刀使ノ巫女 -蜘蛛に噛まれた少年と大いなる責任-   作:細切りポテト

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これで…良かったのだろうか…。とりま今回はジョーク多めです。

余談:PS4版のピーターの顔がトビーとガーフィールドとトムホの歴代ピーターの顔を合わせた顔だという話を聞いて「あっ…なるほど(語彙喪失)」ってなりました。



第7話 絶体絶命、そして

「ねえ、君らのご主人僕のことどうでも良さそうなんだけど命令も無しに行動して良いわけー?もしかして自分の仕事は考えて見つけろとかいうスパルタなの!?」

 

 

先程から静観を決め込み、既に逃亡した二人の時とは違い距離を取って様子見に徹している、何か長考しているように見える紫の本心が見えないため親衛隊の4人と戦闘をしながら呼び掛ける。

 

振り抜かれる刀を最低限の動きで紙一重で回避し、回避が不能な時は御刀を持つ手首に蹴りや手刀を入れて衝撃で手を痺れさせたり、糸を飛ばして牽制しつつ二人が逃げる時間を稼ぎながら脱出の機会を伺っていた。

 

「黙れ蜘蛛男、お前も紫様に危害を加えた奴の手助けをした上に僕たちに危害も加えたんだ。命令が出るまで逃がすものか」

 

「貴方確かヒーローで通ってらしたのにいいんですの?名誉を捨ててまで反逆者を助けるなんてもしかして惚れたのかしら?」

 

「仕事熱心で結構なことだね!じゃあ今度から地獄からの使者とでも名乗ろうかな!後別に惚れたとかじゃないよ、今あの娘に死なれると困るだけ!」

 

軽口を叩きつつ相手の集中を切らせようとするスパイダーマン。真希の一撃一撃が重く、力強い横振りを屈んで回避しつつ地面に手を付き、間近にいた夜見に足払いを入れてバランスを崩して転倒させる。

 

「…っ!」

 

「おっと」

 

転倒した夜見に糸を数発放って動きを封じたもの寿々花と結芽の攻撃が来たのを回避しきれず何度か肩に切り傷を負い傷口から少量の血が滴り落ちるが出血が止まり徐々に傷口が治っていく。

 

…………しかし、初めて御刀で斬られたが何故かこれまでの通常の刃物とは比べ物にならないダメージを受けたような痛みが走った。

 

(いった!何これ!?前にヤクザに脇差で斬られた時よりも何倍も痛いぞ!)

 

 

「ハハっ!おにーさん自分でこの娘を斬るなら僕を斬れって言ってたじゃん、忘れたのぉ?声震えてて超おもしろかったけど!」

 

「…」

 

中でも結芽から放たれる完成されていると言っても良いほど鋭い剣を避けるのは回避に徹しないと本当に避けられない。

足払いをした直後で回避に回す余力が無かった際に斬られて実感した。

 

 

「助けてアベンジャーズ…」

 

 

防戦一方に持ち込まれ思わず何となく頭に浮かんだ単語を呟くスパイダーマン。だが、スパイダーマンもただ追い込まれている訳ではない。

その状況下でも脱出の隙を作るために4人の戦力を観察しつつ誰から狙うのが崩しやすいかを分析していた。

 

 

(第一席獅堂さん、とにかく一撃一撃が力強い。下手に横に動きすぎると隙が出来てしまう…だが僕に蹴飛ばされたのが相当頭に来てるのか冷静に振る舞ってるけど振りが大振りになって来てる。崩すならここか…?)

 

(第二席此花さん、常に冷静だ。僕の糸を警戒して手首の動きを常に見て糸を放つタイミングを読もうとしてくる。その上真っ先にウェブシューターを狙って来てる…厄介だな。だが攻撃がウェブシューターに集中すればそれだけ狙いも絞れる。今は様子見だ)

 

(第三席皐月さん、ぶっちゃけ彼女が一番読めない。未知数過ぎる。取り敢えず彼女は動きを封じて警戒しつつ一旦は放置。)

 

(第四席燕さん、この子が一番ヤバい。速さ、鋭さ全てが完成されてる。スパイダーセンスでどこから来るか感覚を研ぎ澄ませて回避に専念しないと避けられない。

とにかく彼女相手は回避に専念だ。あー…こんだけ強いと絶対可奈美喜びそうだなー)

 

 

(よし、やるっきゃないか…っ!打開策が無いなら見つけ出す!無くても見つけ出す!)

