IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第26話 専用機持ち達による作戦会議
「では、現状を説明する」
宴会用の大座敷に専用機持ちが俺を含めて10人が集まっていた。
「2時間前、ハワイ沖で試験稼動にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第3世代型の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。監視空域から離脱したとの情報があった」
「………」
全員が険しい顔つきになる。それは仭もだったがそれには驚きが少し混じっているようだった。
「その後、衛星による追跡の結果、福音はここから2キロ先の空域を通過することがわかった。時間にして50分後、学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することとなった」
!?つまり俺達で暴走したISを止めるのか?
「教員は学園の訓練機を使用して空域、及び海域の封鎖を行う。よって本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう」
周りを見てみるとラウラ達は気を張っていたが仭とアリィ、レイラは驚くと言うより、何か言いたそうな顔をしていた。
「何だ?言いたいことがあるなら言ってみろ」
それに気付いた千冬姉は仭達に言うように促す。
「では言わせてもらいます。…何故この件が学園に回ってきたのですか?」
『!?』
千冬姉がそういった後レイラが発言したが、その言葉にさすがに専用機持ちも驚愕を示すが仭とアリィはまったく驚いていない。どうやら考えていたことは同じだったようだ。
「なっ!?あんた馬鹿!?この件を食い止めるためでしょうが!!」
「そんなことはわかってんだ馬鹿。面倒くさいとかそういうこと言ってるんじゃない」
「問題は何故私達が派遣されたかです」
仭とアリィは冷静に鈴に言う。
「第2世代の調整だけでは福音のスピードには追いつけない。だからお前たち第3世代型以上の専用機持ち達にこの事態が派遣されたのだ」
千冬姉がレイラ達の質問に返すが仭は頭を抑える。
「そんなことはわかってるんですって、俺達が言いたいのはそういうことじゃない」
「私達が言いたいのは何故国家代表もとい我々よりもっと実力が上の者が派遣されないのかといっているんです」
「あんた達私達じゃこの事態は解決できないってこと!?」
レイラがそう言うと鈴がすかさず怒声を上げてくる。…だけど仭達の言うとおりかもしれない。
「そういう意味でレイラは言ったわけじゃないぞ鈴」
「しかし師匠、レイラの言い方は我々ではこの事態は対処できないと言っているものですよ」
ラウラの言い分に納得する。
「まあ、確かにレイラの言い方が足りなかった。けどレイラの言ってることは間違っていないぞ。もっと納得行くように言ってやろう。まず、軍用ISが相手じゃ俺達の競技用ISに勝機が皆無なのは一目瞭然だろうが。実力など以前の問題だ」
仭の言い分に反論をしていた専用機持ちは黙る。
「だから軍用ISが相手をするのが普通です。そうじゃなくても私達より実力のある者は派遣できなかったのですか織斑先生?」
「いや、そもそもアメリカ、イスラエル軍の動きはどうなってるんですか?」
その言葉に千冬姉はわずかだが顔を歪めていた。
「お前達の言い分はもっともだがそれは私にも分からん。だが、指令が来てしまった以上無視する事は出来ない」
「……わかりました。それなら仕方ありません。続けてください織斑先生」
その言葉に諦めたのか3人ともそれ以上は追求してこなかった。
「…それでは他に意見のある者は?」
「はい、目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
セシリアが手を挙げ、挙手をする。
「わかった。ただしこれらは2カ国の最重要軍事機密だ。けして口外はするな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも2年の監視がつけられる」
「了解しました」
モニターに映し出された"福音"の詳細なスペックデータが出る。データによると広域殲滅を目的とした特殊射撃型のISであった。
「広域殲滅を目的とした特殊射撃型……私のISと同じく、オールレンジ攻撃を行えるようですわね」
「攻撃と機動の両方を特化した機体ね。厄介だわ。しかもスペック上ではあたしの甲龍を上回ってるから、向こうの方が有利ね……」
「この特殊武装が曲者って感じはするね。ちょうど本国からリヴァイヴ用の防御パッケージが来てるけど、連続しての防御は難しい気がするよ」
「しかもこのデータでは格闘性能が未知数だ。持っているスキルもわからん。偵察は行えないのですか?」
「無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは1回が限度だろう」
そう話し合っている中、仭が再び口を開く。
「…話をまた割るが、俺はこの機体について少しなら知っている」
「何?」
全員が仭の方に注目する。
「福音のその翼は『銀の鐘(シルバー・ベル)』と言う、全砲身36門の同時展開を可能とするセシリアが言ったようにオールレンジ攻撃を行える武装だ。…そして1番やっかいなのはその主砲から出されるエネルギー弾は当たったら爆発する」
