IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第29話 すれ違い、再戦への決意
「………………」
心電図の音が響く中、私は旅館の一室で布団に横たわる一夏の傍で座っていた。ここに運ばれて3時間経つが一夏はいっこうに目覚める気配が無い。
『作戦は失敗だ。以降、状況に変化があれば召集する。それまで各自現状待機しろ』
そう千冬さんに言われ、なおかつ責められなかったことが私にとって辛かった。
「私のせいだ…」
私のせいで一夏の足を引っ張ってしまい、重症を負ってしまった。部屋の扉が開く音が聞こえ、顔を扉の方に向けると…仭が入ってきた。
「…一夏の様子に変わりはない、か」
そう言うとすぐに部屋を出ようとする。
「…私には何も言わないのか仭?」
「…何をだ?」
足を止め、こちらに振り返ることもなくそう言った仭に私は声を荒げてしまった。
「私のせいで一夏は重症を負ったんだぞ!?なのにどうして私を責めない!!」
「…確かにお前には責任があるだろう」
こちらを向き、そう言ってくる仭。
「…だがお前はただ単に一夏の代わりに俺に責めて欲しいだけだ。こちらにもお前らの援護に向かうのに遅れたから非はある」
「…下手な慰めならよしてくれ」
私は仭の言ったことに納得ができず、拳に力を込めながら言った。
「私が敵の前であんな行動をとってしまったから!!そのせいで一夏は私を助けるために福音の攻撃を受けた!!そして…」
「…一夏がこんなことになってしまった、か。だがお前は何か勘違いをしている。慰めてなんざいない。一夏が重症になったのは事実であるし、お前にも俺にも非があるということだけだ。例え俺は出撃してなかったとしてもお前を責めない。言ったところで状況が変わるわけがないしな」
「…………」
「それにお前が専用機を持って浮かれていることぐらい最初からわかっていた。故に忠告もした」
「…それを私は聞かなかった」
「だから俺はお前を外そうとも考えたがな。だがやはりやめて一夏にお前を案じておくように言った。言われなくてもやっていただろうがな」
そう言って話は終わりと仭は部屋を出て行こうとする。
「待て仭!!何故私を外せと千冬さんに言わなかった!?」
「…言ったところでお前は納得するか?力を手に入れたと自意識過剰になっていた状態で?箒はまだ専用機持ちになって日が浅いから、浮かれているから、と言って素直に聞いてお前は作戦を降りたか?」
「それは……」
「はっきり言う。降りなかっただろう。軍用IS相手でも姉さんの作ったISだから一夏達にも対抗できる、など考えているお前は感情が高ぶって福音相手に無茶をするのも目に見えてる」
「………………」
否定できなかった。数時間前の私にこの作戦を降りろと言われたら確実に反対して、仭に力を見せつけようと福音を相手にすることだけに集中し、周りを見なかったことが想像ついてしまう。
「…だから俺は何も言わなかった」
「なら…なぜ私にそうなるからと私に言わなかった!!」
言ってしまった。返答はわかりきっているのに、自分でもわかりきっているのに感情に任せて言ってしまった。仭は振り向いて
「…言ったところで…何か変わったか?」
「っ!?……」
「…確かに、お前の言う通り殴られてでも、…恨まれてでも止めるべきだったのかもしれないな」
「………………」
私は何も言うことができなかった。
「…箒、最後に言っておく。力の使い方を考えろ。力に溺れては自分だけでなく周りを巻き込む。理由もなく力を振るうのは暴力だ。どんなに強い専用機を持ったからといってそれを使いこなせなきゃ自分の実力じゃない。…それがわからないのならお前はもうISを使うな」
『ISを使うな』その言葉が私に突き刺さる。そう言って仭は部屋を出てって行った。
*仭サイド
俺は一夏が眠っている部屋を出てみると鈴達がいた。幾人か今はいないが。
