瞬少しフラつく程度だ。

 

「チッ……」

 

「はぁーっ!」

 

だが、攻撃の手は止めない。そのまま背後に周り、着地と同時に横薙ぎの一閃お見舞いするがライノの装甲に軽く傷を付ける程度でしかない。やはり薫程の怪力でないとまともなダメージは入らないようだ。

 

「私も負けまセン!」

 

「どうかな」

 

「そういうセリフは私を倒してから言ってくだサイ!」

 

だが、自分は5段階金剛身によるガードである程度はライノの強力な攻撃にも対応出来るため相性自体は悪くは無い。一定時間足止めをする分には問題は無い筈だ。

 

「ふんっ!」

 

「……ぐっ!まだまだ!」

 

(やはりシュルツから聞いていた通り彼女はライノのパワーにも耐えうる防御力を時限的だが発動出来るらしい……相手のタイミングに合わせて的確に防御すればその後カウンターにも持ち込める……ある意味こちらのタイムアップを狙うだけなら一番ライノと相性が悪いのはこの娘かも知れない)

 

ライノの重い一撃をエレンは的確なタイミングで金剛身を発動することで防御し、ダメージを大幅に軽減することで反撃している。ライノの利点でもある高火力を防御出来るという利点はかなり大きく時間稼ぎをして活動停止に追い込むには最適かも知れない。

 

「はっ!じゃあ、チビは俺の獲物ってかぁ!」

 

一方、自分はパワーはあるが耐久力が高いとは言い難いと判断した薫は脚震を回避するために咄嗟に跳躍すると同時にねねの姿が瞬時に見えなくなり姿を消すがショッカーはその様子には気付いていない。そのまま加速してこちらに接近して来ていたショッカーに狙いを付けて祢々切丸を投擲する。

 

「チビって言うなこの野郎!」

 

 

ショッカーの移動速度は確かに速いが目標に対して直線的であったため、狙い自体は付けやすかったようだ。リーチの長い祢々切丸が縦に回転しながらこちらに迫って来ていたためガントレットから振動波を放つ事で急速に方向転換する事で回避する。

 

「ちっ!バカが!」

(妙だな、あの武器はチビの命綱みてえなモンだろ?それをぶん投げる程考え無しとは思えねぇ……何が引っかかってんだ?)

 

祢々切丸がショッカーの隣を通り過たことで回避に成功はするが薫の行動に妙な違和感が残りながらそちらを向くがショッカーの視界に映った違和感は確かなものだった。

 

「お前がな」

 

薫が不敵な笑みを浮かべた事で、その正体を理解した。いつも頭の上に乗っかっている小動物、ねねの姿がそこには無かった。

 

「……っ!犬っころがいねぇ!」

 

「これまでの奴の中で一番速く気付きやがった……でも行けぇ!」

 

「ねねっ!」

 

気付いて背後を向いた頃には時既におすし。姿を透明化……もとい、隠世の浅瀬に潜ってショッカーの背後に回り込んでいたねねは姿を具現化させ、祢々切を鉄色の尾でキャッチしてそのままショッカーに投げ付けて来る。

 

「野郎……っ!だが」

 

まさかあの頭の上に乗ってるだけだと思っていた小動物がこんなに器用で小賢しい真似が出来るとは想定していなかっため焦ったがボヤボヤしていたらこちらが負けるだろう。すぐに切り替えたショッカーは右手のガントレットは後ろに向けて震動波を展開して防御壁を形成し、ねねの投擲を防いで弾く。

それと同時進行で攻撃の要である薫を牽制するために左手は薫に向け、振動波を一直線に放つ。

 

「ただのガキになったテメェに避けれっかよ!」

 

「じゃあ、昔から真似してたアイアンマンの真似、一度やってみたかったんだよなぁ!」

 

御刀が手元から離れている以上今の薫はスペック上は生身の人間、音速にも匹敵するショッカーの震動波を回避するのは無理に等しいだろう。

だが、今はまだトニーが改造を施してくれたS装備は稼働している。

ショッカーがガントレットを構える動作をすると同時に両手の掌を地面に向けてリパルサー・レイを起動させると独特の起動音を立てながら光を収束させ、出力を高めて一気に放出する。

 

「うおっと」

 

アイアンマンですら宙に浮かせる事が可能、且つ通常の出力で厚さ90cmのコンクリートを余裕で貫通可能な威力を誇る代表的な武装リパルサーの出力ならばより速く、より高く体重の軽い薫を浮かせるなど容易。

薫の身体は宙に浮く事で速度は速いものの一直線にしか飛ばないショッカーの

振動波を回避することに成功する。

 

「んだとぉっ!?」

 

「キャッチ。そんじゃあ覚悟しやがれドルヲタ野郎。きえええええい!」

 

(ちっ!やっべえっ!最大出力でガードするっきゃねぇ!)

 

そして、ショッカーに弾かれた愛刀を空中でキャッチすると空中で一回転しながら猿叫を上げながらショッカーに向けて振り下ろす。

本来ならば振動波を再度ぶつけて未然に阻止したいが祢々切丸のリーチを考えると構えて放つまでの隙を与えてくれないだろうという危機感、その上でショッカーは振り下ろされるであろう薫の一撃の威力を全力でガードしないと負けると直感で察知して両腕を前方に構えて振動波を最大出力で展開することで2つの振動波が共振し、通常よりも拡張されて巨大化した防御壁を形成して薫の一撃をガードする。

 

「「うおおおおおおおおお!!」」

 

祢々切丸の切っ先と振動波の防御壁が激突して、着地と同時に振動が周囲に広がって行き、ライノとエレンもその衝撃の余波を受けるが双方とも対処可能であるためすぐ様タイマンを続行している。

ショッカーの防御手段がただの鋼鉄の装甲でのガードならばそのままぶち抜けたのだが振動波の防御壁という展開された未知のエネルギーシールドとぶつかるのは初めてであるためか拮抗するという状態になる。

 

これもショッカーの方も本来は想定していなかった振動波を防御壁として使用するという使用方法を前回の戦闘にて即興で編み出したこともあり、ここ数日の調整で振動波の防御壁も新たに機能の一つとして採用されたためか防御壁に送られる振動波の電力エネルギーの出力が大幅に引き上げられている。

それだけでなく、2つの振動波を重ねる事で共振現象が起こり振動波に紛れている電磁波によって電磁メタマテリアルを発生させてそれらを電磁シールドに変換することで展開中はあらゆる物理干渉を遮断する。

 

一方、ライノが自分の最大の欠点が稼働時間が短いという点は危惧しているからこそ速攻を仕掛けていくのだが、長引く前に一つ打って出る事にした。

 

「はぁ……っ!」

 

ショッカーよりスピードは無いが素早い拳と蹴りの連打をかまして来る。S装備を装備したことによりショッカーとは概ね同等な腕力になってはいるがライノの腕力とまともにぶつかって勝てる保証はない。

少ない動きでライノの攻撃を回避して行くがその怒涛の攻めの勢いに押されて反撃の糸口は見えない。

 

「闇雲に攻めてるだけじゃ私には勝てまセンよ!」

 

「知っている」

 

「?」

 

ライノの言葉に違和感を感じたが彼が回し蹴りを回避されると同時に反動を利用し、地を蹴って宙に浮くと脚を開脚して横回転する脚技。所謂ローリングソバットをお見舞いして来た。

 

「なっ!?プロレス技デス!?」

 

「知人から習った」

 

図体の割にはかなり動けるライノのフィジカルにはつくづく驚かされるが防ぐこと自体は可能だ、金剛身を発動して再度防ぐ。

空中で3連続で放たれるローリングソバットを全て的確に防ぐと強い衝撃自体は受けているがダメージは無い。

 

「………ふんっ!」

 

「何度やっても同じデス!……へっ?」

 

続けてライノの右ストレートの拳が頭部に目掛けて飛んで来る。激しい攻めの後であったため回避には一拍置かれてしまったが再度金剛身でガードすればいいだけの話。定石通り金剛身を発動する。

 

……しかし、ライノの狙いは違っていた。

 

「貰った」

 

「しまっ……!」

 

静かにそう呟いたライノの拳は直前で開き、重装甲のスーツを着ているということはあるが常人よりも遥かに大きな掌はエレンの頭全体を包む、俗に言うアイアンクローで鷲掴みしにてこめかみを力強く圧迫して行く。そして、あまりにも力が強いのか頭部のバイザーにヒビを入れて行き、形が歪に変形していく。

そのまま持ち上げて身体を宙に浮かせることで、このプロセスを辿ることで金剛身の使用時間にタイムラグを生じさせると同時に手で掴んだエレンを即座に持ち上げてメンコのように地面に思い切り叩き付けようと腕を振り上げていた。

 

 

(クソッ!中々破れねぇ!……八幡力がお世辞にも燃費が良いとは言えねぇ以上ここで使い切るのはマズい……っ!なら!)

