IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第90話 試合は乱入によりエスカレート?
一方の空間外――アリーナ。
取り残された簪とシーナは、五分の戦いを繰り広げ、試合を普通に続行していた。空間に2人が遮断されても特に何も言われず、試合を続行しろとされたからだ。そう言われても簪は最初、空間を破壊しようと考えたが、相手が邪魔することは当たり前だろうし、そう簡単に破壊されるわけがないだろうと判断。何より――楯無を信頼したことから、目の前の相手へと集中した。
そして
「!」
「…何?」
空間の一部分が突如爆発。2人はそれに戦闘を止めた。
内部から爆発したようで、ハイパーセンサーで確認するとその部分に穴が開いていて、それと共に空間の色である黒が徐々に薄くなっていくことに、簪は疑問を持つ。一方でシーナはどちらかがやられている可能性を考慮して、手に持つ武装を戻してレーザーライフルを展開、空間があった方へ銃口を向ける。
少しして爆炎の中から先に出てきたのは仭。いや、落下してきたという方が表現が正しいだろうか。そして後から楯無が落下していき仭の後を追う。
「えい♪」
「ぐはぁっ!」
落下していく仭に近づいた楯無は腹を踏みつけ、そのまま落下した。
「ふふ、さあお仕置よ」
「ちょっ、まっ…!」
楯無は蛇腹剣を呼び出し、ウィップモードで攻撃し始める。未だに仭をぐりぐりと踏みつけながら。
それに簪とシーナ、さらに観客や教師もその光景にうわぁと思いながら(一部はきゃあきゃあ言いながら騒いでいたが)見ていた。
それは仕方がない。その光景はまさに”女王様が下僕をお仕置してる”という光景だったからである。
「仭…そんな趣味があったなんて」
「後で覚えとけよこの野郎!!」
ボソッと簪が呟いたのを、仭は聞いていたようで吠える。
「あら、そうなの?言ってくれれば私がいつでも――」
「黙っとけ!!」
頬を赤らめ、僅かに視線を逸らしながら言う楯無に、されるがままの仭。
こう喋ってる間にも、
「これで縛られていて、蝋燭があれば完璧だったのに」
「こいつは…」
振るわれた蛇腹剣を仭は掴み、横へ思いっきり引くと共に体勢が入れ替わって仭が上になる。
「あ、あら?」
「…さっき言ったな。性格悪いのは俺の方だと?言い出しは俺の方だが―――そっくりそのまま返してやるわ!!!」
そのまま怒りをあらわにしている仭の渾身のエルボーが、楯無の額へと叩き込まれる。
よほど先程の女王様プレイが効いたらしい。そして額へと受けたエルボーも楯無はかなり効いたらしく、続けざまに繰り出されるエルボーに対処しようとすることもできず、叩き込まれていくうちに意識が飛んでしまいそうになる。
「お姉ちゃん!」
当然状況が変わり、先程の女王様プレイ(笑)のように傍観する簪ではなく、荷電粒子砲を仭に向けて放つ。が、もう何度目になるか、仭は破損している大剣を展開するとそれを操り、展開装甲を発動させた状態で荷電粒子砲による砲弾に刃をぶつける。そして大剣は簪へと襲い掛かり、縦横無尽に飛び回りながら、時たま斬りかかる。
それを視界に収めながら、仭はエルボーの連打からアイアンクローに切り替える。そのまま締め付けながら立ち上がり、楯無の足が付くか付かないかの位置まで持ち上げる。
「おい、シーナ!」
「な、何?」
「説明は後でする。とりあえず今はこの浮かれてる馬鹿を撃ってくれ」
「…了解」
「っ…!」
それを聞いて楯無は自分の頭を掴んでいる手を引き剥がしにかかるが、一向に離れず、さらに仭は締め付けを強くする。
ちなみに本来であれば、仭は先の空間内での水蒸気爆発をもろにくらったことにより、とっくにシールドエネルギーが尽きている。だが、こうして機体が活動を続けているのは、空間内で密かに絶対防御を切ってシールドバリアーを強化させる
なのに今現在、機体にエネルギーがあるのは言うまでもなく、空間内での水蒸気爆発と、女王様プレイ(笑)によるものである。
「清き熱情、もしくは清き冷情を狙うんだったら、早めにした方がいいぞ。もっとも、そんなことがやられることを承知でこの攻撃を仕掛けているわけだが」
楯無は水のヴェールを周囲に展開して、向かってくるエネルギー弾を防ぐも、その際に爆発して水のヴェールは消える。その間にもエネルギー弾は放たれて楯無に幾らかは着弾し、仭の方も腹を殴ったりしてどんどん攻撃を加えていく。楯無もやられっぱなしでなく、暴れることで攻撃していくも、仭はまったく力を緩めない。むしろ締め付けをどんどん増していく。簪を少し止めている間に、できる限りダメージを与えておきたいから、2人は全力で楯無に攻撃を加えていく。
「調子に、乗るんじゃないわよ!!」
「危ねっ!」
どの口が言うのか。自分のことを棚に上げながら、股間を蹴り上げようと脚を上げる。いかに打たれ強い仭であろうと、そこを攻撃されるわけにはいかない。第1に弱点、第2に戦闘に大きく支障が出る場合があるからだ。(衝撃を受けた場合、局部は激しい鋭痛、腹部には鈍痛を感じ、さらに吐き気と呼吸困難をもたらす場合もあり、最悪生命の危険があるとされる。軽い気持ちで金的は絶対に行わないように)そこだけは1番に仭は警戒していたので、何とか避ける。
衝動的に力を緩めると同時に、簪が此方に向かってきたので、ひとまず楯無をそのまま放り投げて離脱する。簪も深追いはせずに、警戒しながら楯無の元へ近づく。
『大丈夫?』
「…あ、ああ」
プライベートチャネルを通じて、仭の声が若干震えてるのがわかるシーナ。彼の視線の先を見ると、心底悔しげな表情の楯無。
(…何で?攻撃できなかったから?)