「…帰ってきたら一夏のことを心配もせずに昼寝をして、起きたら箒に説教なんていい身分ね」
「やることがないもんでな」
俺がそう言うと鈴が怒声を含めて言ってきた。
「あんたは一夏のことが心配じゃないの!?」
「…その言葉は貴様といえども怒るぞ。心配していないわけがないだろ」
「そのわりには行動がそうじゃないけどね」
皮肉を込めてシャルロットが言ってくる。俺に怒ってる理由は一夏のことを心配してる様子が見られないのと帰ってすぐに睡眠を取ったことだろう。…まったく。
「福音の暴走事件とてまだ続いてるんだぞ。やることがないから無駄に動いたりせず休んだだけだ」
「やることがないって…一夏のそばに居てあげるとか考えないの?」
「それで一夏が目覚めるのか?」
「それは…」
「それが悪いこととは言わねえよ。だが俺は専用機持ちだ。私情に流されず行動しなければならない。…福音を倒しに行こうなんて馬鹿なこと考えるなよ」
俺はそう言い残し鈴達を後にする。怒りの視線を感じるが知ったこっちゃない。
「…損な役ですね」
「そうですね」
しばらく廊下を歩いているとアリィとレイラに会った。
「何だ聞いてたのか」
「ええ、人の気持ちを知りもせず好き勝手言ってる連中との話をね」
「レイラ」
「わかってますよ中尉、別にあの子達にとやかく言うつもりはありません」
「それで数時間睡眠してどうです?」
「ん、まあさすがに3時間近く休めば肉体への負担は回復したな」
「そうですか…ところでどこへ?」
「わかっているだろう?」
「…織斑先生に出撃許可を貰いに行くのですね」
「今度は
「構いません」
「アリィは?」
「止めても無駄だってわかってますから」
「そうか。…それと嫌な予感がする。お前達は旅館で待機しておいてくれよ」
「「了解」」
そして俺は千冬さんのいる宴会用の大座敷部屋に向かう。行くのはむろん一夏のこともあるがナターシャさんのこともある。故に俺は福音を倒しに行く。
*箒サイド
「おい、男女。今日は木刀、持ってないのかよ?」
「…竹刀だ」
私は小学2年のころ、掃除の時間で男子たちに好き放題言われていた。
「うっせーなお前ら、暇なら帰るか手伝えよ」
「なんだよ織斑?お前はこいつの味方かよ」
「俺知ってるんだぜ。こいつら朝から一緒に登校してるし、夫婦なんだよ」
「マジかよ!?」
「信じられねぇよなぁ。それに、こいつ男女のくせにリボンなんかしてんだぜ」
男子達が言ってる事に腹が立った時、一夏が男子の1人を殴った。
「何しやがんだ!」
「先生にチクるぞ!」
「うるせえよ」
そこから1対3のケンカが始まった。一夏は男子3人に大立ち回りであったが男子1人が一夏の隙を突いたところを
「この野郎!!」
殴ろうとするが突然後ろから手が伸びてきて男子の腕を掴んだ。
「うるさいぞお前ら」
「黒崎!お前も織斑の味方すんのかよ!?」
その時はまだ知らなかったが仭だった。
「もう1度だけ言うぞ。お前らうるさい。掃除もしないんだったら廊下で騒いでいないで帰れ」
「先生にチクるぞ?嫌だったらこいつ抑えるの手伝え!!」
そう1人の男子が言うと仭が掴んでいた男子の腕を捻った。
「いででででで!!」
「ふーん、なら先生に言うか?『篠ノ之さんを3人がかりでいじめてたら織斑と黒崎に暴力を振るわれた』って?面倒な事に巻き込まれたいのなら今すぐ一緒に職員室に行ってやるが?それとも…」
「いだだだだだだだだだ!!!!!!!」
仭はさらに腕を捻る。それを見て男子2人は少し怯えている。
「俺達を痛めつけて口封じでもするか?だったら今のこいつの悪化した状態に全員させてやるが?嫌だったら黙ってとっとと帰れ!」
仭は腕を掴んでいた男子を押し出すようにして放す。そして男子3人はすぐさま荷物を持って退散した。
「…まったく、あまり派手にやりすぎようとするなよ一夏?」
「ああ、悪い」
そう言って2人は教室に戻る。
「…お前は馬鹿だ」