 

「だりゃあああああ!」

 

それと同時期、ショッカーの防御と自身の怪力が拮抗している薫の方は前回のままの防御壁ならばそのまま叩き壊すことも可能だったかも知れないが強化されたことにより短時間では突破不可能となってしまっている。

それと同時にチラリとライノとエレンの方を見ると金剛身のタイムラグを利用して金剛身を貼り直す前に頭を掴んで地面に思い切り叩き付けようとしているライノの姿が目に映った。

このままでは拉致が開かない上にエレンを助けるために横薙ぎに祢々切丸を振ることで拮抗していたショッカーを叩き潰す方向から彼らのいる位置まで飛ばすという方向にシフトさせる。

 

「うおっ!何だ叩き潰すんじゃねぇのか!?」

 

横一閃により弾き飛ばされたショッカーの脚が地面を引き摺りながら跡を作って行く。その最中ショッカーは薫の八幡力による怪力のパワーに驚愕しつつこの短時間で得た情報を脳内で整理していく。

 

(あんなちいせぇ身体のどっからこんなパワー出てんだよ……っ!スピードはねぇがあんなのを何度も全力でガードしてたらこっちの電力が持たねぇ上にあの原型はダサそうなスーツの掌からの光もチビのトロさを絶妙にカバーしてやがる……っ!)

 

ショッカーは最初薫と対面した際小学生のガキだと思っていたが自身の倍近くある得物を持っていることにほんとに振れるのか?と内心で思っていたが蓋を開けてみれば祢々切丸を軽々と振り回すパワーファイターであることを身を持って知ることとなった。

その威力は強化された振動波の防御壁を最大出力にしないと破られる程の威力。何度もまともに受けていてはこちらの電力が彼女達を撃滅する前に尽きてしまうだろう。

 

そんな思考を巡らせている間にふと気付くと先程弾き飛ばされたことで既にライノとエレンが戦闘している位置まで移動させられていることに気付く。

 

「くっ!マズいな。ふん!」

 

その隙に薫が敵であるライノとショッカーが一箇所に集まったのを確認するとサンライズ立ちをした後にそちらに向けて猿叫と同時に祢々切丸を横に振りかぶりながら突進して行く。

背後にショッカーが飛ばされて来たことに気付いたライノはこのまま薫は自分達を同時に倒しに来たという事を理解して、彼女の味方であるエレンを薫の方へと腕を大きく振りかぶってボールのように投げ付ける。

 

「なっ!なんて無茶苦茶な!デスガ離してくれて助かりマシタ!薫!」

 

「おう!」

 

投げ付けられている間に金剛身の硬直が解けた相棒の呼び掛けに応えると同時に祢々切丸の縞地を横に寝かせて、バントのよう構えを取る。

 

「着地からの〜」

 

「バスター!」

 

エレンが縞地の上に見事着地すると背部のスラスターを一気に蒸して勢いを付け、野球のバスター打法のようにバントの構えからそのまま振り抜いてショッカーに向けてエレンを投げ飛ばす。

 

「次は俺だ」

 

「いいだろう」

 

そして、エレンの後ろに一瞬隠れた隙に、掌のリパルサーで牽制した後にライノに迅移で接近して近距離戦闘に持ち込む。

 

「何だコイツら!何で急に動きが!」

 

彼らの動きがタイマンの頃よりも無駄が無くなって来たことに地味に焦っているショッカーに対して放たれるのは一直線に飛ばされながらも脚を前に突き出す飛び蹴り。所謂ライダーキックをショッカーにかまして来た為、ショッカーの方もすぐ様ガントレットを起動して正面から迎え撃うことにした。

 

「だが甘ぇんだよ!うおおおおりゃああああ!」

 

振動波を纏ったガントレットが直前に金剛身を発動して防御力を上げたエレンの脚と正面から激突するとショッカーは拳をアッパーをする時のように天に向けて突き上げてエレン宙へと打ち上げる。

 

「hey!最大出力でライノのコアにアレを撃ったら装備の破壊は可能デスカネ?」

 

宙に打ち上げられながらエレンはスーツのAIに問い掛ける。

先程創作のアイデアを鵜呑みにするのはどうなのかと思ったがパワーはあるが体力が無い薫の残り体力とスーツの稼働時間を鑑みるとこちらも早めに決着を付ける必要がある。

 

その上で大切なのは装備を着けている面々の中では一番厄介なライノを倒す、または機能停止に追い込まなければこちらも負けかねない。おまけにショッカーも同時に相手取るとなるならばつべこべ言わずに賭けてみる事にした。

自身の耐久力を利用して、ライノに至近距離でこの機能を打ち込む。この行動で必ず暗闇の荒野に進むべき道を切り開いて見せる。そう心に誓う。

すると、エレンの問いかけにスーツのAIは即座に計算を行うと演算結果が写し出される。

 

『完全破壊は不可能だが、機能停止に持ち込むのは恐らく可能』

 

その文字を目にした瞬間に宙に浮いた瞬間にエレンは頭部のバイザーに搭載されているHUDを網膜認証で操作しながらある機能を選択する。

よく休日に鑑賞する特撮ヒーローならアイテムやベルトをいじるモーションで次の挙動を読まれかねないだろう(それがカッコ良くはある)がHUDの網膜認証による操作は相手にそれを悟られずに行うことが出来る点は美徳と言えるかも知れない。

 

「教えてあげマスヨ!今の私たちは皆の想いを背負ってるからデス!」

 

(ユニ・ビーム、チャージ開始!フルパワーデス)

 

そして、胸部の熱可塑性レンズを通してスーツの心臓とも言えるアークリアクターが蒼白く光り始め、電力を一局にチャージし始める。

そのまま掌を横に向けてリパルサーを放つと、その推力を利用することでショッカーの頭上を通り越し、落下しながら後方で薫とパワーバトルを繰り広げているライノにしれっと接近して回転しつつ落下しながら肩口に縦一閃をお見舞いしてライノの前に着地する。

 

「がっ!」

 

「テメェ!」

 

激しい音と火花が散ってはいるがライノのスーツに大したダメージ自体はないものの咄嗟の縦斬りにより一瞬だが怯ませることに成功する。

ショッカーはすかさずガントレットを構えて振動波を纏うがエレンと薫はショッカーの射線状にライノが来る位置に移動しており、援護に入れなかった。

 

「ちっ!」

 

「でぇええええい!」

 

ショッカーが舌打ちをした隙にエレンと薫が一瞬だけ視線を合わせる。

薫の瞳に映る相棒の力強い瞳からは何か考えがあるのか自分を信じろという意思がその青空のような蒼い瞳に込められていたため、それを信じて自分は戦う相手を交換して薫はショッカーに斬り掛かっていく。