それだけではなかったり。
『…で、何で空間から出たら彼女はああなってるわけ?』
ひとまず本題に入ろうと、仭に問いかける。
「あの空間で俺が優勢だったが、突如第二形態以降して、今現在」
『簡略な説明どうも。じゃあ、第二形態以降しての特徴は?』
「…おそらくだがワンオフはない。武装は確認できただけで、腕の物理シールドと両腕両足に仕込まれた超振動ブレード。それと現在収納してる振動ブレード。水によって斬れ味を上げられ、ぶつかり合ったら大剣も半壊する威力。
アクア・クリスタルはスラスターの間に装備。そのクリスタルによる霧は、熱の放出によって氷結が可能とされ、またハイパーセンサーで感知できないようになっている。濃霧に紛れると面倒この上ない。接近には十分気を付けろ」
「了解」
状況説明等が終わると、シーナは後方へと下がってレーザーライフルを構える。それと共に仭が動こうとした時
「「「「っ!?」」」」
間に一筋の熱線が振り、轟音が立つ中アリーナに何かが落下してきた。
それに嫌な予感を感じながら仭は
「…試合前にフラグ立てたからか?」
思わずボソリと呟いた。
落下した際に起こった煙が少しづつ消えていくと、”それら”の姿が現れてきた。
「2機のIS。しかも全身装甲の…」
「…あれがクラス対抗戦に乱入してきたっていう無人機かしら?発展してるようだけど」
「情報では全身装甲だそうだから、可能性は高い。だが、さすがに完全に断言はできない楯無」
「まあ、そうね」
無人機を見るのは4人は初めてであるのだから、仭の言い分はもっともである。万一操縦してるのは、人という可能性もあるからだ。
その全身装甲ISは、黒いマネキンのように装甲板は整形されていて、女性的なシルエットを描き出していて、鋼の乙女というような感じだった。頭部にバイザー型ライン・アイが付き、羊の巻角ような特徴的であるハイパーセンサーが前に突き出ていて、さらに右腕は肘から先が大型ブレードで、右腕とは不釣り合いな巨大な左腕には掌に砲口が4つ開いている。そして機体の周囲には浮遊する球状の物体――可変シールドユニットがあった。
「ともかく、アリーナのシールドを破壊したのは――」
事実。仭はその先の言葉を口にするのを中断して、動いていた。
2体のISが左手を此方に向けていたからだ。そして掌の砲口から熱線がそれぞれ放たれる。狙いは簪と仭の2人だ。
「下がって簪ちゃんっ!」
「うっ、うん…!」
(エネルギーシールド部分集中、パワーアシスト強化)
楯無は簪の前に出て、腕についている小型物理シールド『メティス』を前に突き出す。大きさは小さく、単体でははっきり言って使いにくいとしか言いようがないが、メティスの使い方はそのまま使うわけではない。 メティスへと水が集まっていき、凝縮されて氷結。それによって厚い氷の楯が出来上がる。
「くぅっ!」
熱線の威力が強いため、その衝撃に押される楯無。だが、引くわけには押し負けるわけにはいかない。楯の氷は熱線に破壊されていくも、水を集め、凍らせて再生させていき、それが楯と熱線の間で繰り返される。
一方で、あっちは何とかするだろうと、即判断して自分のことに集中していた仭は、左腕を楯にして熱線を受け、パワーアシストを強化して踏ん張っていた。
「…余裕そうね」
「左腕の装甲をエネルギーで纏い、さらに残っている全エネルギーをへ集中的にシールドにして厚くしたまでのことだ。避けられはしたが、ひとまずどの程度の威力かを、な。…あれらの狙いを此方に絞らせるために地上へ降りろシーナ。観客に被害が出る」
「ええ」
熱線を逸らす際に削られ、かろうじて残ってる左腕の装甲の状態を確認しながらもそう言うと、シーナは降下し始める。観客席の方を見てみると、当然状況を把握して一目散にアリーナの出口に向かっている。が、
(やはりロックされているか。これは時間がかかる。…あれらを下手に破壊するわけにもいかないし、さてどうしたものか――)
「仭君!」
「!」
ひとまず牽制射撃でもして、地上の方へ誘き寄せようかと考えていると、何とか熱線を受け切ったらしい楯無に呼びかけられる。
「私がひとまずあれらを引き受けるから、教師に連絡を!」