あの後、あいつらは先生に報告はしなかったようで、現在篠ノ之道場で一夏と共に水道で顔についた汗を落としている。
「あん、何がだよ?」
「あんな事をすれば、後で面倒な事になると考えないのか?あいつが来なかったら本当に面倒事になってたかもしれんのだぞ」
「考えねぇな。許せねぇ奴はぶん殴る。大勢で1人をいじめるとか男のすることじゃねぇ。それに、面倒な事にはならなかっただろ?」
「それでもだ」
「まあ、気にすんなよ。それと前にしてたリボン似合ってたぞ。またしろよ」
「ふ、ふん!」
「じゃあまたな、篠ノ之」
「ま、待て!」
「ん?」
「私の名前は箒だ。いいかげん覚えろ。それに父も母も姉も篠ノ之なのだから、まぎわらしいだろう…」
「わかった。じゃあ一夏な」
「な、何?」
「名前だよ。こっちも織斑は2人いるから、お前を下の名前で呼ぶんなら俺の事も一夏って呼べよな」
「わ、わかった…一夏」
「ああ、じゃあな箒!」
私は一夏との思い出を思い出していた。その時の一夏の笑顔は鮮明に覚えている。
「…………」
私は不意に左手首に目が行く。赤の2本の紐に金と銀の鈴がついている紅椿の待機状態。そして仭に言われた言葉を思い出す。
『ISを使うな』
(私は…もう、ISには…)
そう決心をつけようとしたとき、扉が乱暴に開く。しかしその方向に視線を向ける気力はない。
「あ~、あ~、分かりやすいわね。あのさ、一夏がこうなったのあんたのせいなんでしょ?仭との会話聞いてたわ」
遠慮なく入ってきたのは鈴だった。
「……………」
「で?落ち込んでますってポーズ?…っざけんじゃないわよ!!」
鈴が私の胸倉を掴み、体を鈴の方向に向かされる。
「やるべきことがあるでしょうが!今戦わなくてどうすんのよ!!」
「…私は、もうISは使わない…」
「っ!」
バシンッ!!
頬をビンタされ、再度鈴は締め上げるように胸ぐらを掴んできた。
「甘ったれてるんじゃないわよ!!専用機持ちっつーのはね、そんなワガママが許されるような立場じゃないのよ!!それともあんたは……戦うべきに戦えない、臆病者なわけ!?」
鈴のその言葉に私の心に火が点いた。
「なら…ならどうしろと言うんだ!?もう敵の居所もわからない!戦えるなら、私だって戦う!!」
自分の思いをぶつけると鈴はため息をついた。
「やっとやる気になったわね。…あ~あ、めんどくさかった」
「な、何?」
「場所ならわかるわ。今ラウラが――」
言葉の途中でちょうど扉が開く。そこに立っていたのはラウラだった。
「敵の所在が掴めたぞ。ここから30キロ離れた沖合い上空に目標を確認した」
「さすがはドイツ軍の特殊部隊、仕事が早いわね」
「これ位は造作もないそれはそうと、貴様の方こそ準備はできているのか?」
「当然。甲龍の攻撃特化パッケージはインストール済み。3人は?」
「こちらも完了していますわ」
「僕も準備OKだよ」
「いつでも…行ける」
「ま、待ってくれ。本当に行くのか?命令違反じゃ…」
「だから?あんた今言ったわよね。戦うって。命令違反だからってこのまま何もしないでいられるの?」
「私は…戦う、戦って勝つ。今度こそ負けはしない!」
「決まりね」
ふふんと腕を組み、鈴は不適に笑う。しかしここで1つ疑問が生じた。
「他の専用機持ちは連れて行かないのか?」
「…あの2人はここを教員と交替で敵襲が来ないか見張ってるから無理よ」
「なら仭は?」
「仭?あんな奴が手伝うなんてもう思っちゃいないわ」
?周りも見ると仭は来ないとわかりきっているようだった。仭は鈴達に何を話したのだろうか。しかし私はその疑問より福音を今度こそ倒すという思いの方が勝っていた。
「そんなことより作戦会議よ。今度こそ確実に墜とすわ」
「ああ!」
今度こそ負けない。己の力を見誤らずに勝つ。
福音との再戦は次話です。今回少し箒に厳しかったです。箒ファンの方すいません!仭は真面目なときは真面目。そういう設定を入れるためでした。箒がこれからアンチとかになるわけではないので。