 

ショッカーの方もすぐに反応して薫の乱雑な連撃を回避して行くが距離を取るのは悪手な上に叩き付けた際の衝撃でダメージを負いかねない。ならばこのパワーファイターなチビに付かず離れずを保ちながらエレンがカバーに入って来る前に一発は打ち込まなければという意識に駆られて間合いを保ちつつ拳を振るう。

 

「はあっ!」

 

その時、ライノと接近戦に持ち込んだエレンが越前康継を思い切り上段から叩き付けると強い金属音が鳴り響くが装甲を切り裂くことは出来ず、刃は食い込みこそすれ、それ以上先には進まないという状態になってしまう。

 

その直後、ライノは間髪入れずにエレンを今度は逃げられないように刀身が食い込んでいる越前康継を握る右手の手首を思い切り掴んで動きを封じる。

 

「なっ!」

 

「追いかけっこは不得意でね、これで終わりにする」

 

エレンも咄嗟に抜け出そうとするがライノの腕力は万力のような力でエレンの腕を締め上げ、スーツの装甲を徐々に握り潰して行く。

 

「ふんっ!」

 

スーツの右腕の装甲が潰れると同時に電子回路も切れ、リパルサーすらも打てなくさせる程の腕力に驚愕しながらもここまでライノに接近できたということはこちらのプランも着実に進んでいると言う事だろう。

 

「ぐっ!チャージは!?」

 

『後5秒です』

 

「上等デス!」

 

そして、ライノは容赦なく彼女の意識を奪うために右拳を握って何度も肩や頭部に向けて拳を振り下ろして殴り付けて行く。

写シもすぐ様解除させられてしまい、すかさず金剛身を発動するもののライノが間髪入れずに何度も殴り付けて来るために何度かタイミングを外してしまう。頭部に命中してS装備の頭部バイザーの部分が先程よりも大きく歪んで行き、更には額が切れて出血までし始めて赤く生暖かい血液が額を伝って瞼と頬に流れて行くがエレンはジっと耐える。

だが、頭に響く衝撃に意識を持って行かれかけているのか視界がボヤけ始めて彼女の生き生きとした目は虚になって行く。

 

「これで終わりだ」

 

ライノの激しい打撃の連打に意識が消えかけているとそれを彼女の表情から察知したライノはトドメを刺すために右拳を大きく振りかぶって右ストレートを無慈悲にも振るってくる。

そして無情にもライノの剛腕がエレンの顔面を捉えるために風を切る音を立てながら一直線に放たれる。

 

(ダメデス………もう意識が……薫……)

 

額から頰を伝う血液の熱さだけが意識があることを教えてくれる最中、現在自分と少し離れた位置でショッカーの足止めをしている相棒の事を想う。もし自分がユニ・ビームを当てる前に意識が尽き、ライノを機能停止に追い込めずに気を失えば2人とも負け、彼らを本殿に向かわせてしまう。

そうしたら全てが無に帰すかも知れない。自分が今こうして命懸けで戦っていることの意味も、祖父達がこの時のために積み上げて来た功績も、無駄になってしまう。

 

耐えなければ、そう頭はでは理解しているが身体は既に強制的にでも休めと言って言う事を聞いてくれない。そして、何度も頭に響く衝撃に対して金剛身の発動も間に合わなくっているのか更に強くなっていく。

 

ーーしかし、意識が消えかかっている彼女の耳に奇跡を呼ぶかのような声が聞こえる。

 

『チャージ完了、最大出力放出可能』

 

「……………っ!?」

 

ライノの猛攻に耐え続けた彼女の功績に応えるかのように響くスーツのAIの声は彼女の意識を覚醒させ、ライノがトドメを刺すために放った拳が彼女の頭部に当たるか否かの距離で反応した。

 

「何っ!?」

 

頭部へのダメージによって意識が消えかけて虚な眼をしていた彼女の瞳に瞬時に光が宿りライノの拳を左手を咄嗟に翳すと同時に金剛身を発動する事で受け止めて見せた。

彼女が必死に耐えていた努力は決して無駄では無かったのだ。

 

勿論、ライノの全力の一撃をモロに防いだため、蓄積されたダメージによって壊れかけてガタが来ていたスーツのパーツのあちこちは音を立てて崩れ落ちて行く。

その余波で頭部のバイザーが砕け散るが想いまでは打ち砕けない。砕け散ったバイザーのクリアパーツは役目を終えたのかのように誇らしく流血が目に入って赤みがかっている普段は青空のように青い彼女の瞳をくっきりと写している。

 

 

「うおおおおあああああああああああああ!」

 

普段の作ったような片言では無く腹の底から気合いの入った雄叫びが響き渡る。それを現すかのように力を振り絞ってライノの動きを封じるために八幡力を発動して拳を受け止めた掌を握る形に変えることでライノの拳の装甲に指を立ててめり込ませていく。

 

額から流れ出る血液が左目に入った事で視界が霞みがかっているがそれでもライノを強く睨み付けて、トニーが改造したS装備の最後の仕事を果たさせるために、先程まで創作のアイデアなんて真に受けるべきではないと言っていたが敵からの激しい攻撃に耐えながらも、決死の覚悟で勝利を捥ぎ取る活路を教えてくれた画面の向こうのヒーローに敬意を表しながらアイアンマンの必殺技と言っても過言ではないこの機能の名前を叫ぶ。

 

「私たちにも負けられない理由があるんデス……っ!ユニ……ぃっ!ビーム!」

 

「なにっ!?」

 

S装備の胸部に埋め込まれているアークリアクターが強い光を放ちながら熱可逆性レンズから蒼白い光が収束して必殺のユニ・ビームが一直線に放たれ、ライノの胸部装甲に命中する。

発電所並みの電力を誇るアークリアクター全ての電力を一局に集めて放たれるユニ・ビームの一撃は子供達に使わせるにしては強力過ぎるためある程度はデチューンされているがその威力は絶大。

 

ライノの分厚い胸部装甲を高熱で溶かしていき、ぶち破って行く事でスーツの心臓と言えるコアに直撃して粉砕した。

装着者であるアレクセイもコアに当たれば機能停止になることは前回の戦闘で経験しているため、敗北宣言にも等しいがすぐさま脱出のコマンドを入力して自身をスーツから切り離して脱出し、地を転がって行く。

エレンがスーツから放ったユニビームによりライノのコアが粉砕された事により完全にライノは機能停止し、エレンの装備もユニ・ビームの威力に耐えきれずに砕け散ったが新装備を着けている面子の中で地上では最も厄介なライノを封じたのだから充分と言えるだろう。

 

「ぐっ……今度は役に立ちマシタヨ……」

 

エレンもスーツの防御機能に最後まで守られており、ユニ・ビームを最大出力で放った反動でフラ付きながら片膝を着いて額を伝う流血を拭い、血液が入った左眼を拭いている。

 

 

一方、ユニ・ビームの放出音によりショッカーと薫が一瞬その方向を向くと、至近距離からのユニ・ビームの最大出力の放射によりライノの胸部装甲とコアを破壊している姿が目に入った。

 

「ゴリラァーッ!ちぃっ!」

 

「無理させたな、相棒……でも、これで残りはお前だけだ」

 

「ねっ!」

 

戦う相手を切り替える瞬間、アイコンタクトを取った相棒の瞳からは自分を信じろと言う強い意志を感じ、それを信じて自分はショッカーを相手取ったが自身の耐久力を活用して至近距離でユニ・ビームを打つ事で体力の無い薫の消耗を抑えつつ早めにライノを倒すためだったとは……と後からだが察する事が出来た。

 