「なるほどな、確実に避けないと爆発をくらうというわけか」
「ええ、しかも軍用なのでエネルギー切れを起こさせるのはまず諦めた方がいい」
「…ということは一撃必殺の攻撃力を持つ機体で行かないと厳しい、か」
自然と俺に視線が集まる。その理由は当然わかっていた。
「…俺の、零落白夜か」
俺の言葉に全員が頷く。
「織斑、これは訓練ではない。もし覚悟がなければ無理強いはしない」
「……やります。俺がやってみせます」
「…ならば1つ問題があるな。零落白夜にエネルギーを使うために一夏を運ぶIS、それも福音に追いつける速度が出せるISが必要だ。…俺は機動力があるセシリアか簪が適任だと思う」
そう仭が言うとセシリアが口を開く。
「確かに私は本国から高機動パッケージのストライクガンナーを送られてきましたが、まだインストールが終了しておりません。……仭さんのISの単一仕様能力では速度を上げられませんの?」
「ああ、まあ不可能ではない。ただやはりエネルギーを多く使うし、いかんせん剣闘士と福音は相性が悪いし…長期戦向けのISだからな。それに単一仕様能力を使わなきゃスピードを大きく上げられないから駄目だ。確実に成功するためにはやはり俺なんかより適任の奴が行った方がいいに決まってるだろう」
「簪、行ってくれるか?」
「…行く」
俺の問いに簪は背定する。
「では今作戦は織斑と更識、両名で行「待った!待った!ちょっと待って!」…………」
天上から逆さまに顔を出す束さんが現れた。そして空中で回転しながら飛び降りてきた束さんは一瞬で千冬姉の前に移動する。
「…束さん、場の空気を読まないようならさすがに俺も怒りますよ?」
「ううん、真面目な話!聞いて聞いて!ここは断然、紅椿の出番なんだよ~!」
「何?」
すると、束さんの言葉に空中投影の画面が紅椿のスペックデータに変わる。
「紅椿なら展開装甲をチョイチョイといじれば、超高速起動なんて朝飯前だよ」
「展開装甲…?」
初めて聞くことに俺達は疑問を浮かべる。
「心優しい束さんの解説講座~」
「…展開装甲とは?」
「ひどい箒ちゃん…じーくんみた「いいから話してください束さん」
威圧感のある視線を仭はする。やめてくれ、この部屋にいる(千冬姉以外)人達が全員ひいてるから。
「で、では展開装甲っていうのは束さんが作った第4世代型の装備なんだよ!」
「だ…第4世代!?」
「まだ各国とも第3世代の1号試験機ができた段階なのに…!?」
「それぐらいの天才なんだよこの天災束さんは」
「…じーくん?本当に何で私の事をそう天災と呼ぶのかな?」
「お前が災害同様だからだ」
「ちーちゃんからの愛が痛い!!」
「織斑先生、どうやらこの人はドMのようですよ」
「知っている。束、いいから続けろ」
「むー、じーくんもかなりSだね。でもそんなじーくんも大好きだよ」
「あー、ぶん殴りてぇ…(早く話を戻してくださいよ)」
「言ってることと思ってること逆だよ!?そしてひどい!!」
「いいから話を戻してください」
「うー、わかったよー(後で寝込み襲って赤面した顔撮ろうっと)」
「束さん?後で夜に少々話がありますのでどうぞ夜に来てください♪」
「ア、アハハ。そりゃありがたいけどけ、結構だよ?」
「ハハハ、DAIZYOUBUデスって。それよりとっとと話を進めろ天災篠ノ之博士」
「呼び、いやな、なんでもありません!!ど、どこまで話したっけいっくん!?」
もう仭が束さんとも呼ばなくなった。何か機嫌を損ねたんだろう。実質顔が笑っているが笑っていない。シャルがする顔なんかとは全然違う。もうあれは鬼の類だ!!ちょ、仭、今の顔でこっち向かないくれで!怖ぇよ!!
「えっと、展開装甲っては束さんが作った第4世代型の装備ってところでした」
「そうそうそこからだった」
仭を見ると束さんを若干睨んでいるがとりあえず普通の表情に戻ったようだ。
「通常ISが超高速起動をするにはパッケージが必要になるよね。でも第4世代型は『パッケージ換装を必要としないIS』。装備、装甲が独自に変化する事で能力を何通り、何倍にも高められる」
「…それが展開装甲」
「ちなみに白式の『雪片弐型』も展開装甲が使われているよ」
『えっ!?』
てことは白式も第4世代型ISになるってことか!?
「なるほど。白式の零落白夜を発動する時に刀身が変化するあれが展開装甲か」
「その通りだよじーくん」
「あれ?剣闘士もブレードにエネルギー送る時に刀身が変化するしますよね?」
「てことは…」
「…仭のISも第4世代になるってことか…?」
『えぇ!?』
「ん?まあ、そうなるな。てか今はそんなことどうでもいいだろ」
どうでもいいって…まあ、確かに今はそれどころじゃないけどさ。
「でまあ、それが成功したから全身のアーマーを展開装甲にしてあるよ。だから今回の作戦なんて夕飯前だよ」
周りを見てみるとさすがにアリィとレイラも驚いていた。何せそれは雪片弐型を全身に搭載されてるということになるのだから。しかし仭だけはひどく冷静な表情をしていた。何だ?何か考えているようだが…
「…紅椿の調整はどのくらいかかる」
「7分もあれば余裕だよ」
「そうか…ならやれるか篠ノ之?」
「はい…やります!!」
俺と箒がやるのか。…しかし、何か引っ掛かる。
「…………………」
ふと仭の方を向くと厳しい表情で箒を見ていた。
考えてみたら軍用ISに競技用ISが挑むのはどうだろうと原作を読んでいくうちに思いました。しかし専用機持ち10人はやはりどうだろう、多すぎたか?…簪だけでも出番早すぎただろうかと後悔してます。いまさらですが。