 

思考を切り換え1つだけ思い付いた事があったため早速実験してみることにしたスパイダーマン。

猪突猛進に自分に攻撃を仕掛けてくる真希の方に向き直り、振り抜かれる剣の軌道を目で追いながら回避のルートを予測する。

 

「ねぇ一席さーん!僕のスーツが赤いからってさーそんな興奮して真っ直ぐ突っ込んで来ると危ないよー!闘牛じゃないんだからさー!」

 

「何だと!?」

 

「「プッ」」

 

真希の攻撃をバク転で回避しつつ、飛んだ瞬間にも空中で糸を放って牽制しつつ、牽制で放った糸に紛れてある方向にも糸を放つ。軽口のジョークで真希を挑発すると予想通り乗ってきた。

そして、闘牛という表現がツボにハマったのか結芽と寿々花が軽く吹き出している。

 

「このぉっ…!」

 

(よし、かかった!)

 

「お待ちなさい!!」

 

完全に頭に血が昇り、迅移で加速し物凄い勢いで突っ込んできて突きを放とうとしてくる真希。

しかし、寿々花が警告するももう遅い。着地したスパイダーマンに突きを当てる事に夢中になっていた真希は気付いていなかった…自分の腹部の高さに張られた一本の糸がある事に。

 

 

強烈な突きを繰り出し、切っ先がスパイダーマンの眼前まで来るが、スパイダーマンは動かない。まるで当たらない事が分かっているかのように。

そして、自分の正面に横一直線に張られた糸に腹部が激突して引っ掛り、突っ込んだ勢いで引っ張り強度が強くなりそのまま勢いを殺し切れずに押し込んだ反動が真希の方に伝わり、糸が形を変え、スパイダーマンがすかさず正面から力加減をしつつ鳩尾に蹴りを入れるとバネが伸縮したように後方へと弾き飛ばされる。

 

「馬鹿な!ぐっ!」

 

「よっと」

 

弾き飛ばされたのを確認すると再び飛んでいった方向に糸を飛ばすが、すかさずカバーに入った寿々花に御刀で迎撃される。しかし、同時にもう片方の空いている手から放った糸で手から薄緑を糸で奪取して引き寄せて手にとる。

御刀が無くなれば写シは張れなくなり、このままでは壁に激突する。

それを防ぐために後方に飛ばされた真希をなんとか糸から抜け出した夜見が迅移で加速して間一髪で受け止めるがあまりの勢いの強さにお互いに数メートル程転がってしまい柱に激突して頭を打ち両者共気を失ってしまう。

 

 

「ほら言わんこっちゃない、交通ルール習わなかった?赤は止まれってさ!…って聞いてないか」

(やべー…奇襲に成功して相手の精神を乱せたからなんとかなったけど、次はこうは行かないな…)

 

 

真希から奪取して右手で持っていた御刀薄緑を軽く空中に投げて後ろ向きで左手でキャッチするスパイダーマン。

だが内心では一か八かの賭けが成功して安堵していた。

この方法が成功したのは奇襲により真希の精神に揺さぶりをかける事に成功し、挑発に乗ったからこそ成功したのであり、もし万全の状態であったのならこうは行かず普通に失敗しているだろう。

 

「アハハっ!やっぱおもしろいねおにーさん!」

 

「ソイヤッ!」

 

直後後ろから迫って来ていた結芽の一撃をスパイダーセンスで感じ取り左手で薄緑を横凪に振る事で攻撃を防ぎお互いに弾いたものの速度重視で片腕で振った剣では力負けして、少し後ろへと仰け反ってしまう。

 

そのふらついた瞬間に反対方向からスパイダーセンスが発動し恐らく後ろから斬られると予測し、前方の結芽から視線を外さず、後ろを見ずに右手だけを左の脇の下から通して後ろに向け、ノールックショットで弾丸状のクモ糸を発射する。

 

「その手は読めていますわよ!」

 

(じゃあ…これはどうかな!)

