IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~    作:狂戦士

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準決勝飛ばして決勝。
それと戦闘少なめです。すいません。(汗)


第87話 決勝=制裁の場

第87話 決勝=制裁の場

 

 

 2回戦は不意を仭達はついた。シーナが相手の動きを見てから行動するタイプと、2年のフォルテ・サファイアと、3年のダリル・ケイシーは認識していたようで、仭が1人で突っ込んで、そこへ一瞬意識が全部向いた時に射撃。そのまま勢いで彼らは攻めたが、やはりというかそう崩れはしなかった。

 フォルテとダリルの連携は2人にとっても強かったものの、仭達の方はざっくり言うと連携かつゴリ押しで攻めていた。時には仭が相手を捕まえて、自身ごと射撃させたりなど、とても連携とはいえない行動もしていたが、結果として仭とシーナのペアが勝った。

 そして現在休憩になり、仭とシーナが休んだ後に、決勝戦が始めることになっている。

 

「仭」

 

「ん?」

 

 休憩をとっている中、シーナは仭に声をかける。

 

「どうした?」

 

「最近あなたの戦い見て思ったことなんだけど」

 

「何だ?」

 

 シーナの言葉に、耳だけ傾ける仭。

 

「あなた、学園に来てから少し甘くなったんじゃないかしら?」

 

「…そうか?確かにここの大抵の生徒たちが認識している”本気”だけで戦ってないと言えば、嘘になるが」

 

 仭のその言葉の意味は、本気という言葉がおそらくこの学園の生徒ほぼ全員が認識している意味での本気とは違うからである。

 

「手を抜いてるわけじゃないぞ」

 

「まあ、言いたいことはわかるけど。けど、敵を逃してばっかりじゃない?」

 

「…返す言葉もない」

 

「今まであなたが今まで敵逃がしたのって、実力より私が思う方にあると思うんだけどね」

 

「…どういうことだ?」

 

「そうね…私的だけど無意識の内に、あなたは皆の前で惨状起こさないようにしてるってところかしら?」

 

「ああ…自分でも結構納得がいった」

 

 敢えて惨状という言葉を使うシーナ。

 普段なら とでも答えそうだと思うも、それはここの生徒に対しての意味も含まれていることを察しながら肯定する仭。

 

「後、自分を過小評価してるせいでもあると思うわよ」

 

「…言うだけならタダだろ」

 

「そうね。油断させる気もあるかもしれないけど、本当に自分は弱いって思ってる節があるわ」

 

「事実だ。組織の連中見れば」

 

「まあ、確かに彼女達に比べちゃうのは致し方無いと思うけど。…言うだけならいいのよ別に。けどやっぱりあなたの場合、謙遜が感じられるのよね。謙遜は日本人の美学って言うけど、やっぱり控えた方がいいわよ。自分の今の実力に満足しないのと、自信がないのだとかなり違うから

 

「自信がなかったら楯無に引き分けたりなどしていないが、まあ…一理ある」

 

 そして話が終わると、仭は一言呟く。

 

「……なるほど。確かに失念してたな」

 

「やっぱり全部図星?」

 

 仭は片手で頭を抑えていて、シーナが言うまでもなく行動がそれを示していた。

 

「いや、別に本当に手を抜いてるとかそういう訳じゃなかったんだ。ただまあ指摘は頭には入れとくことにする」

 

「…そう」

 

 それから2人しばしの間は無言となる。

 

「…それにしても声は聞こえないけど、モニターから見ても観客の盛り上がりも見てわかるくらい凄いわね」

 

「そりゃ、ピッドのモニターで見ているであろう専用機持ち以外のほぼ全員が見ていて、決勝でもあるからだろ」

 

 話題を見つけるためか、それとも普通に気になったためかシーナは口を開く。

 

「…時間も近づいてきたな。しかし、予想通りというか、あの2人とは戦うことになったな。しかし思いの外さっきの2人は手強かったし、俺もさすがに疲れた」

 

「それに比べてあっちは1回戦はともかくとしても、2回戦は圧勝だからね」

 

「レイラには悪いが、楯無にとっては対して相手にならなかっただろうな。そう考えると疲労の度合いはこっちが上だ。ハハ、これで試合中、襲撃者に乱入されたら洒落にならんな」

 

「そうね。その時は主にあなたにがんばってもらうわ」

 

「…ま、頭の隅にでもこのことは追いやっとくとして…冗談抜きで少々キツイな」

 

「どっち道相手するのは、あなたなんだから何とかしなさいよ」

 