そして、前回の戦闘で4人がかりで漸く倒せたライノが倒れた今残るはショッカーだけ。エレンも額を切っており、拭ったあとは残っているが戦線に戻って来るのにそう時間は掛からないだろう。

これも彼女の耐久寄りな戦闘スタイルとトニーが自分たちを守るために改造してくれたスーツの防御機能の賜物と言える。

そうして、今は眼前のショッカーに意識を向ける。

 

「はっ!ナメんじゃねぇぞガキ共……おいゴリラ」

 

「む?」

 

だが、ショッカーはだからなんだ?とでも言わんばかりに相変わらずこちらを挑発してくる。負けん気が強い性分なのか、それともペースをこちらに握られないための強がりか知らないが図太い奴である。

そして、既にスーツも機能停止に追い込まれて本人は無事だが既に戦力にはならないであろうアレクセイに声を掛ける。

 

「テメェは邪魔だ、どいてろ」

 

「おい、その言い方はねーだろ」

 

「ハマハマひどいデス!」

 

「ねねっ!」

 

あまりにも必死に戦った仲間にかけるにしてはかなりドライな物言いだ。現に2人と1匹からの反感を買っている。だが、この2人の関係性は初対面時の険悪な関係からある程度は修復されてはいるが出会ったのも最近であくまでビジネスライクな付き合いなためエレンと薫やねねのような強い絆は無い。

 

だが、一応仕事仲間としてある程度の連帯感の上で信用しており、口が悪く素直じゃ無いが戦闘に巻き込まれ無い場所にいるように気を遣っていることはアレクセイも何となく理解できる位の関係性にはなっているため、後を託して言われた通り一旦下がって彼らの様子を見守る事にした。

 

「ふっ……いや、それでこそお前だ。頼むぞ」

 

「たりめーだボケ」

 

「まだやるんですかハマハマ」

 

アレクセイがせっせと引っ込むと息も絶え絶えで足元が覚束ないが何とか薫の横に来るまでには回復したエレンがショッカーに向けて越前康継を構えると彼はさも当然かのように右拳を左の掌に軽く打ち込み言葉を返す。

 

「あぁ、給料分はキッチリ仕事しねぇとな。大体やられっ放しは性に合わねぇし後は何より……負けらんねえ理由なら俺にもあんだよ」

 

「何だよそれは?」

 

「大したことじゃねぇ………言えることがあるとすりゃあ」

 

「「ごくり……」」

 

「はぁ………」

 

ショッカーの珍しく真剣な声色に一同が息を呑むがエレンはもう前回対峙した際にショッカーが真剣な雰囲気を醸し出すと大体何を言い出すのか分かって来たため呆れ半分で彼の言葉を聞く姿勢に入っている。

それと同時にショッカーは両者にビシィッ!という効果音がしそうな程スタイリッシュに人差し指を立てると意気揚々と語り始めた。

 

「テメェらをぶっ飛ばしたボーナスとショッカーのテストパイロット代で大量の報酬金が手に入りゃあ全国店舗からスクリューボールのCD&DVDを年間単位で買い占められる!そして買い占めた次の曲のセンター投票券を全て推しにぶっ込んでセンターにする!そしてそしてそしてぇ!次の8月リリースのスクリューボール新曲のテーマは夏!海!つまり衣装は水着!次の曲で推しがセンターになれば、可憐な水着に身を包んだ拙者の推しのりるるんのスクリーンタイムが自然と長くなって拙者は長時間推しの水着を堪能することが出来る!いやぁこれは外せませんねぇ……っ!普段のフリフリ衣装とは一風変わって普段はそのベールに包まれた蕾から花が開きそうな成長期の肢体を水着という布1枚の神聖領域へと解き放たれ、水着写真集とは違う表情を見せてくれるであろう推しが踊って動くMVにはもう期待しかないであります!ウヘヘ…それだけではありませぬ!更にぃ!拙者が毎月CDを買い占め続けることでオリコンチャート月刊一位を連続でキープし続け、最終的には日本を代表するアーティストの祭典である紅白歌合戦に推しを出場させることがなによりの目標なんであります!」

 

「「「………………」」」

 

 

………シーンという静寂が会場中を包み込み、誰も言葉を発せない状態になっている。

ショッカーの普段のチンピラのような口調から徐々にオタクとしてのスイッチが入ったことで段々饒舌になって行き、オタク特有の早口による勢いに押されてしまった薫とねねは目を点にしながらポカーンとしながら口を半開きにして唖然としていたがエレンは前回で耐性が付いたのか気圧されつつも言いたいことは理解できた。

 

「おい、コイツの言ってる事理解できたか………?」

 

「ねぇ…………」

 

「ま、まぁ少しは………」

 

要は推しがセンターの水着衣装MVが見たくて、自分が大量に課金する事でCDの売り上げを底上げして推しグループを紅白に出場させたいという事だろう。

呆気に取られていたが以前装着者達の情報を振り返っていた際に中の人であるハーマンは美濃関周辺の銀行で強盗を行なったことで懲役は確定であろうことを思い出した薫はショッカーに気になったことを問い掛ける。

 

「つーかお前はどう考えても懲役確定だろ?イベ行けなくね?何もここまでするこたないんじゃねーの?」

 

薫の素朴な質問に対してショッカーはあっけらかんと答え始める。

確かにショッカーは管理局の局長である紫の権限でショッカーの試験運用にテストパイロットとして協力するという名目で一時的に釈放されており仕事が終わればそのまま留置場に戻ることになる。

おまけに懲役もほぼ確定であるため今後のライブやイベントにも裁判や服役期間によって参加出来ないため薫はショッカーのイベントに行けない割には前向きな発言には違和感を覚えた。

 

その上ショッカーは発言を聞く限り管理局に対して特にこれと言った大義も忠義もない。まぁ、元々部外者でありテストパイロットとして雇われている一時的な金の関係でしかないため大義や思い入れを抱けという方がおかしな話しではあるのだが。

 

当然ショッカーの方も今回参加している行動原理はスパイダーマンへの仕返しと協力すれば大金が貰える上に金を貰う以上は仕事はこなすという損得勘定で動いているのが大半ではある。

だが、基本的に自分の事を優先しているショッカーが数少ない他人のために行動出来ることがあり、なんとしても譲れない意地が彼を突き動かす。

 

「まぁ、確かに俺は懲役確定でこの任務が終わりゃあムショに戻る。ライブとイベ全通はオタクの義務だしおまいつじゃなくなんのはつれぇ。何より握手会で推しに会えねぇのはまるで年に一度しか会えねぇ織姫と彦星みてーな気分だが行けねぇ以上はしゃーねぇ……だがぁっ!課金!献上!奉仕!例えイベに行けなくても公式に貢献するのはオタクの務めなんだよぉ!」

 

アイドルが歌やパフォーマンスでファンの心を支えるようにファンも課金や応援で公式に貢献してアイドルを支える。

例えイベントに行けなくともその心は一つ。ショッカーも懲役が確定していてしばらくイベントには参加出来ないが暴力事件でボクシング界から追放されて後悔はしていないがしばらく不貞腐れていた際にたまたま日本のアイドル文化をネットで見つけた際、彼の中に中に衝撃が走った。

 

日本で活動するアイドルグループスクリューボールのライブを観て以降初見でそのグループに所属する10代程の1人のアイドルにハートを撃ち抜かれてしまって以降ドハマりし、より深く歌詞や言葉の意味を理解するために日本語を半年で覚えた程の入れ込みようから、この強固なスタンスはファンとしての意識自体は無駄に高いことは窺える。

 

ショッカーの熱弁に対し、彼の人柄をおおよそ理解して来たエレンと薫はため息は尽きつつも無駄にファン意識だけは高いことは理解出来た。もちろん行動や言動が褒められるものかは別問題ではあるが………。

 

「oh……ハマハマって良くも悪くも純粋なんデスネ……変な方向に振り切れてマスケド」

 