 

やはり反対側から来ていた寿々花は手首の動きを見ており、本当はスパイダーマンの視線も確認しつつ発射角を見てから回避したかったが、視線は確認できないため、やむを得ず発射角から糸が飛んでくる位置を読み横に動くことで回避をした。

 

そのまま背後からスパイダーマンを斬りつければ勝利となる。

 

寿々花の振り下ろした一撃が肩口から入りスパイダーマンを切り裂く…筈だった。

 

だがそれは後ろ向きで放たれたクモ糸が通常のクモ糸だったならばの話だ。

 

回避され後方まで飛んで行ったクモ糸は壁に貼り付かずに一度だけ壁に当たった際に力強く跳ね返りそのまま高速で一直線に寿々花の背中へと向かって行く。

気配を感じ取り、振り返るがもう遅い。

 

壁に当たると1度だけ跳弾するウェブ「リコシェ」だ。

 

「くっ!」

 

跳ね返って来たクモ糸に正面から直撃し衝撃で御刀を落とし糸が体に巻き付いて手足を縛り、身動きが取れなくなる。

 

「姐さん!」

 

観客席のハリーが寿々花を心配し、身を乗り出して声を荒らげる。

 

「ナイスな読みだったけど、これは読めなかったね。そのまま大人しくしてなよ、淑女らしくね!」

 

寿々花に素直に称賛の言葉を送りつつ、後は門を飛び越えて脱出しようと前方を見る。

 

残る親衛隊は1人。このまま一気に脱出できればスパイダーマンの勝利だが残りの1人が最大の鬼門だ。

最年少でありながら親衛隊最強の名を欲しいままにする眼前の少女の実力は先程からの戦闘で嫌と言う程体感していたため多少強引でも無理矢理脱出するしかないと選択肢を絞っていた。

その為には1度は隙を作らないと。

 

「中々やるねえおにーさん。私ほどじゃないけど!」

 

迅移で目にも止まらぬ速さで加速し、高速で斬りかかって来る結芽に対しスパイダーセンスに意識を集中させ手に持っていた薄緑で防ぎ、回避するのに精一杯な状況になる。

 

「あれーでもなんか剣の腕前は普通だねおにーさん!」

 

「うっさないなぁもう!君が強すぎるだけ!」

 

鬼神の如き攻めの中で挑発してくる結芽に対し、防ぐことが精一杯のスパイダーマンは多少口が悪くなってしまうがその中で動きの中に生じる綻びを探そうとする。

降り下ろして来た一撃を防ぎそのまま鍔迫り合いとなるが10tまでなら持ち上げられるスパイダーマンは両腕に力を込め、力任せにそのまま結芽を押し返す。

 

「うわぁっ!」

 

先程から防戦一方だった相手が急に腕力が尋常ではない程に強くなり、自身が押し飛ばされた事実に驚いている結芽。

 

一瞬だが隙を作ったスパイダーマン。その瞬間に右手を前方にかざしてウェブシューターから糸を飛ばし結芽に糸を貼り付けそのまま片腕で自身の反対側へと投げ飛ばす。

 

しかし、投げ飛ばされつつも空中で1回転して受け身を取り難なく着地する結芽。

だがそれと同時に前方から御刀薄緑を振りかぶって投げようとする姿が見え再び御刀を構えるとスパイダーマンが御刀薄緑を投げつけて来る。

 

「くらえ!ソードビッカー!」

 

何となく何故か頭に咄嗟に浮かんだ必殺技の名前を叫びながら槍投げの要領でスパイダーマンの手から放たれた薄緑が恐らく200Km近くは出ている速度となり一直線に結芽に向かって飛んでくる。

 

直撃すれば危険だと判断した結芽は念のため写シを剥がさずにそのまま突っ込み投げつけられた薄緑を弾く。

その隙に一気に屋根まで跳躍するスパイダーマン。

 

だが跳躍して屋根に着地してそのまま屋敷の外まで飛ぼうとするがもう既に背後まで来ている結芽の姿があった。

 

「終わりぃ!」

 

「あーもうしつこいなぁ!」

 

結芽がスパイダーマンに三段突きを繰り出そうとした瞬間。屋外から会場に向けて黒い石のような固形物が投げ込まれ、固形物が破裂し会場中が白い煙に包まれ、会場にいる人間のほとんどが咳き込み、眼が開けられなくなるほど涙を流し、中には某40秒で支度させる海賊の子分に3分も時間をあげて敗北した大佐のような声を上げている者もいる。

 

「目が、目がぁ~!」

 

 