「(…その為にこうして頭を働かせてるんだがな。シーナの先のアドバイスは、十分参考になったが、楯無対策というわけでもない。…仕方ない。ちょっと後で教師らに文句たたれるだろうが、やはり……)」

 

「何ぶつぶつ言ってるのよ。もう行かないとマズイわよ」

 

 すでにISを展開している相方の声に、すぐさまISを仭は展開。

 

「さて……いよいよだな」

 

 その時仭自身気付いてはいなかったが、僅かに笑みを浮かべていた。

 

「あのサボり魔に、制裁を食らわしてやろう」

 

「………」

 

 戦闘に関してとは別の私情が混じっていたが。それを現すかのように、殺意とはまた別のモノがシーナには感じられた。

 

 

 

「面倒臭い…」

 

「お姉ちゃん…」

 

 一方のピッド内。楯無の発言に簪がジト目で睨む。

 

「いや、試合をするのがじゃなくて、仭君と戦うのがよ?攻撃しても他の子と比べて怯みにくいし、立ち直りも早いのよ」

 

「あー…」

 

 簪はその愚痴に納得すると同時に、それはあっちも思ってるんじゃないだろうかと考えていた。

 

「でも言い切れるのは、仭はお姉ちゃんの方に行くだろうね」

 

「やっぱりそうよね~」

 

「うん。多分お姉ちゃんがほとんど仕事をサボってることもあって、その恨みを晴らしに来るよ」

 

 その何気ないその一言に、楯無は思わず冷や汗をかいた。

 

「え…?簪ちゃん、そのこと知ってたの?」

 

「仭がよく愚痴ってたよ。というかお姉ちゃん、ちゃんと生徒会の仕事もして」

 

 だが、それは簪が自分仕事をサボっていることを知られていたからである。”たまに”仕事をサボって自分が仭に追いかけられていたのを簪に見られたことはあるが。ちなみにだが、楯無のサボる割合は約3回に1回。そしていつも仕事量が多いとき。

 簪は仭の反応を楽しむためだと推測している。

 

「い、いや~仭君が自分の分は終わったというのに、さらに私に書類を任せようとするから…」

 

「仭は『何も言わずに書類仕事をする時は少ない』って言ってたけど」

 

 ちなみにだが楯無は休まずに仕事させられているわけでなく、本当に仕事をしないのであるため、仭に制裁を食らわされている。

 

「簪ちゃんは、お姉ちゃんより仭君を信じるの?」

 

「うん」

 

「酷い!」

 

「というか、虚さんも仭と同じようなこと言ってたから」

 

 考える素振りすら見せずに即答する簪。

 

「そんなわかりきった言い訳よりお姉ちゃん」

 

「簪ちゃん?さっきから何か妙に誰かに似てる気がするんだけど」

 

「やっぱり仭がお姉ちゃんに来るから、私がもう1人を相手することになるね」

 

「……そうよね」

 

 時間の関係もあり、真面目になって試合の話に頷く楯無。

 

「基本仭君のサポートにまわってたもう1人の方も、まだ何か隠してる気がするから、頭の隅に入れておいてね簪ちゃん」

 

「うん。強いっていうのは試合を見てわかってるから」

 

 仭の相方はある意味で人数合わせであるが、当然ながら実力もある。彼女は仭の報酬目当てでもあるのだが。

 

「じゃ、そろそろ行こうか」

 

「うん」

 

 そう会話を打ちきってISを展開しようとすると

 

「!?」

 

「どうしたのお姉ちゃん?」

 

「いや、何か急に寒気が…」

 

「?」

 

 ちなみに楯無が寒気を感じたとき、反対のピッドの方では仭達が丁度アリーナに出るところだったが、関連があるかどうかは楯無による。それでも特に気にすることはなく、2人はアリーナへ出ようとする。

 

(それにしても…さっきの、本当に誰かに似てきてるんだけど簪ちゃん)

 

 最後の最後まで、楯無はそのことが頭から抜けなかったが。

 

 

 

「――今回は既の差で俺達が先だったか」

 

「待った?」

 

「10秒程」

 

 傍から見れば恋人同士の会話に聞こえなくもない?会話を生徒会に所属してる2人はするも、雰囲気は当然ながらそれとはまったく異なっていた。

 

「…あなたとISで初めて戦ったときより、楽しみにしてそうに見えるわ」

 

「そうか?まあ、お前とは1度戦って勝敗が決まらなかったから、今度こそは…という考えがあるが、お前ら2人を相手にするのは、気を引き締めなくてはな。やってられない」

 