「あっ、おい!……仕方ない」
呼び止めるも遅し。おそらく今いる4人の中で、自分が1番戦える状態だと判断しての事だろう。
敵IS、2体に突っ込んでいった楯無に言われた通り、ひとまず仭は管制室に連絡を取ろうする。
「…ちっ、ジャミングか。繋がらない。乱入してくるまでは、発動させていなかったのか」
「私の方も駄目…」
「お前の回線はどうだシーナ?確か周波数変えるレーダーを搭載していた筈だが」
「…大丈夫そうね。繋がると思う」
「なら、千冬さんに連絡取れ。俺もちょっとあれを相手をしてくる。簪はシーナと共に状況を聞いてくれ」
「了解」
「わ、わかった」
「楯無、ひとまず地面へ降りて攻撃をどうにか集中させるぞ」
「わかったわ!」
「ひとまず俺が気を引かせる」
そう言って左手を敵ISに向けてエネルギー弾を連続して放つ。威力はあまり高くはないも、連射が可能なものだ。それらは簡単に避けられるも、その間に楯無が村雨で斬りかかるが、回避を行いながら楯無の斬撃もさらに回避を行って見せる。
「ちっ、牽制とかのためとはいえ、こうも当たらないとはな…」
仭のことを邪魔と認識したか、1体が左手を向けて熱線を放つ。それをかわして再び狙いを定めようとするが、かわしてる間にもう1体が大型ブレードで斬りかかってきているのがわかり、一旦収める。
「おっと」
自分へ向かってきたブレードをかわし、相手へ殴って返すが、装甲が頑丈でまったく効いているように見えない。さすがに拳での攻撃は不利と感じ、内部へ浸透させる掌底攻撃へと切り替える。
「って、どっちにしろ効いちゃいるのかすらわからねぇ!!」
一応は仭の掌打はダメージを与えている。が、反応がぐらつくだけでは、それはわかりようがない。
面倒な奴だと思いながらも、未だ解除していない新武装の右拳に搭載されている展開装甲を発動し、ブレードの形へと変え、斬りかかる。
しかしそれは敵ISの振るわれたブレードに大きく弾かれ、その隙を逃さずにしてさらに伸ばされてた左腕で、頭を捕まれる。ギシギシと音を立て、仭も掴まれる痛みに表情を歪める。
「ぬ、ぐぅぅ…!」
ブレードから元の右拳へと戻していくと同時にシールドを頭へと集中させる。そうした後に仭は両脚を敵に押し付け、両腕で左腕を引っ張り上げる。パワーアシストを強化していて、腕を引っ張り上げる力はかなり強い。もっとも、そのままの状態の仭を敵がただ眺めているだけのはずがなく、ブレードで斬りかかってくるが、仭はアリーナに落ちている大剣を操って此方へ少しづつ呼び寄せていて、相手が斬りかかってきたのを見て一気に引き寄せる。飛んできた大剣は胸へ刺さり、それが壁になって行動を遮った。
その間に腕を引っ張り上げていると、ミシッという音を立ち、それを聞いて左腕と胴体の間にある関節部を見る。
(僅かだがコードが視える。それに胸に刺さってもなお、反応が全くない。…無人機だな)
ならば手加減無用。それを表すとばかりに、両腕のパワーアシストをさらに強化し、一気に腕を引き千切る。関節部分から引き千切られたコードが見え、それは人が乗っていないことを十分に示すことであった。
「っぁ…楯無っ!こいつらは無人機だ!」
「ええ、わかってるわ!」
頭を掴まれた名残に表情を幾分歪めつつ、距離を離しながらもすぐに楯無へこのことを報告。だが、すでにあっちもこっちを見てかどうかはわからないが、無人機とわかっているようだ。
「さて、程々に破壊し始めるか」
よく意味がわからないことを呟きながら、念のためにと腕の部分に手を突っ込んでコードなどを握り、そのまま引き千切る。その後に無人機の左腕の手首辺りを右手で持ち、笑みを浮かべる。俗にいう悪い笑みだ。
胴体に突き刺さっている大剣を引っこ抜こうとしている無人機に対して、仭は接近して釘を打ち込むように、無人機の腕を大剣へ叩き付ける。それに乗じて大剣はさらに胸へと突き刺さり、ショートするような音が響く。それにダメージを与えてはいると確信しながら、さらに奪った腕を振るった。――試合を中断されたことと、全校生徒に色々と誤解(?)を受けた鬱憤を晴らすばかりに。
次話は会長が無人機をセカンドシフトしたISで圧倒して披露してくれる…はず。