IS<インフィニット・ストラトス> ~白き騎士と黒き暴君~ 作:狂戦士
第45話 恋に騒がす六重奏
「………………」
夏休みも終盤に差し掛かったある日、シャルロットは『織斑』と書かれた表札を見ていた。
(…大丈夫、大丈夫。今日は家にいるって言ってたし、一夏は迷惑がったりしない……)
思いとどまること10回。そして再びインターホンを押そうとしたとき
「何やってるんだよお前?」
「ひ!?」
声をいきなりかけられ、後ろを見るとバイクにまたがってシャルロットを見ている仭の姿があった。
「じ、仭!?」
「いや、別に驚かせようと思ったわけじゃないぞ?ただ何回もインターホンを押そうとして思いとどまってるの見たら不審に思うのは普通だろ?」
「ど、どの辺りから見てたの?」
「『一夏の家についたけど…い、いきなり来て迷惑がったりしないかな?…大丈夫、だよね?多分。だけど…』って自問自答のスパイラルにハマってたとこぐらいから」
「っ…////」
ほぼ最初から見られてたことで恥ずかしくなり、穴があったら入りたいと思いながら何とか話題をそらそうとする。
「じ、仭も一夏の家に用があるの?」
「んー、たまには一夏の家にでも行くかと思ってきたわけだが…またの機会にするとしよう」
そう笑みを浮かべながら仭は言う。
「そ、そう。それにしても仭、バイク持ってたんだ」
「…話の話題をそらそうとしてるのが見え見えだぞ。大丈夫だ。奴には言わないから」
「な、何で一夏なの!?」
「俺別に一夏って言ってないが?」
「…………/////////」
「まあ、そう睨むな。本当に誰にも言わんから。…さて、俺も学園に戻るかな」
そう言ってヘルメットを被り、バイクにエンジンをかけて音を立てながら走り去っていった。
「………」
「あれ?シャルじゃないか」
「!?」
仭が去った姿を見届けていると、再び後ろから声がかけられ、振り返ると一夏の姿があった。
「い、いいいい一夏?ほ、本日はお日柄もよく…じゃなくて!!」
「?」
「き…」
「き?」
「来ちゃった♪」
そう言ったシャルロットは
(う、うわーーー、僕の馬鹿!僕の馬鹿!!何彼女みたいなこと言ってるのさ!?)
自分で言っておいて自分を責めていた。
「そうか。まあ、上がってけよ」
「上がっていいの!?」
「?そのために来たんだろ?」
「そ、そうだけど…」
「あっ、もしかしてこの後予定があったか?」
「う、ううんっ!全然!まったくっ!微塵もないよ!!」
「ハハハ、変な奴だな」
そう言って一夏は家に入ろうとする。
(へ、変な奴っていわれた~~)
ショックを受けていた。しかし追い打ちをかけるように
「ただいま簪、シャルも来たぞ」
「「え!?」」
簪がいた。
「お、おかえり一夏。それと…こんにちは」
「あ、うん、簪」
「いや、実はな。ちょっとホームセンターに買い物に行って帰ってきたらシャルが玄関前にいてな」
「そ、そう」
「か、簪はいつから一夏の家に?」
「確か…1時間ぐらい前に来たんだったかな」
「…………」
2人はソファーに腰掛けていて、それぞれ思いを寄せていた。
(簪、意外と抜け目ないな……それにしてもここが一夏の家か。一夏が手入れしてるんだっけ)
(一夏と2人っきりだったのに…はあ、私ってかなりついてないんじゃ…)
ちなみに一夏は2人にお茶を出すために台所にいる。
(一夏って家事も料理も出来るからいい旦那さんになるよね。だ、旦那さんかぁ)
(?シャルロットは何で顔を紅くしてるんだろう…)
ふと思ったことにシャルロットは顔を紅くする。
「ほい、麦茶」
「「!」」
「今朝作ったやつだから薄いかもしれないけど、そこは許してくれ」
「う、うん」
「…ありがとう」
その時チャイム音が鳴り、一夏は玄関に向かった。
「は~い。どちらさまですか?」
「い、一夏さん」
「おっ、セシリアじゃないか。どうした?」
「丁度近所を通りかかったので、少し様子を見に来ましたの」
「そっか。じゃあ上がっていけよ」
「はい!あ、あのケーキ買ってきましたの!」
「お!サンキューな」
「はい!」
セシリアは上がってくるがこの後当然驚くことになる。
「お~いシャル~簪~。セシリアも来たぞ」
「「「え!?」」」
3人は驚きを隠せなかった。
「「「…………………」」」
とりあえずセシリアはソファーに座ってる2人の隣に座った。左から簪、シャルロット、セシリアである。
「(うー、何で今日に限って~~)き、奇遇だね」
「(シャルロットさんと簪さん、まさか抜け駆けを!?)そ、そうですわね」
「(はあ、シャルロットだけじゃなくて、セシリアも来ちゃうなんて…私何か悪いことした…?)…3人も集まるなんてね…」
そして3人は沈黙。
「どうした?」
「な、何でもないよ」
「そ、そうですわ」
「一夏は、気にしなくていい」
「?そっか。まあケーキ食おうぜ」
一夏はテーブルに皿とフォークを3つずつ持ってきて、その後台所に行くとある物を持ってきた。
「?一夏さん。そのケーキは?」
セシリアが一夏が皿にケーキを持ってきたのを見て不思議に思う。そのケーキはセシリアが買った物ではなかったからである。
「これか?いや実は簪が抹茶ケーキ作ってきてくれたんだよ」
「「!?」」
「セシリアが買ってきたケーキは3つしかないからそれは皆がわけてくれ」
そう聞くと女子2人は簪を見る。
(くっ、こんなことになるなら4つ買っておくべきでしたわ…)
(うー、僕も何か持ってくればよかったよ。常識ないって思われてないかな?)
