IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第9話 再び戦う2つの黒
「仭…」
「一夏、シャルル、下がってろ。奴はまだ終わってない…!?」
そう言った瞬間俺の体が動かなくなる。
「…なるほど、AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)、慣性停止結界か」
ラウラがいつのまにか立っている。
「また貴様か、今度こそ貴様を潰してやる」
「またかはこっちのセリフだ、何回問題を起こす気だ。また俺が止めることになっただろうが」
「ふん、減らず口を貴様は動けないくせに何を言うか」
人の話を聞けこの自己中。前の話を結局聞き入れなかったか。で、
「確かにな、だがそれは多量の集中力が必要だ。今のお前は集中力が下がっている。その程度のAICでは俺は縛れない」
「なっ!!」
俺は『干将・莫耶』を1本展開し、そのまま投げる。
「くっ!!」
ラウラはそれをかわしたために俺にかかってるAICが完全に解ける。
「やはりな、AICで止められるのは対象1つだけか」
「…………!!」
図星か。
「さて」
俺は姿勢をくずした自然体の構えになる。
「なんだその構えは?姿勢が崩れてるぞ?」
「ご忠告どうも。ただこれも別にふざけてるわけじゃない」
簡単に言うと腰を落とし、半身に構え、手を宙ぶらりんにしてる状態だ。そのままブレード3本ずつを両腕のあたりに展開し、爪のついたナックルのようにする。
「さて来な」
そう言うと同時にワイヤーブレードが襲い掛かってくるがブレード付きナックル…面倒なのでブレードクローと命名。それで攻撃を受け止めたり、避けたりしてラウラに近づいていく。
「ちょこまかとっ…これならどうだ!」
右手こちらに向けてくるが俺は勘ですぐにAICが来る前にその場を避ける(離れる)。
「何っ!?」
「いやいやあんな堂々と右手差し出したらAICが来ると知らなくても何か来るとわかる。右手を差し出すと同時にやれや」
「黙れえぇぇぇぇぇぇぇーーー!!!」
両手にプラズマ手刀を展開し、特攻して来る。別に挑発したわけじゃないんだが。やけになった攻撃ほど脆いものはないと言うのがまだわからないのか。俺もそのままラウラに向かって突っ込み、ブレードクローでプラズマ手刀を1本弾き飛ばしそのまま突く。ブレードと殴るように突く衝撃によるダメージがもろに入る。
「がっ!!!」
当然手を緩めずブレードクローで今度は斬りかかって吹っ飛ばす。それにより壁にぶつかるラウラ。
「…はあ、もういいだろ。いい加減にしてくれないか。お前も軍人で専用機持ちなら人の上に立つ役柄を持っているのだろう。もしここでこれ以上問題を起こせば、被害を被るのはお前だけではないし、織斑先生の顔に泥を塗ることになるんだぞ。それをよく考えた上で行動しろ」
「…こんな、こんな事で…」
冷静さを失っている。聞こえてないな。
「貴様はーっ!!!!」
瞬時加速を使って、俺に向かってプラズマ手刀を振り下ろしてくる。…もう気絶させるか?そう思っていると俺とラウラの間に何かが割って入ってきた。
「…やれやれ、これだからガキの相手は疲れる」
「千冬姉!?」
千冬さんがIS用近接ブレードを生身で軽々と持ち、攻撃を止めた。その姿はいつもと変わらず、普段着ている黒いスーツ姿。…やれやれ本当にこの人は人間離れしていると言わざるをえない。
「模擬戦をやるのはかまわんが、アリーナのバリアーを破壊する事態になられては教師として黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」
「…教官がそう仰るなら」
冷静な顔立ちに戻り、ピットに向かう。…お咎めなしか。
「お前らもそれでいいな?」
「は、はい!」
「僕もそれでかまいません」
「同じく」
↑から一夏、シャルル、俺が返事をする。俺達の返事を聞いて千冬さんはアリーナ内にいる生徒たちに向けていった。
「では、学年別トーナメントまで私闘を一切、禁止する。解散!」
千冬さんが手を叩き、アリーナ内にいた生徒たちが去っていく。さてあの負傷した2人の様子を見に行くとするか。俺は保健室に向かう。
*一夏サイド
アリーナの1件から1時間が経過していた。保健室のベッドでは打撲箇所に包帯を巻かれた鈴とセシリアが居た。
「別に助けてくれなくてよかったのに」
「あのまま続けていれば勝っていましたわ」
「お前らなぁ……まあ別に感謝されたくてやった訳でもないし俺自身がムカついて乱入しただけなんだけどさ、仭には感謝しとけよ」
「だからあのまま続けてれば勝て「どうやってだ?ラウラにダメージをあまり与えられてなかったお前らが?言わせてもらうがお前らの行動ははっきり言って馬鹿げている」
「「うっ……」」
仭の言葉に黙る2人。
「それにしても、大した怪我じゃなくて安心したぜ」
「こんなもの怪我の内には入らないわよ」
「そもそも、こうやって横になっている事自体無意味ですわ」
そう言って2人はベッドから降りようとするが
「「いっつううっ…!?」」
…馬鹿なのだろうか?
