IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
もうまんまタイトル通りです。
第91話 鎮圧完了と今後について
「さて、あれがここだけに襲撃したとは限らないし、ささっと終わらせちゃわないとね」
対峙する無人機に対し、楯無は余裕の表情。だが、そこに浮かれや油断は見られない。
無人機の熱線を回避しながら、ひとまずランスへ搭載されているガトリングガンを放つが、ダメージがあまり見られない。むしろそんな武装は効かないとばかりに、楯無へ突っ込んでいく。だが、楯無は動じない。だってそういう突撃は普通にやってくる者がいるのだから。
楯無はそのままランスを構え、無人機がある程度近づいたところで突く。だが、それはぎりぎりかわされ、装甲を削るに留める。ランスを紙一重でかわした無人機は左腕を楯無に向ける。零距離で熱線を放とうしていたのだが、突然左腕が凍る。熱の放出によって氷結させる清き冷情だ。無人機は熱線を出す際のエネルギで解凍しようとでも考えたのか、そのまま止まらない。しかしタイムラグが出るのは必須なわけで、楯無は見逃すはずもない。
楯無は横へ回避しながらアクエリアスから霧を放出していく。数が倍になり、またナノマシンプラント能力も倍となっていることから、楯無と無人機の周囲にはすぐに濃い霧で囲まれる。
「凍ってしまいなさい」
無人機にその霧を纏わりつかせ、楯無自身は後ろへ下がると一気に氷結させる。無人機は動かなかったのではなく、動けなかった。一足先に無人機の両足へ清き冷情を発動されていたからである。
だが、アクエリアスから霧が未だ放出され、凍った無人機の周囲を漂っている。
パチンッ
指を鳴らす。凍った無人機に纏わりついている濃い霧は、それを合図に霧は瞬時に気化して水蒸気爆発を起こした。破片が飛ぶも木端微塵にはさすがにならなかったようで、無人機――いや、機械の残骸とかした無人機が爆発した箇所で残っている。それでも倒したことには変わりはない。
「きたねぇ花火だ(棒読み)。花火の元が機械の塊じゃ仕方がないとも言えるが」
「…………確かに綺麗じゃないけどね」
後ろの方から聞こえた声に、楯無は振り向きながら答える。その声の主は無人機であった残骸を台座にして座っていた。
「そっちは随分派手にやったわね」
「破壊ではなく、解体でこうなってるんだ。一応復活しないようにコアを潰しておこうと、装甲引っぺがすなり、中身を握り潰すなりしてな」
そう溜息を吐きながら仭は無人機を残骸にした経緯を語る。
今の仭の姿に、楯無は連戦や機体の特徴上わざと攻撃を受けるなどもあって疲れているんだろうと感じる。
「はぁ、事が終われば楯無の機体が第二形態移行した件とかで絞られるんだろうなぁ」
前言撤回。
「そんなどうでもいいこと(無人機襲撃に比べて)を考えてる場合じゃないでしょ」
「いつもどうでもいいこととか考えてそうなお前に言われるとは。俺も堕ちたものだな」
どうやら軽口を叩ける余裕はあるらしい。というか、そのように思われていたのか。
仭が急に動いたのでどうしたのかと思っていると、装甲がなくなりまた戦闘不能になっている無人機に近づいて、機械の部分に手を入れる。機械を除けていくと突然ある部分を何度か殴る。
再び手を入れ、何かを掴みながら引き抜いていくと、罅が入ったコアが手の中に納まっており、仭はそのまま力を込めてコアを握りつぶした。
「あなた…」
「言いたいことはわかってる。だが、残しといたって使いもしないのなら存在しても仕方がない。こうした方がいいんだ」
そのままさらに言葉を続ける。
「さて、俺達じゃ被害を最小限にしてアリーナのシールドを破ることができない。そういうわけでお前の武装が通用するか頼む」
楯無は観客席の方を見る。出口を教員達が壊したようで避難が進んでいる。
仭のISもその気になればアリーナのシールドを破壊できるが、被害が大きすぎる。簪のISも夢現では破れず、また山嵐を使えば破壊できるかもしれないが、どの程度ミサイルを使えば破壊できるかわからない以上、使うべきではないと判断。シーナのISはアリーナのシールドを破れる威力を持つ武装を所持していない。
故に楯無のISの武装ならばシールドを破れるのではないかと思い、無人機を倒すのを待っていたわけだ。ちなみに手を出さなかったのは、至極単純に邪魔になると察したからである。
「ええ、わかったわ」
「それで現状どうなっているか聞いたが…離れろ!」
「!」
楯無は瞬時にそこから離れると、彼女が立っていた場所に熱線が振る。その後先程と同じ外見から同じ無人機と思われる2機のISが降りてくる。しかももう2機の無人機の姿が見える。どうやら計4機が少なからず、自分達を相手にしてくるらしい。