「微妙にズレてるのにファンとしてはそこまで間違って無いように聞こえるのが性質ワリィ……」

 

「ねんね………」

 

そんな彼女達の様子など気にせず改めて自分の戦う理由を再確認したショッカーの気合いは充分。肩甲骨を外回しに回した後、流れるように右拳を掌に軽く打ち込んで両者を睨み付ける。

 

「さぁて、無駄話は終わりだ。さっさと俺のオタ活資金になりやがれ!」

 

ショッカーが再度振動波を起動して両者に向けて構えると先程の戦闘で写シが剥がされていたエレンは再度貼り直し、薫と一瞬だけアイコンタクトを取ると左右に分かれることで前方に向けて放たれた咆哮のような振動波を回避すると行き場を失った振動波は後方にある会場の建造物に当たることで円形の痕が残っていることが威力を物語っている。

 

 

「うぐっ…!はあああああ!」

(はぁ……っ、はぁ……妙に息が……さっきの戦闘での疲労が来てマスカ……ですがショッカーの障壁は見た感じ前にしか展開出来ないように見えマス。多方面からの攻撃には弱い筈デス!)

 

エレンがいつも通り薫が動きやすいように前衛に切り替わってショッカーを足止めに入る。ライノとの戦闘での影響は残っているが先程のやり取りの間にいくらか回復はした。しかし、額が切れた事による出血の余波と疲労もあってか呼吸はいつもより荒い気はする。

だが、瞬間的にショッカーを足止め出来れば問題ない。ショッカーの防御壁は厄介だが対荒魂戦での時間稼ぎとして正面からの衝突を防げれば万々歳であるため毎回前方にのみ展開していることは前回の戦闘、先程薫の一撃を防いだ際に確認したため多方面からの攻撃でペースを崩すことにした。

 

「チッ、チョロチョロうぜぇんだよ!」

 

「うおっ!」

 

「危なっ!」

 

薫の邪魔にならない角度に回り込みながら上段からの袈裟斬りをショッカーに向けて振り下ろす。しかし、ショッカーは相手が2人に増えたことによりこちらの防御への対策として多方面からのツーマンセルで攻めて来る事を直感で察知すると振動波を起動させつつ、袈裟斬りを軽く跳躍しながら回避し、一回転して回転を利用する事で全く異なる角度にいる2人に振動波を飛ばして来る。

 

「まずはテメェから潰してやらぁ!」

 

「やはり弱ってる方から狙いマスカ」

 

「ちげぇな、厄介だからだよ!」

 

回転を利用する事で当てにくい角度から攻めて来た2人を怯ませると疲労で多少弱っている上に金剛身によるタンク戦法で足止めをして来る強力な前衛エレンに狙いを定め、左手のガントレットから放たれる振動波による加速をしながら

拳を振りかぶって叩き付けようとする。

 

「させっかよ!」

 

「そう来たか、だが甘ぇんだよ!」

 

それを阻止するために掌を前方に突き出してリパルサー・レイを放って牽制するが空いている方のガントレットの振動波を小さく起動する事で薫の方向を見ずに振動波をチャージする状態にしてリパルサー・レイを振動波で防ぎつつ一気に薫の方へと放つ。それと同時に加速を加えてエレンに拳を叩き付ける。

 

「なんだよそりゃぁ、ぐっ!」

 

そして、薫はカウンターのように返された振動波の直撃を回避し切れずに直撃して数十メートルは飛ばされて行き、敷地内の壁を突き破って外に放り出され、森林の木々を薙ぎ倒し、その後は地面を転がって行く。

 

「うあっ!」

 

「薫!」

 

「他人の心配してる場合かオラァ!」

 

金剛身を発動して腕でショッカーの攻撃を防ぐとショッカーがその上で跳ねた後に地面に着地してダッシュでこちらに接近して来る。

それを目が捉えると越前康継を右手に持ち替えて金剛身を発動させる的確なタイミングを慎重に見極めて行く。金剛身の時間制限の弱点は既にバレているため、前回のようにフェイントでタイミングをズラされることも考慮しなければならないからだ。

 

「がっ……!何で!?」

 

……だが、エレンがショッカーの攻撃を読むより先にショッカーの拳は腹部に命中していた。

 

「逃すかよ!」

 

ショッカーがそのままガントレットを起動して零距離で振動波を放って来そうであったため、迅移で加速して距離を取ろうとするが加速するよりも前にショッカーはすぐさま拳を引いてエレンの足に自分の左脚を引っ掛けると思い切り脚を横に振る事で脚払いをしてバランスを崩す。

 

「what's!?」

 

そのフラついた瞬間にショッカーは振動波を起動して拳を振りかぶって来る。

咄嗟に越前康継を振る事で防ぐが姿勢が安定しない状態であったため、押されてしまう。そして、その最中で何発か金剛身の発動よりも前に拳が命中しただけでなく切れたタイミングの際にも被弾してしまった。

 

(こっちのタイミングが読まれてマス!?)

 

写シを貼っていながらも拳が命中した場所がビリビリと痛む。ショッカーの拳はまるでエレンの金剛身の発動タイミングを完全に読んでいるかの如く徐々にだが確実にダメージを与えて来ている。

そんなエレンの様子を知ったか否や、ショッカーは彼女が疑問に思っていそうなことを、思っていなかったとしても答える。これでも身内や気に入った相手には割と甘い部分があるらしい。

 

「なんでテメェのオカルトパワーを使うときのタイミングが読まれてるかって思ってそうだな。ゴリラをぶっ倒してボロボロな今でも粘ってるテメェに免じて特別に教えてやるよ」

 

「教えちゃっていいんデスカハマハマ?」

 

「あぁ、これでも俺はテメェらみたく国に喧嘩売るなんて勝ち目のねぇ試合でも全力で来るおもしれぇバカは嫌いじゃねぇからな。ま、単純な話テメェのオカルトパワーは短時間だが防御面じゃ強力だ。テメェら同士の戦いじゃあ相手のタイミングに合わせて発動すりゃ相手の体力を無駄打ちさせつつ反撃に繋げられるって所か?」

 

ショッカーは伊豆での戦闘、そして今夜の戦闘での経験を踏まえて対刀使戦ではエレンと薫としか戦ってはいないが大方刀使の使う能力の特徴を理解して来たようだ。

一応事前に能力についての資料は渡されているがライノはマニュアルを読み込んでから挑むタイプである反面、ショッカーはざっくり見た後は実戦で慣らすタイプでありその方が入り安いというだけの話ではある。

 

「見た感じテメェらの能力は速くなるオカルトパワーが一番燃費が悪くてその次がチビが使う怪力、でもってテメェの得意な硬くなるオカルトパワーが一番燃費はいいみてぇだと理解した。現にテメェがチビ以上にアレだけ食らってんのにまだ動ける辺り、そんなとこだろ?」

(まぁ、チビの場合はあんまし体力がねぇってのはありそうだけどな)

 

「…………」

 

この問いに対する沈黙は肯定と受け取っても良いだろう。

ショッカーは実際にエレンや薫と戦っている最中自分が感じ取ったことが概ね当たりだったことに達成感を感じつつも続ける。これだけでは何故エレンの金剛身のタイミングを読めるかの説明にはならないからだ。

 

「だが、その発動時間も無限じゃねぇ。おまけに防御と同時に殴り返して来ねえ所を見るに硬直してんじゃねえか?そして何より、テメェが生きてる人間である以上ごまかせねぇ綻びがある。それは呼吸や瞬き、微かな表情の変化だ」

 

「………っ!?そう来マシタカ」

 