その内の1つが背後から飛んでくるのを感じたスパイダーマンはクモ糸を飛ばして黒い固形物を糸で掴み後方に飛びながら結芽に向かって投げつける。

飛んできた黒い固形物を難なく切り払うと同時に固形物が破裂し結芽を白い煙が包むと急に咳き込み始め、へたり込み喉を押さえる。

 

「何これぇっ!?ゲホッゲホッ」

 

 

投げつけた際に姿を確認できた。これは、スモークグレネードだ。それも催涙作用のある物だ。

外を確認すると誰も見当たらない。すぐに隠れたのだろうか、誰が投げ込んだのかは分からないがこの状況を作り出してくれた誰かに感謝するスパイダーマン。

 

「どこの誰だか知んないけどサンキュー!この借りは何とか頑張って返すよ!」

 

 

確かに普通のスモークグレネードで煙を出すだけならば視界を煙で塞いだ所で明眼等の熱探知ができる者がいた場合、逃げる方向を読まれてしまうが催涙で眼が開けられなくなれば発動できなくなる。考えたなと内心感心しつつクモ糸を飛ばして木に隠れながらスウィングし、自分が荷物を壁に貼り付けた男子トイレの窓側まで移動する。

 

男子トイレの窓側の壁に貼り付けていたリュックを剥がし、回収した後に二人の後を追おうと思ったがここである問題が起きていた事に気付くスパイダーマン。

 

 

「やべっ、僕あの二人が逃げた場所知らないや…」

 

先程までの一連の流れはほぼ計画性が無く衝動的にやってしまった行き当たりばったりな物だ。

かなり時間は稼げたとは思うが二人がどの方向に逃げたかは検討が付かない上に仮に闇雲に自分も二人を追って遠くへ逃げようとした所で逆方向に逃げてしまったのでは元も子もない。

 

恐らく遠くへ逃げるために車の荷台にでも隠れて移動したと思われるがその車が何処まで行くのか想像が付かない。

 

「どうしよう、僕の携帯は鍛冶科だからスペクトラムファインダーは搭載されてない携帯ショップで買った奴だからGPSで追われるのはあんまし無さそうだけど二人のは支給されたのだから破棄してるだろうな」

 

思考を巡らすスパイダーマン。しかし、ここで奇跡的にまだ向こうには知られていないある1つの事実を思い出した。

 

「そうだ、僕の顔と正体は誰にも知られてない。確かにあの場にいなかったから怪しいけどあの状況下でただの一般生徒としての僕1人を一々気にかける余裕は無かった筈だ」

 

かなり危険な橋を渡る事になるし他にも考えれば幾つか方法が思い付きそうだがそんなことを言っている時間はない。すぐに今自分が出せる一手を決めなくては。

 

「あーあ僕今日で何回危険な橋を渡るんだ…国の敵になるわ親衛隊に殺されかけるわ…でもこれしかないか…」

 

窓から男子トイレに入り再度来るときに着替えた個室によじ登り急いで制服に着替え、スパイダーマンから榛名颯太へと切り替わる。

そして自分が入った個室の真上にかなり大きな通気口があることを確認し、壁に張り付きながら通気口を手でこじ開けスーツとウェブシューターを押し込んで奥の方に隠す。

 

「正直自信ないけど闇雲に探し回って二人と逆方向に距離が離れる方がマズい。僕はあの娘、十条姫和さんに会って情報を聞き出さないと。それに可奈美の事も心配だ。」

 

「だからこれから僕がするのは衛藤可奈美の友人榛名颯太として管理局の捜索に協力するフリをして状況を利用し、二人の位置を調べて合流する。多分一人で探し回るよりは幾らかマシの筈だ」

 

「あーあイーサン・ハント程じゃないけどかなりインポッシブルなミッションだな。でもやってやるよ…ってかやるしかないんだろ!」

 

確実に二人に辿り着く為には闇雲にただ探し回るのではなく捜査に協力するフリをして位置を割り出す事だ。

ならここは一度敵の本拠地にいながら位置を割り出した後は頃合いを見て抜け出し二人に合流しようと考え、リスクはかなり伴うが他に方法が思い付かなかったためにこの賭けに出る決意をする颯太。

 

トイレの個室から出てスパイダーマンに関する道具は一切持たずになに食わぬ顔で会場に戻る。

会場には催涙ガスの影響があったからか既に会場のすぐ手前の庭に避難しており、各学校ごとに集まっておりその中に最初からいたかのように混ざり、皆がまだ咳き込んでいる様子を見てわざと咳き込んで見せる颯太。