「ああ、ったく。増援は予想してたが…」
仭は心底うざいと表情に現しながら、鎖を左腕の部分から出すと、自身の左拳にエネルギーを送る。すると拳は発光し始めた。
「学年別トーナメントのラウラ(と箒)戦以来、使ってはいなかったが…反動=破損になる状態のこれに耐えられるか!?」
そして左手を無人機に向けて構えると、レーザーを放つ。それは普段放つものよりも早い最高速度で、崎野とは別に熱線を放って新たに入ってきた無人機らに向かっていく。
入ってきた2機の無人機のうち1機が、そのレーザーの当たる範囲に入り、避けられないと悟ったのか円を掻く様に無人機の周囲にあったシールド・ビットが並ぶ。そしてその円にエネルギーが生じた時、仭の放ったレーザーが中途半端なエネルギーシールドをぶち破って胴体を撃ち抜く。そのまま大爆発を起こし、また近くにいた無人機も、爆発や破片を食らって軽くない損害を負う。
「…高周波振動する水でもないのに、あんな簡単に突き破る?」
「あれだ。反動が大きい大技」
その言葉に楯無は振り向くと、罅が入っていて使い物になりそうにない左拳が目に入った。仭にいいから前向けと視線で促され、無人機に向けて山嵐を放つ簪と両手両足に銃火器を持って発砲しているシーナの姿を目にしながら、残っている無人機を相手しにいった。
新たに無人機たちが乱入する少し前。
楯無が懸念した通り、無人機は別の場所――アリーナやピッド、整備室に現れた。それを近くにいた専用機持ちが対応、専用機持ちペアがそれぞれ1体ずつ相手していた。
大部分は決着をつけている中、無人機と交戦しているペアが1組ある。
「ああもう!斬り飛ばされた腕が繋がるとかあり!?」
(こりゃ、もう胴体をぶった斬った方が早そうだな…)
それは一夏と鈴のペア。一夏が斬り飛ばした左腕が、ひとりでに動いて元の箇所につながり、普通に動かしてる光景に驚いているところであった。
他の専用機持ちにも言えたが、絶対防御が阻害されたのを知って、思い通りに攻めることができず、苦戦をしいられている。お互い近接戦に持ち込もうにもやはり思うように近づけず、雪羅や衝撃砲による遠距離攻撃を放っても、シールドビットで防がれていた。
長引いてる要因はこれだけではなく、無人機の一撃を一夏が食らってしまい、それが一夏の動きに支障をきさせてるため、鈴が庇って戦ってしまっているのも要因の1つだった。
「(まさか絶対防御が阻害されてるなんて…いや、後悔するのは後だ。このまま長引かせて俺だけ戦えなくなるわけにはいかない)鈴、もう1回さっきの頼む」
「また?さっきやって通用しなかったじゃない」
「頼む」
「…わかったわ。白式のエネルギーもそろそろヤバいだろうし、決めなさいよ!」
そう言って鈴は衝撃砲を放つ。無人機は普通に避けるが、連続で何発も放つ。やがて当たりそうになると無人機の前に躍り出たシールド・ビットによるエネルギーシールドに阻まれる。そうやって鈴が衝撃砲を放っている間に、一夏は後ろへと移動し、瞬時加速で無人機に突っ込んでいた。
だが、無人機は衝撃砲による射撃を避けながら一夏の斬りかかりをも避け、左腕を一夏へ向ける。熱線が放たれるのを”再び”理解しながら、一夏は雪羅のクローモードによるエネルギー爪で斬り上げていく。それは避けようとした無人機の左腕を斬り裂き、完全に分断とまではいかないものの、かろうじて繋がっている状態で、熱線を放とうとしたことによるものか爆発する。
「うおおおおおおおお!!」
爆発の影響で動きが止まった無人機に、一夏は両手で持ち直し、零落白夜を発動した雪片弐型を振り下ろす。無人機を文字通り一刀両断し、爆発。やっと終わったと2人は一息付いた。
「やったわね一夏」
「ああ、決めたぜ鈴」
その後、すべての無人機が破壊され、ひとまず一難去った。
そしてその日の夜。
「…まだ痛むな。ったく、あの暴力教師が。何度も殴るんじゃねぇよ」
「随分と絞られたわね」
「決勝の件に関しては、正直どうでもいいと言いたい。見世物じゃあるまいし」
そう話しながら学園の敷地を歩く仭とシーナ。
トーナメントは当然ながら中止となり、専用機持ち達への事情聴取等はひとまず明日へと回された。だが、その中でIS学園生ではないシーナは、本人の予定もあって学園に留まることはできない。故にシーナは一足先に事情聴取等をされた。…そのパートナーであった仭もついでに、もとい楯無のISが第二形態移行した件について。
「そりゃあ第二形態移行見逃したなんて生徒達にとってこれほどおしいことはないわよ。一応あなたが空間内での戦闘を映像でとっておいたからあの程度で済んだんでしょうけど」