「ボクシングってのは相手とサシで向き合って殴り合いながら相手のクセやプレースタイルを観察してそれを潰し合う競技だからな。常に相手の眼の動き、攻め込む時の呼吸の強弱を見抜いて攻める。俺はそれらのことからテメェらと闘り合ってく内にテメェらの能力の燃費の違いとテメェが硬くなるオカルトパワーを使う時のクセや呼吸の仕方でオカルトパワーの効果時間と発動までのタイミングを覚えた。後は、音ゲーみたくタイミングよくオカルトパワーに守られてねぇ時のテメェをぶっ叩きゃ良いってこった」

 

ショッカーは開いた状態の右拳を眼前に掲げて初めに人差し指中指、薬指、次に小指、最後に親指を内側に畳んで握る、所謂スクライド握りをしてマスクの下でドヤ顔を決めながら言ってのける。

 

「俺、これでも大達とDDRとデレステは結構得意だぜ?」

 

その自信に満ちた発言は「今からテメェをフルコンする」という宣言として捉えて良いだろう。

そして、先程の話からショッカーはエレンのクセを見切っていることから真実味を帯びている。まるで自分の技をゲーム感覚で攻略されるというのはいかんせん複雑な気持ちになるがもし、本当にやってのけるというのなら非常に厄介である。

 

「oh………音ゲー感覚で攻略しないでくだサイ」

 

「ハッ!何事も自分に合うやり方に乗っ取るのはたりめーだろうが!さぁ、始めるドン!」

 

ショッカーは言うや否や振動波で加速して眼前に接近するとガントレットに振動波を纏わせて拳を振るって来る。

防御のタイミングが読まれているのなら、まずは越前康継を振るって応戦することで相手の隙を見つけ出そうとする。

 

だが、振動波を纏ったショッカーの拳と越前康継がぶつかると掌には強い衝撃が伝わって来る。だが、それでも前進しながら切り返してこちらも攻め込むがショッカーは的確に拳をぶつけることで弾き、防いで行く。

 

水平に振るった横一閃と裏拳による一撃が激突するとエレンの腕力が微かに力負けして姿勢を崩し、その隙にショッカーの右拳がエレンに向けて放たれている。

 

まずい。と思ったが仮にこちらのタイミングを読まれているのならば思考パターンやタイミングを変え、極力金剛身を発動させる際にやっている行動の粗を減らして金剛身を発動させる。

だが、ショッカーはそのエレンの防御の粗を減らしてタイミングを変えた防御すら見切っているのか拳を寸前の所で止め、おとりの右拳によるストレートから左手のボディブローに切り替えて金剛身が切れた瞬間、的確に腹部に拳を命中させて来た。

 

「ぐっ………!」

 

「オラァ!」

 

腹部から全身に広がる衝撃に耐えつつ、こちらの格闘が当たるリーチに入っているため膝蹴りで追撃するがショッカーはそれを振動波を纏って防御壁に変換して防ぐとすかさず連続で腹部にボディブローを的確に当てる。

そしてフラついた際に肩や腕に向けてジャブを当てることで彼女の写シによる防御箇所を剥がして行く。

 

「このままではフルコンされマス!」

 

ショッカーがエレンの金剛身の防御を発動するタイミングや効果時間などを考慮して思考パターンを変えた防御すらもクセや呼吸法、自分が相手ならどうするかを先読みして拳を的確に当てて来る様はまるで音ゲーで譜面を的確に叩いているコンボ状態と言って良いだろう。

そして、完全に自分が得意なインファイトの距離に入り、その上でエンジンの掛かったショッカーは気合いの入った掛け声と共に激しい拳の連打を高速で叩き込む。

 

「オラオラオラァ!ぶっ飛べぇ!」

 

ゲーム画面ならばhitやperfect、良という小気味の良いエフェクトに画面中が埋め尽くされているであろうショッカーのラッシュは一寸の狂いもなくエレンの防御の隙を掻い潜り会心の一撃を彼女の全身に叩き込むと最後に両腕を交差してガードしようとした彼女の腕に振動波を纏った一撃を叩き込む。

 

「ぐあっ……!」

 

ショッカーのストレートをガードしたがほぼ藁の盾にも等しく、直撃してしまい全身に衝撃が伝わり写シを完全に剥がしてしまいそのまま殴り飛ばされ、地面を転がって行き手元から越前康継を手放してしまう。

 

「うう……」

 

意識はまだ残っているがライノとショッカーによる連戦が祟ってか苦しそうにうつ伏せで這いつくばり、それでも必死に越前康継に手を伸ばすが身体が動かせず戦闘不能状態に追い込まれてしまった。

 

「よっしゃあ!フルコンボだドン!」

 

ショッカーがデータカードダスやパック開封でレアカードを引き当てた小学生男子のように右拳を握って天高々と突き上げその場で飛び上がって数回跳ねると渾身のガッツポーズを決める。余程前回敗北を喫したエレンを撃破した事に達成感を感じたのか勝利の雄叫びを上げる。

一足遅れてショッカーの攻撃から戻って来た薫はショッカーがエレンを撃破したことを察するとまたしても相棒を良いようにやられたことによるフラストレーションが爆発し、ショッカーに向けて怒りを向けながら跳躍し、思い切り袮々切丸を振りかぶろうとしていた。

 

「エレン!またしてもやりやがったな……っ!」

 

エレンを無力化したことに達成感を感じて調子に乗っていたショッカーはすぐ様気持ちを切り替えて薫が走って来る音が聞こえる方向に目を向ける。

今は試合中だ、一瞬の気の緩みが相手にペースを掴まれてしまう。それと同時に状況の把握を始める。

 

薫の怪力による一撃はショッカーの防御でも何度も防ぐのはかなり困難。だが、それと同時にスーツの機能であるリパルサーで補助されているとは言えスピードは無いという事は理解している。ならばその防御がガラ空きになる瞬間を狙っていたかのように行動に移す。

 

エレンを全力で倒した後で隙だらけのフリをして相手がこちらを倒す為に防御をかなぐり捨てた攻撃を放つ為に生じる僅かな隙をボクシングで培った直感で感じ取り怯んだ姿勢から振動波で自分ごと飛ばすことで一瞬で薫の眼前に接近する。

 

「………おっせーよ」

 

ガントレットを起動して振動波を放つことで思い切り自分を飛ばしている為、手はフリーになっていない物のその勢いを利用した飛び蹴りを薫の鳩尾にめり込ませる。そしてこの時ちゃっかり近過ぎて祢々切丸の刀身では捉えられない距離に入っていたりする。

拳による一撃に比べればかなり貧弱な威力だが最低でも30t以上はあるだろう。写シを貼ってはいる上にS装備の装甲に守られているとは言え鳩尾にそれだけの衝撃が走っていることに眼を点にしながら驚愕する。

 

「なっ!?」

 

「どんだけテメェのパワーがすごかろうが当たらなけりゃどうってこたねんだよ!」

 

ショッカーが至った結論は至極単純ではあるが、攻撃の威力がいくら高かろうが当てることが出来なければ無意味。

おまけに薫はどちらかと言えば対人戦よりかは対大型荒魂戦向きのスタイルであるため相手の的が相当大きいか自分よりも遅い相手でも無ければ集団戦またはコンビネーションが前提となって来る。

だが、今はそのコンビネーションを活かせない状況であるため奇策やスーツの機能を用いてショッカーを追い詰めていたのだがやはり相手と正面から向かい合い、読み合いや駆け引きが重要になって来る対人格闘の元世界チャンピオンであるためか呑み込みは速く、単純ではあるがすぐに戦闘方を組み立てた。

 

おまけに蹴りが鳩尾に命中する距離まで一気に接近されたという事は完全に相手の得意な間合いに入られてしまい、尚且つ祢々切丸を振れない距離だと言うことだ。ここでは相手の攻撃の出が圧倒的に速くなってしまう。

 

「更に言やぁテメェに攻撃させなきゃいいってこったろ」

 