「…一夏、それ私が食べるから、食べさせあいしたらどう?」
「「!!!!」」
2人を見て、さすがにと思ったのか頬を赤らめながら簪がそう提案してきた。
「え?でも男の口のついたのなんか嫌だろうし…」
「そ、そんなことないよ!」
「ええ!そうですわ!」
「だから、一夏も選んだら?セシリアに悪いでしょ」
そして3人はアイコンタクトをし、即興の日英仏3国同盟(笑)が結成された。
「じゃあお前ら先に選べよ」
「一夏が先に選びなよ」
「いや、客人が優先だからな」
シャルロットは言われるがままにケーキを選んで苺のケーキ、セシリアはチョコケーキ、一夏はチーズケーキを手に取った。そして4人は自分のケーキを口に運ぶ。
「これ上手いな」
「ほんとだ。おいしいよこれ!」
「ほほほ、喜んでもらえて嬉しいですわ」
「これ家でも作れんかな?」
「さすがに無理でしょう。『リップ・トリック』のシェフが国際大会で受賞経験のある菓子職人ですから」
「へぇーそうなのか」
「い、一夏…」
「ん?ああ、じゃあ簪、あ~ん」
「う、うん。あ、あ~ん」
「どうだ?」
「う、うん…おいしい…」
「い「一夏さん!」
「じゃあ次はセシリアな、あ~ん」
「あ~ん」
そして簪に続いてセシリアもケーキを口にする。
「おいしいですわ…」
「そうか、それはよかった」
「い、一夏!次は僕だよね?」
「ああ、悪い悪い。シャル、ほらあ~ん」
「あ、あ~ん」
シャルロットは最後にやっと食べられた。
「うまいか?」
「うん。僕、これ好きだなぁ」
当然それは別の意味が含まれている。するとまたチャイム音が鳴り、一夏は玄関に向かうと3人も嫌な予感がしたため、4人で玄関に向かった。そして向かうとそこには箒、鈴、ラウラの姿があった。
「…はあ、どうしてこうなるんだろう…」
さすがにこれには簪が耐えられなくなったのか、思わずそう呟いた。
「しかし来るなら来るで、誰か連絡してくれよ。事前に連絡くれたの簪だけだったぞ」
「仕方ないだろう。急に予定がなくなったのだから」
「そうよ。それとも何、エロイ物でも隠すとか」
そういう2人だが、シャルロットとセシリアが連絡なしに来たように『来ちゃった♪』というのをやりたかっただけである。簪だけは常識がないと思われるかもしれないということでやらなかったが。
「私は驚かせようと思って来たのだ。どうだ、嬉しいだろう」
(((((この自信が時に羨ましい)))))
女子5人は同じことを思う。
「ところで午後はどうする?外じゃなくて皆は中がいいんだよな?」
その質問に6人は頷く。
(わざわざ一夏が帰省した日を狙ってきたのだ)
(外なんかに出たら台無しじゃない、馬鹿)
(何か今まで知ることの出来無かったことを1つでも得たいものですわ)
(一夏の他の趣味も知りたいし)
(織斑教官の暮らしている家としても興味がある)
(外は暑いから嫌だし……)
「そっか。にしても仭、急に来れなくなったってどうしたんだろうか」
『え!?』
「いやな、今日実は仭も来る予定だったんだけど、皆が来た後に急に来れないってメールが来てな。それで『まあ、楽しくやれ』って来たからさ。来ることわかってたのかな?」
その言葉に6人は
(も、もしや私が今日来ることがわかっていたからか!?)
(何で!?あたしが来るってことわかってたの!?エスパー!?)
(な、何故…?誰にも言わなかった筈ですし…!もしや私が今日のために予定を全てキャンセルしたことがわかって!?)
(あー、多分僕がいたからだろうな。仭に悪いことしちゃったかな?)
(何故だ?…もしや師匠は読心術でも使えるというのか!?)
(ど、どうして?あの様子だと一夏から聞かされていたわけじゃなさそうだし…も、もしかして本音から!?)