「お手柔らかにね~」

 

「―――と言いたいところだが、本音はやはりお前が個人的に苛立つから、タッグマッチとはいえ制裁の場――もとい叩きのめせる機会ができて歓喜してるのだと思う」

 

「あは♪お手柔らかに~」

 

(…これって忘れられてるパターン?というか仭。随分と沸点が低くなってないかしら。それだけ彼女が鬱陶しいってことなのか、それとも照れ隠し……いや、ないわね)

 

 不機嫌さを隠しもしない仭と、笑顔な楯無の様子に仭の相方は1人そう思った。何だかんだで仭も結局は楯無のペースに引きこまれているのだ。…返り討ちにされているのが度々あるが。

 ちなみに簪は呆れと諦めが混じった表情で、楯無を見ている。

 

「ああ、わかった楯無。殺す勢いで行こうとしたが、半殺しにするくらいの勢いで行くとしよう。当然お前限定で」

 

「いや、それ多分あなたの中で、対して変わってないから」

 

 誰もがあまり近づきたくないであろう雰囲気をさらけ出し、拳を鳴らすような動作をしながら言う仭に、突っ込む楯無。

 

「冗談だ。お前には手加減なんて、仮に俺がお前より実力が上であったとしても、する気は微塵もない。むしろ殴ることにもっとも抵抗がない人物の1人として上げてもいい」

 

「酷い!これでもか弱い女の子なのに」

 

「「「(実力の意味で)それはない(な)」」」

 

「簪ちゃんまで!?」

 

「普段の行いから、そんなことを言われるんだよお姉ちゃん」

 

 辛口な簪のコメントに、楯無へ精神的ダメージ。もうすぐ試合開始だというのに、思わず仭達さえも戦う気概が少し薄れてしまっている。酷いと思われるだろうが、シーナはともかくとしても、仭にとっては今の楯無は敵。容赦をする気はなかった。

 

「って、もしかしてああやって油断させる気だったりとか…」

 

「…ふ、ふふふ。その通りよ」

 

「…ねぇ、彼女あんなキャラなの?本当にあんなのが、ロシア代表なの?」

 

「見ず知らずの人にあんなのって言われた。おねーさん悲しい」

 

「代表だよ。一応」

 

「簪ちゃん!?」

 

「まあ、そう言ってやるな。…察してやれ」

 

「そうね」

 

「ちょっ、やめて。可哀想な人を見るような目で見ないで!」

 

「可哀想な人じゃないのか?」

 

「違うわよ!」

 

「嘘だな」

 

 この場に彼女の味方はもはやいそうにない。ただその中でも日頃の鬱憤が溜まっている仭が、1番容赦がない。

 

「…もう少し精神的ダメージを与えておきたかったが、そろそろ時間か」

 

(攻撃だったんだ…お姉ちゃん相手にあんまり意味ないと思うような気がするけど)

 

 簪はそう思いながら、楯無がとりあえず立て直している?のを見て、自身も試合開始の合図を待つ。

 

『試合を開始します』

 

 そして

 

「――――――――!!!」

 

「「!!」」

 

 試合開始と共に仭がいきなり楯無と簪、2人に対して咆哮のように叫ぶ。先制というのもあったが、思いもよらない奇襲に動きを止めてしまう。

 そこにシーナが試合開始と共に両手に呼び出したマシンガン2丁で、楯無と簪にそれぞれ銃弾を放つ。楯無はギリギリ水のヴェールで防ぐも、簪は回避できずに被弾。その際、仭が簪へと距離を詰めて蹴り落とそうとしたが、それは立て直した楯無のランスによって弾かれた。微笑を見せる楯無に、仭は舌打ちをする。

 

「…ま、不意をついたくらいで、簡単にはいかないよな」

 

「まさか声を上げて怯ませてくるとはね」

 

「遠当てと言ってくれや。まあ、IS戦闘での先制攻撃としてはまず経験したことがないものだろうからな。…失敗したが」

 

 遠当てとは幾つか意味があるが、今回の場合相手が動き出そうとしたときを狙ってタイミングよく声を出し、一瞬動きを止めさせることである。武術・武道などの言葉でもあり、気当ての術とも言う。

 そのまま仭はランスと簪の薙刀のそれぞれの攻撃をかわし、一旦降下。その後ろから再びシーナの射撃が簪へ向かう。さらにとんぼ返りのように下から仭が攻撃を仕掛けてくる。

 

「簪ちゃんから倒す参段かしら?やらせないわよ!」

 