「なんつー極論だよ……っ!ぐっ!」

 

ショッカーは早速有言実行とばかりに蹴りの衝撃に怯んでいる薫の背中に向けて、肘を強く叩き付けるエルボーをお見舞いする。

そして、地面に着地した瞬間からガントレットのスイッチを入れて振動波を纏い、反撃の隙を与えない猛攻撃を仕掛ける。

相手との身長差が50cm以上あるためパンチが絶妙に当てにくいのが難ではあるが先程エレンにお見舞いしていた時と同じように自分に気合を入れるための雄叫びをあげながら力強い拳を繰り出す。

 

「ちっ!無駄に身長差あるから地味に当てにくいな」

 

「チビって言うなお前!」

 

咄嗟に祢々切丸を両手で構えて盾にする事でショッカーの放って来る連打を、トニーの手による改造が施されているS装備のHUDの機能による攻撃の軌道予測と強化された知覚と自前の怪力によってその場凌ぎで何とか防いで行くがこちらが攻めに転じる隙を与えないかの如く凄まじい攻めに防戦一方になって行く。

 

「まだまだ行くぜぇ!」

 

「うおっ!」

 

なんとか距離を取ろうと迅移を発動して後方に下がるものの、ショッカーは薫の視線の微かな動きから移動する方向を先読みして移動する直前にガントレットをその方向に向けて振動波を放つ。

加速して移動した薫であったが自分が移動した場所に的確に振動波が飛んで来た為すぐ様掌のリパルサーで強引に移動したがショッカーは既に追い付きて来ており、移動と同時に回し蹴りを顔面にお見舞いして脚が頬を捉える。

 

「ぐあっ!」

 

「薫!」

 

前回の伊豆の山中での戦闘で、スパイダーマンとエレンが行ったウェブグレネードのように派手な攻撃で相手に回避行動を取らせ、相手が回避する方向に先回りして回し蹴りを入れるという戦法でダメージを入れられた経験からその戦法を猿真似して自分でも実行に移して見せた。

 

ショッカーの回し蹴りで顔及び頭部に衝撃を受けたことで怯んだ薫に対し、ショッカーは攻撃の手を休めずに追撃する。彼女らには何の恨みもないがどんな敵対者であろうと全力で相手をするというポリシーとこちらも金の掛かっている仕事である為確実に潰しに掛かっている。

エレンもうつ伏せになりながらも相棒にショッカーの蹴りがクリーンヒットした様はショッキングなようで、助けに入ろうにも身体が動かせないもどかしさと焦燥感は彼女を心を焦がしていく。

 

そして、ショッカーはガントレットのスイッチを入れてガントレットを起動させると両腕に振動波を纏う。そしてすかさず薫の腹部に思い切り下から拳を叩き込む。

 

「うおっ!」(何だよコイツのパンチ!?ゴリラ程じゃねぇけど死ぬ程痛ぇ……っ!)

 

ショッカーの振動波を纏った拳は振動波非展開時の素殴り以上のダメージが全身に伝わり、装備による身体強化でいくらか軽減出来ているとは言えかなりのダメージは入る。

そして、そのまま薫を宙に軽く浮かせると再度振動波を纏って拳を彼女に向けて叩き込む。

 

「ウオラァッ!」

 

今度はスーツに守られている肩のアーマーの部分に命中した。そしてライノの攻撃を直に受けていたという部分もあるがスーツの装甲がかなり歪んだ後に砕けた事からその威力を物語っている。

 

「エンジンの掛かった俺の勢いは止まらねぇぜ!」

 

そのまま薫は勢いに乗って殴り飛ばされるが、ショッカーの勢いは止まらない。振動波による加速ですぐ様飛ばされている薫に追い付き再度拳を叩き付けて追撃、更に飛ばされる速度に追い付いて追撃を繰り返す。

 

「やべぇっ!祭壇に行く前にスーツが壊れちまう……っ!」

 

「ぶっ飛べオラァ!」

 

完全にショッカーの気迫とペースに呑まれてしまい、防御に綻びが生じた事で

彼女の身を守っていたスーツは既にボロボロ。既にパワードスーツとしての機能を果たしていないであろうただのガラクタと化していた。

ショッカーの執拗な連撃によりとうとう写シを剥がされて生身となった彼女に対し、ショッカーの拳が完全に迫って来ていた。

 

「うおああああ!だぁ!」

 

ゴキャ!

 

「チッ!逸らして軽減しやがったか!」

 

この一撃を何とかしないと負ける。そう思った薫は咄嗟に八幡力を発動させる事でショッカーの拳に対して掌を翳し力業で思い切り軌道を逸らす事にした。

だが、振動波を纏った拳と直接激突したため、右手を通して身体中に響き渡る衝撃を受け、右肩の関節部分から鳴ってはいけない音が聞こえた。

 

ショッカーも薫の怪力によって勢いを殺された上で軌道を逸らされたため、思い切り勢いが行き場を失って少し体勢を崩した状態で着地した。

 

「ぐっ………やべ……今ので肩が逝った……」

 

「薫!」(マズいデス……何とか……何とかしないと……っ!)

 

「ねね!」

 

「さーて、そろそろ終わりにすっかー」

 

ショッカーの拳を何とか逸らしたとは言え、生身で受けてしまったためか薫の右肩は完全に脱臼してしまい右腕に力が入らずブラリと降ろした状態になってしまったため左手に持ち替えてショッカーを睨み付けるが彼女の方がダメージが大きい事は明白だ。

その上でショッカーは拳をポキポキと鳴らしながら片手で袮々切丸を持つのが精一杯の薫に対し、ジリジリとにじり寄って行く。元々高身長なのもあるが今の彼女達からすればずっと強大な敵のように感じられる。

 

エレンの方も先程から身体を動かそうと身体に鞭を打っているが、何とか肘を使って前進するのが精一杯だ。今なおトドメを刺されそうな相棒に向けて手を伸ばすがショッカーに何度も殴り飛ばされたせいでかなり距離が空いてしまっている。彼女を助けに入ることはかなり難しいだろう。

もし、ここで自分たちがショッカーを流してしまえば先行した皆に負担をかけ、下手を打てば全てが水泡と帰す。なんとかしなければと思ってはいるが身体は言うことを聞いてくれない。

 

ショッカーが一度息を深く吸うと大地を思い切り強く蹴り、薫にトドメを刺すために加速して思い切り拳を振りかぶっている姿が目に入った。薫の方も片腕であるが袮々切丸を構えて一歩も引かずに対峙している。

だが、このままではダメだ。スーツも完全に壊れてリパルサーやユニビームで助けにも入れない。どうする?どうすればいい?この刹那の間に様々な方法を思い付くが今の自分では不可能な事が多い。

だが、考えろ。自分が相手ならどうする?相手は何のためにここまでする?相手が今やられたら最も困る事は何だ?……

 

(………一か八かの賭けデスガ。ハマハマが一貫して言っているアレ、一瞬でも彼の隙を作る事が出来れば……ハマハマには管理局に対して何の大義も思い入れもない見たいデスがこれだけは貫いてマス。絶対に反応シマス……いや、反応してくれなけりゃ困りマス……っ!)