全員仭とは昨日会っていて、一夏が明日は自分の家にいると聞かされていたため『明日は一夏の家に行く』ということになっていたからシャルロット以外はそう考えてしまう。しかし当然仭がメールを送ってきたのはシャルロットが一夏の家に遊びに来たからで、楽しくやれという意味はシャルロットに対してであるので、本人はシャルロット以外が一夏の家に遊びに行くことなど当然知りはしない。簪が仭が来ることを知らなかったのは単に一夏から仭も来ると言われてなかったためである。
*そのころの仭
「…ん?」
「どうかしましたか?」
「いや、何となく俺があられもないことを思われてるような気が…」
「きっとダインやカノンですよ」
「気のせいって言わないそこは?」
「まあ、そうかもな。ところでアリィ、もう詰んでるぞ?」
「え…?ああ!!負けた!!」
「これで5連敗ね」
「今までの合わすと36連敗だがな」
「もう大尉イカサマしてるんじゃないですか!?手の中に駒を仕込んであったりとか、一瞬の隙をついて少し動かすとか!」
「カノンみたいなことをするか!てか3戦目ぐらいしてからお前がレイラに俺がイカサマしてないか見てもらっていただろうが…」
「イカサマはしてなかったけど?」
ちなみに仭とアリシアはチェスをしていた。ちなみに仭が5戦中5連勝。
「むー、いきなり部屋に入ってきて『暇か?』って来た後、チェスで5連敗なんて…」
「どこの課長だよ。ちゃんとノックして『何かやらないか?』ってきただろうが。今日お前らは暇だって聞いたし」
「そんなことはどうでもいいんですよ!もう1回です」
「それもう今日5回目だけど?」
「やれやれわかった」
「次は勝って見せます!!」
「それも合わせると35回目だ」
*第3者サイド
場所は変わって再び一夏の家。わいわいと騒ぎながら鈴の持ってきたトランプやボードゲームなどをし、時刻が4時を過ぎたころ扉の開く音がした。
「何だ、騒がしいと思ったらお前達か」
白いワイシャツに黒いジーパンという姿の千冬だった。
「千冬姉、お帰り」
「ああ、ただいま」
すぐさま一夏は立ち上がり、千冬の側に行って右肩のカバンを受け取って片付ける。
「お茶でも飲む?熱いのと冷たいのどっちがいい?」
「そうだな。冷たいのでも……いや、いい。すぐまた出る。仕事だ」
千冬は教え子達からの『何か夫婦みたい』というという空気と、圧迫された雰囲気にそう言いかけてやめた。
「そっか。ああ、それと別のスーツと秋用のスーツ出しといたから」
「わかった」
そう言って千冬がリビングを出て行く。
「……あんた、相変わらず千冬さんにべったりね」
「え?姉弟なんだから普通だろ」
「そう思ってるのはあんただけよ?」
鈴はそう一夏に突っ込む。そして他の5人は
(一夏の奴、前よりシスコンぶりがひどくなっておるのではないか……?)
(織斑先生、本当に一夏さんを弟としてだけ見ているのかしら……?)
(な、ないよね?2人だけの世界とか、2人だけの想いとかないよね?)
(一夏め…私の嫁のくせに……教官といえど私の嫁が私以外に愛想良くなど…いやしかし…)
(…一夏は年上好きって噂…本当なのかな…だとしたら……)
それぞれ色々心配していた。
「あー、疲れた」
また場所は変わりIS学園廊下。仭がそう呟いていた。
(ったく、チェスで10連敗した後、カードゲーム、それで3連敗した後に今度はトランプでのスピード、ポーカー等色々やったがそっち方面でやっと勝てるってどういうことよ…)
「…さて」
仭は突如足を止め、振り返って視線を向ける。
「……もういないか」
先ほどまで仭は後をつけられており、その感じていた気配は視線を向けた時には、すでに消えていた。
(…そろそろ動き始めたか。学園上層部も関わっているのか?…まあ、だとしても俺は手を出される筋合いはない。…が最悪敵に回すことになるのも考えた方がいいな。向こうの出方しだいだが…)
これは夏休みが終わったら面倒になりそうだと懸念しながら再び仭は廊下を歩く。
余談だが一夏達の家にいる女子6人は、一夏の家で夕飯を作ると全員が言い出し、箒はカレイの煮付け、セシリアはハッシュドビーフとは名ばかりのタバスコ等を入れた辛い品物、鈴はジャガイモがかなり小さい肉じゃが、シャルロットは唐揚げ、ラウラは煮込む物の筈なのに何故か焼き色がついているおでん、簪はあまり料理は得意な方ではなかったため、全員と買い物へ行ったときに(こっそり)仭に連絡をして『一夏は何が好きか?』や『どういうふうに作ればおいしくできるか?』と聞き出し、被るだろうということでサラダを作った。この中でまともな料理は箒と鈴?とシャルロットと簪だけなのは言うまでもない。
ちなみにこの中で食べて1番一夏が関心を持った?のは何と簪のサラダ。仭がサラダの他にドレッシングを作らせており、それは一夏が教えて欲しいと言うほどであって、他の5人は『簪は油断ならない』と認識した。
次話から5章に入ると思います。