「は?お前、本当にこっちが簪から潰しに行くと思ってるのか?お前が邪魔しに来ること前提の行動で、セオリー通りの分散だ」

 

 仭の前に楯無が立つと、大剣を片手に呼び出してランスを構える楯無に斬りかかる。

 本音を言うと、仭にとっても楯無と簪の2人を相手にすることは面倒極まりないことだった。相手する状況になってしまったら、その時はその時だが、極力やりたくない。だが、2人で楯無から倒すとなると当然簪のサポートが入り、逆はむしろ難しい。

 

(やはりエネルギーに変換でもしないと纏ってる水で弾かれるな。そう簡単に壊れはしないだろうが…)

 

 得物が幾度もぶつかり合う中、そう心配している仭に対し、突かれてきたランスを横にかわす。そのまま楯無を掴んで前方へ瞬時加速。楯無を巻き込んでもう一方で始まってる戦いから2人は離れた。

 ちなみにだが、仭達が予定している作戦は、仭が時間を稼ぐ、もといシーナが簪を先に倒すことではなく――

 

「あら、2人っきりで私とデートかしら仭君?」

 

「はぁ…」

 

 むしろ先に言った通り、仭が楯無を先に倒すことだった。

 何を馬鹿なこと言ってるんだかという表情をしていると、楯無は蛇腹剣を片手に呼び出していた。

 

「行くわよ!」

 

 蛇腹剣が振るわれると、仭の大剣を持つ腕は絡まる。それは仭に苦痛を与えるものだったが、さらに楯無はランスを仭に向けて、搭載されたガトリングガンで攻撃し始める。

 

「ぐっ…だからどうした!」

 

「!きゃっ!?」

 

 短剣を大剣を持つ方とは別の手に短剣を2本呼び出し、そのまま楯無に投擲。それらを水のヴェールで防ぐも、爆発。楯無は思わず怯んでしまう。

 その間蛇腹剣が巻き付いている腕に変化があった。大剣を持つ手から徐々に黒いエネルギーが浸透していき、その腕がエネルギーでコーティングされる。エネルギー硬化もしており、それによって蛇腹剣によるダメージが通らなくなっていた。

 仭はひとまず大剣を収納。蛇腹剣を楯無ごと引き寄せる。勢いを利用して、楯無はランスで突こうとするが、短剣を1本仭は呼び出し、それをランスの横から突き刺す。そして爆発し、爆風によってランスは僅かに逸れる。

 

「くらえ」

 

「うっ…!」

 

 引き寄せられた楯無に対して膝蹴り。まともに入ったことによって、苦悶の表情を楯無は浮かべる。

 

「さて、非情に不本意だが…」

 

 腕を楯無の首に回し、仭はスラスターを吹かして共に地面へと向かう。そのまま地面へ自分を叩きつけるつもりだと察した楯無は未だ絡みついたままの蛇腹剣と、仭に押し付けて水によってダメージを与えていたランスを収納。両手を使って仭の拘束を抜け出し、そのまま拳を作って、顎へアッパーをくらわす。負けじと仭は楯無にがっちり掴みかかるが、当然掴みかかれた方は暴れる。

 

「えぇい、大人しくお前が先に落ちろ!」

 

「お断りよ!あなたが落ちなさい!」

 

 (罵り合い)もつれ合いながら、2人は大きな音を立てて地面へと落下した。

 

「「…………」」

 

 上がった土煙が晴れ、観客達にも2人の姿が見えてくると、お互い襟などをを掴み合って着地をしていた。ただ、仭の方が僅かに早かったのか、楯無に上から押されているという状態になっている。

 仕切り直すためか、お互いほぼ同時に手を離し、後ろへと下がる。

 

「…ふん、余裕あるな」

 

「私としては、精一杯って顔してるあなたが、余裕あるって見えるけどね。さっき先に地面へ落ちたのもわざととかじゃない?」

 

「さて、どうだろうな」

 

 そう言いながら仭は、遠距離武装で撃ち合っているお互いの相方の様子を視界に入れる。

 

(あっちは…まあ、予想通り互角ってところだな)

 

 互角の戦いを繰り広げている2人は、此方の戦いに介入してくるそうそうないだろう。つまるところ自身は楯無との戦闘にある程度集中できるだが――

 

「…()()()分断した方が、やはりやりやすいか」

 

 仭は試合前から考えていたある作戦を実行することに決めた。

 

 

 

 




次話は多分真面目な戦闘です。

そして結構空気だった方の戦闘も出るかなと。(汗)
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