 

「榛名君…可奈美ちゃんが…後、スパイダーマンさんも…」

 

「何でか分からないが御当主様と親衛隊の皆さんに攻撃した奴を庇って逃亡したんだ、ほんと訳がわかんねえよ」

 

 

「あぁ、驚いたよ。トイレから戻って会場に入ろうとしたら戦いになってたんだから…驚きのあまりその場を動けなかったよ」

 

生徒たちに合流して自分の姿を見かけた舞衣とハリーはトイレから戻ったばかりだと思われる颯太に会場での状況を説明する。

勿論当事者だから知っているがここでは少し離れた場所から見てすぐに合流した事にする。

 

「可奈美ちゃん…スパイダーマンさん…どうして」

 

 

「だ、大丈夫だよ柳瀬さん。スパイダーマンは分からないけど可奈美は意味もなくあんな事する奴じゃ無いって!何か理由があるんだよ」

 

「うん、そう…だよね。」

 

 

気休めにもならないが舞衣の不安を和らげるために何とか元気付けようとする。

しかし、何とか笑顔を作ろうとしているがとても無理をしていて沈んでいる様子が隠しきれていない表情を向けられ罪悪感にかられる。

 

(ゴメン…絶対に何とかするから)

 

心の中で不安げにしている舞衣に謝罪する颯太。すると

警備員の腕章を付けた少女数名がこちらの方に近付いてくる。

平城の方でも同じようだ。

恐らくこの様子だと関係者に事情聴取されるのだろう。

 

御前試合に参加する為に前日から可奈美と共に行動をしていた舞衣にはその白羽の矢が立ち、姫和と共に来ていた岩倉早苗も同じように御刀を没収され取調室へと連行されて行った。

 

その様子を心苦しく思いながらいつ頃捜索に踏み切った管理局に協力を申し出るかのタイミングを伺う颯太。

 

 

…………場面は変わり、会場のとある通路。

 

会場にいた際に携帯が震え始め、手に取ると携帯の画面から針井能馬という名前が表示され急いで人気の無い通路まで移動し父親からの電話に出る。

 

「はい、父上」

 

『栄人か、話は聞いた。会場では大変だったようだな』

 

「はい」

 

『お前は今は私の跡取りの見習いだが、管理局はうちの御得意様だ。私はもうすぐ海外に出るからそちらには向かえん。そこでお前は局に残り逃亡者の捜索に協力し、手柄を立てろ』

 

「かしこまりました」

 

多忙な中わざわざ自分に電話をかけてきた時点である程度何を言い出すのか予想できていたが局に残って捜索に協力するように指示を出してきた。

 

『こちらも可能な限り手を貸す。スパイダーマンが相手となると管理局に提供予定の新技術のデモンストレーションには持ってこいだろう。その使用権限を解決までお前に譲渡する』

 

『逃亡者の1人はお前の友人らしいが容赦はするな。上にのしあがって行くためには大切な物を切り捨てなければならない時もある。辛いかも知れないが本件が終わるまで帰れると思うな』

 

「かしこまりました父上。全身全霊で対処します」

 

『いい成果を期待している。何かあったら連絡をよこせ、ではまたな』

 

「はい、ではまた後ほど」

 

通話を切ると壁に力なく寄りかかり俯くハリー。

マニュアルな対応で父親からの命令に対応し、捜索に協力するように申し付けられこれから先、友人である可奈美を捕まえなければいけないことに苦悩をしていた。

 

その反面ただ父親の命令に従い父親の望むような生き方ばかりな自分に嫌気が差しつつ、前々から彼の行動には疑問を感じており自分が姉のように慕っていた寿々花や、父の御得意様の親衛隊の面々に危害を加えたスパイダーマンに対しては強い憤りを感じ始めていたハリー。

 

「衛藤…多分お前が捕まれば一歩間違えば極刑、そうじゃなくても厳罰だろうな。お前が何を思ったかは分からないが俺はお前と戦いたくない…だが」

 

徐々に低く怒気の籠った声色になりながら俯いていた顔を上げて正面を見つめる。そこにはいないが遠くへ逃げたであろう赤と青のスーツの男に向けて低く呟く。

 

「お前は調子に乗りすぎた、覚悟しろよスパイダーマン」

 

 

そう呟くと踵を返し、管理局の本部へと歩いていく。

 

 

 


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