「…言っても誰が予想付くよ。第二形態移行するなんて」
「ま、そうだけど」
「あーったく、絶対に事件での八つ当たりが混じってたぞあれは」
「一般生徒じゃあるまいしね。あそこまで言わなくとも、十分理解するってのを忘れてたわよあれは」
先の言葉から想像がつくかもしれないが、彼は殴られた。何度も殴られ、いい音を発した。そして『模擬戦では使うなとは言わぬが、今回のように生徒達が見る中で使うなこの馬鹿が』と言われた。
「…さて、こんなどうでもいいこと(どうでもいいことではないが)より」
「ええ、やっぱり聞き入れなかったわね彼女。前回の襲撃の時、回収した分も含めてISコアを”破壊”した方がいいって」
「まあ、最初っからそれは期待してなかっただろ?コアを狙う連中からどう対処するかについて聞くのが目的だったわけだし」
破壊しろと言ったのは、そうしてくれた方が学園が僅かとはいえ狙われる可能性が低くなるからだ。だが、いくら学園のためとはいえ467個しかない貴重なISコアを破壊するなど当然了承するわけがなかった。
もっとも、そんなことは2人には予想済みである。故に今度は、それを狙ってくる連中に対して対策はあるのかと問いただした。
「本当に大丈夫なのかって言いたくなるがな。いつも後手後手だし」
「襲撃レベルは高いけれど、言い訳にはならないわよそれ。…あるって言いきったってことは、とうとう彼女が暮桜でも使うのかしら」
「…そのことなんだが」
仭が立ち止まり、それを見たシーナも立ち止まって仭の方に視線を寄せる。
「暮桜を何故使わないか。ちょっと考えてみたんだが、彼女が出撃しない理由は暮桜が使えないのを隠すためではないだろうか?」
仭の言い分に、思わず目を見開いて考え込んでしまう。
「……あり得ない話じゃないわね」
「と言っても、出撃しないのに理由を付ければだがな。…自分はでなくとも大丈夫だと判断して出撃しなかったってのはあまり考えたくはないがな」
さすがに絶対防御が阻害されていたのもあって、無人機戦によって負った専用機持ち達の負傷度合いは軽くなかった。被害が少なかったのは、ISが第二形態移行したのもあって余裕のあった楯無と絶対防御なしでも普通に(他と比べてで)戦えてた仭。それと近くにいた簪とシーナくらいであるらしい。もっとも、負傷自体は仭はしているが。
もし千冬が暮桜を使って出撃していれば、白式と同じ単一仕様能力の零落白夜を使ってアリーナのシールドを斬り裂き、無人機と戦うことができただろう。
「もしそれが当たってたとしたら、襲撃の度合いによってはいくら元世界最強でもなす術がないかもね」
「……どうだろう。確かにあの人も人間だが、正直常識を殴り捨てなくちゃいけないところがあるからな。…勝ちもしないが負けもしないんじゃないかと俺は思う」
遠距離武武装を主に使う相手だったとしても、1対1だったら千冬も(武装によるが)勝てるとは思う。だが、2人がかりや3人がかりの場合はと考えると、いかに元世界最強でも訓練機では勝つことができるのかと思わざるを得なかった。
襲撃者はその目的を達成できる算段があるから出撃してくるものであるわけで、すなわち実力が高い。また千冬はそもそも”1対1の戦い”で世界最強に君臨したという事実が、2人を悩ませる要因でもあった。もちろんこれは剣だけしか使わないのだったらという前提ではあるが。
「…どちらにせよ。黙って見てるわけにはいかないということだ」
「そうね。その辺も含めてきっちり報告させてもらうわ」
緘口令を敷かれたからといって、今回の件を報告しないはずがない。いや、それ以前にクラス対抗戦時の無人機による襲撃もそうだが、外部に隠し通す方がそもそも無理である。それに緘口令を敷かれたからと言って、専用機持ちはともかくとしても兵士ですらない生徒達が口を滑らすことだってある。
それに組織に報告するのは、今後学園に近づくであろう敵に対するためでもある。そう言って一応学園には無理矢理納得させた。その過程で色々仭が(わざと)ストレートに言って、千冬に何度か殴られたが。
「…そろそろお別れね。まったくとんだ事件に巻き込まれたわ」
「そいつは済まなかったな。実はを言うとある程度襲撃が来ると予想してお前を呼んだんだ」
「……ったく。まあ、無人機の特徴等をこの目で見れたからよしとするわ。じゃ、例の約束守ってもらうから」
「ああ」
シーナの言葉を耳にしながら、仭は彼女とIS学園の正面ゲート前で別れる。
(…そのうち学園地下特別区画にでも、どうにかして侵入するべきかな。そこにおそらく…暮桜はある)
それも機会があればでいいかと、そう思いながら仭は歩いてきた道を引き返した。
後半は回収されたコアと千冬についてでした。