 

思考を巡らせていると1つ、ショッカーが常に一貫して言っていた事があったと思い至った。毎回毎回スマートとは言い難い背水の陣を敷くなと自分たちの状況を悲観しながらも大きく吸って薫に殴り掛かっているショッカーに向けて最大の博打を打つ。

 

「きええええええええええええい!」

 

「うおりゃあああああああああああ「あー!スクリューボールがゲリラライブデス!」

 

薫の横一閃を袮々切の上に乗って踏み台にして回避し、そのまま薫に拳を叩き込もうとし、薫は敗北を覚悟して目を瞑ったが会場中にエレンの腹からの声が響き渡る。

あまりにも大きな声であったため、薫とねねは驚いてビクッとしてそちらを向いたがショッカーだけは爆速で異なるリアクションを取っていた。

 

「え゛ー!?どこどこー!?何処でありますかー!?って今スクリューボールは北海道で歌番組に生出演中だぞこんな所に来る訳ねぇだろゴルァ!」

 

ショッカーはスーツのヘルメットを被っているにも関わらず目を♡にしながら周囲をキョロキョロと見渡し始め、オタク特有の過剰反応を起こしていた。

だが、周囲を見渡しても自分の推しグループはおらず余程ショックだったのかすぐ様素に戻って嘘を付いたエレンに暴言を吐くが充分過ぎるくらい大きな隙を作った。

 

「今です薫ー!」

 

「な、何だか知らねぇがナイス!……きえええええええええええい!」

 

このチャンスを逃すまいと薫は即座に八幡力を発動して、右肩の痛みに耐えながら袮々切丸をショッカーに叩き付ける。

 

「あ゛?ってのわあああああああああああ!」

 

呆気に取られていたショッカーでは薫の一撃に反応し切れずに防御壁を展開するもワンテンポ遅れてしまい、直撃と同時にクルクルとギャグみたいな回転をしながら壁に激突する。

 

「ビターン!」

 

漫画ならでは効果音を断末魔にしながら壁に人型の穴を作って、そのまま地に落ちる。

それと同時にスーツが装着者を守るために強制的に装着を解除したため、生身となってほぼ無力化されたと言ってもいいハーマンの姿が露になり、目を渦巻き状にしながら回している。

 

「勝った……のか?随分呆気ねぇのは釈然としねぇけど」

 

「やりましたネ薫ー!」

 

「ねねー!」

 

既に装着も解除されたハーマンを横目に見て、勝利はしつつもこんな倒し方で良いのか?と思いつつも何とか切り抜けたことは事実であるため安堵していると何とか身体を動かせるようになったエレンが薫に抱き付き、ねねは頭の上に乗っかって労う。

 

「待てやゴラ、俺はまだ負けてねーぞ」

 

「よせ、俺たちの負け。そして彼女達の勝ちだ」

 

しかし、そんな余韻をぶち壊すかの如く装着が解除されていてもまだ動く事は出来る。そして拳を構えて走り出そうとするが腕を何かに掴まれ、動きが止まる。振り返ると避難していたアレクセイがハーマンの腕を掴んで静止しさせている。

確かにスーツを来てようやく彼女達と戦える自分たちの武器であるスーツが壊れて装着解除になっている以上勝ち目はない。アレクセイは潔く負けを認めてハーマンを諫める。

 

「チッ……わーたっよ。あーあ、マジであんな凡ミスしなきゃ勝てたのによー」

 

「だが、ナイスファイトだったぞ」

 

「う、うっせ。ま、テメーもよくやったと思うぜゴリラ」

 

「おいおい野郎のツンデレとか誰得だよ」

 

「シッ!行けまセン」

 

「ね!」

 

状況を鑑みるに単なる強がりであることは認めており、アレクセイの言葉を素直に聞き、互いを称賛する。素直じゃないながらも何だかんだ互いを認めているハーマンとアレクセイのやり取りを見て少しほっこりしているとハーマンとアレクセイは2人と1匹に向けて声を掛ける。

 

「ったく、しゃーねぇ。オラ、勝ったのはテメェらだ。俺は疲れたからここで少しふて寝すっからさっさと行け。俺の睡眠を邪魔すんじゃねーぞ」

 

「連れを起こさないでやってくれ、死ぬ程疲れている」

 

ハーマンはそっぽ向いて横になって寝転がって自分たちに勝利した彼らを見逃すであろう姿勢を見せ、アレクセイはそのまま彼らを見送る事にしている?そんな2人に対し、先を急がねばならない2人と1匹は祭壇の方に目を向ける。

 

「おーおー好きなだけ寝てろ。ったく、アイツらが倒してくれてりゃあ楽なんだけどな」

 

「装備は完全に壊れてしまいマシタ……どうシマス?」

 

「おまけに身体はボロボロ、行った所で大した戦力にもなれん。この場でもう一眠りと、行きてえが……推しが一緒に戦ってくれてんのに寝てるだけっての

はカッコつかねぇ」

 

お互いの状況を確認するエレンと薫。既に満身創痍という言葉すら生ぬるい状態になっており戦闘に参戦するにせよ後一回が限界のはずだ。だが、それでも彼女達は俯かない。そんな自分たちの意志と目的を強く持ち、なすべきことに対して全力で取り組む姿がアレクセイには眩しく見えたため、一つだけ問いかける。

 

「やはり、どうしても局長殿と戦うのか?君たちは君たちの意思で」

 

「あぁ、俺たちは世間から見りゃあ害悪なテロリストかも知れねぇ。けど、アイツを止めないと大変な事になる。俺たちは俺たちの意思で最悪の結末を回避するために戦う事を選んでここに来てんだ」

 

「そうか………」

 

自分は状況に流され、紫のことも朱音の言葉も完全には信じ切れてはいないまま参戦していたが彼女達はどんな立場になろうとも自分の意志で自分の目的に向けて邁進して行く。だからこそ強いのだと再確認させられた。

 

「そういうと思ってマシタ!じゃ、行きマショ!」

 

「っ!つっても肩脱臼しちまったのはいてぇな」

 

しかし、やはり2人ともライノとショッカーから受けたダメージはかなり深刻なようであり、先程からショッカーの拳を受けて関節が外れた肩がズキズキと痛む。これではまともに袮々切丸を振ることすら困難かも知れない。

しかし、エレンはノープロブレムとでも言わんばかりにサムズアップして意気揚々と語り出す。

 

「安心してくだサイ!その位ならすぐ治せマス!私に任せてくだサイ」

 

「お、おい何する気だ?」

 

しかし、医療機器も無く医師免許を持っている訳でもないエレンがそのような事を言い出したため、薫は若干顔を青ざめさせながら問いかけると満面の笑みで返し来る。

 

「ねねっ……!?」

 

「ちょーっと痛いデスが、我慢してくだサイネ!」

 

右拳を左の掌で包みながら指をポキポキと鳴らしながら薫に近付いて行く。どうやら力付くで関節を元の位置に無理矢理戻すつもりらしい。

エレン自体伊豆山中でSTTと親衛隊に自ら拘束された際に、手錠を外すために自らの関節を外して直後に元の位置に戻すという離れ業をやってのけていたので脱臼位なら力付くで治せるようだ。

肩が外れた時のダメージすら想像を絶する物だったのに、再度元の位置に戻すとなるとそれと同等の激痛が走ることは容易に想像出来てしまい涙目になりながら後ずさって行く。

 

「い、いやちょっと待って!まだ心の準備が……っ!「問答無用!」あ゛ーっ!」

 

ゴキッ!

 

無理矢理肩を元の位置に戻す際のえげつない音が鳴るとそれに呼応して先程まで散々カッコよく決めていたのが嘘のように情け無い薫の絶叫が会場中に木霊する。

 

「うるっせぇ!寝れねぇからとっとと行けやボケェ!」

 

「………はぁ」

 

割とマジで眠たいのに近くで騒がれたことに腹を立ててキレるハーマンを他所に呆れつつも微笑ましいなと思っているアレクセイ達も知らない内に、今にも日本壊滅までのカウントダウンは着実に進んで行く。




次のスパイディ続編にストレンジ先生ついて来るとかパワーバランス大丈夫か?いやまぁ敵のエレクトロ実写化スパイディヴィランじゃ最強格ではあるでしょうけど……(逆に実写化最弱は多分金魚鉢かショッカーかアメスパゴブリン …?)
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