「馬鹿ってなによ馬鹿って!馬鹿!」
「一夏さんこそ大馬鹿ですわ!」
「まあ、確かに助けに行ったはいいが一夏もやられかけたからな」
返す言葉もない。
「好きな人に格好悪いところを見られたから、恥ずかしいんだよ」
シャルルが飲み物を買ってきた。部屋に入る際に何か言ったようだが、俺には聞き取れなかった。
「ななな、何言ってるのか、全っ然わかんないわねっ!」
「ベベっ別に私はそ、そういう邪推をされるといささか気分を害しますわねっ!」
2人ともシャルルの言葉に反応してるのか、だんだん、顔の赤みが増していく。仭にいたっては苦笑いをしている。シャルル、何を言ったんだ?
「はい、ウーロン茶と紅茶」
「ふ、ふんっ!」
「……」
鈴は渡されたペットボトルをふんだくり様に受け取って、セシリアは頭だけでお辞儀をし、何も言わず受け取る。
「ふう」
仭はこの様子なら大丈夫と思ったのか保健室から出ようとする。
「ん?」
仭が止まる。その時だった、象が猛スピードで走ってくるような地響きが聞こえ、そして次の瞬間、保健室の扉が空中を舞った。仭は何とかバク宙をして逃れ、吹き飛ばされた扉を躊躇い無く踏みながら入ってきたのは保健室を埋め尽くす程の女子生徒だった。
「織斑君!」「デュノア君!」「黒崎君!」
「な、な、何だ何だ!?」
「い、一体どうしたの?」
「…とりあえずみんな落ち着け」
『これっ!!』
仭の言葉が聞こえるはずもなく、俺達に突き出されたのは1枚の学内緊急告知文の紙だった。
『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行う為、2人1組での参加を必須とする。尚、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは―――』
「ああっ、そこまででいいから!」
「だから!」
ビシッと一斉に女子たちが手をこちらに伸ばす。
「私と組んで織斑君!」
「私と組みましょうデュノア君!」
「私と組もう黒崎君!」
確かに3人しかいない男子とペアを組みたいのはわかる。だけど、ここまで迫られると怖くてしかたない。それに
「え、えーと…」
シャルルはれっきとした女子なのだ。もし、誰かとペアになれば、特訓だとかは普通にするだろうし、なんらかの拍子でシャルルが女の子とバレるかもしれない。
「悪い!俺はシャルルと組むから諦めてくれ!」
こちらに一気に注目し女子は静まり返った。
「まあ、そういう事なら……」
「他の女子と組まれるよりはいいし……」
「織斑君とデュノア君ってのも絵になるし……」
女子達は納得したようだ。
『なら黒崎君!!私と組んで!!』
そうだ、仭がいたんだと思い、周りを見渡すがいない…?
「あれ?いない?」
「おのれ、逃げたか!」
「者ども!逃がすでないぞ!!」
女子たちは一斉に反転し、保健室から立ち去っていった。
「ふう」
「あ、あの一夏―――「やっと行ったか」
「「「「うわっ!?」」」」
シャルルが何か言おうとしたとき、逃げたと思われた仭が誰も使ってないベッドの下から出てきた。
「お、お前いつからその下に?」
「お前がシャルルと組むって言って注目されてる間。おそらくあいつらは粘るだろうからな。ペアについてはもう少し考えたいし」
仭はそう言いながら制服を叩く。そして唖然としている負傷者2人は我にかえり、今まで黙っていたが思いだしたかのように声を上げてきた。
「一夏っ!トーナメント私と組みなさいよ!幼馴染でしょ!」
「いえ!ここはクラスメイトとして私がっ!」
「ダメですよ」
そこにやってきたのは山田先生だった。
「お2人のISの状態をさっき確認しましたけど、ダメージレベルがCを超えています。当分は修復に専念しないと、後々重大な欠陥を生じさせますよ。ISを休ませる意味でも、トーナメント参加は許可出来ません」
「うっ、ぐっ……!わ、わかりました……」
「不本意ですが……非常に、非常にっ!不本意ですが!トーナメント参加は辞退します……」
「わかってくれて先生嬉しいです」
意外にあっさり引いた2人に山田先生は笑顔になる。
「おい、一夏。今日こそおまえのISを見てやるから整備室に来い」
「わかった」
そう言い俺達は保健室を後にする。廊下を歩いている途中に仭が
「そういえば一夏、俺の両親について知りたがってたな?」
「ああ」
このタイミングで話すと言うことは話してくれると言うことか?
「俺の両親は……死んだよ…」
「なっ!?」
俺は言葉を失った。
「……順を追って話す」
タイトルの意味は仭の機体も黒だからです。